2025.09.11

ChatGPT導入前に知っておきたい会社でのリスクと対策

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はじめに

この記事のポイント

  • ChatGPT導入には著作権侵害や個人情報流出のリスクがある
  • セキュリティ確保には入力ルールとネットワーク対策が必須
  • 社内ガイドラインを整備し利用ルールを明確化することが重要
  • 社員研修を通じてAIリテラシーを高め活用定着を促す
  • 導入前に目的と範囲、契約内容を明確に確認することが必要

目次

1ChatGPT導入時に直面する法的リスクとは?
著作権侵害のリスク
個人情報保護と法令遵守
2ChatGPT導入で企業が直面するセキュリティリスクと対策
従業員の過失による情報漏洩
ディープフェイク
セキュリティリスクへの対策
3ChatGPTを企業で運用する際に発生する課題と解決方法
社内ガイドラインの整備
社員研修とリテラシー向上
4 ChatGPT導入前に企業が確認しておくべき重要なポイント
導入目的と適用範囲の明確化
ベンダー選びのポイント

ChatGPT導入時に直面する法的リスクとは?

ChatGPTを会社で導入する際には、業務効率化のメリットだけでなく、法的リスクへの対応が不可欠です。著作権や個人情報保護など、見落としがちなリスクを理解することで、安全かつ持続的な活用につなげられます。

著作権侵害のリスク

ChatGPTで生成された文章や画像をそのまま利用すると、無意識のうちに著作権を侵害してしまう可能性があります。特に以下のケースには注意が必要です。

  • 既存作品と酷似した生成物を公開する場合
  • 出典が不明確な情報をそのまま使用する場合
  • 商用利用で第三者の権利に抵触する場合

主に海外を中心に、既存の流通したアーティストやクリエイターの著作物が無断に使用されていたとして著作権侵害を訴えるケースが多く見られます。

たとえば、テキスト生成AIによる著作権侵害の事例として、アメリカの3名の作家が、OpenAIが著作物を無断で使用しAIモデルの訓練に利用したとして、2023年にカリフォルニア州連邦裁判所に訴訟を提起しました(出典:Reuters)。

また、国内では特撮映画「ウルトラマン」の制作会社である円谷プロダクションが、中国のAIサービス提供企業が許可なくウルトラマンの画像を生成・使用したとして、2022年12月に著作権侵害で訴訟を提起しました(出典:Ledge.ai)。

この事例では、この事業者には1万元(約20万円)の損害賠償支払いが命じられ、さらに関連画像の生成と配信の停止、将来にわたる類似侵害の防止措置を要求されています。 企業がリスクを回避するには、生成物をそのまま利用するのではなく、必ず社内チェックや専門家によるレビューを経て公開するプロセスを整備することが重要です。

個人情報保護と法令遵守

ChatGPTに入力した情報が外部に送信される仕組みを理解していないと、個人情報保護法やGDPR(General Data Protection Regulation:EU一般データ保護規則)などの法令違反につながる可能性があります。特に以下の情報は入力禁止とすべきです。

  • 氏名、住所、電話番号などの個人情報
  • 契約内容や未公開の社内情報
  • 顧客の機密データ

2023年6月2日、個人情報保護委員会は「生成AIサービスの利用に関する注意喚起等について」を発表しました。個人情報をプロンプトの入力を行う場合には、個人情報の利用目的を達成するために必要な範囲内であることや、機械学習に利用しないことなどを十分に確認することを求めています(出典:個人情報保護委員会)。

全社でChatGPTをはじめとした生成AIを活用するには、前述した注意点を経営者・従業員全員が理解したうえで使用することが重要です。

ChatGPT導入で企業が直面するセキュリティリスクと対策

ChatGPTを業務利用する際、見落とされがちなのがセキュリティ面のリスクです。情報漏洩や外部攻撃への脆弱性に備えることは、法的リスク以上に重要であり、導入前に十分な対策を講じる必要があります。

従業員の過失による情報漏洩

生成AIの利用において、機微情報を入力してしまうケースが散見されます。このデータが生成AIの学習に取り込まれてしまうと、他者への応答に当該情報が現れる形で、情報漏洩へとつながることに留意しなければなりません。

たとえば、Cyberhaven社の調査では、従業員の10.8%が職場でChatGPTを使用し、8.6%が社内データをChatGPTに貼り付けていることを発表しています。そのうち、機密データをChatGPTに貼り付けている従業員は4.7%にものぼります。(出典:Cyberhaven社)。

OpenAIは、ChatGPTに入力されたコンテンツを学習データとして利用することで技術の向上を図っています。Cyberhaven社の調査で判明した「幹部が企業内の戦略を入力して資料作成」「医師が患者情報を入力して保険申請書作成」などは、危険なChatGPTの利用方法です。

ディープフェイク

ディープフェイクとは、生成AIを用いた偽の写真・音声・動画のことを指します。ディープフェイクを用いた詐欺は、サイバー領域においても上位の脅威であり、生成AIのサイバー犯罪への利用は強く警戒されています。

たとえば2023年5月23日、アメリカの米国防総省(ペンタゴン)近くで大規模な爆発が起こったような虚偽画像がソーシャルメディアで拡散されました。地元消防当局が爆発を否定する声明を発表しましたが、ニューヨーク株式市場では、ダウ工業株30種平均が一時80ドル近く急落するなど混乱が広がりました(出典:毎日新聞)。

企業におけるディープフェイクの懸念として挙げられるのが、自社ビジネスや自社リモートアクセスで採用する音声認証・顔認証などが突破されるリスクです。また、誰でも社長や代表取締役の声に成りすますことができるため、競合他社の商品やサービスを誹謗中傷し、ブランド価値を毀損することも可能になってしまいます。

セキュリティリスクへの対策

生成AI特有のセキュリティリスクへの対策は、従来の対策と共通する部分が多くあります。まず挙げられるのが「多層防御」です。多層防御とは、複数の防御層を設けることで、多様なサイバー攻撃からシステムの重要な領域を守るセキュリティ対策です。
多層防御を構築する際は、大きく分けて「入口対策」「内部対策」「出口対策」の3つを講じます。
入口対策とは外部からの脅威がネットワークに侵入するのを防ぐ対策を指します。入口対策の具体例は以下の通りです。

  • プロンプト文の検証
    • 拒否する文字列(コードの実行を促すものなど)を事前に登録し、プロンプト文に該当の文字列が含まれていないかを確認する。システムへの侵害を事前に防ぐことができる。
  • ガードレールの設置
    • ガードレール(仕組みやルール)を設置することで、入力されたプロンプト文が事前に設定したポリシーに違反していないかLLM(Large Language Models:大規模言語モデル)を使用して検証する。表現の違いによる攻撃を軽減できる。
  • ログの保存
    • ユーザーが入力したプロンプト文を保存する。「出口対策」における出力に関するログを一緒に保存することで、生成物に対する問題が発生した際には、確認を行える。

内部対策では、入口対策では防ぎきれなかった脅威の侵入に備えるための対策を考えます。具体的な内部対策の例は以下の通りです。

  • 権限管理
    • バックエンドで実行されているソフトウェアを管理者権限ではなく、必要最小限の権限で実行する。LLMによって生成されたコマンドによる被害を軽減できる。
  • 防御用プロンプトテンプレートの実装
    • LLM統合システムの内部で定義するプロンプトテンプレートに防御用のプロンプトを設定し、不正な操作や出力を減らすことができる。

出口対策では、内部から外部へ出ていく通信を監視し、情報漏洩の被害を防ぐための対策と、ユーザーへ情報が渡る場所での対策を考えます。具体的な出口対策の例は以下の通りです。

  • ユーザーへの教育
    • 生成AIの出力物には著作権の侵害やハルシネーション、バイアスがかかっている可能性があることを周知する教育を行う。これにより、間違った情報の使用による事故を防ぐことができる。
  • ガードレールの設置
    • 出力された内容が事前に設定したポリシーに違反しているかLLMを使用して検証する。不利益をもたらす内容や不適切な表現、バイアスの発生などを軽減する。
  • ログの保存
    • 出力された回答を保存する。入口対策に記載した入力ログを一緒に保存することで、生成物に対する問題が発生した際には、確認を行うことができる。

ここで挙げた多層防御は一例であり、これらの対策を講じたとしても、すべてのセキュリティリスクを防げることを保証するものではありません。その他の対策もあわせて検討し、総合的なセキュリティリスクへの対策を講じることが重要です。

ChatGPTを企業で運用する際に発生する課題と解決方法

ChatGPTを導入しても、社内ルールの不足や社員の知識差によって、効果が十分に発揮されないことがあります。運用上の課題を洗い出し、効果的な解決策を導入することで、リスクを抑えつつ定着を促せます。

社内ガイドラインの整備

多くの企業で見られる課題が「利用ルールが曖昧なまま導入される」ことです。その結果、社員によって使い方がバラバラになり、情報漏洩や不適切な利用が発生しやすくなります。

そのため、組織としての生成AIに対する考え方や注意事項を示す「社内利用ガイドライン」を策定し、社内で共有することをおすすめします。

ガイドラインに含めるべき項目の一例は以下の通りです。

  • 出力された情報の正確性に注意する
    • 生成AIはインターネット上にある大量のあらゆる情報を学習し、その中に潜在するパターンや規則性を抽出し、入力された情報に対して確からしいコンテンツを生成する。しかし生成された出力物には正確性・信頼性が保証されていないため、確実な情報源をもとに必ずファクトチェックを行う。
  • 個人情報・機密情報は入力しない
    • ChatGPTでは、入力された情報がOpenAI社のモデルの学習に使用される可能性がある。つまり秘匿性の高い情報を入力した場合、その情報がデータベース上に保存され、生成AIのサービスを提供している企業など第三者に情報が漏えいするおそれがある。そのため、氏名・連絡先・住所などの個人情報や、パスワード・自社開発プログラムのソースコード・企業の財務情報・顧客情報などの機密情報は入力しない。
  • 生成物が権利侵害になる可能性に注意する
    • 生成AIからの出力物が既存の著作物と同一・類似している場合は、当該生成物の利用で権利侵害となる可能性があることに留意する。そのため、たとえば「プロンプトに既存の著作物・作家名・作品名を入力しない」「出力物を利用する場合は既存の著作物に類似していないか調査する」などの対策が必要になる。

ガイドライン作成にあたっては、一般社団法人日本ディープラーニング協会がガイドラインのひな形を策定し無料で公開しているため、参考にするのもよいでしょう(参照:一般社団法人日本ディープラーニング協会)。

社員研修とリテラシー向上

社内ガイドラインを作ったとしても、社員が理解していなければ形骸化します。生成AIの導入を成功させるためにも、定期的な研修やトレーニングが欠かせません。たとえば、研修プログラムやワークショップを通じて、生成AIの基本的な使い方やプロンプトの作成方法を学ぶ機会を提供することが必要です。

効果的な社員研修のポイントは次の通りです。

  1. ケーススタディの活用:実際の企業の失敗例や成功例を題材に理解を深め、自社の課題にAIをどう適用できるかの具体的なイメージを掴む。
  2. ハンズオン形式:実際に業務シーンを想定してChatGPTを使い、活用方法やリスクと効果を体感させる。たとえば営業部門では顧客データ分析や提案書作成の効率化、人事部門では採用プロセスの最適化など、各部門の具体的な業務に即した活用法を習得する。
  3. 継続的フォローアップ:一度限りの研修で完結するのではなく、生成 AI 技術の進化や業務への応用範囲の広がりに応じて、継続的な学習を行う。

ChatGPT導入前に企業が確認しておくべき重要なポイント

ChatGPT導入を成功させるには、法的・セキュリティ・運用リスクを踏まえた事前確認が不可欠です。導入の目的を整理し、契約内容やサポート体制を見極めることで、安心して業務に取り入れられます。

導入目的と適用範囲の明確化

多くの企業が「便利そうだから」という理由だけで導入し、結果的に効果を実感できずに終わっています。たとえば、事務作業の自動化・顧客対応の効率化・マーケティング支援・データ分析の強化など、生成AIにはさまざまな活用方法が考えられます。

生成AIを効果的に活用するためには、まずは導入の目的と適用する業務範囲を明確にすることが重要です。

  • 導入目的:コスト削減、業務効率化、ナレッジ共有など
  • 適用範囲:議事録作成、顧客対応、資料作成など

ベンダー選びのポイント

導入の目的と適用したい業務範囲を明確にしたあとのベンダー選びも大きなポイントになります。契約内容やサポート体制だけでなく、特に機密情報を取り扱う社内においては、以下の点もあわせてチェックしておくとよいでしょう。

  • 情報の取り扱い:入力した情報がどのように扱われるのか確認する
    • ユーザー入力をもとに学習を行うかどうか
      入力した情報が学習データに利用されると、自社の機密情報が他のユーザーへの出力結果に含まれる形で情報漏洩につながるリスクがある。オプトアウトできるか、デフォルトで学習しない設定になっているかなどを確認する。か)
    • ユーザー入力を学習以外の目的で利用したり保持するか
      学習には利用しないと明記されていたとしても、機能提供・サービスの品質改善・バグ修正・利用状況の分析などの目的でデータ保持・利用する場合がある。どのような目的・どの範囲・どの程度の期間利用または保持されるのかを確認しておくことが望ましい。
  • ポリシー管理機能の有無:管理者向けのポリシー管理機能が提供されているかを確認する
    • ユーザー管理
      社内で利用しているIDプロバイダ経由での認証(SSO:シングルサインオン)が可能かどうか。認証をIdP(Identity Provider:ユーザーIDを保存および検証するサービス)に集約することで、多要素認証(MFA)の強制など、組織のセキュリティポリシーを一元的に適用できる。
    この記事を書いた人
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    NewtonXコラム編集部

    ChatGPTの分析に特化した編集メンバーが記事を更新しています。
    生成AI界隈の最新ニュースからお役立ち情報まで詳しく解説いたします。

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