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個人事業主が経費にできるものとは?節税につながる勘定科目一覧

date2025年06月17日
個人事業主が経費にできるものとは?節税につながる勘定科目一覧
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はじめに

  • 個人事業主の経費とは、事業活動に伴って必要となる支出のこと
  • 適切な経費の計上は、節税効果が期待できる
  • 経費は領収書等を整理して、勘定科目ごとに金額をまとめる
  • 個人事業主が経費にできないものは、事業とは関係のない個人的な費用や支出である
  • 自宅兼事務所利用の場合は、個人と共有する費用の家事按分(かじあんぶん)が必要になる

確定申告で何が経費として計上できるのか、必要なものや対応する勘定科目は何かから、計上できないものや、個人事業主ならではの判断に迷う経費について詳しく解説します。経費計上は節税対策につながりますが、計上しすぎるとリスクも伴います。どのように経費を計上すればよいか、上手な経費計上の方法をお伝えします。

個人事業主の経費とは

個人事業主の経費とは、事業活動に伴って支払った費用のことを指します。個人事業主の場合、個人的な費用と混同されがちなので、しっかりと区別する必要があります。経費を正しく認識し管理することで、適切な節税効果を得られます。

個人事業主の経費はどこまで計上できる?

計上できる経費に上限はありません。事業に関連する経費であれば、いくらでも計上することが可能です。しかし、収入と経費のバランスが悪いと税務署に不信感を抱かせる要因となります。たとえば、収入よりも多額の経費が続いたり、個人の費用を計上したりが疑われる場合です。経費は事業で生じたものであることを明確に示す必要があります。

経費計上が節税になる?

確定申告で納税額算出の基本となる課税所得金額の求め方は以下の通りです。

課税所得金額の求め方
課税所得金額=収入-経費-所得控除額

※課税所得金額とは、確定申告で納税額を求める基本となる金額

この計算式からもわかるように、経費を漏れなく計上することで、節税効果が期待できます。

経費と認められる判断基準は?

個人事業主の経費を認められるための判断基準は以下の3つです。

  • その支出が事業と関連しているか
  • 事業にとって必要なものか
  • 支払額が一般的判断で妥当な範囲内か

認められない例には、完全在宅のWebライターが通勤用として自家用車の使用している場合や、実際に利用していない自宅の一室を事務所として申告している場合があります。

経費率に目安はある?

経費率の目安は業種や事業規模によってさまざまで、一概に提示することは難しいのが実情です。しかし、以下のみなし仕入れ率を参考にすることは可能です。

消費税の簡易課税制度における「みなし仕入れ率」
  • 第1種事業:90%(卸売業)
  • 第2種事業:80%(小売業、飲食料品の譲渡に係る林業・農業・漁業)
  • 第3種事業:70%(第2種事業を除く林業・農業・漁業や製造業・建築業)
  • 第4種事業:60%(飲食業など)
  • 第5種事業:50%(サービス業・金融・保険など)
  • 第6種事業:40%(不動産業)

参考:国税庁|No.6509 簡易課税制度の事業区分

個人事業主が経費にできるもの一覧

個人事業主が経費にできる経費項目は、事業形態や事業内容に応じて異なる場合があります。以下の経費一覧は、主な勘定科目をまとめたものです。

経費にできるもの

地代家賃

地代家賃は、事業用の土地や建物を借りる際の費用を計上する項目です。事務所や店舗を借りている場合の家賃・管理費・共益費や、社用車の駐車場代、新規に借りる際の契約に関する費用等が計上できます。ただし、自宅用の駐車場代等には利用できません。

交際費

交際費は、取引先との打ち合わせやミーティング等にかかった食費や、ゴルフ等の接待にかかった経費を計上する項目です。家族や友人など個人的な会食には利用できません。

消耗品費

消耗品費は、法定耐用年数が1年未満で、固定資産にならない10万円未満の事務用品や電化製品等を計上する項目です。文房具やコピー用紙、名刺、パソコン周辺機器など少額物品も含まれるため、領収書を保管し経費計上することが重要です。

旅費交通費

旅費交通費は、事業に必要な移動に係る電車・バス・タクシー等の交通費や、出張時の宿泊・交通費・日当、高速道路料金(ETC利用料)やガソリン代等を計上する項目です。出張時の食事代は基本的には含めませんが、食事付きの宿泊プランでの食費は経費に含められます。

水道光熱費

水道光熱費は、店舗や事務所運営に必要な、電気・ガス・水道等の公共料金を計上する項目です。事務所兼自宅の場合は、事務所として利用している分を家事按分して計上します。家事按分については、以下で詳しく解説します。

通信費

通信費は、インターネットの回線使用料・電話代・切手代・ファックス代等の、事業で利用する通信費用を計上する項目です。こちらも事務所兼自宅の場合は、家事按分が必要です。

広告宣伝費

広告宣伝費は、事業や商品を宣伝する費用を計上する項目です。Webサイトやチラシ、看板の製作費や広告の原稿料等が含まれます。少額の来店記念品代も計上できます。

租税公課

租税公課は、事業に関連する税金や公的な負担金を計上する項目です。個人事業税・印紙税・固定資産税・社用車の自動車税等が含まれます。個人に係る税金は計上できません。

支払保険料

支払保険料は、従業員や事業に関わる財産の保護を目的とした保険料を計上する項目です。事故や火災等の損害保険料・自動車保険料・自賠責保険料などがあげられます。個人事業主本人に関わる生命保険料や年金型保険料等は対象外です。

人件費

人件費は、従業員に支払う給与や手当、雇用する際にかかる費用を計上する項目です。生計を一にする家族を雇っている場合、基本的に経費計上できません。しかし、青色申告で専従者給与特別控除の申請をしている場合は経費計上できます。

福利厚生費

福利厚生費は、従業員の健康診断費用や慶弔費、社員旅行や忘新年会の費用等、従業員の福利厚生のために支出した費用を計上する項目です。

法定福利費

法定福利費は、従業員を雇っている場合に係る健康保険料や厚生年金保険料等の、社会保険料の企業負担額を計上する項目です。

雑費

雑費は、勘定科目を設けるほど使用頻度のないものや、ほかの経費にあてはまらないものを計上する項目です。たとえば、支払手数料の勘定科目がないときの銀行の振込手数や、新聞図書購読費の勘定科目がないときの書籍代等の少額の経費をまとめて計上できます。
勘定科目は一度設定したら、毎年同じ項目に同じ経費を計上する必要があります。

仕入は経費とは別の勘定科目になる

商品や原材料の仕入れにかかった費用は、事業にかかった経費として計上することが可能です。ただし、経費とは別扱いで「仕入」や「商品」の勘定科目を使って処理します。確定申告でも仕入金額は「売上原価」として、経費とは別に記載します。

また、まだ販売していない仕入れにかかった費用は、その期の費用として計上せずに、在庫として資産に計上する必要があります。

個人事業主が経費にできないもの

個人事業主が経費にできないものは、事業とは関わりのない個人的なものや、株式会社では適用されても、個人事業主であるがゆえに適用されないものなどがあります。

私的な交際費や旅費交通費

事業と関わりのない費用は経費として認められません。たとえば、家族や友人との食事や飲み会、旅行などは私的に利用されたものになります。個人事業主の場合、明確に区別する必要があります。

個人事業主本人の福利厚生費

福利厚生費は従業員の保険・医療・慰安等に適用される経費です。個人事業主は従業員ではなく事業主なので、本人の福利厚生費は経費には適用されません。

個人事業主本人の健康診断費用

従業員の健康維持のため、定期的に健康診断を行う企業は多いです。従業員の健康診断費用は経費計上できますが、事業主本人は福利厚生費同様に適用されません。自己負担で実施しましょう。

個人事業主個人に課せられた税金

事業運営に関わる税金や公的負担金は租税公課として計上可能です。しかし、個人事業主が自分で支払う所得税や住民税など、個人に課せられた税金は経費とは認められません。

10万円以上の物品購入

10万円未満の物品は、消耗品費として一括で経費計上できます。しかし、10万円以上の物品は固定資産として扱われるため、減価償却が必要になります。減価償却資産については、後ほど詳しく解説します。

事業主や家庭のための支払い

個人事業主が個人的に支払ったものや家族のために購入したものなどは、事業活動と関係ないものなので経費計上できません。たとえば、子供が塾に通うための交通費や個人的な友人におくった慶弔費、家族のための買い物などは、税務署に疑問を抱かせないためにも明確に分ける必要があります。

家事按分で個人と共有するものの経費を明確にわける

事務所兼自宅の場合、水道光熱費や通信費、事業として占有する面積分の家賃、自家用車を事業に利用する場合などは経費割合を定める必要があります。使用時間や使用面積、走行距離(車の場合)等の、合理的な基準に基づいて按分しなければ税務署に否認されるリスクもあります。

家事按分とは事務用とプライベート用を使用比率で分けること

白色申告では「事業で利用する割合がおおむね50%超の家事関連費」が対象となっています。しかし、「所得税法 法令解釈通達45-2」では、50%以下でも必要性が明らかであれば経費算入できるとも記しています。明確な合理性の証明が必要ということです。
参考:国税庁|法第45条《家事関連費等の必要経費不算入等》関係

減価償却費の扱いに注意する

10万円以上30万円未満の減価償却資産は、一括で全額を経費計上することができません。各資産の法定耐用年数に応じて分割で経費計上します。
しかし、青色申告を行っている場合、取得価額が30万円未満の減価償却資産で、年間の取得価額の合計額が300万円までの範囲内であれば、「少額減価償却資産の特例」を利用して一括で経費計上することも可能です。
参考:国税庁|主な減価償却資産の耐用年数表

個人事業主の経費計上のやり方

経費計上のやり方と注意点を解説します。

必要な書類

経費を証明する書類には、いつ・誰が・どこで・何を・いくらで購入したかが記載された領収書が一般的に利用されます。取引の都度、領収書を受け取り保管しましょう。領収書以外では、レシート・クレジットカードの明細書・出金伝票・電子データも利用できます。以下に注意点をまとめましたので、参考にしてください。

経費を証明する書類に記載される内容
  • いつ(日付)
  • 誰が(購入者)
  • どこで(購入先)
  • 何を(購入品目)
  • いくらで(金額)
  • 領収書:最も利用される書類

    但し書きがあることで購入品目や購入目的が理解できる

  • レシート:領収書に代わる証明書類となる

    裏面に購入者や購入目的などのメモを記載するとよい

  • クレジットカードの明細書:領収書に代わる証明書類となる

    事業専用のクレジットカードを利用するとよい。購入目的などメモするとさらによい

  • 出金伝票:証明書類がない場合に利用できる

    自動販売機の飲み物や電車・バスの乗車料金など領収書がないときに利用できる

  • 電子データの領収書:ネット注文で購入した物品の領収書や納品書も証明書類となる

    電子領収書は電子データのまま保存する

参考:国税庁|電子帳簿保存法が改正されました

青色申告の場合

青色申告では、正規簿記による書類の作成が必要になるため、青色申告決算書の損益計算書に勘定科目ごとに合計した金額を記入します。
青色申告は、最大65万円の青色申告特別控除が受けられるほか、青色専従者給与の経費計上、赤字の3年間繰越計上等の経費にできる項目が多く、節税効果を最大化できる可能性があります。

白色申告の場合

白色申告では簡易簿記で対応できるため、収支内訳書の経費の項目に、勘定科目ごとに合計した金額を記入し、確定申告書とともに提出します。青色申告に比べ簡易ですが、正確な計上が求められます。

経費計上が多すぎるとリスクにつながる

多くの経費を計上することで、節税対策になるため適切な経費計上が必要です。しかし、多過ぎる場合は、以下のようなリスクもあります。

税務調査の対象になる

経費計上が多すぎると、税務署から脱税を疑われ、税務調査の対象となる可能性があります。とくに赤字が続く場合は注意が必要です。税務調査で脱税と判断された場合の罰則は大変厳しいものになります。適切な経費管理が求められます。

銀行からの融資が受けられない

事業拡大のために銀行から融資を受ける場合、決算書や収支内訳書の提出が求められます。このとき、経費が多すぎて利益が極端に少ない、または赤字となっていると、融資が受けられない場合があります。
そればかりか、経営改善が優先だと苦言を受けるかもしれません。経費計上は慎重に行うことが重要です。

まとめ

事業を行ううえで、節税効果のある経費は重要な要素です。漏れなく正確に計上する必要があり、多すぎても少なすぎてもよいことはありません。日々の業務においては、細かい金額でも領収書を受け取り保管しましょう。さらに、個人事業主は事業者と個人の区別を明確にすることが、節税への近道となります。

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