はじめに
現代の企業にとって、ITシステムはビジネスの基盤です。しかし、クラウド化やDXの進展にともない、システム運用や保守の負担が増大しています。情報システム部門の担当者にとって、限られたリソースで安定運用を実現することは大きな課題です。そこで注目されるのが「MSP(マネージドサービスプロバイダ)」です。本記事では、MSPの基本から、クラウド運用における役割、導入のメリット、そして具体的な事例について詳しく解説します。
MSP(マネージドサービスプロバイダ)とは?
MSPは、企業のITシステムの運用・保守・監視をアウトソーシングするサービス提供者です。昨今のクラウド環境やハイブリッド環境の普及にともない、MSPの需要は高まり続けています。ここでは、MSPの定義と、従来のアウトソーシングとの違いを解説します。
MSPの定義と基本概要
MSP(マネージドサービスプロバイダ/Managed Service Provider)は、主にサーバ管理、ネットワーク監視、セキュリティ対策、クラウド運用支援などを包括的に代行します。企業がMSPを導入することで、IT運用の効率化およびコア業務へのリソース集中を実現できます。

<MSPのイメージ>
MSPが提供する主なサービス内容
- ・24時間365日のシステム監視
- 常にシステムを監視することで、問題が発生した際に即座に対応できる体制を実現できます。これにより、システムが停止してしまうようなダウンタイムを最小限に抑え、安定した運用を実現します。
- ・障害対応とトラブルシューティング
- システムに障害が発生した場合、迅速に原因を特定して解決できます。MSPの専門スタッフが問題の診断および修正をすることで、業務の中断を防ぎます。
- ・セキュリティパッチ適用と脆弱性管理
- MSPの活用によって最新のセキュリティパッチを適用し、システムの脆弱性を継続的に管理できます。これにより、サイバー攻撃のリスクを低減し、データを安全に保護します。
- ・クラウドリソースの最適化とコスト管理
- クラウド環境におけるリソースの使用状況を分析し、無駄を削減することでコスト効率を向上させることができます。
MSPと従来のアウトソーシングの違い
従来のアウトソーシングでは、監視、運用、保守といった作業単位で業務を委託していました。この方法には、障害発生時の対応方法が社内に蓄積されない、対応状況のブラックボックス化など、様々な問題点が存在します。それに対して、MSP(マネージドサービスプロバイダ)は、運用から保守まで全てに対応しており、システム全体の安全稼働を保証します。これにより、障害発生時の迅速な対応や問題の予防、さらに戦略的な運用提案が可能です。

<従来のアウトソーシングサービスとMSPの違い>
なぜいまMSPが注目されるのか?
主に大企業を中心に、ITシステムの複雑化やリソース不足が問題となっています。MSPは、これらの問題を解決し、企業の競争力を高めるソリューションとして注目されています。ここでは、情報システム担当者が直面する問題と、MSPが提供する価値について詳しく解説します。
情報システム担当者が直面する問題
まず、専門人材の採用が困難である、既存社員に過重労働が発生するなど、人的リソースが不足しています。さらに、クラウドとオンプレミスのハイブリッド環境が普及することで、システム管理の難易度が向上しています。加えて、クラウド利用料の肥大化や予期せぬ障害対応コストの発生により、コスト管理も一層難しくなっています。また、サイバー攻撃の増加に伴い、継続的な監視が必要となるセキュリティリスクも懸念事項です。これらの問題は、情報システム担当者にとって大きな負担となっています。
MSPが解決する問題
MSPは、情報システム担当者が直面するさまざまな問題に対し、以下のような価値を提供して解決を支援します。
- ・運用負担の軽減
- MSPはシステムの監視やメンテナンスを代行し、情報システム担当者の業務負担を大幅に軽減します。
- ・コスト最適化
- クラウドリソースの使用状況を詳細に分析し、無駄なコストを削減します。
- ・セキュリティ強化
- 最新の脅威情報を活用した予防的な対策によりサイバー攻撃のリスクを低減し、企業のデータとシステムを安全に保護します。
これらの支援により、企業はIT運用の効率化を図り、競争力を高めることができます。
MSP導入を検討する際のポイント
MSPの導入を成功させるには、自社に適したプロバイダの選定と事前準備が重要です。ここでは、MSP選定の基準と、導入前に押さえるべきポイントを解説します。
自社に適したMSPを選ぶ基準
自社に適したMSP(マネージドサービスプロバイダ)を選ぶ際の基準として、まず実績と信頼性を確認することが重要です。業界特化の実績や長期にわたる運用実績があるかどうかをチェックし、その信頼性を確かめる必要があります。次に、サービスの範囲を考慮します。依頼内容によっては監視を行うだけでなく、コンサルティングやシステムの最適化まで対応しているかを確認することが大切です。また、コストの透明性も重要なポイントです。明確な料金体系を持ち、投資対効果(ROI)が見込めるかどうかをしっかりと評価する必要があります。これらの基準を踏まえることで、自社に最も適したMSPを選択できます。
導入前の準備
導入する前に必要な準備として、現状の問題を整理することが重要です。具体的には、現在の運用における負担やコストを可視化し、それらがどのような問題を生んでいるかを明確にする必要があります。また、導入後の目標を明確化するために、KPI(重要業績評価指標)を設定しましょう。たとえば、障害対応時間の短縮やコスト削減率といった具体的な目標を掲げることで、MSP導入の効果を測定しやすくなります。
MSP導入で変わる企業のIT戦略
MSPの導入は、運用効率化にとどまらず、企業のIT戦略全体を進化させます。ここでは、MSPがもたらす戦略的価値と、情報システム担当者がコア業務に集中できる環境構築のメリットを解説します。
IT運用の効率化から戦略的投資へ
MSPの活用で、情報システム担当者は日常の運用業務から解放され、戦略的プロジェクト(例:DX推進、データ活用)に注力できます。MSPは、以下のような形で戦略的価値を提供します。
- ・プロアクティブな提案:最新技術やトレンドに基づく運用改善提案
- ・リソースの最適配置:社内人材をイノベーション創出に再配分
- ・事業継続性の強化:安定したIT基盤によるリスク低減
MSPによる競争力の向上
MSPは、企業の競争力を以下のように強化します。
- ・迅速な市場対応:スケーラブルなIT基盤で、ビジネス変化に柔軟に対応
- ・コスト効率の最大化:クラウドやインフラの最適化で、投資対効果を向上
- ・セキュリティの信頼性:高度なセキュリティ対策で、顧客やパートナーの信頼を獲得
MSPによる実際の効果
ある通販サイト運営企業の場合、導入前は事業の拡大にともなうシステムの複雑化と運用負担やコストの増大といった問題を抱えており、コストの改善や運用体制の見直しを図るためにMSPを依頼しました。
マネージドサービスを活用することで、ITインフラ運用を専門家に任せ、運用品質を向上させた結果、通常業務と兼務でインフラ運用を担当していた社員の業務負荷を大幅に軽減しました。また、ヘルプデスク運用も同時に依頼することで、パソコンの軽微なトラブルから専門知識が必要な社内環境の整備まで、幅広い対応を少数精鋭で行い、人的コストの削減にも成功しました。
システムの安全稼働をリモートで管理し、万一の際の迅速なトラブル対応は常駐での対応を依頼するなど、サービスを柔軟に使い分けることで、品質を落とすことなく快適なシステム運用を実現しました。
さらに詳しい事例についてはこちら(オンサイトとリモートを組み合わせ、社内システムの運用改善と低コスト化を実現)を参照ください。
MSPがもたらす長期的な価値
MSPの導入は、企業に長期的な価値をもたらします。まず、リソースの再配分を可能にし、情報システム担当者が戦略的な業務に集中できる環境を提供します。これにより、企業は安定したIT基盤を確立し、事業継続性を向上させることで競争力を強化できます。
さらに、クラウド化の進展やセキュリティ脅威の増大にともない、IT運用の重要性は一層高まっています。MSPの活用により、企業は急速な変化に柔軟に対応し続け、競争優位性を維持することが可能です。
まとめ
クラウド環境の複雑化やDXの加速により、企業にとってMSPの活用は必須の戦略となりつつあります。MSPは企業のIT運用を効率化し、コスト、セキュリティ、リソース不足の問題を解決するための強力なパートナーといえるでしょう。
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