2025.09.22

情シス担当者必見!エンドポイント保護の基礎と具体策

情シス担当者必見!エンドポイント保護の基礎と具体策

はじめに

企業におけるサイバーセキュリティの重要性が高まる中、注目されているのが「エンドポイント保護」です。エンドポイント保護は、デバイスやユーザから発生するセキュリティリスクを最小限に抑え、企業の抱える情報資産の安全性を確保するための基盤となるものです。本記事では、エンドポイント保護の基礎と具体策について解説し、情報システム担当者が押さえておくべきポイントを明らかにします。

エンドポイント保護とは

エンドポイント保護が注目される理由の一つは、現代のビジネス環境におけるデバイスの多様性とそれに伴うセキュリティリスクの増大にあります。以下より、エンドポイント保護の基礎について詳しく解説していきます。

エンドポイント保護の基本的な定義

エンドポイント保護とは、企業のネットワークに接続される全ての端末、すなわち「エンドポイント」を対象に、セキュリティを確保するための仕組みや技術を指します。エンドポイントには、デスクトップPCやノートPC、スマートフォン・IoTデバイスなどが含まれ、それぞれがサイバー攻撃の入り口となる可能性があります。端末が攻撃を受けると、データ漏洩やシステム停止といった深刻な被害につながる恐れがあります。そのため、エンドポイント保護は、端末ごとのセキュリティを強化し、侵入経路を遮断する役割を担います。
具体的には、マルウェアやランサムウェアといった悪意のあるソフトウェアの侵入を防ぐためのウイルス対策ソフトが挙げられます。また、デバイスに保存されているデータを保護するための暗号化技術や、ユーザ認証を強化するための多要素認証(MFA)の導入も重要な要素です。さらに、端末の利用状況をリアルタイムで監視し、異常な挙動を検知した際に迅速に対応する仕組みも含まれます。これらの対策を組み合わせることで、企業全体のセキュリティ体制を強化し、サイバー攻撃のリスクを大幅に低減させることが可能になります。

エンドポイント保護の必要性

企業のITシステムが日々進化する一方で、セキュリティリスクも急速に増大しています。特に、従業員が使用する端末やデバイスが企業ネットワークに接続されることで、新たな脆弱性が生まれ、攻撃の対象となる可能性が高まっています。エンドポイントは、企業のITインフラにおける「玄関口」のような役割を担い、ここを守ることができなければ、外部からの攻撃を防ぐことは困難です。エンドポイント保護は、単なるセキュリティ対策の一部ではなく、全体的な防御戦略の中核を担うものとして位置付けられるものと言えるでしょう。

増加するサイバー攻撃の現状

サイバー攻撃の手法は年々巧妙化しており、従来のセキュリティ対策だけでは対応しきれないケースも増加しています。警察庁が発表した「令和6年におけるサイバー空間をめぐる脅威の情勢等について 」によると、ランサムウェアによる攻撃はここ数年高い水準で推移しており、令和6年では国内で222件に及びます。この種の攻撃は特にエンドポイントを狙うことが多く、社員のPCやスマートフォンが感染することで、企業全体のネットワークが脅威にさらされる事態を招きます。さらにフィッシング攻撃も依然として広く行われており、巧妙なメールやリンクによって従業員から情報を盗み取るケースが頻発しています。
こうした攻撃は、リモートワークの普及によって一層深刻化しています。従業員が自宅や外部のネットワークから企業のシステムにアクセスすることで、セキュリティの脆弱性が拡大し、攻撃者にとって格好のターゲットとなるのです。

エンドポイント保護の欠如によるリスク

エンドポイント保護が適切に実施されていない場合、企業はさまざまなリスクにさらされることになります。これらは単なる技術的な問題に留まらず、企業の経済的な損失や信用の失墜、さらには法的な責任にまで及ぶ可能性があります。情報システム担当者として、潜在的なリスクを理解し、対応する体制を整えることが求められます。

データ漏洩による信用の失墜

エンドポイント保護が欠如している場合、外部からの不正アクセスやマルウェア感染を通じて、顧客情報や機密データが流出する危険性が高まります。その影響は単なる技術的な問題を超え、企業ブランド全体に甚大なダメージを与えることになります。
また、昨今のデータ漏洩事件においては、SNSやニュースメディアを通じて情報が瞬時に拡散されるため、問題が公になった場合の社会的な批判も避けられません。信用の失墜は、企業のイメージに長期的な悪影響を及ぼし、回復には膨大な時間とコストがかかることが一般的です。エンドポイント保護を適切に実施することは、このようなリスクを回避するための第一歩と言えるでしょう。

業務停止による経済的損失

エンドポイント保護の欠如によるリスクのひとつに、サイバー攻撃によって企業の業務が停止する可能性があります。例えば、ランサムウェアによる攻撃では、企業の重要なデータが暗号化され、アクセス不能になるケースが頻発しています。このような状況に陥ると、復旧作業にかかる時間やコストが膨大になるだけでなく、業務停止中の売上損失も発生します。特に、大規模な企業では業務停止が全体の事業活動に与える影響が大きく、1日あたりの損失額が数千万円から億単位に達することも珍しくありません。
さらに、業務停止に伴い、取引先や顧客に対する納品やサービス提供が滞ることで、契約違反や損害賠償請求につながる可能性もあります。これらの経済的損失は、企業の財務状況を深刻に悪化させる要因となり得ます。

法的なリスクとコンプライアンス対応

エンドポイント保護が不十分であることは、企業に法的なリスクをもたらす場合があります。データ漏洩やセキュリティインシデントが発生した際、企業は各国のデータ保護法や業界規制に違反することになる可能性があります。例えば個人情報保護法では、データ漏洩が発生した場合に厳格な報告義務や罰則が定められています。違反が認められると、罰金や行政処分が科されるだけでなく、訴訟による損害賠償請求に発展することもあります。
また、コンプライアンス対応の欠如は、企業の取引先や顧客との信頼関係を損なう要因となります。多くの企業が契約条件としてセキュリティ基準の遵守を求める中で、エンドポイント保護が不十分な企業は、契約締結やビジネス拡大の機会を失う可能性も考えられます。

エンドポイント保護の具体的な方法

単一の技術やソリューションでは、複雑化するサイバー攻撃に十分に対応することは難しく、デバイス・アクセス管理・ネットワークといった複数の階層でセキュリティを構築することが求められます。ここでは、エンドポイント保護を実現するための具体的な方法について詳しく解説します。

デバイスセキュリティの強化

エンドポイント保護の第一歩は、企業内外で使用される全てのデバイスのセキュリティを強化することです。従業員が利用するPCやスマートフォン、タブレットなどの端末だけでなく、IoTデバイスやプリンタなども対象となります。これらのデバイスが攻撃の入り口となる可能性があるため、適切な対策を施すことが不可欠です。
デバイスセキュリティを強化するためには、まずウイルス対策ソフトウェアを導入し、マルウェアやランサムウェアといった脅威を検知・排除する体制を構築する必要があります。また、端末に保存されるデータを暗号化することで、万が一不正アクセスを受けた場合でもデータが盗まれるリスクを軽減できます。さらに、端末のOSやソフトウェアを常に最新の状態に保つことも重要です。

アクセス管理の重要性とその実装方法

エンドポイント保護において、アクセス管理は重要な役割を果たします。企業のネットワークやデータにアクセスできるユーザやデバイスを制御することで、未承認の接続を防ぎ、セキュリティを強化することが可能です。アクセス管理が不十分である場合、悪意ある攻撃者が容易に侵入し、重要な情報を盗み出す恐れがあります。
アクセス管理を実現するための具体的な方法として、まず多要素認証(MFA)の導入が挙げられます。多要素認証を利用することで、ユーザは複数の認証要素を提供する必要があり、不正なログインのリスクを大幅に低減できます。また、役割に応じた権限管理も重要です。従業員が業務に必要な範囲でのみデータやシステムにアクセスできるようにすることで、過剰な権限が生じるリスクを防ぎます。
さらに、ゼロトラストモデルを採用することで、アクセス管理を一層強化することができます。ゼロトラストは「誰も信頼しない」という前提に基づいており、ネットワーク内外の全てのアクセスを厳格に検証する仕組みです。このアプローチを導入することで、攻撃者がネットワーク内部に侵入した場合でも、影響を最小限に抑えることが可能になります。

ネットワークセキュリティとの連携

エンドポイント単体の保護では、ネットワークを介した攻撃や侵入を完全に防ぐことは難しいため、ネットワーク全体を監視・防御する仕組みを構築することが重要です。
ネットワークセキュリティとの連携の一例として、EDR(Endpoint Detection and Response)があります。EDRは、エンドポイントの挙動をリアルタイムで監視し、不審な動きを検知した場合に迅速に対応する仕組みです。これにより、攻撃が進行中の段階で阻止することが可能になります。また、ネットワーク全体を監視するセキュリティ情報とイベント管理(SIEM)ツールを導入することで、エンドポイントやネットワークのセキュリティ状況を一元管理することができます。
さらに、企業ネットワークへの接続を制御するために、仮想プライベートネットワーク(VPN)やセキュアウェブゲートウェイ(SWG)を活用することも有効です。エンドポイントからの通信を暗号化することにより、外部の脅威から保護することができます。

エンドポイント保護導入のステップ

エンドポイント保護を適切に行うためには、計画的かつ段階的なアプローチが求められます。単にセキュリティソリューションを導入するだけでは、効果的な保護を実現することは難しく、企業全体のセキュリティ体制を包括的に見直し、段階を踏んで実行する必要があります。以下では、エンドポイント保護導入の具体的なステップを説明します。

<画像:エンドポイント保護導入の手順>

現状の把握と要件定義

エンドポイント保護の導入を成功させるには、まず企業内の現状を正確に把握することが不可欠です。現在使用されている端末の種類や数、ネットワーク環境、従業員の働き方などを調査し、セキュリティリスクを洗い出します。例えば、リモートワークを行う従業員が多い場合、外部ネットワークへの接続が増加するため、これに対応するセキュリティ対策が必要となります。また、IoTデバイスやクラウドサービスを利用している場合、それらの特有の脆弱性に対処する方法も検討しなければなりません。
評価のプロセスでは、まず各エンドポイントのセキュリティ状況を確認します。具体的には、ウイルス対策ソフトの導入状況、OSやソフトウェアの更新状態、暗号化の有無などを調査します。同時に、従業員がどのようにデバイスを使用しているかを確認し、不適切な利用がセキュリティリスクを生んでいないかを検証します。
また、過去のセキュリティインシデントの履歴を分析することも有益です。どのような攻撃が発生したか、どのエンドポイントが影響を受けたかを把握することで、リスクを予測し、優先的に対策を講じるべき箇所を特定できます。
現状を把握した後は、具体的なセキュリティ要件を定義します。企業の規模や業種、法的な規制に応じて、どのような保護が必要かを明確にすることが重要です。例えば、医療業界では患者データの保護が最優先事項であり、金融業界では取引データの安全性が重視されます。また、GDPRや日本の個人情報保護法といった規制を遵守する必要がある場合、それに対応したセキュリティ要件を含めることが求められます。

導入計画と環境準備

次に、具体的な導入計画を策定し、環境を整備します。このステップでは、選定したソリューションをどのように展開するかを計画するとともに、必要なリソースを確保します。導入計画では、まず対象となるデバイスやネットワークを特定し、保護すべき範囲を明確にします。例えば、全社的に使用されるPCやスマートフォンだけでなく、外部パートナーが使用するデバイスも保護対象に含める場合があります。
環境準備では、導入するソリューションが適切に動作するようにインフラを整備します。これには、ネットワークの構成変更やソフトウェアのインストール、必要なハードウェアの設置が含まれることがあります。
そのあとに取り組むべきは社内セキュリティポリシーの整備です。企業内で統一されたセキュリティ基準を定め、従業員がそれに従うことで、エンドポイントを含む組織全体のセキュリティを向上させるための指針となります。ポリシーが明確に定められていない場合、個々の従業員が独自の判断でデバイスを使用し、セキュリティリスクを引き起こす可能性があります。
セキュリティポリシーを整備する際には、まず組織のセキュリティ目標を明確にします。例えば、「データ漏洩ゼロを目指す」や「外部からの侵入を完全に防ぐ」といった具体的な目標を設定し、それに基づいてルールを作成します。ポリシーには、エンドポイントの利用方法やセキュリティ対策の実施義務、定期的なセキュリティ研修の実施などを盛り込むことが一般的です。

運用監視と最適化

エンドポイント保護の導入が完了した後も、そこで終わりではありません。サイバーセキュリティの脅威は日々進化しており、導入したセキュリティ対策を定期的に監視し、必要に応じて最適化することが求められます。運用監視では、エンドポイントの状態をリアルタイムで追跡し、不審な挙動やセキュリティインシデントを早期に発見できる仕組みを構築します。その際は、エンドポイント検出と対応(EDR)やセキュリティ情報とイベント管理(SIEM)といったツールを活用することが一般的です。
監視の結果に基づき、定期的にセキュリティポリシーを見直すことも重要です。例えば、新たな脆弱性が発見された場合には、それに対応する更新を迅速に適用します。また、従業員が新しいデバイスを利用し始めた場合や、業務形態が変化した場合には、セキュリティ設定を調整する必要があります。そして、ポリシーは全従業員に共有され、理解されている必要があります。そのためには分かりやすい言葉で記述し、必要に応じてトレーニングやワークショップを開催して従業員の意識を向上させることが重要です。
さらに、運用監視のデータを分析し、セキュリティ対策の効果を評価することも重要です。例えば、どのような種類の攻撃が最も頻繁に発生しているのかを把握することで、今後の対策をより効果的に構築することが可能になります。こうした最適化のプロセスを継続的に行うことで、企業のセキュリティ体制は強化され、サイバー攻撃への耐性が向上します。

マネージドサービスの活用

エンドポイント保護を確立する上で、マネージドサービスを活用することは有効な選択肢のひとつです。マネージドサービスとは、専門のセキュリティプロバイダが提供する外部委託型のセキュリティ管理サービスであり、企業のIT環境におけるセキュリティ運用を支援します。特に、情報システム担当者が限られたリソースで多岐にわたる業務をこなさなければならない場合、マネージドサービスを導入することで、セキュリティ体制を効率的かつ効果的に強化することが可能です。

マネージドサービスを利用するメリット

マネージドサービスを利用する最大のメリットは、専門知識を持つプロバイダがセキュリティ運用を代行してくれる点にあります。例えば、エンドポイントの監視や脅威の検知、インシデント対応などをプロバイダが担うことで、迅速かつ適切な対応が可能になります。
さらに、マネージドサービスでは最新のセキュリティ技術や知識を活用できる点も魅力です。サイバー攻撃の手法は日々進化しており、対応するためには常に最新の情報を取り入れる必要があります。プロバイダはこうした情報を専門的に収集・分析しており、企業に代わって最新の防御策を導入することができます。
また、マネージドサービスは拡張性の観点でも優れています。企業が成長し、ネットワークやエンドポイントの数が増加した場合でも、プロバイダは柔軟にサービスを拡張し、変化するニーズに対応することが可能です。このような柔軟性は、特にリモートワークが増加している環境で大きな利点となります。

まとめ

エンドポイント保護は、現代の企業において不可欠なセキュリティ対策であり、優先的に取り組むべき課題です。サイバー攻撃の手法がますます巧妙化する中で、企業においては多層的な防御体制を構築することが求められています。さらに、導入プロセスでは現状の評価やポリシー整備を行い、計画的に対策を進めることが重要です。そして、セキュリティ環境は一度構築して終わりではなく、常に進化する脅威に対応するために継続的な見直しが必要です。情報システム担当者として、エンドポイント保護を企業全体の防御戦略の中核に位置付け、安心して業務を遂行できる環境を提供することが求められます。
セラクでは、マネージドサービスを活用したエンドポイント保護の支援を行っています。専門的な知識を活かし、企業のセキュリティ体制を強化するための最適なソリューションを提供いたしますので、ぜひお気軽にご相談ください。

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