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電子帳簿保存法とは?初心者向けに対応を解説!

date2025年08月28日
電子帳簿保存法とは?初心者向けに対応を解説!
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はじめに

  • 電子帳簿保存法とは、国税関係書類の電子保存を認める法律のこと
  • 改正後は、電子取引データの保存が完全に義務化された
  • ほぼすべての事業者が対象で、条件次第では雑所得申告者も含まれる
  • 違反した場合は、青色申告取消や重加算税などの厳しい罰則がある
  • データ紛失対策に、複数箇所にバックアップを取ることが推奨される

2022年に改正された電子帳簿保存法は、2024年に義務化されるまでの間に内容の緩和や移行期間措置があったため、何をどのように対応するべきか、分かりにくくなっています。
この記事では、フリーランスや個人事業主などの初心者向けに、電子帳簿保存法とは何か、内容や対応方法などをご紹介します。

電子帳簿保存法とは

電子帳簿保存法とは、国税関係の帳簿や取引書類などを、電子データとして保存することを認める法律です。1998年に制定・施行された法律で、2022年に改正されました。改正内容に合わせて移行期間があり、2024年1月から義務化が施行されたことで話題になりました。

国税庁「電子帳簿・電子書類関係」を参考に自社で作成

この法律は、ほぼすべての事業者が対象です。副業で雑所得を申告している人は、 前々年の収入金額が300万円を超えている場合に対象となります。副業に関する請求書や領収書などを電子的(メール・Webサイトなど)にやりとりした場合は、法律に基づき、該当の電子データを保存する必要があります。
参考リンク| 国税庁「電子帳簿保存法一問一答【電子取引関係】:問68」

2024年に施行された電子帳簿保存法は何が変わった?

2022年に大きく改正された電子帳簿保存法は、猶予期間を経て、2024年から電子取引データの保存が義務化され、規定の見直しなどが行われました。改正によって大きく変わった点は、以下の4つです。

  1. 電子取引データの保存義務化
  2. ペーパーレス化の推進
  3. 規制緩和で導入のハードルが低下
  4. 罰則規定の強化

ほぼすべての事業主が対象のため、フリーランスや個人事業主も例外なく、デジタル化への対応が必須となるでしょう。

1.電子取引データの保存義務化

電子取引データとは、メールやクラウドサービスなど、電子的な取引を行った際の書類(見積書・請求書・領収書など)のことです。改正されたことで、電子で取引したデータは、電子データのまま保存することが義務化されました。これまで紙での保存も認められていましたが、改正後は電子データで適切に管理する必要があります。保存する際に求められる要件は「真実性の確保」や「可視性の確保」です。税務調査の際には、データの改ざん防止や検索の容易さを確保することが重要なため、専用の会計ソフトやクラウドサービスを利用することが推奨されています。

2.ペーパーレス化の推進

改正によって紙書類の保存義務が大幅に緩和され、スキャナで取り込んだデータも電子保存が可能になりました。帳簿や領収書を、電子データにまとめて管理できるため、紙書類の保管スペースや管理コストの削減が可能です。業務の効率化が図れるため、フリーランスや個人事業主にとっては大きなメリットと言えます。
スキャナ保存では一定の要件を満たす必要がありますが、ペーパーレス化を推進することで、業務効率化だけでなく環境負荷の軽減につなげられます。

3.規制緩和で導入のハードルが低下

改正前の電子帳簿保存法は、電子保存を行うための要件が厳しく、フリーランスや個人事業主にとってはハードルが高いものでした。しかし、改正後の規制緩和により、対応しやすい環境が整備されました。以下は、規制緩和で変化があった例です。

  • タイムスタンプの付与

    改正前:スキャナ保存は書類を受領してから一定期間内(概ね3営業日以内)のタイムスタンプ付与が必須
    改正後:保存データが改ざんできないシステムや、改ざんや削除の履歴を記録できるシステムを使用している場合は、タイムスタンプの付与が不要

  • 訂正・削除履歴の確保

    改正前:電子データの保存のために訂正や削除の履歴を残すシステムの導入が必須で、データが改ざんされていないことを証明する必要もあった
    改正後:訂正・削除履歴を確保するシステム利用が推奨されているものの、タイムスタンプを付与しない場合の代替要件と位置付けられた

上記のような規制緩和により、フリーランスを含む多くの事業者がデジタル化を無理なく進められるようになりました。

4.罰則規定の強化

改正によって罰則規定が強化されており、厳しいペナルティが科されるようになりました。電子データの保存要件を満たさなかった場合には、青色申告の承認が取り消される可能性があり、注意が必要です。データの隠蔽・改ざんや、関連する申告漏れなどが発覚した場合には、追徴課税額の35%の重加算税に加えて、さらに10%が加重されます。
適切な保存対応ができていない場合は、税務調査で問題が発覚するリスクも高まります。電子帳簿保存法に対応するための体制を整えることは、フリーランスや個人事業主にとっても必須事項です。罰則を回避するためにも、早期の対応を心がけるといいでしょう。

【区分別】電子帳簿保存法の要件

電子帳簿保存法は、帳簿や書類を電子データとして保存する際のルールを定めた法律で、3つの区分に分かれています。

  1. 電子帳簿等保存
  2. スキャナ保存
  3. 電子取引データ保存

それぞれの区分で保存要件が異なるため、どの区分に該当するかを理解する必要があります。改ざん防止や検索のしやすさが求められており、対応するためには真実性の確保と可視性の確保が重要です。
区分ごとに求められる、必要な保存要件をご紹介します。

区分1.電子帳簿等保存の要件

電子帳簿等保存は、パソコンなどで作成した帳簿・書類を電子データのまま保存する制度です。データの改ざん防止や検索機能を確保する必要があり、求められる要件は「優良な電子帳簿」「その他の電子帳簿」「書類」の3つに分けて細かく定められています。

引用|国税庁「はじめませんか、帳簿・書類のデータ保存」(2ページ目)

「その他の電子帳簿」として、最低限満たすべき要件を以下に要約しました。

  • システムの仕様書や説明書、マニュアルなどを備え付けること
  • 保存場所で出力可能な状態で、機器と操作マニュアルを備え付けておくこと
  • 税務職員の求めに応じて、必要なデータがダウンロードできるようにしておくこと

「優良な電子帳簿」は、上記の要件に加えて、4つの要件を満たすことが必要です。以下にまとめた要件が満たせれば、青色申告特別控除や過少申告加算税の軽減などが受けられるでしょう。

  1. 電子帳簿の訂正・削除の履歴が記録できるシステムを使用すること
  2. 通常の業務処理期間が経過してから入力した場合、その事実が確認できること
  3. 電子帳簿の記録内容と関連データの記録内容との相互関連性が確認できること
  4. 取引年月日・取引額・取引先など、一定条件による指定検索ができること

区分2.スキャナ保存の要件

スキャナ保存は、紙で作成・受領した書類をスキャンまたは撮影して保存する制度です。一定の解像度(200dpi以上)と、カラー画像として保存することが要件として求められます。

引用|国税庁「はじめませんか、書類のスキャナ保存」(2ページ目)

改正前は必要だったタイムスタンプの付与は、改ざん防止機能を備えたシステム利用で代替可能となり、必須ではなくなりました。ただし、重要書類の場合は帳簿との関連性が確認できる状態に整理しておきましょう。この改正によって、書類管理の効率化や、ペーパーレス化の推進につながることが期待されています。

区分3.電子取引データ保存の要件

電子取引データ保存は、メールやPDF、ECサイトからダウンロードした取引データを保存するもので、2024年から完全義務化された制度です。データの真実性・可視性を確保するための要件を満たす必要があります。

電子取引データの真実性を確保する要件(以下のいずれかを満たすこと)

・タイムスタンプを付与した電子取引データを発行する
・電子取引データを受領後、速やかにタイムスタンプを付与する
(最長2ヶ月+7営業日以内)
・訂正・削除の記録が残るシステム(または訂正・削除ができないシステム)を利用して電子取引データの授受および保存を行う
・訂正・削除の防止に関する事務処理規程を定めて、規定を順守する

電子取引データの可視性を確保する要件

・データ保存場所に、PCと周辺機器(ディスプレイ、プリンタ、使用プログラムなど)の操作マニュアルを備え付けておくこと
・備え付けたデータは整然かつ明瞭な状態で保存し、画面・書面で速やかに出力できるようにしておくこと
・システムを利用して保存する場合は、そのシステムの操作マニュアルも備え付けておくこと
・保存データは、取引年月日や取引先名、取引金額などから検索ができる状態にしておくこと

ただし、前々年度の売上高が5,000万円以下または以下の条件を満たす場合は、検索要件のすべてが不要となります。

  • 電子取引データがプリントアウト可能
  • データを取引年月日や取引先ごとに整理し、提示・提出が可能な状態

真実性と可視性を確保し、要件に従って対応することで、税務調査時に迷わず円滑に対応できるでしょう。

猶予措置について

電子取引データの保存方法については、真実性と可視性すべての要件が不要となる猶予措置が設けられています。猶予措置は、以下の条件すべてを満たす場合に適用されます。

  • 一定のルールに沿った電子取引データの保存ができていないことについて、所轄税務署長が相当の理由があると認める事業者
  • 税務調査の際に、電子取引データのダウンロードの求め及びその電子取引データをプリントアウトした書面を提示・提出できる事業者

税務署長に認められる相応の理由については、事業者の状況によって変わります。要件が満たせない可能性がある場合は、所轄税務署に相談・確認してみるといいでしょう。

電子帳簿保存法の対象書類について

電子帳簿保存法では、デジタル化が進む現代の取引や業務に対応するため、特定の書類を電子データとして保存することが求められます。ただし、すべての書類が対象となるわけではなく、対象外の書類も存在します。フリーランスや個人事業主が効率的に対応するためには、対象書類と対象外の書類を正しく理解することが大切です。以下では、それぞれの具体例を挙げながら解説します。

国税庁「電子帳簿・電子書類関係」を参考に自社で作成

対象の書類

電子帳簿保存法の対象となる書類は、主に国税関連の帳簿や証憑書類です。具体例をまとめると以下になります。

  • 仕訳帳・総勘定元帳などの帳簿類
  • 請求書・領収書・契約書・納品書などの取引証憑
  • 貸借対照表・損益計算書などの国税関係書類

特に、メールやオンライン取引など電子取引で授受した書類は、そのまま電子データとして保存することが義務付けられています。書類はすべて保存要件を満たした状態で管理する必要があり、真実性の確保や可視性の確保が求められます。

対象外の書類

一方で、電子帳簿保存法の対象外となる書類も存在します。

  • 税務に直接関係のないメモや社内用の報告書
  • 手書きで作成した請求書や補助簿など
  • 日常業務で使用する手書きのノート
  • 紙媒体で保存していたが、スキャナ保存の要件を満たさなかった書類
  • 法令に基づく保存義務がない書類
  • 電子取引ではなく、郵送で受け取った紙の請求書

上記に挙げた書類は、電子帳簿保存法の適用対象外です。そのため、例に挙げた書類を無理に電子化する必要はありません。しかし、必要になった場合を想定し、適切な管理方法で保存しておくことが重要です。

電子帳簿保存法で求められる対応

電子帳簿保存法は3つの区分に分けられており、求められる保存方法や要件が区分ごとに異なります。ただし、すべての区分に共通して求められるのは、真実性の確保と可視性の確保です。フリーランスや個人事業主は、自身の業務状態を確認して、適切に対応することが重要です。
ここからは、それぞれの区分における具体的な対応方法をご紹介します。

区分1.電子帳簿等保存の場合

電子帳簿等保存の対応において最初に確認が必要なことは、国税関係の帳簿や書類を、電子データで作成しているかいないかです。電子データで作成していない場合は、紙で保管すればいいので、対応は不要です。電子データで作成しており、電子データのまま保存する場合にのみ、求められる要件に合わせた対応が必要となります。
前述した「優良な電子帳簿」の要件を満たすためには、以下の手順で対応を進めるといいでしょう。

  1. 使用している会計ソフトやシステムが「優良な電子帳簿」の要件を満たしているか確認する
  2. 満たしていない場合は、必要なシステムの導入または入れ替えを行う

    ※要件を満たしている場合は、正しく保存できているか確認する

  3. 保存する機器の近くに関係書類や操作マニュアルなどを備え付ける

要件で重要視されるポイントは、データの改ざん防止や検索性の確保ができているかどうかです。そのため、訂正・削除履歴を記録できるシステムの利用や、タイムスタンプの付与が推奨されています。税務職員から求められた際に、迅速にデータ提示できる体制も必要です。要件を満たす会計ソフトやシステムの導入によって、法令遵守はもちろん、業務効率化や税務調査への対応がスムーズに行えるでしょう。

区分2.スキャナ保存の場合

スキャナ保存の制度は、紙の書類を必ずしも「スキャンや撮影を行って電子データとして保存しなければならない」という法律ではありません。電子データとして保存するかどうかは任意ですので、電子データ化せず従来通り、紙の書類で保管する場合は対応不要です。
スキャナ保存する場合は、以下の手順で対応しましょう。

  1. 使用しているシステム・機器が、スキャナ保存の要件を満たしているか確認する
  2. 要件を満たすために必要なシステム・機器の導入または入れ替えを行う
  3. 要件を満たすために必要な社内体制の整備を行う

スキャナ保存では、一定の解像度(200dpi以上)や、原則カラー画像での保存が必須です。改正前は必須だったタイムスタンプの付与は、改ざん防止機能を備えたシステム利用で代替可能となりました。求められる要件を満たすためには、対応できる体制を整えておくことも重要です。

  • 定められた入力期間内に入力・撮影できるようルールを作り、適切に運用する
  • タイムスタンプを付与する場合は、入力期間内に行うように徹底する
  • 定められた解像度や階調を守れるよう、ルールの順守を徹底する
  • 帳簿との相互関連性を確保できるようにルールを作り、適切に運用する
  • 必要な機器の用意と操作マニュアルなどを整える
  • 一般書類向けのルールを採用する場合は、事務の手続(責任者、入力の順序や方法など)を明らかにした書類を備え付ける

上記のポイントを押さえて、社内の体制整備を進めましょう。

区分3.電子取引データ保存の場合

電子取引データ保存は、他の区分と違って完全に義務化されています。そのため、電子的にやりとりを行った請求書や領収書などのデータが1件でもあった場合は、必ず電子データのまま保存しなければなりません。電子取引データがある場合は、フリーランスや個人事業主も対応する必要があるため、勘違いしないよう注意が必要です。
要件を満たすシステムとして、訂正や削除履歴が残せる(または訂正や削除ができない)システムの選択・導入が重要です。また、検索機能を備えた保存方法を整備することも必要な場合があります。専用の保存ツールやクラウドサービスがありますので、フリーランスや個人事業主の人は、事業に合わせて選択しましょう。

電子帳簿保存法の注意点

電子帳簿保存法は、帳簿や書類を電子データで保存することを求める法律ですが、適切な対応を行わないと罰則や業務上の問題が発生する可能性があります。初心者が対応する際には、注意すべきポイントをしっかり押さえることが重要です。

違反した場合は罰則が課せられる可能性がある

電子帳簿保存法に違反すると、税務上のペナルティが課される可能性があります。

帳簿や書類が保存要件を満たしていない場合のペナルティ
  1. 青色申告の取り消し(最大65万円の青色申告控除が受けられなくなる)
  2. 重加算税10%の課税(電子データに不正をして過少申告などをした場合)
  3. 100万円以下の罰金(帳簿や書類が適切に保存されていない場合や不正・改ざんが行われた場合)

上記に挙げた罰則を受けた場合、事業の信用性や財務状況に直接影響を与えることが考えられます。法律の要件を正確に理解し、適切な対応を行うことが必要不可欠です。特に、初めて電子化に取り組む場合は、専門家やツールを活用して違反にならないよう体制を整えましょう。

データは必ずバックアップを取っておこう

電子帳簿保存法ではデータの改ざん防止や検索性が求められますが、最も重要なことは、データの紛失や破損を防ぐためのバックアップです。万が一、データが消失した場合は税務調査時に必要な書類を提出できなくなる可能性があります。そのため、クラウドサービスや外付けハードディスクを活用して、データを複数の場所に保管しておくことが推奨されます。また、定期的にバックアップの状況を確認して、システム障害や災害に備えたリスク管理を行うことで、安全に対応できるでしょう。

紙での一元管理は難しい可能性がある

電子帳簿保存法に対応する場合、従来通りの紙媒体の帳簿や書類管理は難しくなる可能性があります。特に、電子取引が増加している現代では、紙と電子データの両方を管理するのは業務を増やすことにもつながるため、非効率的と言えます。また、電子取引データ保存が義務化されているため、紙媒体での管理体制から、電子データをメインとした管理体制への移行が重要となるでしょう。

まとめ

電子帳簿保存法は、帳簿や取引書類を電子データで保存することを認める法律で、2022年に大きく改定され、2024年から電子取引データ保存が完全義務化されました。この法律は、ほぼすべての事業者が対象で、条件によっては雑所得を申告する副業者も対象となります。違反時には罰則が課される可能性があるため、区分ごとの要件をしっかりと確認し、データの改ざん防止や検索性の確保のため、正しく対応を行うことが求められます。また、システム障害や災害などに備えて、バックアップやリスク管理体制の整備を意識することも重要です。

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