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税務調査の基本や、調査が入りやすいケースなどを解説!

date2025年09月30日
税務調査の基本や、調査が入りやすいケースなどを解説!
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はじめに

  • 税務調査とは、申告された内容が正しいかどうかを国税庁または税務署が調査することを指す
  • 税務調査は「任意調査」と「強制調査」の2種類があり、ほとんどの場合任意調査がおこなわれる
  • 任意調査では事前に通告が入るので調査日までに調査準備を進めよう
  • 税務調査では虚偽の説明をせず、しっかり準備して質問に答えよう

税務調査とは?

税務調査とは、申告された内容が正しいかどうかを国税庁または税務署が調査することを指します。
確定申告の申告内容には、誤りや虚偽申告が含まれている場合があるものです。こうした内容を点検するために国税庁または税務署が調査をおこないます。調査の結果、申告内容に誤りが認められた場合や、申告義務がありながら申告していなかったことが判明した場合は是正を求められます。

参考:国税庁 – 税務調査手続に関するFAQ(一般納税者向け)

税務調査の種類

税務調査は大別すると「任意調査」と「強制調査」の2種類があります。ポイントは、どちらの調査でも、納税者が調査を完全には拒否できないことです。
国税通則法第74条により、国税庁や税務署の調査員には質問検査権が付与されています。このため、任意調査は”任意”の手続ではありますが、調査官に帳簿の提示や質問への回答などを求められた場合、納税者には調査に協力する法的義務が生じます。正当な理由のない調査の拒否や妨害には、罰則が科されることがあり得るため、頭に入れておくとよいでしょう。

参考:国税庁 – 第1章 法第74条の2~法第74条の6関係(質問検査権)

強制調査

強制調査とは、国税庁査察部によって裁判所の令状をもとに実施される税務調査のことを指します。
刑事事件として立件することを目的におこなわれるため、予告なく調査が入ることになります。調査期間は数ヵ月から、場合によっては1年以上に及ぶこともあるようです。脱税という重い犯罪行為が予測される場合に実施される調査であるからです。脱税で刑事罰となった場合、10年以下の懲役または1,000万円以下の罰金(あるいは両方)が科されます。

任意調査

任意調査とは、税務署から派遣される調査官が実施する調査です。
任意調査は、申告内容の間違いや不明点がないか、帳簿が適切に記録されているかなどを確認する目的で、事前に予告してからおこなわれます。
注意すべきは「任意」という言葉です。任意とあることで拒否しても問題ないと早とちりしがちですが、上で記したように、任意調査に応じない場合には罰則を科される可能性があるので注意しましょう。

税務調査の対象になりやすいパターン

法人・個人それぞれに税務調査が入りやすい特徴があるといわれています。次で解説します。

法人の場合

法人で税務調査が入りやすいパターンを紹介します。

  • 事業の規模が大きい
  • 売上や利益の変動が大きい
  • 過去に税務調査が入り、ミスや不正を指摘されたことがある
  • 消費税の還付を受けている
  • 開業してから数年が経過している

事業の規模が大きい場合はミスや虚偽があったときの金額も大きくなるため、調査が入りやすくなると考えられます。売上・利益変動が大きい場合も、不自然な変動は不正を隠す行為とみなされる可能性があります。

過去に税務調査で、ミスや不正を指摘されたことがある法人は再度税務調査を受ける可能性が高くなります。
また、消費税の還付を受けている法人は、不正還付を防ぐ目的で、調査対象になりやすいです。

開業してから数年が経過している法人も、調査対象になりやすいといえます。税務調査は基本的に直近の数年を対象にします。法律上は原則5年分の遡及が調査上限となっていますが、意図的な不正や重大な申告漏れが疑われるときは7年分を遡及の上限として調査することが法律で認められています。

個人の場合

ここでいう個人とは、個人事業主のことを指します。個人事業主で税務調査の対象になりやすいケースを紹介します。

  • これまで申告をしていない、または過去に申告漏れがあった
  • 利益が不自然に低すぎる、申告内容に不審な点がある
  • 新しい分野で起業をしている場合
  • 申告漏れをしている事業者が多い業種
  • 売上が1,000万円を少しだけ下回る

過去に無申告や申告漏れがあった場合、実態調査のために調査対象になりやすいといえるでしょう。
利益が不自然に低すぎたり、経費精算の処理など申告内容に不審な点があったりするときも、ミスや不正を防ぐために、調査が入る可能性が大きくなります。

新しい分野で起業をしている場合も税務調査が入りやすいです。これは不正防止よりも、新分野のデータ収集を目的とする調査の側面があるためです。

申告漏れが多いとされる業種も税務調査が入りやすくなるでしょう。業界全体がチェック対象となるからです。適切に申告していたとしても、調査が入る可能性は出てくるでしょう。

最後に、売上が1,000万円を少しだけ下回る個人事業主も税務調査が入る可能性が大きいです。売上が1,000万円を超えると自動的に課税事業者となるため、意図的に課税を免れていないかどうかを確認する目的で、チェック対象になります。

税務調査が入る確率は1%~2%

税務調査が入る確率は、対象の法人や個人事業主によって調査理由がさまざまなため一概にはいえませんが、一般的には法人で約1~2%ほど、個人事業主では1%以下といわれています。

【法人の場合】

国税庁の発表によると、令和5年度の法人における申告数は約317万件で、税務調査の件数は約5.9万件でした。計算すると、税務調査が入る確率は約1.9%です。

参考:国税庁 – 令和5事務年度 法人税等の申告(課税)事績の概要
参考:国税庁 – 令和5事務年度 法人税等の調査事績の概要

【個人の場合】

国税庁の発表によると、令和5年度の個人における申告数は約669万件で、税務調査の件数は約4.8万件でした。計算すると、税務調査が入る確率は約0.7%です。

参考:国税庁 – 令和5年分の所得税等、消費税及び贈与税の確定申告状況等について
参考:国税庁 – 令和5事務年度 所得税及び消費税調査等の状況(PDF)

税務調査(任意調査)の流れ

実際に税務調査(任意調査)が入ることになったとき、事前に一連の流れを知っておいたほうがスムーズに対応できるでしょう。以下で、税務調査(任意調査)の流れを解説します。

1.税務署からの事前通知と調査日の調整

任意調査の対象となったら、税務署から事前に通告があります。調査日については税務署と相談して決定しますただし、不正疑惑が極めて強い場合などは、事前通告・日程調整なしに調査が入るパターンもあるので注意しましょう。

2.調査当日に向けての準備

任意調査がおこなわれることになった場合、調査日に備えて準備を整えましょう。

  • 必要な書類を用意する(申告書類、帳簿類、領収書やレシート、契約書、通帳など)
  • 申告内容について正確な回答ができるように準備する
  • 税理士と回答のすり合わせをしておく

必ず準備する必要があるのが、確定申告の関連書類です。帳簿類、領収書・レシート、契約書、通帳などの書類を、調査の対象となる年度分用意しましょう。
書類の準備だけでなく、きちんと申告内容を把握しておくことも重要な準備です。税務官から質問があったとき、スムーズに回答するためです。
また顧問税理士がいるならば、事前に税理士と打ち合わせをおこない、申告内容をすり合わせましょう。

3.調査日当日

調査当日は、税務署から調査官が直接事業所に訪問します。任意調査の場合、調査期間は2日程度となることが多いようです。調査官からの質問にはスムーズに答え、書類の提示を求められたときは速やかに調査官に提示しましょう。

4.税務署からの結果報告

調査のあと、税務署が調査結果をまとめ、後日納税者に報告します。結果は大きく分けて次の3種類です。

  • 申告是正

    調査の結果、問題がないこと

  • 修正申告

    調査の結果、指摘された問題部分を納税者が認め、自ら修正して申告すること

  • 更正

    調査の結果、指摘された問題部分があるにもかかわらず納税者が認めない、または修正をしないまま一定期間が過ぎた場合、税務署が修正した納税額を強制適用する処分をくだすこと

申告是認となった場合、とくに対応は必要ありません。申告内容に問題があった場合は、修正申告または更正により適正な税額に訂正する必要があります。

税務調査で必要になる書類

税務調査で必要になる書類について、詳しく解説します。用意しておくべきものは次の通りです。

  • 申告書類および帳簿類
  • 申告書類を裏付ける資料(領収書やレシート)
  • 決算書
  • 銀行口座の通帳

    事業用の銀行口座通帳

  • (必要な場合)人事関連の書類

    社員がいる場合は契約書や給与明細、フリーランスであれば請負に関する契約書など

調査対象となる年度の申告書類・帳簿類、および申告書類を裏付けるための資料を準備します。申告書類を裏付けるための資料とは、課税対象とした商品やサービスのレシート・領収書といった書類です。調査対象年度の決算書も準備しましょう。また、資金の流れを把握するために、調査官から銀行口座の通帳を求められることがあります。事業用口座の通帳をスムーズに出せるようにしておくとよいでしょう。

なお、確定申告の帳簿類には保存義務があり、7年分を保管しておかなければなりません。税務調査では過去数年分を調査されることが多いので、過去3~5年分をすぐに取り出せるよう用意しておくと安心です。

そして、近年では帳簿類をデータで保存している場合がほとんどです。つまり、申告データの開示を求められることもあり得るため、事業用PCに保存しているデータをすぐに提示できるよう準備しておきましょう。

税務調査が入りやすい時期

税務調査がいつ頃入りやすいのかという点について解説します。
税務署の処理における年度区切りが6月であることと、一般的な日本企業の年度区切りが3月であるため、税務調査は基本的に7~9月頃に入りやすいといわれています。
一方で2月~3月の確定申告期間は、税務署職員が非常に多忙のため、税務調査は少ない傾向があります。
ただし、税務調査は1年を通じて時期を問わず実施されるため、7~9月に調査がなかったといって安心するのは早計です。

税務調査で気を付けるポイント

税務調査で気を付けておきたいポイントを解説します。

書類などの事前準備をしっかりしておく

税務調査が何年分調べられるものか気になる人も多いでしょう。原則、過去5年分まで遡っての調査が法律で認められているため、過去3~5年分の書類を用意しておくと安心です。

必要な書類はあらかじめコピーしておく

調査の際に、調査官が提出した関連書類を一時的に持ち帰ることがあります(留置き)。手元にないと困る書類は、事前にコピーを取っておくことを推奨します。

ウソをつかず、誠実な対応を心がける

税務調査は日常にないことなので、通告されたときから調査の結果が判明するまで、不安を覚える方がいらっしゃるかもしれません。しかし、税務調査がすぐに罰則・罰金につながるわけではありません。不安から虚偽の説明や不明瞭な回答をしたりせず、当日はしっかりと質問に答えましょう。

顧問税理士と信頼関係を築く

すでに税理士に確定申告の手続きを頼んでいる場合は、税理士と調査のことについて事前に十分な打ち合わせをおこなうことが肝要です。顧問税理士がいない場合でも、税務調査の対応が可能な税理士に相談するのもよいでしょう。

まとめ

税務調査とは、申告された内容が正しいかどうかを国税庁または税務署が調査することです。税務調査は任意調査と強制調査の2種類があり、ほとんどの場合任意調査がおこなわれます。
税務調査(任意調査)では事前に通告が入るので、調査日までにしっかりと準備を進めましょう。調査に必要なものは、申告書類、関連資料(領収書やレシートなど)、決算書、事業用銀行口座の通帳などです。これらの書類は、調査官が留置きで一時的に持ち帰ることがあるため、手元にないと困る書類は事前にコピーをとっておきましょう。調査のために過去3~5年分の資料を用意しておくと安心です。

税務調査は特別なことではなく、国民の義務である納税を確認するためのものです。調査を受けた際には誠実に対応し、修正申告が必要であれば速やかに提出することが、健全な事業運営につながります。

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