コラム

2023.12.01

経理担当者の負担を最小化し、無理なくインボイス制度へ対応するポイント

はじめに

2023年(令和5年)10月から始まったインボイス制度への対応には、いろいろと準備すべきことがあります。本記事では制度施行によって業務工数が増える経理担当者の負荷を最小化し、無理なくインボイス制度へ対応できるよう、事前に行う準備や業務負荷を軽減するポイントについて解説します。

インボイス制度とは

インボイス制度(適格請求書等保存方式)とは、消費税の仕入税額控除に関する制度であり、商品やサービス売買の際に扱う請求書の記載や保存方法に関するルールを定めたものです。平たくいえば、従来の「区分記載請求書」に消費税額・適用税率・事業者登録番号の3項目を加えた適格請求書(インボイス)を発行し保存しましょう、という制度になります。制度施行後、仕入税額控除を適用するためには仕入先からインボイスを発行してもらう必要があります。

※2019年(令和元年)10月、消費税の軽減税率が導入されたことにより複数の税率が混在するようになりました。従来の請求書ではどちらの税率で算出されているのかわかりにくく、それを把握しやすくするために適切な請求書を発行する、という形で取り決めされたのがインボイスです。すなわちインボイスは、事業間の取引において売り手が買い手に対し適用税率や消費税率を正しく伝えるための手段、ということになります。

インボイス制度へ対応するための事前準備

インボイス制度へ対応するには、あらかじめ備えておくべきことがあります。以下についてのことがらをしっかり理解しておきましょう。

インボイス発行事業者の登録を行う

インボイス発行事業者(適格請求書発行事業者)の登録を受けるか否かは事業者の任意です。インボイスを発行できる事業者は消費税を納付する義務のある「課税事業者」に限られます。インボイス発行事業者の登録申請に期限はありませんが、登録通知を受けるまでは数週間~数ヶ月を要することもあるため、早めに手続きを進めましょう。
基準期間における課税売上高が1,000万円に満たない事業者は「免税事業者」と呼ばれ、消費税の納税が免除されています。登録は任意のため、登録を受けなければ当然のことながらインボイスを発行できません。ただしこの免税事業者も登録申請手続きを行えばインボイス発行事業者になることは可能です。登録発行手続きを行った免税事業者は課税事業者となります。

※2029年(令和11年)9月までは免税事業者からの仕入れについても一定割合につき税額の控除が可能な経過措置期間が設けられています。しかしインボイスの発行可否は自社だけでなく取引先にも影響を及ぼすため、登録は任意であるといえども社内でしっかり検討が必要です。

取引ごとのインボイス交付の確認(売り手としての準備)

従来の取引で交付している書類の確認を行います。
これまでに交付していた請求書、領収書などの書類は、必要な情報を加えればインボイスとして扱うことができます。電子データ(電子インボイス)での提供や、手書きでの交付も認められています。また必ずしも1点の書類である必要はなく、記載要件を満たし、かつそれぞれの書類の関連性が確認できれば、複数の書類を組み合わせてインボイスとすることも可能です。
各取引において「現在交付している書類にどのような情報を加えればインボイスとして扱うことができるのか」「複数の書類を交付している場合はどの書類にどの要項を加えるのか」といったことを1件ごとに見直しましょう。その際、取引先とで認識を共有しておくことも重要です。

受領するインボイスの管理方法を検討(買い手としての準備)

制度開始後はインボイスの記載要件を満たしていない請求書や領収書では仕入税額控除を受けることができません。また仕入税額控除を行う要件としてインボイスの保存が原則になります。ただし帳簿のみの保存でインボイスは不要となる特例もあるため、自社の仕入れや経費においてインボイスが必要な取引であるかの確認が必要です。

インボイスが不要な例
  • 請求書や領収書が発行されない3万円未満の公共交通機関による旅客の運送費
  • 従業員へ支給する日当や出張旅費
  • 一定規模以下の事業者であり課税が少額(1万円未満)の取引
など

取引先が免税事業者である場合、インボイスの交付はできないため、取引先がインボイス発行事業者として登録する意向があるかを把握しておきましょう。
またインボイスは複数の書類に必要な事項が分けて記載されている場合や、デジタルデータとして保存されているケースもあります。これまで以上に請求書管理は煩雑になるため、受け取るインボイスの管理方法についてルール化しておくことも重要です。

経理業務の負荷を軽減するポイント

インボイス制度への対応については、従来以上に作業工数が増し経理業務の負荷も大きくなります。
そこで本項では、インボイス制度に対応しながら経理業務の負荷を軽減するための効果的なポイントをご紹介します。

インボイスに対応するためのシステム改修を行う

請求書の仕様変更やインボイス発行事業者の特定、チェック項目の増加など、経理業務はこれまでより複雑になります。少しでも負荷を軽減するために自社の業務フローを見直し、現在利用しているシステムをインボイス制度に対応したものに改修しましょう。会計システムはもとより請求書発行システムや受発注システム、販売管理システムなど、経理周りで多くのシステムが影響を受けることになります。
またインボイスを電子データで提供もしくは受領する場合は、電子帳簿保存法にも対応する必要があります。現在利用のシステムを改修するだけでは対応が難しい場合は、新たなシステムの導入やクラウド化も視野にいれましょう。

※電子帳簿保存法…帳簿や書類、納品書や請求書といった、紙で保管が義務付けられている取引書類を電子データで保存することを承認する法律

社内データ管理をデジタル化する

書面のインボイスと電子インボイスでは保存方法が異なります。書面で発行されたインボイスは紙またはデータ、どちらの方法でも保存が可能ですが、データ発行されたものは「電子帳簿保存法」の猶予期間が終わる2024年1月からは電子データとして保存する選択しかありません。紙とデータが共存することで管理もより複雑になり仕訳業務の手間もかかります。
経理周りのシステムをデジタル化しすべてのインボイスをデータとして保存管理ができれば、必要な請求書をすぐに探し出すことができ、また紙コストの削減にも有用です。
各システムをインボイス対応に改修するこの機会に、紙や手作業といったアナログな部分についてもデジタル化を図り、管理負担の軽減のみならず業務効率向上も狙いましょう。

※システムの改修やデジタル化にはコストがかかります。近年はDX推進のために政府が補助金を給付しており、これを活用できる場合があります。対象となる年度や事業者規模、補助額や補助率など具体的な内容をしっかりと確認して利用しましょう。

経理スタッフを増員する

インボイス対応のシステム導入やシステム改修を行い、新たな制度に備えたとしても、従来のやり方とは異なるため当面は細かで煩雑な確認作業が必要になります。加えて新しいシステムに慣れていないといったことから、工数はどうしても増えるでしょう。そのようなことも見越して、経理スタッフの増員も視野にいれましょう。
経理業務のアウトソーシングを利用し専門性をもつスタッフへ請求処理業務を委託すれば、自社のリソースを使うことなく、また別のコア業務に集中することが可能です。

まとめ

2023年10月から始まったインボイス制度への対応には、業務フローの見直しやシステムの改修・入れ替えなどやるべきことが多数あります。制度施行により最も影響を受けるのは経理部門であり、経理担当者にかかる負荷は相当なものでしょう。
少しでも経理担当者の負荷を減らすために、インボイスに対応したシステムの導入や改修、経理業務のデジタル化を図りましょう。また煩雑な請求処理業務をそのまま専門家へアウトソーシングするのも一手です。
セラクグループではインボイスに対応したシステムの導入・改修や社内のデジタル化実現、また経理業務のアウトソーシングまで、さまざまな支援を行っています。インボイス制度への対応に不安やお悩みがございましたらぜひセラクへご相談ください。

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