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AIエージェントとは?/種類・基礎知識・課題など

date2025年05月08日
AIエージェントとは?/種類・基礎知識・課題など
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はじめに

「AIエージェントとは何か?」と聞かれた時、なんとなくのイメージしかもたず具体的にはあまり正確に答えられない方も多いのではないでしょうか。この機会に、この記事を読んでAIエージェントについての基礎知識をたくわえておくことをオススメします。

AIエージェントとは?

AIエージェントとは、AIを使用してユーザの目標達成に向けて自律的に業務を遂行するソフトウェアシステムのことです。大きくわけると、個人が使用する「パーソナルエージェント」、企業が使用する「企業エージェント」という2つに大別されます。

  • パーソナルエージェント:

    ユーザ個人のニーズに合わせてサポートしてくれるAI

  • 企業エージェント:

    企業内の業務プロセスを最適化し生産性の向上やコスト削減、企業価値の向上をおこなう

これらのエージェントはいずれも、以下の4つの基本タイプに分類されます。

AIエージェントの種類

AIエージェントは、その意思決定の仕組みによって以下の4タイプに分類されます。これらの分類は、パーソナルエージェント・企業エージェントのいずれにも共通です。それぞれについて解説します。

1 反射エージェント

1つ目に解説するAIエージェントは「反射エージェント」です。
もっともシンプルな仕組みのAIエージェントで、単純反射エージェントとモデルベース反射エージェントの2種類に分かれています。

  • 単純反射エージェント:

    事前に定義された条件と行動のルールに従って動作します。たとえば、温度が一定値になったらエアコンをオンにするサーモスタット、人が近づくと自動的にドアを開くドア、壁にぶつかると方向を変えるシンプルな掃除ロボット など。

  • モデルベース反射エージェント:

    環境の内部モデルを保持し、現在の知覚と過去の経験に基づいて行動を決定します。単純反射エージェントとは異なり、環境が完全に観測可能でない場合でも、内部モデルを使って見えない部分の状態を推測します。たとえば、過去の運転経験に基づいて障害物を避けながら走行する初期の自動運転車、過去のユーザ行動履歴に基づいてオススメの動画を表示するレコメンデーションシステム など

2 目標ベースエージェント

2つ目に解説するAIエージェントは「目標ベースエージェント」です。
ただ目の前の状況に反応する反射エージェントとは異なり、どうすればゴールに近づけるかを判断し、その目標を達成するための一連の行動を推論し、選択するというものです。

  • 活用事例:

    ナビゲーションシステム(目的地を設定すると、現在の位置から目的地までの最適な経路を探索し、案内する)など

3 効用ベースエージェント

3つ目に解説するAIエージェントは「効用ベースエージェント」です。
目標ベースエージェントをさらに発展させたAIエージェントで、目標を達成することだけでなく、行動の結果として得られる効用を最大化するように行動を選択するところまで実行します。

  • 活用事例:

    医療診断支援システム(病気の診断に加えて、治療のリスクや効果・患者のQOLなどを考慮して最適な治療法を提案)など

4 学習エージェント

4つ目に解説するAIエージェントは「学習エージェント」です。
経験から学習し、自身の知識や行動の改善能力をもつAIエージェントです。与えられたタスクを繰り返す中で、徐々に最適な行動戦略を身につけていく特徴があります。

  • 活用事例:

    ゲームAI(囲碁・将棋・ビデオゲームなどで人間以上のパフォーマンスを発揮する)など

AIエージェントと生成AIの違い

生成AIとAIエージェントはよく混同されがちです。しかし、双方には明確な違いがありますのではっきりと区別できるようにしておきましょう。

生成AIAIエージェント
特徴ユーザからの指示で受動的にコンテンツを生成できるユーザとのやりとりを通じて能動的に業務を自動化できる
用途テキスト、画像、音声、動画などの「あたらしいコンテンツ」を生成するデータ分析、意思決定の支援など多岐にわたる用途で活用される
運用方法入力(プロンプトや参考画像など)を元に成果物を生成する(反応型)目的を達成するために、状況を認識しながら自律的に行動する(自律型)
活用例ChatGPT(文章生成)、
DALL·E(画像生成)、
Midjourney・Stable Diffusion(画像)、MusicLM(音楽)
など
カスタマーサポート、自動運転、チャットボット、音声アシスタント など

生成AIは生成することに特化しており、基本的に指示がなければ動きません。一方、AIエージェントは目標達成に向かって自律的に動くため、必要に応じてタスクを分解・遂行する特徴があります。

AIエージェントが求められる理由

なぜ今、AIエージェントは社会に必要とされているのでしょうか。大きく3つの理由が挙げられますので、それぞれについて解説していきます。

業務の複雑化

AIエージェントは、複雑な業務内容・環境で価値を発揮します。
現在の社会は多様化しており、これに迅速・柔軟な対応をすることが求められています。AIエージェントは多くの情報源から得たデータを統合的に分析し、与えられた目標に対して最適な手段を自律的に選択し実行する能力を期待されているのです。

人材不足

AIエージェントは、人材不足を解消する役割が期待されています。
熟練人材の高齢化や採用難により業務の自動化・効率化が急務となっており、また属人化した業務知識を形式化し組織内の知的資産として活用可能にする点でも、AIエージェントは必要とされています。

働き方改革に対応するため

AIエージェントは、企業が働き方改革への対応をするために求められています。働き方改革が目標とする労働時間の短縮・生産性の向上・多様な働き方の実現・従業員の満足度向上、といった4項目について貢献をすることが期待されているのです。
AIエージェントに雑務・繰り返し・判断を任せれば、人間はより創造的な業務に集中できるようになります。また、リモートワークや時短勤務に対しても業務の継続性やカバーが24時間可能となり、頼れるデジタルパートナーとしてチームを支えることにもなるでしょう。

AIエージェントの課題

現在AIエージェントが抱えている5つの課題と対策について解説します。どのようなことが問題になっており、どういった対処方法があるのでしょうか。

1 セキュリティ・プライバシーの保護

AIエージェントは、業務や日常生活においてさまざまなデータを収集・分析・利用します。これらに含まれる機密情報や個人情報が適切に保護されなければ、深刻なリスクを引き起こす可能性があるのです。これの対策として以下の5つがあります。

  • オンプレミスorクローズド環境で運用
  • アクセス制御・認証の徹底
  • 通信・APIの暗号化と監視
  • データのマスキング・匿名化
  • ログ管理・使用履歴の監査体制

2 倫理的・法的な問題

AIエージェントが間違った判断をした時に、誰が責任を負うのかが明確になっていません。また、どのようにその意思決定をおこなったのかがブラックボックス化しており、その理由を人間が理解できないなどの問題もあります。対策として、以下に挙げる2つの対策をしっかりおこなってください。

  • 倫理原則・ガイドラインの策定:

    AIエージェントの開発・利用に関する倫理的な原則やガイドラインを策定し、関係者間で共有する必要があります。

  • 透明性と説明可能性の向上技術の開発:

    AIの意思決定プロセスを可視化し、人間が理解できるようにする技術開発が重要です。

3 専門人材確保の難しさ

現在、AIエージェント向け専門知識をもった人材が不足しています。
AIエージェントの開発、実装、運用には高度な専門知識とスキルをもつ人材が不可欠です。しかし、その確保は非常に難しいのが現状です。以下に対策を挙げておきます。

  • 社内育成・リスキリング:

    社員に対して育成プログラムの構築

  • 大学・研究機関と連携:

    共同研究やインターン受け入れなど

  • 副業・フリーランス人材の活用:

    外部人材との協業

  • 魅力的な職場環境の提供:

    リモートワークやフレックスタイム制など

  • 外部パートナーとの連携:

    初期段階では外部のAIコンサル・SIer・AIベンダなどと連携し、 社内メンバーのシャドウイング(学びながら導入)を進める方法も有効。

4 リソースが限られていること

AIエージェントにおいて、限られたコンピュートリソースは、その開発・訓練・実運用において非常に重要な制約であり課題となっています。とくに高度な自律性や複雑なタスク処理能力をもつAIエージェントほど、より多くの計算資源を必要とする傾向があるのです。この課題への対策としては以下のものがあります。

  • 軽量モデルの開発・活用
  • オンデマンド処理に設計を切り替える
  • 処理の分散化・非同期化
  • ローカル/クラウドのハイブリッド運用
  • インフラストラクチャへの投資

5 ハルシネーション

AIエージェントが、事実に基づかない、あるいは文脈と矛盾する情報を生成してしまうのは深刻な問題です。対策としては大きく以下の2つがあります。

  • ファクトチェックとの統合:

    外部知識ベースや検索エンジンと連携して、情報の正確性を検証する

  • トレーニングデータの精査:

    高品質なデータに基づく学習によって、誤情報の生成を減らす

まとめ

ここまで「AIエージェントとは?/種類・基礎知識・課題など」というテーマで解説してきました。
AIエージェントとは、AIを使用してユーザの目標達成に向けて自律的に業務を遂行するソフトウェアシステムのことです。あたらしく普及しつつあるAIエージェントについてはあまり知識のない方も多いのではないでしょうか。この記事を読んで、AIエージェントについて、生成AIとの違い、求められる理由、AIエージェントの課題についての知見を蓄えましょう。

最後のチェックポイント

  • AIエージェントとはAIを使用してユーザの目標達成に向けて自律的に業務を遂行するソフトウェアシステム
  • AIエージェントは能動的に業務をおこない、生成AIはユーザからの指示で受動的にコンテンツを生成する
  • AIエージェントが求められる理由は業務の複雑化・人材不足の解決と働き方改革への対応のため、の3つ
  • AIエージェントの課題はセキュリティ・プライバシーの保護、倫理的・法的な問題、専門人材確保の難しさ、リソースが限られていること、ハルシネーション
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