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残業時間の上限規制は?36協定や残業代の計算方法を解説

date2025年09月19日
残業時間の上限規制は?36協定や残業代の計算方法を解説
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はじめに

  • 残業時間の上限は基本月45時間以内・年間360時間を限度とする
  • 法定労働時間を超過する場合は36協定の締結・届け出が必要である
  • 36協定適用が猶予・除外されていた業種も2024年4月より原則対象である
  • 残業代の計算方法は「残業時間×1時間あたりの基礎賃金×割増率」である
  • 時間外・休日労働は必要最小限に留め、残業をコントロールしよう

労働基準法には残業時間の上限規制がありますが、規制内容が細かいうえ、度重なる改正で分かりにくいと思うことはないでしょうか。
本記事では36協定も含めた残業における上限規制や目的などの理解を助けるため、詳しく解説していきます。

残業時間には上限があるのか?

労働時間の基準は労働基準法で決められており、基本の労働時間は1日8時間・週40時間までとされています。これ以上の時間を働く、つまり残業をするには労使間で36協定の締結が必要です。36協定を締結すると、「月45時間・年間360時間を限度とした残業」をすることが可能になります。したがって、一般的な残業時間の上限は月45時間・年間360時間です。

36(サブロク)協定とは

36(サブロク)協定とは、企業が時間外労働または休日労働を命じる場合に、あらかじめ労働者と経営者あるいは会社代表間で協定締結することを指します。労働基準法第36条に定められた労使間協定であり、締結したのちに労働基準監督署へ届出をする義務があります。

36協定締結の有無で、労働時間の上限規制は次のように変わります。

36協定の有無労働時間の上限
未締結・1日8時間・週40時間の法定労働時間を超過する残業はできない。法定休日に労働ができない
一般条項の締結・月45時間・年間360時間を上限とし、残業ができる
特別条項の締結・法定休日労働を含む月100時間・法定休日労働を除く年間720時間を超過する残業はできない
・年6回に限り月45時間を超過する残業ができる(法定休日労働を除く)
・・2~6カ月の平均80時間(法定休日労働含む)を超過する残業はできない

参考:厚生労働省|36協定で定める時間外労働及び休日労働について留意すべき事項に関する指針

上の図は、9時から17時までで雇用契約を結んだ労働者における労働時間の考え方です。
労基法で決められた1日8時間・週40時間の労働時間のことを法定労働時間といい、この例では9時から17時までが雇用契約で取り決められた所定内労働時間です。18時まで残業したとき、労基法に定められた1日8時間・週40時間の労働時間内に収まるため、法定内外残業時間となります。これ以降の労働は法定労働時間の枠外となるため、36協定未締結の場合、18時以降の残業はできません。18時以降の残業をおこなうには、労使間で36協定の締結が必要です。

働き方改革による残業時間の上限規制

働き方改革関連法の施行により、大企業は2019年4月から、中小企業は2020年4月から、36協定を結んだ上での労働についても時間外労働が規制されることとなりました(前述の労働時間上限の一覧表は、この改正を反映しています)。
働き方改革関連法は、労働者の事情に応じて選択できるよう、柔軟な働き方の選択肢を増やす目的で施行されました。

  • 女性や高齢者の労働参加率の向上
  • ワークライフバランスの改善

この2つを向上させるために、残業時間の上限規制が強化されています。こうした上限規制は、過労死のリスク軽減にもつながるのです。

参考:厚生労働省│「働き方改革」の実現に向けて

上限規制の適用の猶予が終了

前述の通り働き方改革関連法により残業時間の上限が設けられました。しかしながら、建設業や配送業といった一部の業種では、深刻な人手不足を理由に猶予期間が設けられ、適用されていませんでした。
この猶予期間は2024年4月にて終了となり、現在では研究開発職を除いて、原則残業規制の対象となっています。

業種職種内容2024年3月までの
適用内容
2024年4月からの
適用内容
建設業修繕・解体・建設
災害時のインフラ復旧や復興業務
上限規制の適用外対象原則として上限規制が適用される。ただし災害復旧・復興事業など特別の事情がある場合は
・時間外労働月100時間未満
・2~6か月平均80時間以内は適用されない
運送業トラック・バス・タクシーのドライバー年960時間、時間外労働の回数上限なし特別条項付きの締結を締結する場合、年間時間外労働上限は960時間となる。なお、
・時間外労働月100時間未満
・2~6か月平均80時間以内
・時間外労働月45時間を超過できるのは年6か月までとする
は適用されない
医師医師(歯科医師・獣医師を除く)2024年4月まで
上限規制は猶予
医師(勤務医)は時間外労働の上限規制が適用され、年960時間の上限が適用される。なお、特別条項を締結する場合、年間時間外労働上限は1860時間となる
砂糖
製造業
鹿児島県や沖縄県など離島にある砂糖製造業2024年4月まで上限規制は猶予上限規制が適用される
研究
開発業務
新技術・新商品・新サービスの研究開発に携わる従業員業務の特殊性により36協定の適用除外対象業務の特殊性により36協定の適用除外対象(変更なし)

厚生労働省のパンフレットで、2024年4月以降の残業規制上限規制について説明されています。

参考:厚生労働省|時間外労働の上限規制 わかりやすい解説

残業代の計算方法は?

残業代の計算方法は以下で算出します。

  • 残業代=残業時間×1時間あたりの基礎賃金×割増率

    【月給制の例】月給26万円、所定労働時間8時間、所定労働日数22日の場合で1時間あたりの残業代
    1時間あたりの基礎賃金=月給26万円÷所定労働日数22日(176時間)=1,477円
    1時間あたりの残業代=1,477円×1.25(割増率25%)×1時間=1,846円

また、1時間あたりの基礎賃金の求め方は給与形態によって異なります。

  • 月給制の場合「月給額÷1カ月の所定労働時間」
  • 年俸制の場合「年俸額÷12カ月÷1カ月平均所定労働時間」
  • 日給制の場合「日給額÷1日の所定労働時間」
  • 時給制の場合「時給額が1時間あたりの基礎賃金」
  • 歩合給の場合「歩合給の一か月総額÷1カ月の所定労働時間(歩合給+固定給の場合はその部分を含めて計算)

    ※割増率は労働時間の種類によって異なる

残業上限における規制違反例

上限を超過しての残業をすると労働基準法違反として処罰が科されます。つまり、働く側に過度な残業をさせた事実が発覚した場合、企業のみならず労務管理責任者も罰則の対象になり得るのです。労働基準監督署から行政指導として是正勧告を出され、最悪、報道を通して企業名が世間に知れ渡る可能性が高まります。
では、どのようなケースであれば処罰対象となるのかについて、以下を参考にしてみましょう。

36協定締結せずに残業すると?

36協定を締結していない状態で時間外労働をしてしまうと、違反の対象になり得ます。もし、労使間で合意あるいは働く側が納得して時間外労働をしていた場合でも、このことと36協定締結とは別問題です。時間外労働が発生する場合は所轄の労働基準監督署への届け出が必要になるため、かならず締結しておきましょう。

年間6回以上 時間外労働45時間を超えたら?

特別条項付きで締結した場合でも、残業が月45時間を超えるのは年間に6回までと決められています。そのことから1年のうちの6カ月は月に45時間に収めなければなりません。超過した場合は法律違反とみなされます。

特別条項の上限時間を超過すると?

特別条項付きの上限時間を超過しての残業をした場合は、6カ月以下の懲役または30万円以下の罰金が科されます。同様に労働基準監督署へ届け出なかった場合も30万円以下の罰金を払わなければならなくなるため、特別条項付きの36協定について十分に理解しておく必要があるでしょう。

36協定における留意点と対処方法

多くの企業では残業による健康上リスクを避けるために、安全配慮義務が課されています。上手に残業をコントロールしておくことは、36協定を締結する上で重要なことでもあるのです。

時間外・休日労働は必要最小限に留める

時間外や休日労働について厚生労働省は以下のように指針を設け、労働時間の適正を図りました。
「労働基準法第36条第1項の協定で定める労働時間の延長および休日の労働について留意すべき事項等に関する指針」
上記に記載されている指針2条では「時間外労働・休日労働は必要最小限に留める」とされています。

参考:厚生労働省|労働基準法

健康と福祉を確保しておく

特別条項付きの36協定を締結している場合、上限時間を超えて働く側の健康や福祉を確保しなければなりません。確保するための措置として、以下の5点を抜粋して紹介します。

  • 医師や産業医の面接指導を受ける
  • 代休や特別休暇を取得する
  • 心とからだの相談窓口を利用する
  • 適切な休憩時間をとる
  • 健康診断を受診する

上限を超過した労働はかえって健康上のリスクを高めてしまいかねないため、上記の措置内容を上手に利用することにより、適切な時間外労働で安心して働けるでしょう。

まとめ

残業時間の上限について理解いただけたでしょうか。労働基準法が定められている36(サブロク)協定を労使間で締結することにより、適切な時間外での残業をすることが可能です。また法定労働時間が月100時間を超えた場合は医師による面接が義務付けられます。義務に違反した場合、罰則の対象となる可能性があるため、自分でも労働時間を把握して管理していく必要があるといえます。もし、自分の残業時間に疑問があった場合はそのままにせず、上司や労務管理責任者に相談しておくと良いでしょう。

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