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医療費控除とは?いくらから対象?確定申告のやり方と計算

date2025年10月22日
医療費控除とは?いくらから対象?確定申告のやり方と計算
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はじめに

  • 医療費控除とは、確定申告によって申告できる控除で、節税や還付金が期待できる
  • 控除額は、1年間に支払った医療費が10万円以上もしくは所得金額の5%以上が目安の金額となる
  • 控除対象となる医療費は医療目的のものなど規定がある
  • 生命保険で受け取った金額や高額療養費の対象となった金額は、支払った医療費から差し引く
  • 医療費控除を受けるには、医療費控除の明細書と確定申告書を一緒にe-Taxや書面で申告する

急な怪我や病気で高額の医療費を支払ったとき、いくらから医療費控除が受けられるのか疑問に思ったことはありませんか?10万円と聞いて、そこまで支払っていないから無理かと諦めずに、この記事を一読ください。医療費控除の対象となる範囲や金額から、確定申告の仕方まで、わかりやすく解説します。

医療費控除と確定申告の基礎知識

医療費控除は確定申告において申告できる控除のひとつです。確定申告は1年間に得た収入や経費・各種控除を申告し納税する制度で、申告義務のある人が行います。確定申告の申告納税期間は、毎年2月16日~3月15日の期間内となります。
還付金は、給与所得者や年金受給者、副業をしている場合に、必要に応じて確定申告すると受け取ることが可能です。

医療費控除とは?概要と目的

医療費控除は、その年の1月1日から12月31日に支払った医療費が、規定額以上の場合に超過分が控除される制度です。
確定申告を行うことで、給与所得者は還付金が受け取れる可能性があり、フリーランスや個人事業主には節税効果が生じます。

対象となる人・条件

医療費控除は、所得税の課税対象となる所得がある人が申告し、還付や減税対策を行うものです。対象となる人は納税者本人と生計を一にする家族となります。給与所得者、年金受給者、フリーランスや個人事業主、それぞれが医療費控除の対象となる条件をまとめました。

  • 給与所得者:

    年末調整では医療費控除が対象にならないため、確定申告で還付申告を行う

  • 年金受給者:

    年金収入が400万円以下またはその他の所得が20万円以下の場合は、原則確定申告は不要
    医療費控除を受けたいときは還付申告を提出する

  • フリーランスや個人事業主:

    所得が48万円を超える場合確定申告が必要となり、医療費控除の申告で節税できる
    (所得金額48万円以下では還付申告が可能)

参考:国税庁|No.1600 公的年金等の課税関係
参考:日本年金機構保険組合|医療費でも税金の控除が受けられる

いくらから申告できる?控除が受けられる金額の目安

医療費控除を申告できる医療費は、
・所得金額が200万円以上の場合:支払った医療費が10万円を超えた分が控除対象
・所得金額が200万円未満の場合:所得金額の5%を超えた分が控除対象

つまり10万円もしくは所得金額の5%にあたる金額を、支払った医療費の総額から差し引き、残った金額が目安です。

さらに、保険金を受け取ったり高額療養費の対象になったりした金額は差し引きます。残りの金額が上記の基準を超えた場合に、超過分(上限200万円)が控除対象となります。

控除の対象となる医療費の範囲

確定申告で医療費控除の対象となる費用には規定があります。対象となる医療費と対象外の費用、家族分の範囲や交通費の扱いなど詳しく見ていきましょう。

対象になる医療費:病院・薬代・通院交通費など

医療費控除の対象となる費用は、医療に関連する治療目的のもののみです。ただし、公共交通機関を利用した通院のための交通費や入院時の食費は対象となります。以下に詳細をまとめましたので、参考にしてください。

医療費控除の対象となる費用

  • 入院・通院
    • 病気やけがの診察代・治療代・入院代
    • 入院時の部屋代・食事代
    • 治療目的のリハビリやマッサージ代
  • 医薬品・医療機器
    • 医師が処方した薬代
    • 治療目的の松葉つえ・メガネ・補聴器・コルセットなどの医療機器
  • 歯科治療
    • 歯の治療 (保険適応外も含まれるものがある)
    • 治療目的のインプラントや歯列矯正器具代
  • 妊娠出産費用
    • 妊娠に伴う定期健診・検査・出産費用
    • 入院費や入院時の食事代・通院時の交通費
    • 不妊治療費
  • 市販薬の購入費
    • 薬局等で購入した風邪薬や胃腸薬等の薬代
  • 通院交通費
    • 通院時の公共交通機関利用料

参考:国税庁|医療費を支払ったとき
参考:国税庁|No.1126 医療費控除の対象となる入院費用の具体例
参考:国税庁|No.1124 医療費控除の対象となる出産費用の具体例
参考:国税庁|No.1128 医療費控除の対象となる歯の治療費の具体例

対象外の費用:美容目的や健康食品など

たとえ医療行為であっても治療目的でないもの(美容目的や健康維持目的)や、疾病や感染予防(健康診断や予防接種)の費用は対象外です。さらに、特段の事情が無いタクシー代や自家用車のガソリン代・駐車場代も認められません。

医療費控除の対象とならない費用

  • 美容目的や健康増進目的の入院・手術・サプリメント代等
  • 自家用車利用料:通院時のガソリン代や駐車場代
  • 人間ドックや健康診断費用。ただし、病気が見つかり治療につながった場合は控除対象となる
  • 予防接種等は、治療目的でないため対象外
  • タクシー代は、緊急を要するもしくはやむを得ない理由があるとき以外は対象外
  • 治療目的外のメガネやコンタクトレンズ
  • 入院時に個室希望などの自己都合による差額ベッド代

控除対象かそうでないものかをしっかりと区別して計上する必要があります。

家族分も申告できる?生計を一にする家族の範囲

医療費控除は納税者本人だけでなく生計を一にする家族分も含めて申告できます。別居家族でも、生活費や学費等を支援している場合は生計を一にするに含みます。ただし、施設入所する高齢家族の主な経費は年金で賄い、衣類や雑費等の一部を援助する場合は、生計を一にするとは認められません。

医療費控除の計算方法

ここからは医療費控除の計算の仕方を解説します。合計した医療費と差し引きの必要な費用を、基本的な計算式に当てはめて計算します。具体例から計算過程のイメージと還付金がいくらになるのかを見ていきましょう。

控除額の基本計算式

医療費控除の計算は、フリーランスや個人事業主は収入から経費を引いた所得金額を、給与所得者(会社員等)の場合は、源泉徴収票記載の課税所得額をもとに行います。また、生命保険などで支給される入院給付金と、健康保険などで支給される高額療養費や家族療養費、出産育児一時金などを受け取った場合は、その金額を差し引きます。それぞれの合計を以下の計算式に当てはめて計算しましょう。

参考:国税庁|No.1120 医療費を支払ったとき(医療費控除)

生命保険や高額療養費との関係・差し引き方

生命保険や高額療養費は、一つの疾病に対して入院や手術等にかかった費用の一部を補てんしてくれるものです。そのため、一年間に支払った医療費全額から差し引くのではなく、対象となる疾病に対して支払った金額から差し引きます。
たとえば、病気で入院して手術をした際に支払った費用が36万円、高額療養費27万円と生命保険給付金9万円を受給した場合の差引は0円になります。

  • 36万円-(27万円+9万円)=0円

この場合、医療費部分の自己負担は残らず、医療費控除の対象にはなりません。いずれも、支払った医療費と受け取った金額を証明する書類の準備が必要です。

具体例で見る計算シミュレーション

具体例を使って医療費控除の計算をします。算出された金額が控除額となります。

例1:所得金額230万円 総支払医療費25万円 受取った保険金等13万円とする

10万円を差し引く場合(所得金額200万円以上)

250,000 - 130,000 - 100,000 = 20,000 (控除額)

例2:所得金額190万円 総支払医療費25万円 受取った保険金等13万円とする

所得金額の5%を差し引く場合(所得金額200万円未満)

250,000 - 130,000 -(1,900,000×5%)= 25,000(控除額)
※ 190万円の5%は95,000円

上記例から所得金額200万円未満に厚い控除枠が設定されています。一年間に支払った医療費を漏れなくまとめておくことが肝要です。

還付金はいくらになる?

還付金は、上記計算式で求めた控除額に、課税所得額に応じて定められた税率をかけて求めます。自分の税率がどのくらいなのかを確認しましょう。表は、課税所得額別の税率を表していますので、参考にしてください。

課税される所得金額税率控除額
1,000円から1,949,000円まで5%0円
1,950,000円から3,299,000円まで10%97,500円
3,300,000円から6,949,000円まで20%427,500円
6,950,000円から8,999,000円まで23%636,000円
9,000,000円から17,999,000円まで33%1,536,000円
18,000,000円から39,999,000円まで40%2,796,000円
40,000,000円以上45%4,796,000円

参考:国税庁|No.2260 所得税の税率

医療費控除の申告に必要な書類

医療費控除の申告は、必要書類を整えることからはじめます。1つ目は支払った医療費の領収書もしくは健康保険組合等から送付される医療費通知書です。2つ目は保険金の給付や高額療養費について、対象となった疾病ごとに差し引いた残りを医療費として計上できますので、給付額のわかる明細書も準備します。
また、給与所得者は源泉徴収票に記載の所得額が必要になります。さらに、薬局で購入した医薬品の領収等、少額の領収書も漏れなく準備しましょう。
これらを準備したら、確定申告書と医療費控除の明細書を作成します。

医療費控除の明細書の作り方

医療費控除の明細書は、支払った医療費の詳細や受け取った給付金等の金額を整理して記載する書類です。国税庁のホームページからダウンロードできます。
明細書の作成手順

  1. ①の枠内

    医療費通知書記載金額の合計額・年内に支払った医療費の合計額・還付や補助金の合計額をそれぞれ記載する(注:未払いの医療費は支払いが生じた年の医療費控除の対象となる)

  2. ②の枠内

    医療費通知書記載以外に支払った金額を、医療を受けた人別または病院等別に合計額を記載する
    (注:領収書1枚ごとではなく合算で可)

  3. ③の枠内

    ①、②で記載した金額を、示される記号ごとに合計や転記を行う
    所得金額の合計を確認して、控除額を計算する(控除限度額は200万円)

領収書の保存と提出ルール

医療費控除では、領収書の提出・提示は原則不要ですが、税務署から求められた際に提示できるよう保存が必要です。明細書に記載した根拠書類(領収書・支給明細・医療費通知など)は、申告期限の翌日から5年間の保存義務があります。

マイナポータル連携で取り込んだ医療費情報も、必要に応じて出所が確認できる状態で保存してください。

豆知識

マイナポータルとは、マイナンバーカードを使って自分の行政情報を確認できるサービスです。一例として保険証等を登録しておけば、マイナンバーカードに登録されている医療費情報等を呼び出し、確定申告書のオンライン申請を簡略化できます

マイナンバー・本人確認書類の準備

確定申告時の本人確認書類は、マイナンバーカードがあればこれ1枚で済みます。マイナンバーカードを持っていない場合は、マイナンバーのわかるもの(マイナンバー通知カードや住民票の写し)と本人確認書類(運転免許証やパスポート)の2点が必要です。

確定申告のやり方【e-Tax対応】

ここからは医療費控除を確定申告する方法を紹介します。e-Taxを使ったオンライン申請では、パソコンやスマートフォンから24時間いつでも申告できます。また、書面での申告方法や注意点についても詳しく見ていきましょう。

国税庁サイト(e-Tax)を使ったオンライン申告手順

e-Taxを使った申告は、国税庁のホームページから、「確定申告書作成コーナー」にアクセスし、ガイダンスに従って入力していきます。本人確認はマイナンバーカード方式等を利用します。作成後、そのままe-Taxで送信すれば申告可能です。

参考:国税庁|スマホとマイナンバーカードでe-Tax!
参考:国税庁|確定申告書等作成コーナー 令和6年分

紙で提出する場合の手順

上記の「確定申告書作成コーナー」で作成した申告書を印刷して、紙で提出することも可能です。また、税務署から確定申告書を取り寄せ手書きしたものを提出する方法もあります。時間や手間はかかりますが、税務署に持参することで不明点等を相談できるメリットがあります。
確定申告書の書き方は、以下確定申告書の画像を参考に「所得から差し引かれる金額」欄の「医療費控除」に、明細書で計算した控除額を転記します。

参考:国税庁|申告書の記載例

申告時期と提出期限の注意点

医療費控除の対象となる期間は、その年の1月1日~12月31日の間に支払った医療費です。未払い医療費は、支払った年度の医療費控除の対象となるため注意が必要です。

確定申告の提出・納付は原則として毎年2月16日~3月15日ですが、医療費控除のための還付申告は翌年1月1日から5年以内であればこの期間外でも申告できます。以前に高額の医療費を支払った場合は、還付金を受け取れる可能性がありますので確認してみましょう。

申告後に還付を受ける流れ

確定申告が終わったら、還付の時期と進捗の確認方法を押さえておきましょう。ここでは、振り込まれるまでの期間やe-Tax等での確認方法を解説します。

還付金が振り込まれるまでの期間

国税庁では、還付金の支払い手続きには概ね1か月から1か月半程度の期間を要するとしています。またe-Taxでの還付申告では、3週間程度で処理するとしているため、早めに還付が受けられます。ただし、この目安は申告内容に不備等がない場合です。記載漏れや計算ミス、申告内容に医療費控除の対象外の費用が含まれている場合は、再申告や領収書の提示などが必要となるためこの限りではありません。
参考:国税庁|【税金の還付】

還付状況の確認方法:e-Tax・マイページなど

還付金の処理状況は、e-Taxで申告している場合「マイページ」から、「本人情報設定内の還付・納税関係」へ進み、「還付先金融機関内の還付金処理状況を確認する」から確認できます。希望すればe-Taxで「還付金の振込通知」を受け取ることも可能です。
書面で申告した場合も、e-Taxの利用者識別番号を持っている場合は、マイページで一部の状況確認ができます。ほかにも、書面申告では「国税還付金振込通知書」が送付されますので確認しましょう。

申告の注意点と節税のポイント

医療費控除を申告する際の注意点と、医療費控除の特例(セルフメディケーション税制)を紹介します。上手に医療費控除を活用することは大きな節税効果につながります。

申告漏れ・計算ミスを防ぐチェックリスト

申告漏れや計算ミスにつながる申告時の失敗例をまとめました。これらを事前に確認しておくと、申告がスムーズになり、照会対応などの手間を減らせます。対策を参考に、間違いのない申告書の作成と提出に努めましょう。

よくある失敗例と対策

  • 控除対象外の費用の計上:

    美容・予防目的など対象外費用を合算しないよう、対象となる費用を把握する。
    迷ったときは税務署へ問い合わせる

  • 保険金等の給付額等の差し引き漏れ:

    支払通知書等を領収書と一緒に保管して、必ず差し引きを反映させる

  • 領収書が多数ある際の計算ミス:

    家族別・月別に領収書を整理して、集計表を作成する

  • 「医療費控除の明細書」の添付漏れ:

    領収書をそのまま提出するのではなく、明細書に整理してまとめたものを提出する

  • マイナンバー等の記載漏れやミス:

    作成した申告書はダブルチェックし、ミスや間違いがないことを確認する

セルフメディケーション税制との併用は可能?

セルフメディケーション税制は、定期健康診断等を受診するなど健康維持に配慮したうえで、市販の医薬品(特定一般用医薬品)を12,000円以上(上限88,000円)購入した場合に対象となります。医薬品の内容には規定があるため、詳細は以下の国税庁のホームページを確認しましょう。
医療費の支払額が10万円未満でも、セルフメディケーション税制を使って医療費の控除が可能です。ただし、医療費控除との併用はできないため、どちらかを選択する必要があります。
参考:国税庁|医療費を支払ったとき
参考:国税庁|No.1132 セルフメディケーション税制の対象となる特定一般用医薬品等購入費

フリーランス・個人事業主が節税につなげるコツ

フリーランスや個人事業主は、確定申告で医療費控除をはじめとした、各種控除をもれなく活用することで節税対策になります。所得税の減額だけでなく住民税も減税できるため、大きな節税効果が期待できます。経費だけでなく控除ももれなく活用しましょう。

給与所得者である会社員も、年末調整で控除できない医療費を還付申告することで、住民税の減額になります。可視化される還付額だけで判断せず、翌年度の住民税への波及も踏まえて申告しましょう。

まとめ

医療費控除を申告するためには、1年分の医療に支払った領収書などをまとめておき、整理集計する必要があります。生計を一にする家族が多ければ皆の分をまとめるため、1度に行うのは大変です。普段から医療費にかかわる書類を別枠でまとめておく癖をつけましょう。計算してみたら思った以上に多くの金額を医療費に使っているかもしれません。この記事を参考に、上手に節税対策をしてください。

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