フリーランス・業務委託

準委任契約とは?請負契約との違いやトラブル事例から学ぶ注意点を解説

date2025年09月19日
準委任契約とは?請負契約との違いやトラブル事例から学ぶ注意点を解説
タグ:

はじめに

  • 準委任契約は法律関連以外の業務遂行を目的とした契約形態
  • 準委任契約には成果完成型と履行割合型の契約がある
  • 準委任契約は成果物の完成義務が伴わないため業務内容を柔軟に調整できる
  • 準委任契約は業務の範囲や責任の所在が曖昧になりがちなため注意が必要
  • 業務内容や責任範囲などを準委任契約書に明記することでトラブルを避けやすくなる

準委任契約はフリーランスや個人事業主が業務委託契約を結ぶ際の契約形態です。直接雇用とは異なり、委任者と受任者は対等な立場となります。本稿では準委任契約についての基本知識から、他の契約との違い、契約時の注意点や実例を、わかりやすく解説します。

準委任契約とは

準委任契約は業務委託契約の一種で、特に業務遂行を目的とした契約形態です。委託業務の遂行が目的であり、成果物の完成義務は伴いません。受任者には、業務を誠実に遂行するための注意義務、いわゆる善管注意義務が課せられる、委任者から受任者への指揮命令権がないことなどが特徴です。以下の項目では準委任契約の形態について、より詳しく解説します。

成果完成型

成果完成型の準委任契約は、委任業務の完了をもって報酬が支払われる契約形態です。いわゆる成功報酬型であり、委任者は金銭的なリスクを下げられます。例えば、PRイベントの専門業者にプロジェクトの立案や実行を委任し、イベントの完了をもって報酬を支払う形態がこれに該当します。

履行割合型

履行割合型の準委任契約は、委任業務の遂行状況に応じて報酬が支払われる契約形態です。委任者が遂行状況を確認しながら報酬を支払うため、進捗やリスクが管理しやすくなり、受任者も定期的に報酬を得られるメリットがあります。例えば、システム運用のサポートを委任する際、支払いを月額報酬に設定する場合などがこれに該当します。

他の契約との相違点

この項目では準委任契約から見た、他の契約との相違点について解説します。

委任契約との違い

委任契約は業務委託契約の一種であり、弁護士や税理士へ法律行為に関する業務を依頼する際の契約です。例えば弁護士に、自社が結ぶ契約書のチェックを依頼する際は委任契約となり、システム開発やコンサルティングといった法律に関わらない業務は準委任契約になります。準委任契約との違いは法律行為の有無です。

請負契約との違い

請負契約は業務委託契約の一種であり、成果物の完成を目的とした契約です。例えば、Webサイトの制作やスマートフォンのアプリ開発といった、具体的な成果物の完成や納品が求められる場合がこれにあたります。以下の表に準委任契約との違いをまとめました。

請負契約準委任契約
成果物の完成義務ありなし
報酬の発生納品後業務の遂行状況による
成果物の仕様変更再契約が必要柔軟な対応が可能

労働者派遣契約との違い

労働者派遣契約は、企業が派遣会社から労働者の派遣を受ける契約です。労働者は派遣先の企業で、その指揮命令下に入ります。これにより派遣先の企業は業務上の指揮命令権を持ちます。準委任契約との違いは指揮命令権の有無です。

準委任契約のメリットとデメリット

以下の表では準委任契約のメリットについて、大きく3点をまとめました。

成果物の完成を求めない
契約形態であるため、
業務内容の柔軟な調整が可能
準委任契約では成果物の完成義務が伴わないため、業務内容を柔軟に調整できます。例えば、ITエンジニアに短期間のシステム運用サポートを委託するケースなどがこれに該当します。
業務内容が
明確でない場合でも
契約を結びやすい
業務の遂行が目的となる準委任契約では、受任者の裁量に任される部分が大きくなるため、業務内容が完全に明確でなくても契約を結びやすいメリットがあります。他方、受任者には善管注意義務が伴うため、一定の配慮が必要です。
トラブルを
回避しやすくなった
2024年11月1日から施行された特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律(いわゆるフリーランス新法)により、委任者は業務内容、報酬額、支払期日などの契約条件を書面または電磁的方法(メール、SNSメッセージなど)で明示することが義務付けられました。この法律の施行により契約条件の透明性が高まり、トラブルを回避しやすくなりました。

参考|内閣府 特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律(フリーランス・事業者間取引適正化等法)等に係る取組について

準委任契約のデメリット

以下の表では準委任契約のデメリットについて、大きく3点をまとめました。

成果物の保証がないため
契約内容が曖昧になりやすい
準委任契約の目的は業務の遂行です。受任者は与えられた業務の遂行に責任を負いますが、その結果や成果物が期待通りであることまでは保証されません。そのため契約で定められる業務内容が曖昧になりやすい傾向があり、その結果、責任範囲が不明確になったり、成果の評価が難しくなったりする恐れがあります。
委任者と受任者の間に
認識のズレが生じやすい
準委任契約は業務範囲や成果の面で、受任者の裁量に任される部分が大きい契約です。そのため委任者と受任者の間に、業務内容や成果の面で認識のズレが生じやすい傾向があります。
損害賠償責任を
問われるリスクがある
準委任契約では受任者に、専門分野で一般的に期待される水準の注意と配慮をもって業務を遂行する善管注意義務が伴います。これを怠ったとされる場合には損害賠償責任を負う可能性があります。

このようなデメリットを避けるため、このあとの項目では注意点やポイントについて、より詳しく解説します。

トラブル事例から学ぶ注意点

準委任契約にはいくつかの注意点が存在します。以下の項目で、よくあるトラブル事例の傾向と対策を解説します。

業務範囲が曖昧になりがち

準委任契約は成果物を保証しない契約形態であるため、契約書に具体的な記載がない場合、業務範囲が曖昧になりがちです。その結果、委任者の期待と受任者の作業内容にズレが生じ、トラブルにつながる可能性があります。このようなトラブルを避けるためにも、定期的な進捗確認や会議を通じてリスク管理を行う必要があります。

責任の所在が不明確になりがち

契約時に業務遂行の責任範囲を明確にしないと、どこまでが委任者側、どこからが受任者側の責任かが不明確になります。責任範囲を明らかにするためにも契約段階から明確化に取り組み、契約書には具体的な業務範囲と責任範囲を明記することが重要です。契約書については後述で更に詳しく解説します。

偽装フリーランスへの注意が必要

偽装フリーランス(偽装請負)とは、業務委託契約であるにもかかわらず、その実態が雇用契約と同様の状態を指します。例えば、準委任契約で働く人材に、委任者側の企業が直接業務の指示を出したり、勤怠管理を行ったりといったケースがこれに該当します。

準委任契約を結ぶ際のポイント

この項目では準委任契約を結ぶ際、トラブルを防ぐために押さえておくべきポイントについて解説します。

準委任契約書を作成する

契約内容は口頭のみで決めず、必ず契約書に記載しましょう。業務内容や報酬、責任範囲などを明確にすることで、後々のトラブルを避けやすくなります。また準委任契約は原則として印紙税が課税されませんが、無形財産権の譲渡(1号文書)、準委任の場合でも請負に関するとみなされる契約(2号文書)、継続取引の基本となる契約書(7号文書)については印紙が必要となるため注意が必要です。

参考|国税庁 印紙税額の一覧表(その1)第1号文書から第4号文書まで
参考|国税庁 印紙税額の一覧表(その2)第5号文書から第20号文書まで

準委任契約書で明確化するべき項目

準委任契約は業務の遂行が目的の契約です。そのため委任業務で何をするのか、どこまでが業務範囲となるのかを準委任契約書に明記することで、契約内容の明確さを高められます。以下のリストに準委任契約書で明確化するべき項目をまとめました。

  • 業務の内容と業務の範囲
  • 業務期間と納期について
  • 経費精算の方法
  • 契約解除の条件
  • 知的財産の取り扱い
  • 損害賠償責任の有無
  • 報酬支払いの条件と金額
  • 報酬支払いの期日と支払い方法
    など

まとめ

準委任契約は、フリーランスや個人事業主が業務を遂行する際に便利な契約形態ですが、請負契約との違いを理解し、適切な契約内容を結ぶことが重要です。契約の際は業務範囲や責任の所在を契約書で明確化することで、トラブルを未然に防ぎ、スムーズな業務遂行が可能になります。

準委任契約は受任者の裁量が大きい契約形態です。それだけに契約を結ぶ際にはしっかりと契約書を作成し、委任者と受任者の双方で詳細な内容確認を行ってください。本稿が理解の一助となれば幸いです。

IT業界に挑戦したい23年卒の方、私たちの仲間になりませんか?
【会社選びは、仲間探しだ】IT業界に挑戦したい23年卒の方、私たちの仲間になりませんか?
株式会社セラク 開く