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進化する男性育休!通達・取得促進の義務化と助成金や法改正について解説

date2025年09月17日
進化する男性育休!通達・取得促進の義務化と助成金や法改正について解説
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はじめに

  • 男性育休は、子が1歳になる前日まで男性労働者が取得できる育児休業制度
  • 企業は男性従業員への育休制度の通知と取得促進を義務付けられている
  • 男性育休は女性の帰属意識やキャリアアップ形成を支援するための制度でもある
  • 企業側にもイメージ向上や若手人材の確保につながるメリットがある
  • 条件を満たしていれば、育児休業給付金の給付が受けられる

育休はかつて女性だけの特権というイメージがありましたが、現在では男性の取得も推奨される制度になりました。男性が育休取得を考えるとき、どのようなタイミングでとればいいのか? そもそも育休とは何か?悩む方も少なくないでしょう。
男性育休に関する法改正は、2022年から段階的に進められ、2024年には「共働き・共育て」に向けた法改正が実施されました。本記事では、給付金や法改正について解説しますので、夫婦協力の重要性と男性の育休取得を考えるきっかけにしてください。

男性育休とは?

男性育休とは、子を育てている男性労働者が育休を取得する制度のことで、「育児・介護休業法」に基づき定められています。いわゆる仕事と子育てを両立している労働者を支援する制度です。
2022年10月から、通常の育休とは別に、「出生時育児休業(別名:産後パパ育休)」が新設され、子の誕生後8週間以内に取得できる制度が導入されました。育休は男女問わず夫婦ともに取得でき、子育てを支援してくれます。

参考:厚生労働省|育児・介護休業法について

育休に対する考え方

女性の離職理由のひとつに「育児と仕事が思うように両立できず、復職しても継続することが困難である」という課題があります。男性が育児に参加することで、夫婦ともに帰属意識を高め、出産・育児を理由とする女性の離職率を減らすことを目的としています。
また、この制度は若い世代の出産や育児への意欲につながり、なおかつ職場における働き方改革に貢献できると期待されています。

育休と産休の違い

産休と育休の違いは以下の通りです

  • 産休(産前産後休業)

    妊娠した女性が、出産前6週間から出産後8週間までの期間で取得できる休業です。労働基準法に基づき、出産に臨む女性を保護する制度

  • 育休

    子の誕生後、男女ともに取得できる休業で、子育てを支援する制度

男性育休取得率と法改正

企業から従業員への通達・取得促進の義務化が2022年10月よりスタートし、男性による育休取得の認知度は広がっています。男性育休の取得率や、育休制度がどのように法改正されたのかについて、詳しく解説します。

男性育休取得率の実態

厚生労働省の「雇用均等基本調査」によると、2021年は女性の育休取得率が85.1%に対し男性の育休取得率は13.97%と低い数値でした。2022年以降、順次法改正が進み2024年には女性は86.6%と高水準を維持、男性の育休取得率は40.5%、さらに、産後パパ育休取得率も24.5%と、当初の政府目標である「令和7年までに30%に上げること」を大きく上回りました。男性がともに子育てに参加するメリットが周知された結果といえるでしょう。

参考:厚生労働省|令和6年度雇用均等基本調査
参考:厚生労働省|育児・介護休業法の改正について

法改正された内容

産後パパ育休へ法改正されて以降、男性の育休取得率は増加傾向にありますが、女性の取得率と比較するとまだまだ低いです。2024年の法改正では、男女ともに希望に応じた仕事と育児の両立を可能とすることが重要としています。残業をしない働き方など柔軟な働き方の選択肢を増やすことで、男性育休は当たり前の世の中を目指すとしているのです。では、育休制度のどの部分が法改正されたのでしょうか。詳しく解説します。

2022年度改正案と2024年度追加改正された内容

男性育休に関する現行法施行期日
概要
1. 出生時育児休業(産後パパ育休)の新設令和4年10月1日~
1. 休業の申し出期限は原則休業の2週間前まで
2. 分割して取得可能な回数は2回まで
3. 労働者と事業主の個別合意により事前調整した上で、休業中に就業することを可能とする(労使協定を締結している場合)
2. 育児休業を取得しやすい雇用環境整備及び妊娠・出産の申出をした労働者に対する個別の周知・意向確認の措置の義務付け令和4年4月1日~
1. 育児休業の申出・取得を円滑にするための雇用環境の整備に関する措置
2. 事業主が妊娠・出産(本人または配偶者)の申出をした労働者に対して、個別の制度周知及び休業の取得意向の確認義務
3. 育児休業の分割取得令和4年10月1日~
育児休業期間は分割して2回まで取得可能
4. 育児休業の取得状況の公表を義務付け令和5年4月1日~
雇用する労働者数が1,000人を超える事業主・企業に対し、育児休業取得状況の公表義務づけ
(令和7年4月から従業員が300人を超える企業も義務化されています)
5. 有期雇用労働者の育児・介護休業取得要件の緩和令和4年4月1日~
有期雇用労働者の育児休業および介護休業「事業主に引き続き雇用された期間が1年以上である者」という要件を廃止。労使協定を締結した場合、無期雇用労働者と同様に事業主に引き続き雇用された期間が1年未満である労働者を対象から除外可能とする

2024年度の法改正では、小学校入学前の子を養育する労働者に対しても、仕事と育児を両立するための施策が追加されました。2025年4月から段階的に施行しています。
以下が代表的な内容です。

  1. 所定外労働の制限(残業免除)の対象を拡大
  2. 短時間勤務制度(3歳未満)の代替措置としてテレワークを追加
  3. 柔軟な働き方をするための措置の義務化
  4. 仕事と育児の両立について、個別の意向聴取や配慮の義務化

参考:厚生労働省|令和3年改正法の概要
参考:厚生労働省|育児・介護休業法 改正ポイントのご案内 令和7(2025)年4月1日から段階的に施行

出産予定日がずれた場合はどうする?

育休を取得するタイミングやいつから取得できるのか、どのタイミングで就業先に報告するかなど疑問は多いでしょう。夫婦の状況に応じた育休取得のスタイルをそれぞれ選択することも可能です。ここからは、育休の男女別取得期間と状況に合わせた取得パターンを紹介します。

出産予定日が前後するパターン

基本、出産予定日を「育休開始日」として申請します。しかし、予定日に生まれるケースはごくまれです。予定日よりも早く生まれたり遅く生まれたりしたときの、申請方法について見ていきましょう。

予定日よりも早く生まれた場合

出産予定日よりも早く生まれた場合は育休開始日繰り上げの変更が可能です。しかし、育休開始日の1週間前に申請する必要があり、実際の休業開始は育休を申請した日から1週間後となります。

予定日より早く生まれた例

出産予定日が4/1で実際には3/22に生まれた場合、子が誕生した日(3/22)に申請し、その1週間後の3/27から育休を取得できます

企業にもよりますが、子の誕生後すぐ休業に入りたいときや第二子の出産で上の子の育児が必要な場合などは、勤務先企業と相談もしくは有給休暇を利用するなどの検討が必要です。

予定日よりも遅く生まれた場合

育休開始日を遅らせるといった規定がもともとないため、出産予定日より遅く生まれた場合は出産予定日からスタートします。出産予定日を過ぎても、育休期間は子が1歳の誕生日前日まで可能です。

予定日より遅く生まれた例

出産予定日が4/1で実際には4/8に生まれた場合、そのまま予定日(4/1)からスタートになります

法律上、育休開始日を遅らせる規定がないため、遅らせたい場合は勤務先企業と相談する必要があります。

参考:厚生労働省|男性の育児休業取得促進等に 関する参考資料集

育休取得のおすすめパターン

産後パパ育休制度では休業を2回に分割取得できるなど、さまざまなパターンで取得できるようになりました。また産後パパ育休と併用して育休も2回の分割取得ができ、最大で4回の分割取得が可能です。それぞれおすすめの取得パターンを紹介します。

1.一括で取得する場合

夫婦ともに子の1歳の誕生日の前日までの最大1年の期間を取得するパターンです。女性の場合は産休8週間の終了後からスタートし、男性の場合は子の出産予定日から育休がスタートします。夫婦ともに、誕生直後から1歳までの子の成長をじっくりと育みたい場合などにはおすすめです。

2.男性だけ分割取得する場合

男性もしくは女性のどちらかが、子が誕生から1年間育休を取得し、もう片方が必要な時期だけそれぞれ2回分割取得するというパターンです。たとえば、男性が業務上、長期的な育休取得が難しい場合に、計画を立てて下図のように産後パパ育休と併用して育休を分割取得(最大4回)することが可能です。

3.夫婦交互に分割取得する場合

夫婦で計画を立てて、2回交互で分割取得するパターンです。例えば、どうしてもお互いが仕事を長期的に休むのは困難、もしくは子の予防接種や1歳までの細やかな健診が立て込んでいて、夫婦間で分担や協力しあう必要があるときに便利です。一時的に復職しなければならない事情がある場合にも有効な取得方法いえるでしょう。

育休制度におけるメリット

産後パパ育休という制度へ法改正したことで、男性側(取得者)と企業側(経営者)にさまざまなメリットが生じます。男性育休によってどのような変化があるのか、男性側と企業側それぞれのメリットについて解説します。

男性側(取得者)の場合

男性も育児参加に意欲を高めることで夫婦それぞれが復職しやすくなり、キャリアアップや仕事へのパフォーマンス向上も望めます。育休を経て復職することは、収入の安定だけでなく多くのメリットがあります。以下3点について見ていきましょう。

1.家族と触れ合う時間が増える

子育てに対する不安や心配を共有しながら解決していくことで、家族と触れ合う時間が増えるメリットがあります。男性の育休取得により信頼関係を築き、復職後も助け合える関係を維持できます。なによりも、子の成長をお互いに共有しあえて笑顔も増えることでしょう。

2.育児への負担軽減と父親としての自覚

女性が家事と育児をすべて行う「ワンオペ育児問題」は体調や体力に限界を感じたり、復職へのモチベーションが下がったりとさまざまな悪影響を及ぼします。こうした問題を防ぐためにも、男性の育休取得は効果的です。
また、育休取得しなかった男性の多くは、子に関われる時間が少ないため子への愛情表現がむずかしい、もしくは父親としてどのように向き合えばよいか分からないといった課題がありました。育休取得により誕生から子育てに参加できることは、父親としての自信や自覚も育まれることが期待できます。

3.キャリア形成や帰属意識向上

若い世代を中心に、共に働き共に子育てをするという意識が高まっています。産後パパ育休や育休の制度を活用することは、自身の業務整理ができる上に職場における属人化を防ぐことも可能です。離れた視点で自分の業務内容を振り返ることでマニュアル化を浸透できるなどの利点があります。
また、お互いが育休を取得しやすくなれば離職せざるを得ない状況が避けられ、帰属意識が向上します。夫婦ともに育休期間中を資格取得へ活用すれば、キャリアアップにつながります。さらに世帯収入の安定というメリットも得られるでしょう。

企業側(経営者)の場合

次は、企業側(経営者)が従業員へ育休の通達や取得をさせることで得られるメリットについて解説します。

1.ワークライフバランス重視による若手人材の確保

仕事と私生活の両立を重視したワークライフバランスを目指す企業であれば、この企業で働きたいと意欲をもつ若手人材の確保につながります。育休推進のひとつに、子育て中の短時間勤務や残業免除への配慮などが義務づけされており、男性の職場環境の整備に力を入れる必要があげられます。これらを実践することで、就職希望者からプラス要素として認識されるでしょう。

2.柔軟な働き方改革と企業イメージ向上

男性も育休取得できる企業のイメージはよくなるといえます。2022年10月から「育児休業の取得の状況の公表の義務付け」が施行され、2025年4月からは従業員が300人を超える企業でも育休取得状況を公表する必要があります。取得率の高い企業なら、柔軟な働き方もできると評価されるでしょう。
企業全体のイメージアップを図ることは新しい働き方改革のひとつとして重要な要素になります。

3.助成金による給付が受けられる

中小事業主を対象とし、令和4年にスタートした「育児休業等支援コース(子育てパパ支援助成金)」の給付を受けられます。子育てパパ支援助成金とは従業員が育休取得し、休業期間を経て職場復帰した際に国から対象とする企業へ支給される助成金のことです。対象労働者が子の出生後、8週以内に育休開始し、一定数以上の育児休業を取得した場合に、1人目20万円、2人目・3人目10万円の給付が受けられます。
なお、同一の育児休業取得者の同一の育児休業について、育児休業等支援コース(育休取得時等)との併給できません。

参考:厚生労働省| 2025(令和7)年度 両立支援等助成金のご案内

給料がもらえない時の助成金給付

育休期間中は基本的に給料をもらえません。しかし育休の制度を賢く利用することで、社会保険料の免除や、休業前の賃金日額の67%が補える育児休業給付金等の助成金制度があります。育休と復職計画をもとに、育児休業給付金を正しく受け取りましょう。

育児休業給付金

「育児休業給付金」とは育休を取得した労働者で、受給資格条件を満たした雇用保険の被保険者を対象に受給できる制度です。2024年からは、出生後休業支援給付金、育児時短就業給付金が新設されました。
女性の場合は産後休業期間(産後8週間)を経た翌日から、子が1歳になる前日までの育休期間に支給され、男性は子が誕生した日から1歳になる前日までの育休期間が対象です。
注意点は、休業期間中の就業日数が一支給単位において、10日(就業時間80時間以下)以下であるという条件を満たす必要があります。その他の注意事項については下記URLをご覧ください。また支給金額の計算は、以下の通りです。

育児休業給付金の支給金額

  • 休業開始時賃金日額×支給日数×67%(育休開始日から181日目から50%)

    ※ただし、賃金日額には上限額があります。
    ※休業開始時賃金日額…育児休業開始前の賃金6カ月分を180で除した額

参考:厚生労働省|育児休業等給付について
参考:厚生労働省|育児休業等給付の内容と 支給申請手続2025(令和7)年8月1日改訂版

所得税・社会保険料の免除

日本年金機構では2022年10月から施行された「育児休業期間中における社会保険料の免除」の要件についてルールを変更しました。

育児・介護休業法による満3歳の子を養育するための育児休業等期間について、健康保険・厚生年金保険の保険料は、被保険者が育児休業の期間中に事業主が年金事務所に申し出ることにより被保険者・事業主の両方の負担が免除されます。

ただし、法改正後の免除における条件として1か月のうち14日以上、3歳未満の子を養育している場合に限られます。

参考:日本年金機構|令和4年10月から育児休業等期間中における社会保険料の免除要件が改正されました

まとめ

男性育休は男性の協力により女性の離職率を減らすだけでなく、就業先企業にも復職や若手人材の確保、働き方改革が進むなどの利点があります。相乗効果として、育児や家事の負担を分担し軽減することで、家族や家計に余裕と潤いをもたらすでしょう。
さらに2024年4月に追加で法改正された内容は、対象期間や制限の緩和もあり、育休取得と子育て環境の充実が図られています。育休制度を積極的に活用し、復職後の家庭生活の充実とキャリア形成を目指してください。

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