白色申告とは?フリーランス初心者におすすめの申告方法を解説


はじめに
- 白色申告とは、所得税や法人税の申告方法の1つ
- 白色申告の記帳方法はシンプルなものでよい
- 手続きや申請方法は簡単だが、受けられる控除は少ない
- 白色申告の必要書類は、直近の確定申告書(第一表・第二表)と収支内訳書
- 確定申告ではオンライン申告が便利
白色申告とは?
白色申告とは、所得税や法人税の申告方法の1つです。フリーランスや個人事業主は、年に一度確定申告をする必要があります。確定申告には白色申告と青色申告の2種類があり、必要書類・帳簿の記帳方法・受けられる控除の種類などが異なります。
白色申告の対象者は、青色申告書の承認を受けていない納税者です。
本記事では、フリーランス初心者に向けて白色申告の概要や申告方法を解説します。
白色申告と青色申告との違い
白色申告と青色申告の違いを以下の表にまとめました。
| 白色申告 | 青色申告 (特別控除が10万円の場合) | 青色申告 (特別控除が55万円の場合) | 青色申告 (特別控除が65万円の場合) | |
|---|---|---|---|---|
| 開業届提出の要否 | 必要(未提出でも申告可) | 必要 | ||
| 確定申告前の事前申請手続き | 不要 | 所得税の青色申告承認申請書の提出が必要 | ||
| 記帳方法 | 単式簿記 | 単式簿記 | 複式簿記 | |
| 作成書類 | 収支内訳書 | 損益計算書のみでも可 | 損益計算書・ 貸借対照表 | |
| 赤字所得の繰越 | 不可 | 可(3年) | ||
| 事業専従者への特例の適用 | 配偶者は最高 86 万円、15 歳以上のその他の親族は最高 50 万円まで所得控除できる(事業専従者控除) | 全額可:全額経費にできる(青色事業専従者給与) | ||
| 少額減価償却資産の特例の適用 | 適用不可 | 適用可(30万円未満の場合は、購入年に全額を経費にできる) | ||
| 電子申告または電子帳簿保存 | 不要 | 不要 | 必要 | |
上記の表からおわかりいただける通り、青色申告は白色申告と比べて手続きや帳簿の記帳方法が複雑です。一方で、税制面では白色申告よりも優遇措置が取られています。
白色申告のメリット
以下では、白色申告のメリットをご紹介します。
記帳方法はシンプルなものでよい
白色申告の帳簿の様式・種類については、明確なルールが定まっていません。そのため、帳簿への記帳もシンプルな方法で構いません。
また、国税庁のホームページでは、簡易な記帳方法(単式簿記での記帳)を推奨しています。
単式簿記とは簿記の手法の1つであり、主に収益や費用の発生を記録することが目的です。
身近なものでは、家計簿やお小遣い帳などが単式簿記に該当します。
| 単式簿記(収入項目) | 複式簿記 | ||||
|---|---|---|---|---|---|
| 収入項目 | 金額 | 借方(左側) | 貸方(右側) | 金額 | |
| 売上 | 300,000 | 現金 | 売上 | 300,000 | |
| 光熱費 | 現金 | 20,000 | |||
| 水道代 | 現金 | 15,000 | |||
| 単式簿記(支出項目) | 保険代 | 現金 | 25,000 | ||
| 支出項目 | 金額 | 通信費 | 現金 | 10,000 | |
| 光熱費 | 20,000 | ||||
| 水道代 | 15,000 | ||||
| 保険代 | 25,000 | ||||
| 通信費 | 10,000 | ||||
開業届の提出や確定申告前の手続きはしなくてよい
白色申告時は、開業届の提出や確定申告前の事前申請手続き(所得税の青色申告承認申請書の提出)が不要です。
そのため、青色申告制度をよく理解できていない方にとっても手続きのハードルが低いです。
白色申告のデメリット
以下では、白色申告のデメリットをご紹介します。
受けられる控除が少ない
白色申告には特別控除がありませんので、青色申告よりも節税効果を感じにくいのが特徴です。ここでの控除とは、税負担を軽減するために所得から一定金額を差し引くことです。
一方、青色申告では、青色申告特別控除が適用できます。青色申告特別控除とは、所得金額から一定の金額を差し引ける制度です。控除額には65万円・55万円・10万円の3種類があり、適用される条件はそれぞれ異なります。また、青色申告では、青色事業専従者給与が全額経費にできます。
事業専従者控除は、白色申告でも一部適用されますが、配偶者は最高 86 万円、15 歳以上のその他の親族は最高 50 万円までしか控除できません。
純損失の繰越しや繰戻しが適用されない
白色申告では、純損失の繰越しや繰戻しが適用されません。
純損失の繰越しとは、本年の事業が赤字だったときに損失額を翌年から最長3年間繰り越せる(本年の赤字を翌年以降の黒字と相殺する)制度です。
一方、繰り戻しとは、本年の事業が赤字だったときに損失額を前年の黒字と相殺して税負担の軽減措置を施す(差額が返納される)制度です。そのため、事業が赤字の年は資金繰りが悪化する恐れもあります。
貸倒引当金の一部が計上できない
白色申告では、貸倒引当金の一部が計上できません。
貸倒引当金とは、何らかの理由で取引先から売上金を回収できなかった場合に備えて、積み立てておくお金です。
貸倒引当金には、個別貸倒引当金と一括貸倒引当金の2種類があります。
青色申告ではどちらの貸倒引当金も計上できますが、白色申告では一括貸倒引当金の計上ができません。
少額減価償却資産の特例が適用されない
白色申告では、少額減価償却資産の特例が適用されません。
少額減価償却資産の特例とは、30万円未満の減価償却資産(経年劣化により価値が減る資産)を取得した際、その年に全額を必要経費として計上できる制度です。
白色申告ではこの特例を受けられないため青色申告者よりも税負担が大きくなります。
白色申告に必要な書類と保管のルール
以下では、白色申告の手続きに必要な書類・作成方法・保管期間などをご紹介します。
必要書類・作成方法
白色申告に必要な書類は、直近の確定申告書(第一表・第二表)と、収支内訳書です。確定申告書の第一表と第二表は全ての申告者が提出する書類です。
確定申告書の第一表には、収入・所得・控除など事業主の基本情報(13項目)をまとめて、第二表には所得の内訳・保険料控除等に関する項目(13項目)を記入します。
以下では、白色申告者ととくに関係が深い収支内訳書について解説します。

※クリックで画像を拡大できます
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申告者の情報
氏名・住所・電話番号など、申告者の情報を記入する
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日付や会計期間の記入・所得の選択を行う
日付を記入する
事業所得または雑所得を選択する(どちらかの「業」の文字を丸で囲む)
会計期間(自○月○日 至○月○日)には通常、年始から年末(1月1日から12月31日)を記入する。ただし、年の途中で開業した場合は開業日から12月31日とする -
収入金額
本年中の売上(収入)金額や家事消費などを記入して合計額を算出する
家事消費とは、家事のために消費・贈与した商品の通常販売価格のこと -
売上原価(仕入れを行った場合のみ記入する)・差引金額
期首・期末商品(製品)の棚卸高や仕入金額などを記入する。差引原価(⑦-⑧の合計額)を算出する。
差引金額には④-⑨の合計額を算出して記入する -
経費
必要経費の各科目を記入する
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専従者控除の所得金額・専従者控除・所得金額
専従者控除の所得金額・専従者控除・所得金額をそれぞれ算出する
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給与賃金の内訳
給与や賞与を支払っている従業員の氏名・所得合計・所得税の源泉徴収税額などを記入する
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税理士・弁護士等の報酬・料金の内訳
本年中に、税理士・弁護士・公認会計士などへ支払いが確定した報酬や料金を記入する
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事業専従者の氏名等
事業専従者とは、白色申告者と生計を一にしている配偶者やその他の親族(15歳以上)のこと。
本年中、事業専従者が6か月を超えて事業に従事している場合は一部の金額を必要経費にできる。


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売上(収入)・仕入金額の明細
主な売上(仕入)先の会社名やその所在地、売上(仕入)金額を記入する
なお、登録番号を記入した売上(仕入)先については、会社名および所在地の記入を省略しても問題ない
(合計金額欄)を記入後に、消費税の軽減税率の対象金額を記入する(省略可) -
本年中における特殊事情
前期までと異なる処理があった場合や事業が赤字になった場合など、特殊な事情があるときに記入する
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減価償却費の計算
平成19年(2007年)3月31日以前に取得した減価償却資産と、平成19年(2007年)4月1日以後に取得した減価償却資産では、定額法や定率法が異なる
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利子割引料の内訳
金融機関以外からの借入金の利子がある場合に記入する
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地代家賃の内訳
支払先の住所・氏名や貸借物件や貸借物件にかかる費用などを記入する
参考:国税庁|令和6年分 収支内訳書(一般用)の書き方
保管期間
白色申告でも、青色申告と同様に記帳制度や記録保存制度が設けられています。
以下の表では、保管が必要なものと保管期間をまとめました。
| 保管が必要なもの | 保管期間 |
|---|---|
| 法定帳簿(収入金額や必要経費などを記入した帳簿) | 7年 |
| 任意帳簿(業務に関して作成した法定帳簿以外の帳簿) | 5年 |
| 決算に関して作成した棚卸表・その他の書類 | 5年 |
| 業務に関して作成(もしくは受領)した請求書・納品書・送り状・領収書などの書類 | 5年 |
白色申告で確定申告する際の提出期限
以下では、白色申告で確定申告する際の提出期限をご紹介します。
確定申告の期間中に申告する
原則として、確定申告は毎年2月16日から3月15日の期間中に提出しなければなりません。
ただし、初日や最終日が土曜日・日曜日・祝日などであれば、初日や最終日は翌営業日に繰り越されます。
また、確定申告の期限を過ぎてから申告した場合は、期限後申告扱いとなります。期限後申告では、無申告加算税や延滞税が課されることもあるため、注意しましょう。
白色申告で確定申告する際の提出方法
オンラインから確定申告する場合でも、方法や選択肢はさまざまです。
オンライン経由での確定申告では、会計ソフトを使用して作成・提出できます。
会計ソフトは、民間企業が提供するものから国税庁が提供するものまでさまざまです。また、ほとんどのツールが、e-Taxと連携が可能です。
以下では、確定申告書等作成コーナーで確定申告書を作成後にe-Taxへ連携して送信する手順をご紹介します。
e-Taxソフト(Web版)から提出する
以下では、e-Taxソフト(Web版)から確定申告を行う方法・手順をご紹介します。
なお、e-Taxソフト(Web版)から確定申告できるのは、個人の利用者のみです。e-Taxを利用するにあたり、利用規約への同意が必要ですので、事前に必ず確認しましょう。
また、作成中は、データをこまめにダウンロードして保存しておくことが大切です。
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申請や端末や方法に応じて以下のものを準備する
スマートフォンから確定申告する場合は、マイナンバーカードを準備しましょう。パソコンから申請する場合は、マイナンバーカードに加えてICカードリーダライタとスマートフォンが必要です。
また、必要に応じて利用者識別番号を準備しましょう。 -
確定申告書を作成する
パソコンから国税庁の「確定申告書作成コーナー」を開く→申告書等を作成するから「作成開始」をクリックする→画面に従って作成する
※なお、保存データは「保存データを利用して作成」から再読み込みが可能 -
e-Taxに連携して確定申告を送信する参考:国税庁|【確定申告書等作成コーナー】-作成コーナートップ
郵送で提出する
確定申告書は郵送でも提出できます。
宛先は、所轄の税務署や所轄の業務センターです。業務センターとは、複数の税務署の内部事務を集約処理する施設のことです。
税務上の申告書・申請書・届出書は信書に該当します。郵送時は、第一種郵便物・もしくは信書便物として送付しましょう。
確定申告書の郵送時に必要な書類は以下の通りです。
- 確定申告書(第一表・第二表)
- マイナンバーカードの写し(マイナンバーカードがない方はマイナンバーが確認できる書類および身元確認書類の写し)
- 各種帳簿(白色申告者の場合は収支内訳書)
- 各種控除証明書類
- 添付書類(給与所得者や公的年金受給者などは源泉徴収票が必要)
昨今では、DXの推進により国税書類においても電子化・ペーパーレス化が進められています。そのため、2025年1月より収受日付印の押印が廃止されました。
ただし、収受日付印の代わりとして、希望者には日付・税務署名を記入したリーフレットの配布を行っています。
税務署の窓口で提出する
税務署の窓口で確定申告書を直接提出する際は、以下の持ち物を用意しましょう。
- 確定申告書(第一表・第二表)
- マイナンバーカードの写し(マイナンバーカードがない方はマイナンバーが確認できる書類および身元確認書類の写し)
- 各種帳簿(白色申告者の場合は収支内訳書)
- 各種控除証明書類
- 添付書類(給与所得者や公的年金受給者などは源泉徴収票が必要)
2021年より税務関係書類の押印義務が廃止されました。そのため、近年では記入ミスを訂正する際の訂正印は不要とされています。
白色申告の相談先
確定申告や帳簿への記帳方法などで不明点があるときは、以下の相談先・対処法をご参考になさってください。
確定申告の相談先
- 税務署へ相談する(窓口・電話のどちらも相談可能)
- 確定申告相談会の会場へ相談する(税務署主催)
- 国税庁のホームページのチャットボットから相談する
- 税理士へ相談する
- 市区町村の役場へ相談する
帳簿への記帳方法がわからないときの相談先・対処法
- 納税協会へ相談する
- 商工会議所・商工会へ相談する
- 税務署で記帳指導を受ける(個人課税部門の記帳指導担当者へ連絡する)
- 国税庁のホームページの「記帳練習帳」を参照する
まとめ
青色申告と比べて、白色申告は手続きや申請が簡単です。そのため、青色申告が不安な方や、事業の規模が小さい場合は白色申告でも問題ありません。
一方、白色申告は青色申告よりも受けられる控除の種類が少ないです。そのため、節税を意識したい方には青色申告の検討をオススメします。
また、確定申告や帳簿への記帳方法などがわからないときは、勝手に判断せずに国の機関や専門家へ相談しましょう。












