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委任・委託の違いを徹底解説|契約書で迷わないための基礎知識

date2025年11月06日
委任・委託の違いを徹底解説|契約書で迷わないための基礎知識
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はじめに

  • 委任・準委任・請負契約は業務委託契約に含まれる
  • 業務委託契約は雇用契約とは違い指揮命令権がない
  • 業務委託契約では契約前にどの契約形態が最適か判断する必要がある
  • 委任・準委任契約は成果が曖昧になりやすいため依頼内容の明確化が必要
  • 契約書には依頼内容・報酬支払・責任範囲といった情報を明確化する必要がある

みなさんは委任契約と委託契約の違いを理解できているでしょうか。日常のビジネスシーンで、フリーランスや個人事業主としてクライアントから業務を依頼される際には、委任と委託が混同されがちです。

そこで本稿では、委任と委託の違いを法律的な視点から解説し、実務での適用例や契約時の注意点について解説します。これらを理解することで、契約の不安を軽減し、安心して業務を進めることができます。以下の項目で、まずは基本的な違いを見ていきましょう。

委任と委託の基本的な違い

委任と委託はどちらも他者に業務を任せる契約を指しますが、法律上の定義や契約内容に違いがあります。

委任は法律行為を他者に任せる契約です。例えば弁護士への依頼がこれにあたります。一方で委託は、Webサイトの制作やデータ入力といった業務の外注契約を全般的に指す言葉です。委任は委託に含まれる契約形態と考えてください。

他の契約形態との違い

前出の解説で委任が委託に含まれると述べましたが、委任契約や委託契約は、他に類似する契約形態と比較することで、その特徴が明確になります。これらの契約形態を正しく理解することで、仕事の依頼内容に応じた適切な契約を選べます。

業務委託契約

業務委託契約は、業務を他者に任せる契約の総称です。委任・準委任・請負の各契約は、この業務委託契約に含まれます。

実態として就労時間や場所が指揮・命令される場合、偽装請負と判断される可能性がある点に注意が必要です。契約時は、業務(成果)の範囲・検収基準・報酬と支払の条件・契約期間・知財の帰属・再委託・秘密保持・変更時の手続き・損害賠償の上限などを明確化し、運用面においても雇用との線引きを徹底しましょう。

請負契約

請負契約は成果物の完成が目的となる契約で、委任・準委任とは異なり、受注者には成果物の完成責任が発生します。報酬の支払いは原則として完成・検収と結びつき、納品物が合意した仕様・品質に適合しているかが決定的な意味を持ちます。

仕様が固まっており、成果で価値を図りやすい建築工事やプログラムの開発などが請負に該当します。

委任契約

委任契約は法律行為を他者に任せる契約です。契約の中心は適切な業務遂行にあり、成果物の完成は必須となりません。受任者(引き受ける側)は善良な管理者としての注意義務(善管注意義務)を負い、結果の保証よりも、過程で求められる合理的な判断と遂行の水準が問われます。

例えば、法律業務を弁護士に任せることがこれにあたります。

準委任契約

内容は委任契約の規定を準用する関係にありますが、こちらは法律行為を含まない業務が対象です。

例えば、プロジェクトの支援やコンサルタント業務などがその典型で、ここでも契約の焦点は適切な業務遂行にあります。成果物の完成は必須とならないため、評価は活動の内容・質・進捗で図られます。

委任・準委任・請負契約のメリット・デメリット

業務委託の契約形態を選ぶ際には、そのメリットとデメリットを理解する必要があります。以下の項目で、より詳しく見ていきましょう。

メリット

この項目では、委任契約・準委任契約と請負契約のメリットを、以下の表にまとめました。

契約形態メリットの詳細
委任契約・準委任契約・業務遂行そのものが重視されるため、柔軟な対応が可能(例としては突発的な変更に対応しやすいなど)
・専門家の知見を活用しやすく、信頼関係を基盤とした長期提携に適する
・報酬が時間ベースで計算しやすく、追加業務の調整が容易
請負契約 ・成果物の完成が保証されやすく、納品後の安心感が高い(例としてはプログラムのバグ修正など)
・対応業務範囲が広く、製造業やクリエイティブ業界で汎用性が高い
・固定報酬で予算予測がしやすく、発注者のコストコントロールが容易

委任契約・準委任契約では、業務遂行そのものが重視されます。そのため業務遂行において柔軟に対応できることがメリットです。この特徴から、専門家が必要な場面で最適な契約と言えます。

デメリット

この項目では、委任契約・準委任契約と請負契約のデメリットを、以下の表にまとめました。

契約形態デメリットの詳細
委任契約・準委任契約 ・成果保証がないため、期待通りの成果が得られない可能性がある(例としてコンサル結果の曖昧さなど)
・依頼内容の明確化が不十分だと、報酬や責任分野でのトラブルが発生しやすくなる
・長期化するとコストが膨張する可能性も
請負契約 ・仕様変更が難しく、中間修正では追加費用が発生する(例として設計変更時の再契約など)
・受注者の負担が重く、品質低下の懸念がある
・完成前であれば発注者は契約を随意解除できるが、進捗相当分の代金や損害賠償の負担が発生しやすく、発注者の経済的柔軟性は低くなり得る

委任・準委任契約では、業務遂行中の成果保証がないため、成果が曖昧になりやすいことが、この契約のデメリットです。そのため依頼者側は契約時に、依頼内容を明確化する必要があります。また請負契約では、発注者が業務の遂行手順に関与しにくくなるデメリットも伴います。

契約時に注意すべきポイント

この項目では、業務委託契約を結ぶ際の注意点について解説します。以下の項目でより詳しく見ていきましょう。

業務委託契約は目的に応じて選択する

業務委託契約は委任・準委任・請負の総称のため、検討段階から、どの契約形態が適切かを考える必要があります。業務全体の遂行が重要な場合は委任・準委任契約を、成果物の納品が重要となる場合は請負契約を選択しましょう。

契約内容を明確にする

委任・準委任契約の場合は、契約時に具体的な依頼内容を明確化することが必要です。同様に請負契約の場合は、業務範囲や成果物の仕様を詳細に明確化することが必要です。

契約内容の明確化や注意点について、以下の項目でより詳しく見ていきましょう。

報酬の支払条件

委任・準委任契約は、業務遂行に基づく報酬の支払方法を、明確化する必要があります。例えば、段階的な支払いや月極にするといった内容です。請負契約の場合は成果物の完成に基づいて報酬が発生しますので、それらを明確化する必要があります。

責任範囲の確認

いずれの契約形態でも責任範囲の確認が重要です。委任・準委任契約では善管注意義務が伴います。善管注意義務とは、民法644条に基づく、業務遂行における受任者側の注意義務です。

一方、請負契約では成果物の完成責任が生じるため、品質保証の条件を明記する必要があります。例えば、成果物の無償サポート期間を規定したり、損害賠償の上限額を設定したりといった明確化がこれに当たります。

参考|デジタル庁 e-gov 法令検索 民法644条(善管注意義務の法的根拠)

秘密保持契約

秘密保持契約は、業務内容や遂行上のノウハウ、成果物に関する機密や個人情報といった、情報流出を防ぐ抑止力として締結します。この契約では契約完了後の秘密保持義務の存続期間も定めます。この内容を記載した書類が秘密保持契約書(Non-Disclosure Agreement 略称はNDA)です。

契約の保持期間は法律で一律の定めはなく、情報の性質に応じた相当期間を設定します(例:1~5年が多いが、顧客データ等の重要情報は長期や無期限とすることも)。

まとめ

フリーランスや個人事業主として働く際に、クライアントと安心して契約するためには、業務委託契約の形態と、その違いについて理解しておくことが重要です。それらをきちんと区別することで、業務内容に適した契約を選び、リスクを回避しやすくなります。

現在では契約書作成ツールやAIによる契約内容チェックサービスが登場していますが、これらを活用する際にも、基本的な契約知識が不可欠です。慎重を期するためにも、契約書の作成時に不安があれば専門家の助言を受けるなど、安心できる環境で業務を進めてください。本稿が理解の一助となれば幸いです。

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