はじめに
人事システムCOMPANY®の導入時に、「新しいシステムとAPI連携すれば、バラバラのデータが自動でつながり、毎月のExcel集計作業から解放される」とベンダーから聞いて期待していた方も多いかもしれません。
しかし、いざ要件定義が始まると「その要件は標準仕様では対応できない」と遅れて発覚し、現場から「話が違う」と反発を受けて板挟みになっているケースをよく耳にします。
こうした手戻りや現場との摩擦は、プログラム開発に入る前の段階で「システム仕様の正しい共有」と、地道な「データマッピング(業務のすり合わせ)」を徹底することで防止できます。
とはいえ、「長年継ぎ足してきた自社の複雑な手当や独自ルールを標準機能に合わせるなんて、現場の猛反発が起きて到底ムリだ」と感じるかもしれません。
ご安心ください。最初からすべての業務を完璧に連携させる必要はありません。影響の少ないコアな領域から「小さく始める」アプローチをとることで、現場の混乱を抑えながら確実に対応を進められます。
この現実的な進め方を知っているかどうかで、数年がかりのシステム移行プロジェクトの成否が大きく変わるはずです。まずは、実務の現場でどのようなすり合わせが必要になるのか、具体的なプロセスを確認してみましょう。
人事システム連携の最大のボトルネックは「プログラム開発」ではない
システム連携と聞くと、複雑なプログラムを書く開発工程に最も時間がかかると想像するかもしれません。しかし実務において、私たちのような導入支援会社が一番時間を取られるのはプログラミングではありません。連携プロジェクトが難航する本当の理由は、対象となるシステム仕様の誤解と、関係部門との業務ルールのすり合わせにあります。ここでは、プロジェクト初期に発生しやすい認識のズレについて解説します。
「APIなら簡単にリアルタイム連携できる」という大きな誤解
まずは「APIなら簡単にリアルタイム連携できる」という誤解を解いていきましょう。COMPANY®の導入期においては、APIを用いたリアルタイム連携の可否や運用の詳細については、製品特性に合わせた事前の要件定義を丁寧に行うことが、プロジェクトを円滑に進めるポイントとなります。
一般的なWebサービスでは、キーバリュー型のJSONデータを用いたリアルタイム通信が主流です。
しかし、COMPANY®のAPIは基本的にはシステム内部で動いているバッチ処理を外部から起動するための仕組みであり、支援会社が対応するのは「APIを実行するためのプログラム作成」がメインとなります。
このシステム連携の特徴を関係者が理解していないと、要件定義の段階で「リアルタイム連携」という前提が崩壊します。その結果、業務チームはリアルタイム連携ができない前提での業務フローを急遽考え直さなければなりません。
実装よりも時間を奪う「データマッピング」の壁
APIを外部から起動するプログラムの作成自体は、サンプルコードやAIの活用によって、以前に比べて格段に容易になりました。技術的な実装よりもはるかにリソースを要するのが、「データ項目のマッピング」と呼ばれる作業です。
たとえば、人事システム側にある「法人コード」や「役職ランク」「雇用形態」といったデータを、給与や勤怠など別のシステムでどのように変換して受け渡すかを一つひとつ定義しなければなりません。この作業には、自社の複雑な就業規則や独自の手当に関する深い業務理解が求められます。
業務知識が特定の担当者に属人化している場合、システム開発側との認識を合わせるための確認作業に膨大な時間がかかります。プログラムを書くことではなく、人間同士の調整こそが最大のハードルです。
手戻りを防ぎ、連携を確実に成功させるための3ステップ
COMPANY®とのシステム連携において技術的な制約が存在することは避けられませんが、それを理解した上で正しくプロジェクトを進めれば、導入後の手戻りや現場の混乱を最小限に抑えられます。ここでは、関係部門との調整をスムーズに進め、連携プロジェクトを確実に成功へと導くための具体的な3つのステップを解説します。
ステップ1:関係者全員での「仕様の事前共有」がトラブルを防ぐ
連携プロジェクトにおける最大のリスクは、社内外の担当者間で「システムでできること・できないこと」の認識がずれている点です。これを防ぐためには、システム導入を推進するIT・情報システム部門だけでなく、実際にシステムを利用する人事や現場の業務部門を含めた関係者全員が、対象となるシステムの仕様を正しく理解しておく必要があります。
COMPANY®であれば、「APIはリアルタイム通信ではなくバッチ処理によるファイル連携である」という前提をプロジェクトの初期段階で共有することが重要です。営業担当者からの提案をもとに現場の新しい業務フローを策定する前に、ベンダーから提供された仕様を関係部署へ共有することで、要件定義段階での「こんなはずじゃなかった」という期待値のズレや手戻りを劇的に減らせます。
ステップ2:大規模なエラーを回避する「小さく始める」スモールスタート
システム連携の規模が大きくなればなるほど、データの不整合やエラーの発生率、そして関係者間での調整事項は指数関数的に増加します。そのため、最初から全社のあらゆるシステム(給与・会計・勤怠など)と一気に連携させようとするアプローチは非常に危険です。
プロジェクトを成功させる鉄則は、まずは業務の根幹となるコアなデータ連携から「小さく始める」ことです。最小限のデータ項目で確実な連携基盤を構築し、運用を安定させた上で、新しい人事制度の導入や業務の変化に合わせて順次マッピングを追加・拡張していきましょう。
システム連携は「一度作って終わり」ではなく、企業の成長に合わせて柔軟に育てていくものであるという共通認識を持つことが重要です。
ステップ3:業務の標準化により「月間最大1,200時間の工数削減」も
仕様の事前共有とスモールスタートを徹底し、複雑なデータマッピングの壁を乗り越えた先には、劇的な業務効率化が待っています。地道なすり合わせを通じて自社の業務プロセスを整理し、システム間の連携を自動化することで、これまで手作業で行っていたデータ入力や確認作業は大幅に削減されます。
厳密な数値は運用状況によって異なりますが、たとえば月に1回・約8時間かかる手作業のデータ抽出や加工が150本あった場合、それらを連携・自動化することで「月間約1,000〜1,200時間の削減」が見込めます。また、複数のシステムへの二重入力が解消されることで、入力工数を50%カットできた事例も少なくありません。事前の綿密な調整こそが、この圧倒的な工数削減を実現するための最大の鍵となります。
まとめ
ここまで解説してきたように、人事システムの連携プロジェクトは、単にAPIを実装するだけの作業ではありません。その本質は、自社の複雑な業務ルールやデータ項目を紐解き、関係部門間で合意形成を図りながら「業務プロセスそのものを再設計する」取り組みに他なりません。
「APIなら何でも自動化できる」という誤解を解き、地道なデータマッピングや仕様のすり合わせから逃げずに向き合う、大規模な一斉導入を避けてコアな業務から小さく始める、この現実的なアプローチこそが、月間1,000時間を超えるような劇的な工数削減と現場の混乱を防ぐための唯一の近道です。
まずは、現在手作業で連携している目の前のデータ項目と、関係する業務フローの棚卸しから着手してみてはいかがでしょうか。
とはいえ、現場に深く根付いた独自の業務ルールを紐解き、システム要件に落とし込むためのマッピング作業や、他部門との合意形成を自社だけで完結させるのは非常に困難です。もし要件定義の進め方や現場との調整に課題を感じている場合は、数多くの連携プロジェクトを支援してきた私たちセラクにご相談ください。システムの仕様理解から現場への導入まで、連携実現に向けて伴走します。







