はじめに
昨今の人事システム導入の現場では、導入自体の成功に加え、いかに運用を安定させるかが大きな課題となっています。特に人事システムの運用においては、担当者固有の知識や経験に頼る部分が多く、属人化が発生しやすいという特徴があります。企業にとっては業務の安定性や継続性の観点からこれは大きな課題であり、これをいかに解消し標準化を進めるかが重要なテーマとなっています。私たちはこれまでシステム導入にとどまらず、属人化の解消と活用の標準化を目指した支援に注力してきました。本記事では、属人化解消のために、実際に当社が支援した事例および取り組みのポイントについて解説します。
支援事例紹介
ここではCOMPANY®の支援事例について、フェーズごとに解説します。
お客様の運用状況の把握と業務理解
プロジェクトの初期段階でお客様の現状の運用体制や業務フロー、担当者の役割分担などの詳細をヒアリングします。この段階では、設定変更や日常的な運用に関する手順の共有状況や、トラブル発生時の対応フローなど、現場の実態を正確に理解することを重視しました。こうした情報を踏まえ、COMPANY®の機能を最大限に活用できる運用設計や、ドキュメント作成の支援方針を検討します。機能についてのマニュアル作成ではなく、現場の実情に即した標準的な運用フローの策定につなげることを目的としました。
標準化を意識した設計・設定の提案
COMPANY®の導入にあたっては、導入後の年次・月次業務が属人的になりすぎないよう、標準的かつ再現性の高い設計を心掛けています。たとえば、COMPANY®で基盤となる人事・組織・給与などのマスタ情報やコード体系の設計においては将来的なメンテナンス性を見据えた設計方針をご提案します。ルールに基づいたコード体系や分類設定によって、導入後の設定ミスや管理の煩雑さを未然に防ぐことが可能です。また、設定方法の統一化はもちろん、設定変更時のチェックポイントを明確化することで、担当者ごとの運用差異を減らし、誰でも一定レベルの対応ができる環境を構築します。加えて、設定変更履歴や運用ルールのドキュメント化も推進し、ナレッジの蓄積と共有を促します。
運用支援と検証フェーズの連携強化
設定内容や運用フローの検証においては、実際の業務シナリオをもとにしたテストを重視しました。設計段階で見落とされがちな運用上の課題を早期に発見し、適宜改善策を講じます。また、検証結果や現場のフィードバックを踏まえた調整を行うことで、実際の運用開始後もスムーズに業務が進む体制を整えています。
運用マニュアル・業務フローの作成支援
組織改編や人事異動など、年次や月次の運用で発生する対応において、業務フローや運用マニュアル作成の支援を行います。COMPANY®の仕様とお客様の運用体制の両方の観点からお客様が作成されたドキュメントの確認・補記などを行うことで、現場担当者が「何を見てどう動けばよいか」がすぐに分かるドキュメントとなり、教育・引き継ぎの効率化が可能となりました。
導入後の保守支援
保守対応を行うだけでなく、担当者ごとのノウハウや経験に頼らず、誰もが一定の品質で運用できる体制の構築に注力しています。知識や情報の共有がスムーズに行える環境づくりも重視し、担当者の交代や異動があっても業務が滞らない仕組みを整えました。導入後の保守を自社内で担当される企業の場合には運用マニュアルやトラブル対応フローの整備を通じて、特定の担当者に依存しない体制づくりを支援します。保守体制の多様性にかかわらず、属人化を防ぐための業務標準化やドキュメント整備を導入支援の段階から重視し、長期にわたる安定運用の基盤づくりに取り組んでいます。
効果・実績
COMPANY®の導入支援を実施したことで、どのような効果や実績を得たかを解説します。
担当者による運用のばらつきが軽減
運用マニュアルや業務フローの整備により、誰が担当しても同じ手順で確実に対応できる体制が整ったことで、担当者ごとに異なっていた作業内容や設定手順の差異が大幅に減少し、業務のばらつきが解消されています。
属人化による引き継ぎの混乱が解消
これまで担当者の異動時に引き継ぎが属人的に行われており、引き継がれなかった情報が後のトラブル原因となっていた企業では、フロー図やナレッジのドキュメント化により、情報の抜け漏れ防止が可能となりました。また、「業務フローを可視化したことで引き継ぎだけでなく、現場の理解の底上げにもつながった」とのお声もいただきました。
属人化によるブラックボックス化が解消
一部の設定やトラブル対応方法について、過去の経緯や対応方法が記録されておらず、当時の担当者がいない場合になぜこうなっているのか分からない」という状況が多くありました。COMPANY®の設定内容や変更履歴をドキュメント化したことで、過去の判断を再利用でき、設定変更や見直しのたびに一から検討する手間が解消されています。
窓口対応の一極集中が緩和
以前はシステムに詳しい一部の担当者に問い合わせが集中し、「担当者が不在の際は対応ができない」という状況だったお客様でも、対応手順をドキュメント化・共有化したことで、他のメンバーでも一定の対応が可能になりました。業務の属人性が緩和されたことにより、システム担当者の負担も軽減されます。
システム活用の広がりと応用力の向上
フロー整備や業務理解の深化が進んだことで、COMPANY®の活用範囲が「設定されたことを使うだけ」から、「新たな活用方法を現場から提案する」段階に変化しました。人事部門がシステムに対してより主体的に関わるようになり、制度改定時の対応力や柔軟性も向上しています。
まとめ
人事システムの導入は「システムを使えるようにすること」がゴールではなく、導入後の現場でいかに業務がスムーズに流れ、ミスなく運用され続けるかという「継続性と実効性」です。そのためには属人化を解消し、標準化された運用を確立することが不可欠です。設定のルール化や業務フローの明文化の徹底を通じて、担当者の経験に依存しない安定的な体制を築くことができます。また、属人化の解消のためには専門家による支援を活用することが有効的です。当社はCOMPANY®の導入・定着サポートから、データ活用による業務効率化など、お客様のごとの課題やニーズに応じた柔軟なソリューションをご提供しております。人事システム導入後の運用方法や属人化解消などのお悩みがある場合は、ぜひご相談ください。







