2026.05.29

【属人化×人事システム】なぜ導入後にブラックボックス化するのか?標準化を阻む壁と対策

【属人化×人事システム】なぜ導入後にブラックボックス化するのか?標準化を阻む壁と対策

はじめに

「毎月の給与締めや法改正のたびに、この複雑な処理を正確に回せるのは自分しかいないのではないか」と、密かに不安を抱えていないでしょうか。属人化を解消するために新しい人事システムの導入を検討しても、結局は「設定方法がブラックボックス化するだけではないか」と躊躇する声は決して珍しくありません。
このまま今のやり方を続ければ、特定の人材への依存は深まる一方ですが、実は「システムに合わせて業務ルールを標準化する」という決断を下すことで、この状況は改善できます。
もちろん、「ウチの会社には特殊な手当や複雑な勤務シフトがあるから、標準化など現場が納得するはずがない」という反発が起きることは容易に想像できるでしょう。しかし、心配には及びません。すべての例外をなくすのではなく、イレギュラーを管理する「課題管理表」や、背景事情を残す「生きたマニュアル」の運用を組み合わせるだけで、属人化のリスクを大幅に抑え込めます。
属人化の本当の原因がシステムにあるのか、それとも現場の運用ルールにあるのか、この点を正しく見極めることが、結果を大きく左右します。まずは、多くの企業が陥りがちな失敗の構造から確認してみましょう。

なぜ人事システムを導入しても「属人化」は終わらないのか

新しい人事システムを導入すれば、自動的に業務が標準化され、誰でも同じように作業ができると期待されやすいです。しかし現実のプロジェクトでは、システムを導入した直後から新たな属人化が始まっているケースが後を絶ちません。それはなぜでしょうか。

システム導入が生み出す「新たなブラックボックス」

パッケージシステムは、あらかじめ用意された標準機能を使って業務を回すことが前提となっています。しかし、長年培われてきた自社特有のルールや「謎の手当」を無理にシステム上で再現しようとすると、非常に複雑なパラメータ設定が必要です。
たとえば、ある特定の工場でしか発生しない「見習い夜勤手当」を計算するため、標準機能の裏側で複数の条件分岐を組み合わせた設定を組んだとします。業務自体はシステム上で動くようになりますが、「なぜこの設定値になっているのか」「どこを修正すれば全体に影響が出ないのか」を理解しているのは、導入を担当した特定の人物だけという状況に陥ります。紙やExcelの属人化が、システム設定のブラックボックス化に置き換わったわけです。

退職時に発覚する「例外処理の口伝」と形骸化したマニュアル

さらに深刻な問題が露呈するのは、その特定の担当者が異動や退職を迎えたタイミングです。通常の業務マニュアルには「どの画面を開いて、どのボタンを押すか」という表面的な操作手順しか記載されていません。
本当に重要な「なぜこの順番で処理するのか」「この顧客や店舗でイレギュラーが起きた場合、どう回避するのか」といった背景知識は、マニュアルには残らず口伝で引き継がれる傾向があります。結果として、後任者は表面的な作業をなぞるだけで精一杯となり、少しでも想定外のエラーが起きると対処できません。知識が断絶し、再び「今の担当者しか分からない」という新たな属人化のサイクルが始まってしまうのです。

属人化を悪化させる「現場の反発」と「独自の回避策」

システム導入が属人化を解消するどころか、むしろ状況を悪化させてしまう背景には、多くの場合「人間関係と運用ルール」の衝突が存在します。システムに業務を合わせるのではなく、既存のやり方にシステムを従わせようとする力が働いたとき、運用はたちまち破綻の危機に瀕します。

「ウチの業務は特殊だから」が生むツギハギの運用

新しいシステムを導入しようとすると、現場のベテラン担当者から「ウチの会社は特殊な計算をしているから、このシステムでは対応できない」「長年のやり方を変えるとミスが起きる」という強い抵抗を受けるケースは少なくありません。
この抵抗を押し切れないまま、現場の要望をすべて取り入れようとするとどうなるでしょうか。本来は不要なはずのカスタマイズが大量に追加され、システムは原型を留めないほどツギハギだらけになります。たとえば、標準機能で一括処理できるはずの給与計算で、部署ごとの例外ルールを無理に組み込むようなケースです。この影響で、システム全体の整合性が失われ、導入した本人たちすら全容を把握できない巨大なブラックボックスが完成してしまうわけです。

システムの制約を「現場の工夫」で乗り切る危険性

一方で、カスタマイズを行わずに標準機能のまま導入した場合でも、別の問題が発生することがあります。それは、システム仕様上の制約を、現場が独自の「手作業」でカバーしようとする事態です。
たとえば、システムでは管理しきれないイレギュラーな評価データがあったとします。その際、担当者が「システムからデータを一度CSVで出力し、Excelのマクロで計算してから再度システムに取り込む」といった独自のフローを作り上げてしまうことがあります。現場での地道な数値確認や試行錯誤は評価されるべき側面もありますが、実務上はこうした「個人の工夫」こそが属人化の温床です。後任者は、システムだけでなく複雑なExcelマクロの保守まで引き受けることになり、引き継ぎのハードルは極めて高くなります。

属人化のループを断ち切る「自走の仕組み」の作り方

では、この根深い属人化のループから抜け出すためにはどうすればよいのでしょうか。完全にゼロにすることは難しくても、影響を最小限に抑え込み、再発を防止する仕組みは作れます。

痛みを伴う「Fit to Standard(業務の標準化)」の決断

最初に着手すべきは、業務をシステムの標準機能に合わせる「Fit to Standard」の徹底です。これは単にシステムの設定だけの問題ではなく、経営陣を巻き込んだ運用ルールの見直しを意味します。
たとえば、各部門でバラバラに設定されていた手当の計算方法を、全社で統一されたシンプルな基準に改めるような決断が必要です。現場からの反発は避けられませんが、「なぜこのルールでなければならないのか」を論理的に説明し、特例を許さない方針を貫くことが重要です。例外を減らすことこそが、最も確実で効果的な属人化への対策だと言えるでしょう。

「課題管理表」による未整理事項の可視化

標準化を進めても、どうしてもカバーしきれない例外業務は残ります。この例外を放置しないために有効なのが、「課題管理表」の導入です。
課題管理表とは、誰がどのようなイレギュラー対応を抱えているのか、現在どの運用が未整理なのかを一覧化したものです。たとえば、「A支店だけ給与締め日が異なる問題」が個人の中で処理されているなら、それを表に書き出し、チーム全体の課題として共有します。

課題管理表の例

<課題管理表の例>

こうして未解決の論点を可視化しておくことで、担当者が不在になっても「どこに間違いやすいポイントがあるか」を他のメンバーが把握でき、影響の拡大を防げます。

背景まで記載する「生きたマニュアル」と暗黙知の還元

最後に欠かせないのが、実務に即した「生きたマニュアル」の運用です。画面の操作手順を並べただけの資料では、イレギュラーな事態に対応できません。
マニュアルには、「なぜこのタイミングで処理を行うのか」「エラーが出た場合は、過去にどのような原因があったのか」といった判断の背景まで記載する必要があります。
加えて、定期的な勉強会を実施し、担当者が口伝で済ませていた顧客ごとの運用の癖を言語化することも効果的です。個人の頭の中にあった暗黙知を、チーム全体の共通認識へと還元する場を設けることが、自走する企業を作る第一歩となります。

まとめ

属人化という問題は、システムを導入しただけで自動的に消え去るものではありません。実務において例外が完全にゼロになることはなく、人が介在する以上、属人化のリスクは常に存在し続けます。
しかし、システムの制約を理解した上で「Fit to Standard」を断行し、課題管理表や生きたマニュアルを活用すれば、その影響を最小限に抑え込む仕組みは必ず構築できます。現場の反発を乗り越え、複雑な運用ルールを整理する過程は容易ではありませんが、この壁を越えた先には、担当者の退職に怯えることのない安定した基盤が待っています。
もし、自社だけで推進することに限界を感じているのであれば、知見を持ったプロフェッショナルの伴走を利用することも一つの有効な選択肢です。
私たちセラクは、大手企業向け統合人事システム『COMPANY®』の導入から定着、属人化を解消する標準化支援までをワンストップで伴走しています。まずは現状の課題を洗い出し、できるところから可視化の一歩を踏み出してみてはいかがでしょうか。

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