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バーチャルオフィスとは?仕組み・メリット・注意点を解説

date2025年10月07日
バーチャルオフィスとは?仕組み・メリット・注意点を解説
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はじめに

  • バーチャルオフィスとは、住所や電話番号だけを借りられるサービス
  • バーチャルオフィスの利用に向いている業種と向いていない業種がある
  • 安価で借りられるのがメリット
  • あらかじめサービスのプランやオプションを確認しておく
  • バーチャルオフィスの登記手順は、実際にオフィスを借りるときと同じ

バーチャルオフィスとは?

そもそも、バーチャルとは、実在しないのに実在するかのように感じられる状態のことを指します。
従って、バーチャルオフィスでは、基本的に実際のオフィスは借りられません。事業用の住所や電話番号だけをレンタルするのが一般的です。また、バーチャルオフィスで貸し出された住所は、オフィスとして法人登記ができます。

この記事ではバーチャルオフィスのメリットやデメリット、代表的なサービスなどについて解説します。

仮想オフィスとの違い

仮想オフィスとは、仮想空間にオフィスを設置できるサービスのことです。
仮想オフィスを、バーチャルオフィスと呼ぶこともありますが、厳密には定義が異なります。

以下に、バーチャルオフィスと仮想オフィスの違いを記載します。

  • バーチャルオフィス:借りた住所や電話番号を使用して、法人登記が可能なサービスのこと
  • 仮想オフィス:メタバース(インターネットの仮想空間)を利用したオフィスのこと

仮想オフィスでは、従業員がメタバース(オフィス)でアバターを動かしながら、業務を行います。
仮想オフィスは、リモートワークが主流になりつつある近年においては、従業員の孤立防止の一助となっています。

レンタルオフィスとの違い

レンタルオフィスとバーチャルオフィスの違いは、実際のオフィスが借りられるかどうかです。
レンタルオフィスでは、業務に必要なデスク・チェア・インターネット回線などの設備が整ったワークスペースを借りられます。

レンタルオフィスは実際の空間をレンタルするため、バーチャルオフィスよりも費用が高めです。バーチャルオフィスが数百円から数千円で借りられるのに対して、レンタルオフィスを借りるのには数万円かかることがあります。

フリーランス・個人事業主がバーチャルオフィスを使うメリット

以下では、フリーランスや個人事業主がバーチャルオフィスを使うメリットについて解説します。

安価で借りられる

バーチャルオフィスのレンタルは、実際にオフィスを借りるよりも安価で利用できます。運営会社ごとに料金形態は異なりますが、数百円から数千円のケースが一般的です。
そのため、出費を抑えられるのが1つのメリットといえます。

自宅住所を公開する必要がない(プライバシーの保護につながる)

法人登記の情報は一般公開されます。自宅の住所をオフィスとして登録してしまうと、全世界に自宅の住所を公開してしまうことになり、大変危険です。

バーチャルオフィスで貸し出された住所は、オフィスとして法人登記ができますので、プライバシー保護の観点からも安心して利用できます。

すぐに利用できる

実際のオフィスをレンタルする場合は、審査や入居までに数週間単位の時間がかかるケースがほとんどです。
一方、バーチャルオフィスは最短即日で契約ができることもあるため、利用開始までにさほど時間がかかりません。

ただし、昨今ではバーチャルオフィスを悪用した犯罪が増えています。入会審査に力を入れている運営会社も増えていますので、契約時には必要書類や規約を必ず確認しましょう。

固定電話やFAXを導入しやすい

固定電話やFAXの導入サービスを実施しているバーチャルオフィスが増えています。

固定電話の導入サービスを利用する場合は、専用の電話番号が与えられます。また、転送電話サービスか電話秘書代行サービス、もしくはその両方のサービスを利用できるパターンが多いです。
一方、FAXの導入サービスを利用する場合は、他社と共有のFAX番号が与えられます。受信したFAXの内容はバーチャルオフィス側がPDFファイルに変換して、メールで転送してくれます。

利用料は経費として計上できる

バーチャルオフィスの利用料は全額経費として計上できますので、節税対策にもつながります。記帳の際は基本的に「支払手数料」という勘定科目を使いましょう。
「賃借料」という勘定科目もありますが、バーチャルオフィスは実際のオフィスを借りているわけではないため、不適切です。

また、オプションサービスを利用する場合は以下の勘定科目をご参考ください。
郵便転送・電話代行:通信費
貸し会議室の利用:会議費

法人用銀行口座が開設できる

法人用銀行口座を開設する際は、バーチャルオフィスの住所や電話番号が使用できます。ただし、事業実態が曖昧だと審査に通らず、法人口座を開設できない可能性があります。
自社の取引実績や事業概要がわかる資料を用意して、事業の実態をきちんと説明できるようにしておきましょう。

開業届の納税地として記載が可能

納税地は原則、住民票の住所地と規定されていますが、居住地や事業所を選ぶことも可能です。
従って、開業届にも、バーチャルオフィスの住所を納税地として記載できます。

バーチャルオフィスの住所を納税地とするメリットは、2点あります。
1点目は、住所地や居住地から引っ越した場合でも、住所変更手続きが不要なことです。2点目は、税金に関する書類がプライベートの郵便物に紛れにくく、誤って破棄したり紛失したりするリスクが低い点です。

フリーランス・個人事業主がバーチャルオフィスを使うデメリット・注意点

以下では、フリーランスや個人事業主がバーチャルオフィスを使うデメリットについて解説します。

永続的に借りられる保証がない

バーチャルオフィスは、永続的に借りられる保証がありません。
たとえば、バーチャルオフィスの運営会社が廃業したり移転したりしてしまうと、新しいオフィスを契約しなければなりません。

その場合は、事業所在地の変更および、変更登記が必要になります。
本店または支店の移転の登記は、1件につき3万円と定められています(令和6年4月1日現在の法令)。また、管轄する法務局が変わる場合は、旧管轄・新管轄で、それぞれ3万円ずつ(合計6万円)を支払わなければなりません。
従って、予定外の支出が出るリスクも考慮しておきましょう。

信用を得られないリスクがある

バーチャルオフィスを利用することで、一部の取引先やクライアントから不信感を持たれるリスクがあります。
バーチャルオフィスは、実態がないため、まともな事業を営んでいないと判断されてしまうことがあります。

登記する住所に同じ名称の法人は登録できない

同一住所のバーチャルオフィスを、複数の企業が借りています。そのため、同じ名称の法人が先に入っていた場合は、法人登記ができません。
また、類似している場合も法人登記できないことがあります。

業種によっては登記や開業ができない

クライアントの機密情報を厳重に確保するスペースが必要な業種は、バーチャルオフィスを利用できません。接客・応対スペースが必要な業種も難しいでしょう。

具体的には、下記のような業種が該当します。
1.士業(税理士・司法書士・行政書士・弁護士など)
2.不動産業
3.職業紹介業
4.人材派遣業
5.金融商品取引業
6.建設業
7.廃棄物処理業
8.古物商の認可が必要な業種(中古品販売・リサイクルショップなど)
9.探偵業
10.風俗営業

バーチャルオフィスの代表的なサービス

以下では、バーチャルオフィスの代表的なサービスについて解説します。

郵便物の受取・保管・転送サービス

郵便物の受取・保管・転送サービスなどを行っているバーチャルオフィスが増えています。また、郵便物が届く頻度に合わせて、週1転送や隔週転送など最適なプランを選べるところもあります。

簡易書留に関しても、受け取ってくれるケースが一般的です。
簡易書留は転送不要で送られてきますが、転送不可ではありません。転送不要とは郵便物の自動転送を行わないという意味ですので、バーチャルオフィスから事業者へ転送することは可能です。

ただし、バーチャルオフィスで受け取れないものも存在します。
以下に一例をご紹介します。

1.現金書留
2.電信為替
3.本人限定受取郵便物
4.内容証明郵便
5.裁判文書
6.速達の信書便物
7.代金引換の荷物
8.危険物
9.動植物・生鮮品その他保冷が必要なもの
10.縦・横・高さの合計が90cm以上のもの
11.1辺の長さが50cm以上のもの
12.15kg以上のもの
13.バイク便または自転車便

電話代行サービス

電話代行サービスを行っているバーチャルオフィスもあります。取引先やクライアントから電話がかかってきた際に、オペレーターが出て対応してくれます。

事業所名を名乗り、利用者が不在であることを告げてから、利用者宛にメールや電話で要件を伝えてくれるサービスです。
電話代行サービスを利用することで、自分が電話を取れなくても確実に内容が把握できます。

コワーキングスペースの提供サービス

バーチャルオフィスによっては、コワーキングスペース(会議室・打合せスペースなど)を提供しているところもあります。従業員同士の打ち合わせや取引先との商談などにも活用でき、大変便利です。

なかには、10分単位で利用できる従量課金制のコワーキングスペースを提供しているバーチャルオフィスもあります。

バーチャルオフィスの選び方のポイント

以下では、バーチャルオフィスの選び方のポイントについて解説します。

住所や電話番号に問題がないか確認する

利用を検討しているバーチャルオフィスの住所や電話番号が、過去に悪用されたことがないかどうかをチェックしておきましょう。住所と電話番号を調べる際は、どちらもWeb検索がオススメです。

住所の場合は、バーチャルオフィスの住所を検索窓に入れて「住所+犯罪」や「住所+トラブル」などのキーワードで検索してみましょう。電話番号に関しては、逆引き電話番号検索アプリを利用したりWebで該当の電話番号を検索したりして、口コミや評判などを確認しておくと安心です。

参考:Google Play のアプリ|逆引き電話番号検索

どのようなプランやオプションを利用できるか確認する

バーチャルオフィスの、プランとオプションをチェックしておきましょう。自分の利用したいサービスが基本プランになければ、オプションを追加することも検討しなければなりません。
オプションを追加する場合は、その分費用が高くなるため、コスト対効果を考慮する必要があります。

似た社名の企業が入っていないか確認する

同一住所のバーチャルオフィスに、社名の似ている企業があった場合は注意が必要です。先述した通り、社名を登記できないことがあります。
また、郵便物の誤配送や間違い電話なども生じやすく、トラブルにも発展しやすいです。

オフィスとして使いやすいか確認する

業種によっては、オフィスとしての機能面を果たせるかどうかの確認が必要です。
たとえば、コワーキングスペースの提供があるかどうかや、郵便物の受取サービスなどがあるかどうかなどもチェックしておきましょう。

バーチャルオフィスの利用に向いている業種

以下では、バーチャルオフィスの利用に向いている業種について解説します。

プログラマー・Webデザイナーなど

プログラマーやWEBデザイナーなどは、バーチャルオフィスの利用が向いています。
プログラマーやWEBデザイナーなどは、基本的にリモートワークが可能であり、オンラインで業務が完結する業種だからです。

ネットショップ・ECサイトなどの運営

ネットショップやECサイトの運営をされている方にもバーチャルオフィスの利用は適しています。
ネットショップやECサイトの運営では「特定商取引法に基づく表記」により、住所記載が義務付けられています。
個人情報を公開したくない方にとっては、バーチャルオフィスから貸し出された住所を記載できるので安心です。

カウンセラー・オンラインサロンの経営者

バーチャルオフィスの利用は、カウンセラーやオンラインサロンの経営者などにも向いています。
たとえば、コワーキングスペースをレンタルすることで、オンラインに限らずクライアントとコミュニケーションを取れるでしょう。また、電話代行サービスを利用することで新規クライアントの獲得にもつながります。

コンサルタント

バーチャルオフィスの利用はコンサルタントにもオススメです。
コンサルタントの業務はクライアントの元を訪問して、課題解決することです。そのため、基本的に滞在しておくオフィスが必要ありません。また、バーチャルオフィスは基本的に利便性のよい場所にあります。そのため、名刺や広告などへ事業所の位置を記載するときにも、クライアントへのアピールにつながります。

バーチャルオフィスを利用する場合の法人登記の手順

バーチャルオフィス契約後の登記手順は、実際のオフィスと同じです。
以下に手順を記載します。

1.バーチャルオフィスを契約する
2.設立する事業の基本情報(住所や電話番号など)をまとめる
3.定款を作成する
4.資本金の払い込みを行う
5.法務局で登記申請をする

まとめ

バーチャルオフィスは基本的に、住所や電話番号だけを借りるサービスです。そのため、コストを抑えやすいのが特徴です。
また、バーチャルオフィスで借りた住所は法人登記ができますので、自宅の住所を公開する必要がありません。

ただし、永続的に借りられる保証がないため、注意が必要です。また、バーチャルオフィスの利用ができない業種も存在しますので、事前にしっかりと確認しておきましょう。

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