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黒字倒産はフリーランスも要注意|資金繰りと回避策を解説

date2025年11月20日
黒字倒産はフリーランスも要注意|資金繰りと回避策を解説
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はじめに

  • 黒字倒産とは、黒字経営であるにも関わらず倒産に追い込まれてしまうこと
  • 半年間で不渡りを2回以上出すと事実上の黒字倒産となる
  • 黒字倒産の回避に備えて、キャッシュフローや資金繰りを把握しておく
  • 黒字倒産とよく似た言葉に黒字廃業や赤字倒産などがある

利益が出ている(黒字)にも関わらず、倒産に至ることがあります。
なぜ、黒字なのに倒産してしまうのでしょうか。

黒字倒産を回避するには、キャッシュフローや資金繰りの把握が欠かせません。
この記事では、黒字倒産が起こる原因と対策および、回避方法などを解説します。

黒字倒産とは?なぜ起こる?

黒字とは、決算時に作成する損益計算書内で、収益>支出(収益が支出を上回ること)になることです。事業に必要な費用などを差し引いても、利益が出ている状態を指します。

一方、黒字倒産とは、損益計算書では黒字であるにも関わらず、企業が倒産に至ることです。
黒字倒産に至る原因はさまざまですが、背景には銀行取引停止処分が下ったり、過剰在庫を抱え過ぎたりしているケースが多いです。

黒字廃業との違い

黒字倒産とよく似た言葉に黒字廃業があります。黒字廃業とは、損益計算書では黒字であるにも関わらず事業が継続できなくなり、廃業を選択することです。
黒字倒産と異なり、黒字廃業の背景には事業承継者不足の問題が絡んでいます。そのため、少子高齢化が進んでいる近年の日本では、今後多くの経営者が直面する課題ともいわれています。

黒字廃業を回避する対策の1つには、しばしばM&A(第三者への引き継ぎ)が挙げられています。M&Aとは親族や従業員へ承継せずに、第三者へ事業を引き継いでもらうことです。M&Aを選択することにより、事業承継者の問題が解決するだけでなく、売却した株式の譲渡対価を受け取ることも可能となります。

赤字倒産との違い

赤字とは収益<支出のこと(支出が収益を上回り経営が悪化すること)です。赤字倒産とは赤字経営から、倒産に至ることです。
赤字決算や債務超過(負債額が資産額を上回る状態)になると金融機関からは融資を受けにくくなります。

一方で、赤字経営企業には、法人税の支払い免除および還付などの救済措置が設けられています。そのため、必ずしも赤字経営が倒産に直結するとは限りません。
赤字経営であるか否かよりも、資金不足や承継者不足の問題の方が、倒産リスクを高めるという見解もあります。

黒字倒産に至る5つの原因とそれぞれの対策

以下では、黒字倒産の原因と対策について解説します。

原因:半年間で2回以上不渡りを出す

取引額が大きくなる事業者間取引(BtoB)では、小切手や約束手形を用いるケースがあります(※紙の手形・小切手は全面的な電子化が進んでおり、2027年3月末までに利用できなくなる可能性もあります)。
その際に、不渡りを6か月間で2回以上出すと振出人の信用問題に関わります。不渡りとは、小切手や約束手形を振り出す際に、振出人の当座口座から引き落せない状態のことです。

不渡りの種類は以下の3つに分類されます。

種類特徴原因
0号不渡り不渡り扱いにならない
振出人の信用問題とは関係ない不渡りのこと
呈示期間(手形や小切手を受け取れる)が過ぎてしまった・手形や小切手の形式に不備があったなど
1号不渡り不渡り扱いになる
振出人の信用問題に関わる不渡りのこと
振出人の当座預金の残高不足・口座解約など
2号不渡り不渡届は作成されるが異議を申し立てられる
0号不渡りにも1号不渡りにも該当しない不渡りのこと
盗まれたり騙されたりして振り出した手形や小切手がある場合(「不渡届」は作成されるが、当座預金の残高不足が原因ではないため異議を申し立てられる)

黒字倒産を引き起こす原因となる不渡りは、一般的に1号不渡りを指します。
6か月間で2回以上1号不渡りを出すと、銀行取引停止処分が下ります。同時に、金融機関からの融資が受けられなくなるため、経営難は免れません。また、世間からも事実上の黒字倒産と見なされてしまいます。

対策1:手形のジャンプや過振りを交渉する

取引先に代金を支払えない場合は、手形のジャンプや過振りなどの交渉を視野にいれましょう。手形のジャンプとは、振出側が受取側に約束手形の支払期日の延長を交渉することです。
手形のジャンプの交渉は、取引間で行われるため、金融機関に知られることはありません。
交渉成立後は、手形を返却してもらい、別の期日に書き換えた約束手形を新たに振り出しましょう。

一方、過振りとは、当座預金の残高が不足している際に、銀行が支払代金を一時的に立て替えることです。手形のジャンプや過振りは、必ずしも取引先や銀行が対応してくれるとは限りませんが、万が一に備えて知っておくと安心です。

対策2:決済用の当座預金口座と資産運用用口座は金融機関を分けておく

決済用の当座預金口座と資産運用口座は、それぞれ別の金融機関に分けておくと安心です。不渡りを発生させた場合、銀行は貸し倒れが発生しないように他の口座を凍結することがあります。

また、同一銀行内の資産運用口座(貯蓄口座)を、融資の担保にしていた場合は、融資を打ち切られてしまいます。

原因:多額の買掛金や売掛金の未回収がある

買掛金とは、後日に支払う商品やサービスの代金(掛金)のことであり、売掛金とは、後日に受け取る商品やサービスの代金(掛金)のことです。掛金が大きくなるほど、買手にも売手にも黒字倒産のリスクは高まります。

先述した通り、1号不渡りを半年間で2回以上発生させてしまうと、振出人は銀行から取引停止処分を受けてしまいます。一方、未回収の金額が嵩むほど、受取人は経営が苦しくなりがちです。両者の立場は真逆ですが、どちらの企業も経営の悪化につながります。

対策1:回収サイトや支払サイトの期日を交渉する

資金繰りを悪化させないためには、回収サイトを短くして支払サイトは長くするように工夫しましょう。
回収サイトは、商品やサービスの代金が支払われるまでの期間を指し、支払サイトは商品やサービスの代金を支払うまでの期間を指します。
ただし、支払側と受取側の希望は相反するため、両者がそれぞれの期間の目安を把握したうえで交渉するようにしましょう。

以下に、一般的な回収サイトと支払サイトの目安を解説します。

  • 回収サイトの目安:15~30日
  • 支払サイトの目安:60日以内

対策2:他の取引で相殺できないかを確認する

支払日までに代金を用意できない場合は、他の取引で相殺できないかを確認しましょう。

たとえば、A社(買手)がB社(売手)に支払わなければならない買掛金500万円があったとします。しかし、A社は期日までに代金を用意できそうにありません。こちらを仮に取引1とします。
取引1のあとに、B社(買手)がA社(売手)に対して600万円を支払わないといけない取引2が発生したとします。
この場合、取引1と取引2の代金を相殺して、A社はB社から100万円だけ受け取ることも可能です。
ただし、取引先の同意を得ずに、代金を相殺することは避けましょう。

原因:過剰在庫を抱えている

過剰在庫の抱え過ぎは、黒字倒産を引き起こす原因につながります。
過剰在庫とは、必要以上に在庫を保管・所持していることです。過剰在庫は経営不振に陥る原因にもなります。

過剰在庫は主に、発注ミスや需要予測の誤りなどから発生します。いずれにせよ、倉庫代や人件費などのコストに直結するため、注意が必要です。

対策1:在庫を見える化する

過剰在庫を抱え込まないためにも、日頃から在庫の見える化を意識しましょう。
見える化とは、モノや情報などを誰もが即座に確認・把握できる状態を指します。在庫を見える化する際は、現物と情報を分けて整理していくことが大切です。ここでの現物とは商品そのもののことで、情報とは在庫数や商品の移動先など、データとして管理できるものを指します。

現物の見える化では、いつ・どこに・どの商品を保管するかというルールを決めるだけでなく、関係者全員の協力が不可欠です。また、情報の見える化では商品にバーコード・ICタグ・GPSなどをつけることでトラッキングが可能となり、正確な在庫数や場所などが把握できるようになります。

対策2:処分する

過剰在庫を抱えすぎる前に、処分することも検討しましょう。

処分方法には、以下のような方法があります。

  1. 廃棄する
  2. 当初の価格よりも値下げして販売(セール・アウトレット)する
  3. 買取り業者に売却する
  4. 取引先や知人などに売却する
  5. 販売サイトやSNSなどで個人に直接売却する

原因:設備への過剰投資

事業拡大に伴い、設備投資を行うこともあるでしょう。
しかし、極端な投資は経営難を招き、黒字倒産へとつながります。

また、その際に融資を受けると債務や支払利息にも追われてしまいます。いずれにせよ、事業の拡大は慎重に進めていきましょう。

対策1:事業規模に見合った投資額・借入金額を先に設定しておく

事業拡大の前には、事業規模に見合った投資額・借入金額を先に設定しておきましょう。
その際は、今後の売上見込額だけを予測するのではなく、売上高に対する利益の割合(利益率)まで意識しておくことが大切です。

また、国や地方自治体からは、事業の支援に関する補助金・助成金・給付金などが支給されることもあります。種類や申請方法に関しては、国や地方自治体のサイトをチェックしておきましょう。

対策2:資金の調達先を複数確保しておく

金融機関から融資を受ける際は、審査に時間がかかります。申し込みの手続きは早めに行っておきましょう。また、融資を謝絶されることもありますので、資金の調達先は複数確保しておくことが大切です。

融資が通らなかった場合は、代替手段としてファクタリング(債権買取)や手形割引なども検討しましょう。ファクタリングとは簡潔にいうと、売掛先企業の支払い代金を、ファクタリング会社が債権譲渡・買収して、自社に振り込んでくれるサービスのことです。

一方、手形割引とは受け取った手形を支払期日前に現金化できるサービスのことです。買い手が振り出した手形を売り手が受け取ったあと、銀行や手形割引業者に買取依頼することで支払期日よりも前に現金化できます。

手数料はどちらも発生しますが、回収日よりも前に売上金を現金化できるというメリットがあります。

原因:借入金の返済に追われている

借入金の返済に追われて、黒字倒産に陥ることがあります。借入金とは返済義務があるお金のことであり、いわゆる借金のことです。
基本的に借入金は、利益償還(利益から借入金を返済していくこと)ですので、業績が悪化したり売掛金の回収までに時間がかかったりすると、完済までに時間がかかってしまいます。

対策1:経費の削減や資金計画の見直しを行う

借入金は計画的に返済していくことが大切です。
そのためには、定期的に経費の削減に取り組んだり、資金計画を見直したりしましょう。

たとえば、資金繰り表やキャッシュフロー計算表を作成すると、収入と支出の流れ(キャッシュの流れ)が明確になります。

対策2:M&Aを視野に入れる

あらゆる措置を講じても経営が悪化していく場合は、M&A(他社に合併や買収してもらうこと)も視野に入れましょう。

M&Aのメリットは、取引先や金融機関との関係を維持できることです。
また、従業員の雇用も基本的には継続が約束されます。

黒字倒産を回避するために知っておきたいこと

キャッシュフローや資金繰りをきちんと把握することで、黒字倒産を免れるケースもあります。
以下では、それぞれについて解説します。

キャッシュフローを把握しておく

黒字倒産を回避するためには、キャッシュフローの見直しが不可欠です。
キャッシュフローとは、直訳すると「現金の流れ」です。ビジネスでは、事業における収入と支出のタイミングを把握するための指標として用いられます。
また、キャッシュフロー計算書とは過去の決算から財務分析を行うときに用いる表を指します。入出金の流れ(キャッシュフロー)を把握することで財務状況が明確になります。

たとえば、事業者間取引では以下のようなケースがしばしば起こり得ます。

  1. 同じ事業者でも買掛金を支払うこともあれば、売掛金を受け取ることもある
  2. 回収サイトと支払いサイトの差から、買掛金を支払えない場合がある

上記2のようなケースは、どのようなときに起こりやすいのでしょうか。以下に具体例を交えて解説します。

具体例:売掛金の回収を翌々月に設定しているA社が翌月末日の買掛金を抱えている場合

  1. A社の資金は全部で50万円とする
  2. 11月1日にB社へ200万円の売掛金が生じた(回収サイトは翌年の1月末日)
  3. 11月10日にC社へ100万円の買掛金が生じた(支払サイトは12月末日)
  4. 2・3以外の取引はない

上記の場合、12月末には手元に50万円しかありませんので、C社へ買掛金の100万円を支払うことは不可能です。
日頃からキャッシュフローを把握しておくことで、現金不足や不渡りの回避につながります。

資金繰りを把握しておく

資金繰りを把握して、黒字倒産回避に努めましょう。
資金繰りとは、収入と支出を管理・調整したうえで資金の過不足を調整することです。また、資金繰り表とは将来の資金繰りを予測するために用いる表です。

以下に、資金繰り表でとくに重要なポイントを3つまとめました。

  1. 自由資本比率(事業主が自由に使える現金の指標)
  2. 自己資本比率(返済が不要の資産の指標)
  3. 当座比率(短期負債への支払い能力の有無を判断するための指標)

また、それぞれの比率は以下の式で表せます。

自由資金率:正常範囲の目安は40%以上

  • 式:自由資金比率(%) = フリーキャッシュフロー ÷ 利益剰余金(自己資本)増加額 × 100
  • フリーキャッシュフロー = 営業キャッシュフロー - 投資キャッシュフロー

自己資本比率:中小企業の場合、健全経営の目安は15%程度・優良企業の目安は50%超

  • 式:自己資本比率(%) = 純資産 ÷ 総資産 × 100

当座比率:健全経営の目安は130%

  • 式:当座比率(%) = 当座資産 ÷ 流動負債 × 100

自由資金率・当座比率
参考:資金調達ジャーナル|黒字倒産とは?原因や資金不足を回避する対策をわかりやすく解説 – 資金調達ジャーナル ~お任せ資金調達~

自己資本比率
参考:doda|自己資本比率とは?業種別では何%くらいが目安なの?

黒字倒産した企業の事例

以下では、過去に黒字倒産した不動産会社アーバンコーポレイションと江守ホールディングス株式会社の事例をご紹介します。

アーバンコーポレイション株式会社の事例

アーバンコーポレイションは1990年に広島で設立された不動産会社です。
アーバンコーポレイションが黒字倒産した主な原因は、過剰在庫(土地)の抱えすぎといわれています。
倒産に至る数年前まで、アーバンコーポレイションの損益計算書は黒字でした。その一方で、キャッシュフローでは赤字が続いていました。

損益計算書では、売上に関する在庫のことを棚卸資産と呼びます。従って、実際のキャッシュフローが赤字でも、損益計算書では「在庫=会社が所有する資産」となり、世間的には黒字経営だと見なされてしまいます。
また、アーバンコーポレイションの場合は、在庫膨張に加えて信用収縮で資金調達が途絶えたことも決定打となり、2008年には黒字倒産へと追い込まれてしまいました。

江守ホールディングス株式会社の事例

江守ホールディングス株式会社は1906年に創業された卸売業です。また、中国にも事業進出を行い、取引規模を拡大していました。順調に見えた江守ホールディングス株式会社ですが、中国現地の子会社の架空取引が原因で黒字倒産に追い込まれてしまいました。

架空取引が発覚したきっかけは、中国現地の子会社の取引先(仮にA社とする)の経営破綻から江守ホールディングス株式会社が取引信用保険(取引先の売掛金が回収できない際に、被保険者へ保険金が支払われる)の保険申請を行ったことによります。保険会社が保有していた情報から、不審な取引が発覚し、調査を進めるなかで、現地子会社やA社の不正取引が発覚しました。江守ホールディングス株式会社の失敗は、取引先に与信枠を設定していたのにも関わらず、きちんと遵守していなかったことです。また、社内決裁も取得されていなかったといわれています。
管理体制やモニタリング体制の不足も、不正取引を助長させる一因であったといわれています。

黒字倒産寸前から回復した企業の事例

以下では、黒字倒産寸前から、事業の回復に成功した食品製造・加工業once in株式会社の事例をご紹介します。

once in株式会社の事例

once in株式会社は食品製造・加工業です。2004年に飲食店を創業以来、ネットや通販事業やECショップ運営などにも注力しています。
once in株式会社社は、長年資金繰りと経営管理に課題を抱えていたが、中小企業・小規模事業者向けの独立行政法人を頼り、事業回復に成功しています。

once in株式会社が黒字倒産に陥りそうになったときの状況と解決に至るまでの過程を以下の表にまとめました。

課題解決方法
1集金のタイミングはECサイトごとに異なる。また、商品によっては季節ごとに売上額が変動してしまう。
このような背景から、どの時期にどれくらいキャッシュが必要になるか把握できていなかった
資金不足を回避するために、複数の金融機関と折衝した。折衝に必要な資料も同時に用意した
2経営に課題を抱えている一方で、資金繰り表による経営管理は行っていなかった資金繰りや限界利益を表にまとめて経営状態を見える化した

まとめ

黒字倒産はどこの事業者でも起こり得ます。
この記事でもお伝えした通り、損益計算書では黒字でも、キャッシュフローがプラスだとは限りません。

経営難に陥らないためにも、日頃からキャッシュフローを把握しておき、対策は都度立てるようにしましょう。
また、必ずしも金融機関から融資を受けられるとは限りませんので、資金の調達先は複数確保しておくと安心です。

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