2025.09.22

企業競争力を高める人事システムのERPリプレイス

企業競争力を高める人事システムのERPリプレイス

はじめに

人事システムは、企業の重要な資源である「ヒト」を支えるための基盤です。このシステムに問題が生じた場合、改修するかリプレイスするかの選択が求められますが、その判断には慎重な検討が必要です。近年は、従業員データの管理を超えて、経営戦略に基づく戦略人事をサポートするシステムが求められています。ERP(Enterprise Resource Planning)はこの戦略人事を効果的に支援する手段の一つとして注目されており、例えば、データの一元管理やプロセスの自動化を通じて、企業の意思決定を迅速化します。今後、企業がデジタルトランスフォーメーションを進める中で、こうしたシステムの重要性はさらに増していくでしょう。本記事では、人事領域におけるERPの概要を紹介し、リプレイスによる具体的なメリットについても解説します。

企業成長を支える人事システムの進化

企業の成長と運営効率化を背景に、人事システムは分散型から統合型ERPへとリプレイスが進んでいます。旧来のシステムが直面した主な問題は何か、その問題をERPはどう解決しているのかを見ていきます。

レガシーシステムの限界と課題

従来の人事システム(レガシーシステム)は、特定の業務に合わせたカスタマイズと高い適用性により、部門ごとのニーズに応じた柔軟な対応と効率向上を実現していました。しかし、企業全体のデータ統合やリソース管理には限界があり、部門間の情報共有や統一的な人事戦略の構築において課題が存在しています。また、技術の進化やビジネス環境の変化に伴い、これらの課題への対応が求められています。

人事領域におけるERPとは

ERPは、もともと「企業資源計画」を意味する経営戦略の概念として登場しましたが、現代では各部門のデータを統合し、組織全体の効率を向上させるための強力なツールと捉えられています。人事領域におけるERP(人事ERP)は、このツールを人事管理に応用したもので、給与計算、勤怠管理、採用、教育研修といった業務を統合することで、企業全体の人材管理をより効率的に行うことを可能にします。例えば、Works Human Intelligence社が提供する人事・給与業務ERPのCOMPANY®は、以下のような機能を備えています

人事・給与業務ERP「COMPANY®」の例

業務 機能
人事管理 個人情報管理、組織管理、発令管理・移動案作成、身上変更ワークフロー、評価ワークフロー、帳票作成など
給与計算 月例給与・賞与計算、計算結果確認、福利厚生、社会保険、年末調整・税計算、退職金・企業年金、会計仕訳・出向費用など
勤怠管理 勤怠ダッシュボード、打刻、勤務予定・シフト作成、勤務実績入力、休暇管理、通知・アラート機能、集計・給与連携など
その他 タレントマネジメント、雇用手続管理、ID管理、マイナンバー管理など

https://www.works-hi.co.jp/productsをもとに作成

ERPへの移行のメリット

ERPの導入には多くの利点があります。データを一元管理することで、迅速かつ正確な意思決定が可能になり、企業の運営効率が向上します。ここでは、ERP移行時の主なメリットについて確認しましょう。

戦略人事が可能に

戦略人事とは、企業の長期的な目標を達成するために必要な人材を確保し、育成して活用することで、組織全体のパフォーマンスを向上させるための戦略的なアプローチです。ERPの導入は、この戦略人事を支援する重要な手段となります。
具体的には、従業員情報を一元管理することで、人材を適切に配置し、リソースを最適化することが可能になります。また、予測分析を行い、人材ニーズを正確に把握することで、効果的な育成計画とパフォーマンス管理を強化することが可能です。これにより、組織全体の生産性が向上します。
さらに、コンプライアンスとリスク管理の強化により組織の健全性が保たれ、従業員のエンゲージメントや満足度も向上します。

コンプライアンス強化

ERPの導入により、企業の人事管理とコンプライアンスが大幅に向上します。このシステムは、従業員データを一元管理し、労働法規や業界規制に基づく管理を自動化します。例えば、給与計算、勤怠管理、社会保険の手続きを正確かつ効率的に行うことで、法令違反のリスク低減が可能です。

ブラックボックス化の防止とセキュリティの強化

人事システムのリプレイスには初期費用や運用コストがかかりますが、旧システムを使い続けるリスクは大きいです。技術者の退職によるシステムのブラックボックス化やセキュリティリスクの増大は、業務に支障をきたす可能性があります。ERPを導入することで、プラットフォームが統合されプロセスが自動化・標準化されるため、システムの保守が容易になります。また、セキュリティ機能が強化されるため、情報漏洩や不正アクセスのリスクを低減可能です。これにより、企業の運営効率が向上し、長期的には持続可能な成長と競争力の維持に貢献します。

人事管理業務の標準化とプロセス効率化

人事ERPは、部門ごとにカスタマイズされたシステムを統合し、標準化されたプロセスを提供することで、人事情報の一貫性を保ち、経営層の意思決定を容易にします。また、組織全体の人事データをリアルタイムで更新し可視化することで、迅速かつ正確な意思決定を支援し、リソースの最適化や人材戦略の効果的な策定を可能にします。さらに、人事ERPは従業員データを集約し、自動化されたワークフローを提供することで、効率的な人事管理を実現し、情報の一元化を容易にするシステムです。これにより、人事領域における業務の質と組織全体のパフォーマンスが向上し、長期的な経営戦略の実現を支援する重要なツールとなっています。

人事ERP導入例

人事システムを一元化することで勤怠管理業務を効率化

A社は、旧勤怠システムの保守切れや工場独自制度と本社制度の調整に課題を抱えていましたが、人事ERPの導入によって勤怠管理を一元化し、打刻データを自動連携することができました。さらに、工場独自制度を整備したことで締めチェックと申請状況の一覧性が向上し、また、給与計算業務をアウトソースすることで、社員の工数も削減されました。これにより、勤怠管理業務の効率化と従業員満足度の向上が実現し、企業の競争力が強化されています。

制度改定やデータ移行作業に伴い標準化を促進

B社は、工場の就業規則への対応と外部システムの保守切れに伴うデータ移行の課題に直面していました。人事ERPへのリプレイスを実施し、規定と運用を確認した上で各種設定資料を作成し、設定と動作検証を行ったうえで標準化を促進するためのマニュアルを作成しました。これにより、就業規則への対応とデータ移行を成功させ、ユーザビリティを向上させました。結果として、業務の効率化と標準化を実現しています。

人事ERPリプレイスのステップ

人事ERPのリプレイスには特有のステップがあります。以下にその主要なステップを順に詳しく説明します。

1.ステークホルダーの巻き込み

人事ERPのリプレイスは企業全体に影響を与えるため、プロジェクトの初期段階から経営層や各部門のステークホルダーを巻き込むことが不可欠です。これにより、システムの受け入れがスムーズになり、プロジェクトの成功率が高まります。定期的な進捗報告やフィードバックセッションを開催し、透明性を保ちながらプロジェクトを進行します。

2.コンプライアンスの確認

人事ERPは労働法や個人情報保護法などに準拠する必要があるため、システムの選定時にはこれらの法律を遵守していることを確認します。特に、複数の自治体や海外に現地法人・支社・支店を持つ企業は、国や地域ごとに異なる法令に対応できる機能を持っているかを確認することが重要です。コンプライアンスチェックリストを作成し、新システムが規制要件を満たしているかを評価するプロセスを設けます。

3.業務プロセスの再設計

リプレイスの目的は、単にシステムを新しくすることだけでなく、業務プロセスの効率化も含まれます。採用、給与計算、評価管理などの既存プロセスを再評価し、システム導入に合わせて最適化することが重要です。これにより、業務の効率を高め、生産性向上を図れます。また、関係者とのワークショップやインタビューを通じて、最適なプロセス設計を行います。

4.データの準備と移行

人事データは個人情報を多く含むため、データ移行時には特にセキュリティとプライバシーの保護が重要です。まず、現行データのクリーニングと標準化を行い、移行先のシステムと整合性を保つようにします。データ移行の計画を詳細に立て、特に機密情報の取り扱いについては厳密なルールを設定します。データの正確性と完全性を確保するために、移行後のデータ検証も必要です。

5.変更管理とユーザトレーニング

リプレイスの成功には、しっかりした変更管理と包括的なユーザトレーニングが不可欠です。新しいシステムの導入に伴い、業務プロセスが変わる可能性があるため、従業員がスムーズに移行できるよう、計画的なトレーニングプログラムを実施します。これにより、スタッフは新しいツールやプロセスに迅速に適応し、組織全体の生産性を維持することが可能です。トレーニング内容は実務に直結するものであり、実践的なシナリオを通じて新しいシステムの使用法を学ぶことが求められます。また、システム導入後もサポート体制を整え、継続的な支援を提供することで、トラブルシューティングや追加の学習機会を提供します。

これらのステップを考慮することで、人事ERPのリプレイスを成功に導き、業務の効率化と組織の成長を実現します。

リプレイス時の注意点

ERPへのリプレイスは企業全体に影響を及ぼす大規模なプロジェクトです。成功させるためには、以下の点に注意する必要があります。

組織のニーズとERPの適合性の評価

ERPを導入する際は、組織の具体的なニーズを明確にし、それがERPとどの程度適合するかを評価することが重要です。採用、給与、評価管理などの人事機能が現行の業務プロセスとどう連携できるかを慎重に検討し、適切な機能を選定することで、効率的な人事運用が可能になります。

カスタマイズと標準化のバランス

ERP導入時には、カスタマイズと標準化のバランスを慎重に考える必要があります。過度なカスタマイズは将来のシステム更新やメンテナンスを困難にし、コスト増加を招く可能性があります。業務プロセスをERPの標準機能に合わせることで、システムの安定性と持続可能性を確保し、長期的な運用コストの削減につなぐことが可能です。

データの整合性とセキュリティ

人事データは機密性が高いため、ERPへの移行に際してはデータの整合性とセキュリティを厳密に管理することが重要です。データ移行のプロセスでは、データの正確性を保つための検証を行い、個人情報保護法などの法規制を遵守するための対策を講じます。特に、データ漏洩を防ぐためのセキュリティ対策を強化することが求められます。

これらの注意点を踏まえた計画的なアプローチにより、ERPリプレイスを成功に導き、企業の運営効率と競争力を高めることが可能です。

まとめ

本記事では、人事システムリプレイスの経営戦略における重要性を探りました。人事システムのリプレイスは単なる技術的改善ではなく、経営層の意思決定を支援し、従業員の能力を引き出すための教育と配置を最適化します。この全社的なプロジェクトは、効率的な人事・労務業務を通じて企業成長を加速します。
人事・労務業務の効率化は、多くの企業にとって重要な課題です。セラクでは、クラウド型ERPであるCOMPANY®の導入から定着まで全面的にサポートし、人事・労務の業務改善を目指す企業を強力に支援します。COMPANY®は人事・労務業務に特化しており、スムーズな移行と効果的な運用を通じて、企業の持続可能な成長を促進します。導入に際してご不明点やお悩みがあれば、ぜひセラクにお問い合わせください。

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