自営業 – ルートテック|ビジネスライフとキャリアを応援する情報メディア https://www.seraku.co.jp/tectec-note Wed, 22 Apr 2026 08:48:06 +0000 ja hourly 1 https://wordpress.org/?v=6.2.9 自営業の産休・育休中にもらえるお金と利用できる制度を解説 https://www.seraku.co.jp/tectec-note/freelance/bp_selfemployed_maternity/ https://www.seraku.co.jp/tectec-note/freelance/bp_selfemployed_maternity/#respond Wed, 15 Apr 2026 08:58:06 +0000 https://www.seraku.co.jp/tectec-note/?p=46412 はじめに
  • 自営業では産休・育休は自分で休業期間や経済的な対策をする必要がある
  • 自営業でも出産育児一時金や児童手当は受け取れる
  • 自治体独自の出産・育児支援や一時金もあるので確認しよう
  • 自営業の在園継続や利用調整は自治体ごとに運用が異なるため、対策をしっかりしよう
  • 自営業でも出産費用は医療費控除ができる

自営業での産休・育休について、どのような制度になっているのか気になる方も多いでしょう。自営業では制度が使えず、支援金も受け取れないというのは誤りです。この記事では自営業における産休・育休の制度や利用のポイントを解説します。

自営業の産休・育休の考え方

自営業の産休・育休の考え方は、会社員とは大きく異なります。会社員は産休・育休の制度が整っていますが、自営業は違います。

会社員と自営業で制度がどう違うか

育休・産休において会社員と自営業でもっとも大きく違う点は、産休が労働基準法、育休が育児・介護休業法に基づく制度であることです。会社員は労働基準法の対象であるため、育休・産休の制度が整備されています。しかし自営業は労働基準法の適用範囲外なので、法律で定められた育休・産休はありません。

出産・育児のために休業するには、自分で休む期間を決めて、その間のお金のやりくりも自分で計画を練らなければなりません。
また、会社員では育休・産休時に出産手当金(産休手当)および育児休業給付金(育休手当)が雇用保険より支払われますが、自営業では雇用保険未加入および国民健康保険加入のため、会社員とは支給範囲が変わります。国保には出産手当金の制度がないため、支給されません。ただし、出産育児一時金は支払われます。

産休・育休における制度や補助金の違いは、次の表の通りです。

 会社員自営業
産休・育休労働基準法基づく産休・育休の制度があるなし (自分で休みを取ることは可能)
出産手当金
(産休手当)
会社で加入している健康保険より支給されるなし
出産育児一時金会社で加入している健康保険より支給される加入している国民健康保険より支給される
育児休業給付金
(育休手当)
雇用保険より支払われるなし

会社員と自営業では、働く仕組みの違いから、出産・育児に関して大きな違いがあることを理解しておく必要があるでしょう。

自営業の産休・育休中にもらえるお金

では、自営業には産休・育休中になんの制度・補助がないのかというと、そういうわけではありません。次項では自営業の方が出産・育児に関して利用できる制度や一時金などを具体的に解説します。

出産育児一時金はほぼ全員が対象になる

出産育児一時金は、出産費用の補助を目的とした一時金であり、公的医療保険の加入者が出産したときに一定額の一時金を受け取れる制度です。国民健康保険加入者も対象なので、自営業の方でも受け取れます。

  • 出産育児一時金について

    条件:公的医療保険に加入していること、妊娠4か月(85日)以上であること
    金額:子ども1人につき原則50万円が健康保険から支給
    受取方法:直接支払制度、受取代理制度、直接受取

出産育児一時金の受け取り方法について解説します。

  • 直接支払制度

    健康保険組合から医療機関へ直接支払う制度で、退院時の支払いは50万円を超えた部分のみでよい。申請は出産があったときに医療機関からおこなうので、出産する本人はとくに申請の必要はない。

  • 受取代理制度

    直接支払制度と同様の支払方法となるため、退院時の支払いも50万円を超えた部分のみでよい。ただし申請は自身で事前に保険組合へおこなう必要がある。申請時期は出産予定の2か月前が目安。

  • 直接受取

    申請を自身でおこない、支給の受取も振込で受け取る。産後の申請や海外出産などではこちらの手法が主流。

参考:厚生労働省 – 出産育児一時金等について 

児童手当は自営業でも継続的な支えになる

児童手当は日本に住んでいる場合に支給される制度であり、自営業でも支給の対象となります。子どもが高校生の年代まで定期的に支給されるため、子育て費用の大きな助けになるでしょう。
2024年10月から児童手当法改正により、児童手当が会社員や自営業、所得額に関係なく、子どもがいる場合に同一金額が支給されます。

児童手当の支給額は次の通りです(2024年10月からの金額)。

  • 児童手当・3歳未満

    15,000円/月 を支給(第3子以降は30,000円)
    ※支給は2か月に一度

  • 児童手当・3歳以上~高校生年代まで

    10,000円/月 を支給(第3子以降は30,000円)
    ※高校生年代=18歳到達後最初の3月31日まで
    ※支給は2か月に一度

参考:こども家庭庁 – 児童手当制度のご案内

なお、児童手当を受給するには申請が必要です。子どもが生まれたときは、忘れずに現住所の自治体で手続きをおこないましょう。

自治体独自の出産・子育て支援も確認する

出産育児一時金や児童手当は国の制度ですが、これとは別で各自治体が独自に出産・育児の支援を実施している場合があります。
代表的な例に、妊婦のための支援給付があります。妊娠時と出産時にそれぞれ子ども一人あたり5万円の支援がもらえる制度です。ただしこの5万円は、自治体ごとにクーポンや現金など支援の形態が異なります。また、届け出に合わせて面談がおこなわれたのち、支援給付となります。詳しくは子ども家庭庁のWebページをご覧ください。

参考:こども家庭庁 – 妊産婦への伴走型相談支援と経済的支援の一体的実施(妊婦等包括相談支援事業・妊婦のための支援給付

このほかにも出産・育児に関する支援制度を独自におこなう自治体があります。インターネットで調べたり、役所を訪れたりして確認しましょう。

社会保険料が免除される

出産に関して、国民年金と国民健康保険の免除期間が設けられています。

  • 国民年金の納付免除

    制度:国民年金の保険料が産前産後に納付免除となる。
    対象:国民年金第1号被保険者
    ※出産とは、妊娠85日以上の出産をいう
    期間:
    出産予定日または出産日の属する月の前月から4か月間の産前産後にあたる期間、母の国民年金が納付免除される。多胎妊娠(双子以上)の場合、出産日または出産日が属する月の3か月前から6か月間の母の国民年金が納付免除される。
    補足:免除期間も年金を納付したものとして扱われる

  • 国民健康保険の納付免除

    制度:国民健康保険の被保険者が産前産後に保険料納付免除となる。
    対象:国民健康保険加入者で出産した方
    期間:出産予定日の前月から4か月間の期間。人工妊娠中絶も対象となる。
    ※出産とは、妊娠85日以上の出産をいう

参考:厚生労働省 – 国民年金における育児期間の保険料免除
参考:東京都中央区 – 産前産後期間相当分の国民健康保険料を軽減します(令和6年1月制度開始)

2026年10月から国民年金納付免除の新制度が始まる

2026年10月から、国民年金の育児免除制度が始まります。母親だけでなく、父親や養父母も納付免除の対象となります。

  • 国民年金の育児納付免除(2026年10月からの新制度)

    制度:子の実父母または養父母について産後の国民年金が納付免除になる
    期間:子どもが生まれた日から1歳になる誕生日の前月まで
    対象:国民年金第1号被保険者で、子どもを養育する親(実父母および養父母)
    補足:免除期間も年金を納付したものとして扱われる。免除には申請が必要(スマホから可能)

実母の場合、産前産後免除期間も有しているため、免除期間は両方の制度が考慮されます。父親及び養父母の場合は新しい制度の期間となります。
具体的な期間の考え方は次の通りです。

  • 産前産後免除期間を有する実母の場合

    産前産後免除期間に引き続き9カ月間、国民年金保険料が免除される。(産前産後免除期間と合わせると最大13か月間)
    ※補足:2026年10月1日以降に限る

  • 実父または養父母の場合

    子を養育することになった日の属する月から、子が1歳になる誕生日の前月までの最大12か月間、国民年金保険料が免除される。
    ※補足:2026年10月1日以降に限る

詳しくは、日本年金機構のホームページをご覧ください。

参考:日本年金機構 – 令和8年(2026年)10月から国民年金保険料の育児免除制度が始まります!

申請手続きで迷わないために

これまで自営業者の出産・育児にまつわる支援制度を解説しましたが、これらは制度ごとに実施団体が異なるため、申請時に混乱しやすいものです。次項では、それぞれの支援金の申請先をわかりやすく整理して解説します。

申請先は3つに分けて考える

出産・育児に関する申請は、主に次の3つに分けて考えると分かりやすいでしょう。

手当・支援申請先
(自営業の場合)
出産育児一時金国民健康保険*
児童手当・自治体独自の支援お住まいの自治体
育休給付 (配偶者の企業制度を利用する場合)配偶者の勤務先

*自営業でも加入している保険組合がある場合はそちらに申請してください。(例:文筆業における文芸美術国民健康保険組合)

事前にそろえておくと楽になる書類

子育てで忙しくなる前に、申請に関する書類をそろえておくと処理の負担が軽くなります。事前にしておくべき申請や書類は次のとおりです。

出産・育児で必要になるもの
  • 保険証情報

    マイナカードまたは資格確認証のこと。一時金の申請などで必要。

  • 母子健康手帳

    自治体の役所や保健センターなどで妊娠届出書を提出するともらえる。今後子どもに関する手続きで必要になる書類

  • 口座情報

    給付金振込先を決めておくと便利。

保育園の申し込みで必要になるもの
  • 開業届の写し

    保育園の申請時、就業証明に必要である重要な書類。

  • 契約書や領収書、確定申告書など

    保育園の申請において、直近の収入が少ない場合でも事業をおこなっている証明になる。

  • 就労証明書

    認可保育園など必要となる書類。就労しており、休業明けにも事業に従事することを証明する。会社員は所属企業からもらう書類だが、自営業の場合は自ら作成が必要。子ども家庭庁やマイナポータルにフォーマットあり。

参考:子ども家庭庁 – 別添 就労証明書(簡易版)標準的な様式 (PDF)

保育園の在園継続は必ず要確認

自営業でも、所定の届け出をおこなえば休業期間中に保育園の利用ができます。ただし、保育園の在園継続は自治体によって差が大きい状況であるため、しっかり確認する必要があります。

自営業が特に注意すべき理由

自営業者は、育児・介護休業法上の育児休業の対象者ではありません。そのため、自営業の育休はみなし育休や復帰期限など、自治体ごとの独自ルールが生じやすいという事情があります。

  • みなし育休

    育児・介護休業法に基づく育児休業制度を受けられない自営業者を対象に、子どもが満1歳の誕生日を迎えるまでの期間、育児のための休業とみなす制度。自治体によってみなし育休での保育園利用費など制度が異なるため、事前に確認しておくとよい。

  • 復帰期限

    自営業者のみなし育休の期間には制限があり、限度とされる日を復帰期限という。自治体により制度が異なるが、「子どもが1歳または2歳の誕生日前日」とされることが多い。

※みなし育休、復帰期限という用語は公的なものではなく、通称である。

自営業は、就業実態が会社員と比較して分かりにくいため、保育園利用のための点数を低く見積もられる傾向にあるようです。就業実態を証明するには、開業届や契約書、確定申告書を提出するとよいでしょう。

自治体窓口で聞くべきチェック項目

保育園の申請について、自治体窓口で聞くべきことをチェック形式で紹介します。チェックリストとして活用してください。

CHECKポイント
  • 自営業の就労証明に必要な書類は何か確認する(開業届など)
  • 申請書類の提出期限を確認する
  • 自営業での保育園申請で「みなし育休」がどのような制度になっているか確認する(自治体ごとに制度が異なるため)
  • 自営業における復帰期限の有無やその期限を確認する
  • 短時間認定の有無や条件を確認する

休業前後のお金と仕事の整え方

自営業の産休・育休では、会社員と違い、休業の設計や金銭的な問題の解決もすべて自由に決められる反面、すべて自己責任となります。産休・育休で仕事面・経済面をどのように整えておくかは、事前によく考えて見通しを立てることが重要になります。

収入が止まる期間をどう乗り切るか

仕事をしていない期間は収入が止まるため、自営業は育休手当・産休手当がない中での対策は重要です。
まず収入について、直前まで仕事をしている場合、一般的に15日~45日の入金サイトで収入が入ってきます。支出については、仕事をしていない時期でも、事業の継続のための固定費がかかったり、取引先からの前倒し請求や外注の費用が発生したりします。収入がなくても一定の出費が発生することは負担になるでしょう。
これら入出金のおおまかな金額・予定を把握し、どれくらいの事業費が産休・育休期間に必要かを事前に割り出しておくことで、産休・育休のためにまとまった金額を用意するときの目安になります。

出産費用と医療費控除の関係

医療費控除とは、1年間に支払った医療費が一定の基準を超えた場合に控除を受けられる制度です。
出産費用は医療費控除の対象になるため、自営業でも確定申告時に同時に医療費控除の申告もおこないましょう。

具体的には、次のような費用が医療費控除の対象となります。

  • 妊娠中の定期健診代
  • 病院への通院費
  • 基本は電車・バスなどの公共交通機関の運賃のみ。ただし、緊急の出産で公共交通機関を使えずタクシーを使用した場合、タクシー代金が控除対象になる
  • つわりなど妊娠に関する治療費
  • 分娩費用
  • 入院費用
  • 入院中の食事代

車で通院した場合のガソリン代や、入院時のその他雑費、おむつ・ミルク代金などの育児費用は控除の対象にはならないので、注意しましょう。

医療費控除の詳細を解説した記事がありますので、そちらも参考にしてください。

参考:国税庁 – No.1124 医療費控除の対象となる出産費用の具体例

まとめ

自営業の産休・育休は、会社員とは違って独自で休業を取ることになります。ただし、自営業でも利用できる出産・育児の支援制度や一時金制度はあります。自営業は自分で仕事の範囲を決められる自由度がある反面、なにか起きた場合の補償が薄いため、出産・育児で不安になることも多いです。しかし、手当が皆無なわけではありません。支援制度の確認や、仕事・経済面の整え方を早いうちに考えておくことが、安心につながるでしょう。
子どもを産み育てることはかけがえのないものです。自営業でも利用できる制度を前向きに使っていき、子育てをすることが可能です。

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自営業の保険は何が必要?優先順位と最小セットを解説 https://www.seraku.co.jp/tectec-note/freelance/bp_selfinsurance_priority/ https://www.seraku.co.jp/tectec-note/freelance/bp_selfinsurance_priority/#respond Fri, 13 Mar 2026 07:40:01 +0000 https://www.seraku.co.jp/tectec-note/?p=46008 はじめに
  • 自営業者が入れる保険には、公的保険、民間保険、共済や公的機関の制度がある
  • 自営業者の保険選びは、収入減少に備える、事業リスクに備える、健康リスクに備える、の3本柱で考える
  • 保険選びの優先順位は、働けなくなったとき、医療費と生活防衛、将来への備えの順である
  • 保険は、すべて入るのではなく、今の自分に必要な最小セットを選択する
  • 保険と共済の違いを理解し使い分けることが重要

自営業者にとって、保険はいざというときの備えとなる安心材料です。しかし、種類も多いため迷うこともあるでしょう。そこで、自営業者が考えるべき保険選びのポイントや優先順位、必要な保険の種類を解説します。保険を選ぶ際の参考にしてください。

自営業者が入るべき保険一覧

個人事業主やフリーランス等の自営業者が加入する保険には、以下のような種類があります。まずは全体像を確認しましょう。

公的保険民間保険共済・公的機関の制度
  • 国民健康保険
  • 国民年金
  • 介護保険
  • 就業不能保険
  • 所得補償保険
  • 医療保険
  • 生命保険
  • 養老保険
  • 個人年金保険
  • 火災保険
  • 地震保険
  • 賠償責任保険
  • 業務災害保険
  • ビジネス総合保険
  • 小規模企業共済
  • 経営セーフティ共済
  • 中小企業退職金共済

公的保険は必須ですが、民間保険や共済等は状況に応じて選択しましょう。

自営業者が入る必要のある保険

自営業者が入るのが必須の保険:公的保険
国民健康保険・国民年金・介護保険(加入年齢あり)
自営業者が加入する公的保険には、会社員の健康保険や厚生年金のような企業との折半がなく、全額個人負担となります。扶養の概念がないため、家族がいる場合は負担が増える可能性があります。

国民健康保険では医療費負担が3割と健康保険と変わりませんが、傷病手当や出産手当といった制度がないため、病気やけが、出産に備えた医療保険の準備が必要です。

国民年金は基礎年金のみとなり、厚生年金の2階部分がないため将来受け取れる年金額が少ない傾向があります。ただし、以下の対策で受け取れる年金額を増やすことが可能です。

  1. 【受け取り年金額を増やす対策】
  2. 付加保険料を上乗せする:

    付加保険料400円を多く収めることで、200円×納付月数分の年金額を増額できる

  3. 国民年金基金を活用する:

    掛金(月額68,000円を上限)を支払うことで年金額を増額できる(付加保険料との併用不可)

高額の民間保険料を支払うのではなく、公的年金を上手に活用しましょう。

自営業者におすすめの保険

自営業者にとって最も重要なのは、働けなくなり収入が途絶えることへの備えです。不慮の事故や病気はいつ発生するかわかりません。事業継続に支障をきたすリスクへの備えも必要です。これらに対処可能な保険をまとめました。

  • 【収入減少に備える保険】
  • 就業不能保険:ケガや病気により長期間にわたり働けない状態になったときの、減少した収入を補償する(毎月一定額の給付金が受け取れる。待機期間がある)
  • 所得補償保険:ケガや病気により短期間の働けない状態になったとき、減少した収入を補償する損害保険(数日の免責期間あり。受け取る保険金は非課税)
  • 【事業リスクに備える保険】
  • 火災・地震保険:災害による財産の損失を補償する
  • 賠償責任保険:事業活動において損害賠償責任を負った場合、賠償金等の損害を補償する
  • 業務災害総合保険:従業員の業務中のケガや病気を補償する(労災上乗せや使用者賠償責任をカバー)
  • 【健康リスクに備える保険】
  • 医療保険:入院や手術、通院等の費用を補償する
  • 生命保険:死亡時や定める高度障害を負った際の生活を補償する

参考:ほけんの窓口|個人事業主やフリーランスが入るべき保険は?
参考:ほけんの窓口|所得補償保険とは?就業不能保険等との違いやおすすめの選び方

保険は優先順位で選ぶ

保険には、目的に応じてさまざまな種類があります。不安を感じるたびに多くの保険に入りたくなるものですが、ほんとうに必要なものなのか冷静な判断が重要です。そのため、必要な保険の優先順位を決める必要があり、家族構成・貯蓄額・住宅ローンの有無・従業員の有無・職種リスクなどを参考にしましょう。

最優先は働けなくなるリスク

自営業者にとって、働けなくなったときの対処が最優先です。国民健康保険には原則として傷病手当がないため給与の保障はありません。ケガや病気で療養中も生活費や事業の固定費は発生し続け、補てんする手段がないため、長びけば影響も大きくなります。貯蓄があっても切り崩してしまったら、療養を続けられないばかりか事業の継続も難しくなる可能性があるでしょう。
対象保険:就業不能保険、所得補償保険

次に考えるのは医療費と生活防衛

次に優先することは医療費と生活費の確保です。医療費について日本では高額療養費制度があるため、自己負担額(年齢や所得に応じて異なる)には上限があります。しかし、差額ベッド代や交通費、生活費は自己負担のためカバーされません。医療保険を検討する場合は、日額いくらという発想だけでなく、貯蓄でどこまで賄えるかを基準に必要最小限の保障を考えましょう。
対象保険:医療保険、生命保険
参考:厚生労働省保健局:高額療養費制度を利用される皆さまへ

老後・万一の備えは後回しでもよい

貯蓄型の養老保険や死亡保障のある生命保険等は、掛金が高額になる場合があります。開業直後や収入が不安定な段階では、掛金捻出による資金不足を招きかねません。ある程度事業が軌道に乗り、生活基盤が安定するまで優先するのは避けましょう。
保険の安心感は大切ですが、まずは今の生活を守り、収入や貯蓄を増やすことを優先しましょう。
対象保険:養老保険、生命保険

自営業者向けの最小セット例

ここからは、自営業者の状況別にどのような保険を選んだらよいかを紹介します。保障額と掛金のバランスを考え、無理のない最小セットを選びましょう。

独身・扶養なしの場合

扶養家族がいない独身の場合、最優先は就労不能リスクへの備えです。働けなくなった際の生活費と、事業継続のために必要な最低限の経費を補う準備をしましょう。また、貯蓄がある場合の医療保険は、高額保障を選ぶ必要はありません。貯蓄額に応じて検討しましょう。

最も優先度が低いのは死亡保障です。営業の勧めるままに高額の死亡保険に入ると、年齢が若くても保険料負担は大きくなります。
対象保険:就業不能保険、所得補償保険、掛け捨て型の医療保険

家族がいる場合

家族がいる場合は、就労不能リスクに加えて家族の生活保障も重要です。たとえば、働けなくなった際の事業部分の備えと、不測の事態に備えた死亡保険も検討しましょう。定期型の死亡保険なら、一定の期間を指定して保障する掛け捨てタイプの保険なので、貯蓄型に比べると保険料は低額に抑えられます。

他には、保険の種類にもよりますが親の医療保険に子ども特約を付けて子どもの健康リスクにも備えられるものもあります。無駄を省いて保険料を抑える工夫が重要です。
対象保険:就業不能保険、所得補償保険、死亡保険、医療保険(家族型等)

開業直後・収入不安定な場合

開業直後は固定費を増やさないことが肝要です。収入が不安定な段階で経費が増えると資金不足に陥る可能性があるからです。そのため高額保障ではなく最低限の保障にとどめ、事業が安定したら保障額を上げたり、ほかに必要な保険に入ったりすると考えましょう。

たとえば、就業不能保険や所得補償保険で事業部分に備え、少額の死亡保障に医療費特約を付けた生命保険1本に絞り、健康リスクに備えることも可能です。掛け捨て等を活用し保険料抑えましょう。
対象保険:就業不能保険、所得補償保険、事業に応じて火災保険や損害賠償保険、医療保険

保険と共済はどう使い分ける?

保険に似た制度に共済があります。どちらもケガや病気、事故や損害を受けた際に備えるものですが、加入対象や保障の内容など大きく異なる点があります。上手に使い分けるために、違いをわかりやすく解説します。

保険と共済の違いを簡単に整理

共済とは相互扶助の制度です。同じ目的や職種等で集まった会員や組合員から集めた金銭を、不測の事態に見舞われたり、規定の条件に達したりした会員や組合員に支払い助け合う制度となります。以下に保険との違いをまとめました。
【共済と保険の違い】

共済保険
加入対象共済を運営する組合等の組合員とその家族加入希望者全て
保障の内容限られた商品サンプルから選択
組み合わせはできない
保障範囲は限定される
保険商品や特約の種類が多く
組み合わせが可能
保障範囲は広い
営利目的会員の相互扶助による運営
営利を目的としない
保険会社が営利目的で営業
用語掛金
共済金
普及・推進
保険料
保険金
営業・勧誘
根拠となる法律運営組合別の組合法
運営組合別の監督省庁
保険業法・金融庁

共済は保険と比べると掛金が安い傾向がありますが、同時に保障の範囲も限定されます。さらに、共済を運営する団体への加入が必要です。自分にとってメリットのある選択はどちらなのか、検討する必要があるでしょう。
参考:ほけんの窓口|共済と保険の違いとは?メリット・デメリットをわかりやすく解説

自営業者がよく使う共済

自営業者等の中小規模企業を対象とした国がサポートする共済制度で、小規模企業共済と経営セーフティ共済があります。自営業者の老後資金や連鎖倒産、経営難に備えることができます。

  • 【小規模企業共済】
  • 小規模事業経営者とその共同経営者、小規模企業等の役員のための退職金制度
  • メリット:事業資金の借入も可。税制面では掛金全額が所得控除できる
  • デメリット:20年未満での解約は掛金合計額を下回る。共済金を受け取る際に税金がかかる
  • 【経営セーフティ共済(中小企業倒産防止共済)】
  • 取引先の倒産等による連鎖倒産を防ぐための制度
  • メリット:不測の事態に対処するために必要な事業資金の借入ができる。掛金は経費計上可
  • デメリット:1年未満の解約は掛け捨て扱い。解約手当金は事業収入となり課税がある

どちらの共済も自営業者の備えとなり、掛金の節税効果を魅力に感じるかもしれません。しかし、解約時や共済金受給時にも課税があります。節税目的の利用は控えたほうが無難でしょう。
参考:共済サポートnavi|知りたい|中小機構の共済制度について
参考:中小機構|小規模企業共済にデメリットはあるの?
参考:Freee|経営セーフティ共済とは? 加入条件やメリット・デメリットをわかりやすく解説

自営業の保険でよくある失敗

さまざまな種類の保険や共済があることを知ると、不安解消や節税対策などに活用したくなるものです。ここからは、自営業者がやりがちな保険にまつわる失敗を見ていきます。

全部入って保険料が重くなる

事業運営をする中で、自営業者は多くの不安に駆られます。自分が働けなくなったら、借入金もある、大きな契約で損害賠償が生じたら、取引先のよくない話を聞いたなど、不安要素は多岐にわたります。そのたびに対策できる保険に加入することで安心は得られるでしょう。しかし、複数の保険料や掛金が積み重なり大きな金額になった場合、かえって経営を圧迫する要因となりかねません。

節税だけで共済・保険を選ぶ

保険料や共済の掛金は、所得控除や経費計上ができるため、節税対策として活用できます。節税目的で控除枠一杯の保険料を支払っていませんか。控除により減額した税金額と節税目的で支払っている保険料を比較してみましょう。大きすぎる保障に入っていたり、掛け捨てで十分に賄えるものを貯蓄型にしたりと、無駄な保険料を支払っている可能性があります。

解約・元本割れを理解していない

たとえば、生命保険には貯蓄型と掛け捨て型があり、貯蓄型は解約時に解約返戻金が支払われます。しかし解約のタイミングによっては、支払った保険料よりも解約返戻金が少なくなる元本割れが生じる可能性があります。

他には、先払いした保険料が返還されなかったり、再加入が厳しくなり保険料が上がったりと、解約にはさまざまなリスクがあることを覚えておきましょう。

まとめ

保険は不安を減らしてくれる重要な道具です。ところが、どのような種類の保険にどのくらい入ればいいのかに正解はありません。大きすぎる保障や高額な保険料を、負担に感じる状況は避けましょう。自分にとって本当に必要なものだけを選べばよいので、冷静な判断が必要です。

また、定期的に見直すことで、変化した自分に合った内容や保険料を確認でき、無駄を抑える工夫ができます。上手に保険を利用して、不安の解消に役立てましょう。

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