なぜ社員は最低限しかやらない働き方を選ぶのか?静かな退職の心理と企業の対応策


はじめに
- 静かな退職とは、日々淡々と最低限の業務をこなすだけの働き方
- 静かな退職を選択すると企業全体に影響を及ぼす
- メリットは、プライベートの時間を存分に確保でき、心身ともに疲労が少ないこと
- デメリットは、仕事へのモチベーション低下や職場内の人間関係に亀裂が入ること
- 企業側の対策法はワークライフバランスを整えたり適正な評価を下したり、社内でコミュニケーションを活性化させるとよい
静かな退職とは、一体どのような内容なのでしょうか。この記事では静かな退職を選択する理由や、メリット・デメリットについて解説しています。また、静かな退職を選択することによる企業への影響や対策法もあわせて解説していますので、ぜひ参考にしてみてください。
静かな退職とは
仕事へのやりがいや情熱を持たずに、日々必要最低限だけの業務を淡々とこなすだけの働き方を静かな退職と呼びます。退職とつきますが、実際に仕事を辞めるのではありません。昇進やキャリアアップを目指さず、業務に対して積極性を示さないまま企業に在籍し続ける状態を指します。
この言葉は、アメリカのキャリアコーチであるブライアン・クリーリー氏が、SNSで「Quiet Quitting」と発信したことをきっかけに広まりました。主に1990年代半ばから2010年代序盤生まれのZ世代を中心に浸透しています。
静かな退職と選択する原因や背景・心理・影響とは
静かな退職を選択する人が増えているのは、さまざまな理由があります。詳しく見ていきましょう。
評価制度への不信感と意欲の低下
評価や昇進の基準が不透明だと、従業員は努力が正当に報われないと感じ、モチベーションを失いやすくなります。特に成果主義の職場では、上司との相性や主観が影響しやすく、不公平感が積もります。その結果、積極的な発言や挑戦を避け、仕事への関心を徐々に失った従業員が静かな退職を選択する場合もあるでしょう。
過度な業務負担とメンタル疲労
人手不足や過剰な業務量が続くと、従業員は慢性的な疲労とストレスを抱えます。努力しても改善されない環境では、頑張っても報われないという無力感が強まり、心理的な防衛として静かな退職が起こりやすくなるのです。
また、核家族や共働き家庭が増えた現代では、家事や育児の両立も課題となります。プライベートの時間を確保するため、業務負担を軽減したいと考え、静かな退職を検討する人も出てくるでしょう。
こうした状態が放置されると、離職やメンタル不調といった深刻な問題に発展する恐れがあります。
上司・同僚との関係悪化による孤立
職場での人間関係の悪化も、静かな退職の大きな要因です。上司との意思疎通が不足していたり、チーム内で疎外感を覚えたりすると、「この職場には自分の居場所がない」と感じやすくなります。孤立感が強まるほど仕事への意欲も低下し、最低限の業務しかしなくなるという負の連鎖を生むことがあります。
静かな退職をするメリット・デメリット
静かな退職を選択することは、メリットとデメリットの両方があります。どちらの内容もしっかりと押さえておきましょう。
静かな退職をするメリット
静かな退職を選択する最大の利点として、必要最低限の業務にとどめるため、プライベートの時間をきちんと確保できることがあげられます。残業や過度な業務負担が減って心身の疲労も軽減され、規則正しい生活リズムを維持しやすくなり、精神の安定にもつながります。仕事とプライベートの切り替えが明確になり、趣味や学習に時間をあてられ、自己投資の機会も広がるでしょう。
静かな退職をするデメリット
静かな退職には、さまざまなデメリットもあります。最低限の業務しか行わないため、仕事を通じた成長の機会を逃し、キャリア形成が停滞してしまう恐れがあるでしょう。また、周囲から不公平感を抱かれやすく、人間関係が悪化を招く要因になりかねません。さらに組織全体の士気も下げ、やる気のある従業員の意欲を奪ってしまう場合もあります。その結果、優秀な人材が他の企業に流失してしまうリスクを抱えることになります。
静かな退職を防ぐには?企業側にできること
静かな退職はZ世代を中心に広がっており、放置すれば企業の成長や組織力の低下を招く深刻な課題となります。生産性の低下や人間関係の悪化、人材流出といったリスクを避けるためにも、企業は早急に具体的な対策を講じる必要があるでしょう。
- ワークライフバランスを整える
- 業務の評価を適正に行う
- 積極的にコミュニケーションを取る
ワークライフバランスを整える
従業員が安心して働ける環境を整えるには、ワークライフバランスを重視した制度の導入が不可欠です。在宅勤務の導入や時差出勤、育児休暇の拡充などを実施することで、従業員のライフステージに応じた働き方が可能になります。プライベートの充実によって集中力や向上心が高まり、組織全体の効率や成果の向上へとつながるでしょう。
業務の評価を適正に行う
従業員のモチベーションを維持するためには、公平かつ透明性のある評価制度が重要です。基準が曖昧だと不満や不公平感が生まれ、静かな退職の選択や優秀な人材の離職リスクも高まります。業務や成果を正当に評価し、努力を適切に認めることで社員は安心して力を発揮でき、組織の信頼関係を強化しながら業務効率や成果の向上にもつながります。
積極的にコミュニケーションを取る
社内のコミュニケーションを強化することも、静かな退職を選択する従業員の予防に有効です。定期的な一対一のフィートバックの場を設け、従業員の意見や不満を早期に発見・解決することで、信頼関係が深まり、職場全体の一体感が生まれます。社内の密なコミュニケーションは、業務全体の質や効率を高め、働きやすい職場づくりに直結します。
まとめ
静かな退職とはZ世代を中心に広がっている考え方で、仕事へのやりがいや情熱を持たずに、日々淡々と最低限の業務をこなすだけの働き方を指します。プライベートの充実といったメリットがある一方で、人間関係の悪化やモチベーションの低下などのデメリットも考えられます。
静かな退職を選ぶ従業員を防ぎ、企業が成長を続けるためには、ワークライフバランスの整備や公正な評価、積極的なコミュニケーションといった取り組みを早急に行う必要があるでしょう。社員が安心して働ける環境を整えることは、結果的に業務効率を高め、企業全体の成長につながります。












