副業の確定申告は必要?収入の基準や申告方法を解説


はじめに
- 副業で確定申告が必要となるのは、副業所得が20万円以上の場合
- 副業所得が20万円以下でも、所得控除や税金の還付を受けるときは確定申告をした方がよい
- 確定申告は、所得を得た方法により10種類の所得区分がある
- 副業で確定申告をする場合、本業の源泉徴収税額も記載する必要がある
- 副業でも確定申告を行わないと法的な罰則が科される可能性がある
副業とは
副業とは、主職以外の時間を活用して収入を得る働き方を指します。リモートワークでのライター業務や、深夜のバイト、スキルを活用した成果物の販売などが含まれます。
2018年に厚生労働省が作成した「副業・兼業の促進に関するガイドライン」により、副業を推奨する動きが広がりました。しかし、モデル就業規則第70条記載の理由に該当する場合、企業は副業を禁止および制限できるとしています。
- 労務提供上の支障がある場合
- 業務上の秘密が漏えいする場合
- 競業により自社の利益が害される場合
- 自社の名誉や信用を失う行為、信頼関係を破壊する行為がある場合
参考:厚生労働省|「副業・兼業の促進に関するガイドライン」(平成30年1月策定・令和4年7月改定)
副業で得た収入の確定申告はいくらから必要?
副業をしていても確定申告をしてない人も多いようですが、所得によっては、確定申告を行い所得税の納付義務が生じます。
確定申告とは一年間に得た収入等に対して、所得税を自分で計算して申告・納税を行うことを指し、正しく実施するためには理解が必須です。いくらから確定申告が必要か詳しく解説します。
副業所得が20万円以上
確定申告が必要な判断基準は、所得額が20万円を超えた場合です。副業で得た収入ではなく、収入から経費を引いた所得額なので区別しましょう。以下は会社員と個人事業主(副業収入によっては個人事業主の場合と同様に考える)の収入と所得の違いをまとめました。
収入と所得の違い
| 収入 | 所得 | |
|---|---|---|
| 会社員の場合 | 1年間に受け取った給与・報酬・賞与など総額 | 収入から給与所得控除を引いた金額 |
| 個人事業主 | 1年間に受け取った現金や経済的価値のあるものの合計額 | 収入から経費を引いた金額 |
副業所得が20万円以下でも確定申告をした方がよい場合
副業で確定申告をしなくていい金額は、副業所得が20万円以下の場合です。しかし、20万円以下だから確定申告不要と考えるのは損かもしれません。確定申告をすることで、所得控除を受けたり税金の還付を受けたりできる場合があるからです。以下に確定申告をした方がよい例をまとめました。
| 確定申告をすることで還付や減税を受けられる | |
|---|---|
| 医療控除 | 1年間に支払った医療費が10万円を超えた |
| 雑損控除 | 災害や事故・泥棒などで資産に損害があった |
| 寄付金控除 | ふるさと納税等寄付をした |
| 住宅借入金等特別控除 | 住宅ローンを契約した初年度である |
| 退職所得控除 | 年の途中で退職した |
| 経常利益が赤字の事業主 | 青色申告では3年間の赤字繰越計上ができる |
副業の確定申告における所得区分とは
確定申告ではどのような方法で収入を得たかに応じて所得区分が定められています。以下は10種類の所得区分の概要です。所得区分によって必要書類や申請が異なる場合があるので、詳しく見ていきましょう。
| 各所得区分の内容 | |
|---|---|
| 所得区分 | 所得の内容 |
| 事業所得 | 商・工業や漁業、農業、自由職業などの自営業から生ずる所得 |
| 不動産所得 | 土地や建物、船舶や航空機などの貸付から生ずる所得 |
| 雑所得 | ・公的年金等の所得 ・原稿料、講演料やシェアリングエコノミーなどの副収入による業務所得 ・その他、他の所得に当てはまらない所得 |
| 給与所得 | 俸給や給料、賃金、賞与、歳費などの所得 |
| 配当所得 | 法人から受ける剰余金の配当や上場株式等に係る配当等の所得 |
| 利子所得 | 国外で支払われる預金等の利子や特定公社債の利子、預貯金の利子などの所得 |
| 山林所得 | 所有期間が5年を超える山林(立木)を伐採して譲渡したことなどによる所得 |
| 譲渡所得 | ゴルフ会員権や金地金、機械などの譲渡、土地や建物、借地権、株式等を譲渡したことによる所得 |
| 一時所得 | 生命保険の一時金、賞金や懸賞当せん金、一時払の養老保険や損害保険などによる所得 |
| 退職所得 | 退職所得 退職金、一時恩給、確定給付企業年金法および確定拠出年金法による一時払の老齢給付金などの所得 |
事業所得
副業の収入源が事業所得に該当する場合は、事業所得として申告しますが、売り上げや経費などを帳票に残す必要があります。事業所得は青色申告の対象であり、帳簿の作成や帳票の保存により、節税対策に役立つ場合があります。
2022年の所得税基本通達の一部改正では、帳簿や書類を作成し保存していれば、本業・副業に関係なく、概ね事業所得として認められるとしています。
参考:国税庁|「所得税基本通達の制定について」の一部改正について(法令解釈通達)
雑所得
雑所得とは、公的年金や副業による臨時的・単発的な収入など、他9つの所得区分に該当しない所得を指します。上記事業所得で記載したように、帳票の作成や保存等があれば、事業所得に区分される場合もあります。
また、法改訂により3年にわたる副業による雑所得が年間300万円を超える場合は、書類の保存が義務付けられましたので、帳票類の作成や保存を習慣づけることが必要です。
参考:国税庁|No.1300 所得の区分のあらまし
参考:国税庁|雑所得の範囲の取扱いに関する所得税基本通達の解説
給与所得
給与所得とは、会社や組織と雇用契約を結び、労働の対価として受け取る給与・賞与などの所得を指します。本業とアルバイト等副業の両方で年末調整した場合は、確定申告により再計算され、過払い分の税金の還付を受けられる場合があります。
参考:国税庁|No.2520 2か所以上から給与をもらっている人の源泉徴収
不動産所得
不動産所得とは、土地や建物などの貸付等により得た収入を指します。本業以外でアパート経営等をしている場合は、本業の源泉徴収税額とあわせて不動産所得の申告が必要となります。
参考:国税庁|No.1370 不動産収入を受け取ったとき(不動産所得)
所得区分に応じて、できる確定申告の種類は異なる
確定申告には青色申告と白色申告があります。青色申告は事業所得・山林所得・不動産所得がある方が対象です。副業で青色申告を受ける場合の方法と青色申告のメリットを見ていきましょう。
副業で青色申告する場合
青色申告を受けるには、事前に「青色申告承認申請書」を提出して承認を受ける必要があります。青色申告は、最大65万円の青色申告特別控除が受けられるほか、専従者給与の経費算入や赤字の3年間繰越計上など、節税効果が大きい申告方法といえます。ただし、正規の帳簿作成など条件があり、副業の場合でも帳票整理を習慣づける必要があるでしょう。
副業では雑所得に区分される場合も多いですが、雑所得ではなく事業所得と認められた場合は、青色申告という大きなメリットを受けることができます。
参考:国税庁|始めてみませんか?青色申告
副業の確定申告のやり方
ここからは、確定申告のやり方を手続きの流れにそって解説します。
副業の確定申告に必要な書類
副業の確定申告には、次のような書類が必要です。他にも、状況に応じて申請書や必要書類がありますので、確認しながら漏れのないように準備しましょう。
| 確定申告に必要な基本的な書類 | |
|---|---|
| 書類 | 内容 |
| 確定申告書 | 所得金額・控除額・税額等を記載したもの |
| 本人確認書類 | マイナンバーカード、または、以下の①②から1点ずつ ①通知カード、個人番号が記載された住民票 ②運転免許証、健康保険証、パスポート 等 |
| 雑所得 | ・公的年金等の所得 ・原稿料、講演料やシェアリングエコノミーなどの副収入による業務所得 ・その他、他の所得に当てはまらない所得 |
| 源泉徴収票 | 本業で源泉徴収をした場合(提出は不要) |
| 所得税額がわかるもの | ・事業所得の内訳を記載した収支内訳書等 ・その他、収入を証明する書類 |
| 各種控除申請に必要な書類 | 各種控除ごとに必要な書類 (ただし、年末調整で申告済の書類は添付不要) |
| 銀行口座がわかるもの | 預金通帳やカード等(還付金受取りの窓口となる口座) |
確定申告書の作成方法を決める
次に確定申告書の作成方法を決めます。手書きやWeb上での作成などもあり、自分の得意な方法を選びましょう。
手書きで作成する
確定申告書を最寄りの税務署までもらいに行くか、国税庁のホームページからダウンロードして取得します。1年間の収入や経費等をまとめておき、各項目に記入します。本業の源泉徴収税額も忘れずに記入しましょう。
手書きの場合は、全体の収支状況が見やすいメリットもありますが、計算ミスや書き間違い等に気をつける必要があります。
確定申告書作成コーナーを利用する
国税庁が運営するサイトを活用する方法で、ガイドにそって入力することで、確定申告書の作成が可能です。マイナンバーカード等で個人を確定し、印刷したりそのままe-Taxで送信(申告)したりもできます。スマートフォンにも対応しているので、手軽に確定申告書の作成ができます。
参考:国税庁|確定申告書等作成コーナー
会計ソフトを活用する
日々の会計状況を管理できるソフトを活用する方法です。ソフトによっては確定申告書の作成もでき、e-Taxに連動させ申告ができるものもあります。年末に計算してみたら、確定申告が必要な収入に達していたが、経費を証明できる書類がないなどと慌てることがないように、会計状況を把握することが重要です。
専門家へ相談・依頼する
税理士に依頼すれば、複雑な税務処理や節税対策も含めて正確な申告が可能です。費用はかかりますが、会計が苦手な人や時間がない人にはおススメです。
確定申告書の書き方
最初に1年間の収入や経費、控除金額等を取りまとめて合計金額を出しておきます。確定申告書のそれぞれの欄に対応する金額を記載し、確定申告書内にある指示に従い計算します。詳しくは以下の記事をご覧ください。
参考:国税庁|給与所得者(年末調整済)の記載例
確定申告書の提出方法
確定申告書の提出には、税務署に持参・郵送・e-Taxの利用などがあります。郵送では、特例として投函日が提出日扱いにできるので、期限がギリギリの際は便利です。しかし、書類不足や記載ミスがあると差し戻される場合もあり念入りな準備が必要です。
それぞれのメリットとデメリットを以下にまとめましたので、自分にとってどの方法がよいか参考にしてください。
| 各提出方法のメリット・デメリット | ||
|---|---|---|
| 方法 | メリット | デメリット |
| 税務署へ持参 | 不明点や記載ミスの確認ができる | 開庁時間内に持ち込まなければならない |
| 郵送 | 遠方の税務署へ行かずとも最寄りの郵便局から投函できる | 不明点や記載ミス、書類不足等があった場合、2度手間になる |
| e-Tax | 24時間利用でき、効率よく申告できる | 操作に不慣れな人にとって初期設定に時間がかかる |
参考:国税庁|スマホで確定申告(副業編)
副業で確定申告しないとどうなるか
副業だから確定申告をしなくていいわけではありません。収入を得たならば、正しく申告し納税をしましょう。以下は確定申告や納税をしなかった場合のデメリットです。
確定申告をしないと罰則もある
確定申告をしないと、無申告加算税や延滞税、重加算税などのペナルティが科されます。これらの税率は非常に高く、青色申告特別控除の減額などもあり、よいことは一つもありません。以下はそれぞれの罰則の詳細です。
| 確定申告・納税をしない場合の罰則 | |||
|---|---|---|---|
| 無申告加算税 | 申告期限が過ぎても申告しなかった場合 原則、納付すべき税額に対して50万円までは15%、50万円を超える部分は20%、300万円を超える場合は30%の割合を乗じて課される | ||
| 延滞税 | 所得税が定められた期限までに納付されない場合 無申告加算税に加え、延滞税もかかる | ||
| 重加算税 | 重加算税は税務署から調査を受けた際、悪質と判断された場合 無申告加算税等に代えて課される場合の重加算税の税率は40% | ||
その他副業する際の税の疑問
副業には、所得税の確定申告以外にも、住民税や消費税が関わる場合があります。これらの疑問について解説します。また、納税することで本業企業にバレるのではないかという疑問にもお答えします。
確定申告しなくていい金額でも住民税はかかる
副業所得が20万円以下の場合、特例として確定申告はしなくてもよいとされています。しかし、居住地域の市県民税にあたる住民税は、収入を得た場合、20万円以下でも申告しなければなりません。住民税の申告は、区役所や市役所など市区町村の役所で行います。ただし、確定申告を行っている場合は、そのデータをもとに市区町村が住民税を決定するため、住民税の申告は不要です。
副業によっては消費税の申告が必要な場合がある
適格請求書発行事業者は、消費税の納税が必要です。例えば、インボイス制度に対応している取引先と契約した場合や、自分が適格請求書発行事業者への登録申請を行っている場合、副業でも消費税を納める義務が生じます。確定申告をしなくていい所得金額でも、赤字でも、課税売上があれば消費税の納付が必要です。課税事業者である場合は、消費税分の余力を残す必要があるでしょう。
本業企業が副業禁止の場合バレる可能性がある
副業禁止の企業に勤めている場合、副業がバレる心配があるでしょう。その可能性があるのは、所得税の源泉徴収と住民税の月割税額が毎月の給与から差し引かれる際に、企業が支払う給与の税率よりも多い場合です。副業の住民税等を、別途自分で納税するように申請することで解消できます。確定申告や住民税の申告を正しく行い、バレる可能性を回避できる申請を講じれば安心です。
まとめ
副業で得た収入についても確定申告が必要な場合があります。納税だけでなく、節税対策や還付金を受け取るためにも重要です。申告や納税を行うためには、確定申告への理解が必要ですので、この記事を参考にしていただけると幸いです。












