フリーランス・業務委託

個人事業主が従業員を雇うときの流れと必要な届出

date2026年08月10日
個人事業主が従業員を雇うときの流れと必要な届出
タグ:

はじめに

  • 個人事業主でも従業員は雇える
  • 従業員を雇う際の手続きは時系列で確認する
  • 労務だけでなく、税務の準備・源泉徴収・年末調整なども忘れずに行う
  • 偽装請負にならないための対策を知っておく
  • 従業員を雇う際は、手続きや届出の順番をきちんと把握しておく

個人事業主でも従業員は雇える

個人事業主でも、従業員は雇えます。それは、法人化していない個人事業主も同様です。
原則として、従業員を雇うと、労務管理・各種保険手続き・税務手続きなどが発生します。これらの管理・手続きは個人事業主の責務となるため、自分が何をすべきか、工程ごとにきちんと確認しておかなければなりません。

この記事では、従業員の雇用を検討している個人事業主に向けて、必要な届出の確認・採用前に決めておくべき条件を解説します。
また、記事の最後には、雇用か業務委託で迷った際の注意点や偽装請負にならないための対策方法についても触れていますので、お役立てください。

【一覧】従業員を雇うときに必要な届出

個人事業主が、従業員を雇うときに必要な手続きや届出を一覧表にまとめました。
※労災保険の手続きと雇用保険の手続きの項目は、一元適用事業を想定しています。

手続き主な書類と提出先期限
1.雇用前労働条件通知書・雇用契約書
→労働者本人
労働契約締結時
2.雇用直後・労働保険関係成立届
→所轄の労働基準監督署へ
・労働保険概算保険料申告書
→①~➂のいずれかへ
①所轄の労働基準監督署➁所轄の都道府県労働局➂日本銀行(代理店・歳入代理店<※1>でも可)
労働保険関係成立届:
保険関係が成立した日の翌日から起算して10日以内
労働保険概算保険料申告書:
保険関係が成立した日の翌日から起算して50日以内
3.雇用直後雇用保険適用事業所設置届・雇用保険被保険者資格取得届
→所轄のハローワークへ
雇用保険適用事業所設置届:
雇用した日の翌日から起算して10日以内
雇用保険被保険者資格取得届:
被保険者になった月の翌月10日までに
4.雇用直後従業員が5人未満のとき(任意適用申請を行う場合):
任意適用の申請書・任意適用同意書・事業主世帯全員の住民票の原本・個人事業所代表者の公租公課の領収書(原則1年分)・従業員の被保険者資格取得届・被扶養者(異動)届(従業員に扶養者がいれば)
→所轄の年金事務所へ
従業員の半数以上の同意を得てから
従業員が5人以上になったとき(事業が適用業種に該当して加入が義務になった場合):
新規適用届・被保険者資格取得届
→所轄の年金事務所へ
新規適用届:
加入条件を満たした日から5日以内
被保険者資格取得届:
従業員雇用・資格取得から5日以内
5.給与支払
開始前
給与支払事務所等の開設届出書(初めて従業員を雇用する場合)
→所轄の税務署へ
雇用日から1か月以内
6.給与支払
開始前
源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書(給与支給人員が常時10人未満の源泉徴収義務者が、一定の報酬<※2>に係る源泉所得税の納付を、年2回にまとめるために提出する書類
→所轄の税務署へ
特に定められていない(原則として、提出した日の翌月に支払う給与等から適用される)

※1:歳入代理店とは、全国の銀行・信用金庫の本店または支店・郵便局などを指す。
※2:ここでの一定の報酬とは、従業員への給与や退職金、個人の税理士・弁護士・司法書士などへ支払う報酬などを指す。

手続きは時系列で確認する

手続きは、時系列で確認しておきましょう。
先ほどの表でもお伝えした通り、手続きの順番は以下の通りです。

  1. 労働条件の通知
  2. 労災保険の手続き
  3. 雇用保険の手続き
  4. 社会保険の手続き
  5. 税務署への届け出
  6. 源泉徴収の準備

なお、2・3・4に関しては社会保険労務士に委託可能であり、5・6に関しては税理士に委託可能です。
また、労働基準法では、法定三帳簿(賃金台帳・労働者名簿・出勤簿)の保管が一定期間定められています。そのため、法定三帳簿の作成・管理は、1から6の各種手続きと並行して行いましょう。
手続きや届出などの期限は制度ごとに異なりますので、国や地方自治体などの公式情報を毎回確認しておきましょう。

雇う前に決めておくべきこと

従業員を雇う前には、働き方や業務内容などの条件を整理しておきましょう。
たとえば、以下のような項目を整理することでミスマッチが防げます。

  • 業務内容
  • 雇用形態
  • 勤務時間
  • 休日・休暇
  • 給与
  • 雇用期間
  • 就業場所

また、従業員を雇う際には、労働者へ労働条件通知書を交付することが義務付けられています。なお、労働者の雇用形態は問われませんので、正社員だけでなくパート・アルバイトなどであっても、労働条件通知書は交付する必要があります。
一方、雇用契約書の交付義務はありませんが、法人や個人事業主は作成することが望ましいとされています。

なお、2024年4月以降に労働条件明示のルール変更がありました。それに伴い、労働条件の通知書や雇用契約書等に明示すべき事項が追加されました。新たに追記しなければならない項目は以下の通りです。

  1. 従事してもらう業務が、将来的にどこまで変更の可能性があるか
  2. 就業場所が変更する可能性はあるか
  3. 有期労働契約を更新する場合の基準に関する事項(通算契約期間または更新回数の上限を含む)

労働条件の明示方法は、これまで原則書面でしたが、昨今はFAXやメールやSNSなどの電子交付も可能です。労働関係の書類は、原則5年間の保管義務がありますので覚えておきましょう。

参考:厚生労働省|2024年4月から労働条件明示のルールが変わります
参考:厚生労働省|職業安定法施行規則改正 労働条件明示等
参考:厚生労働省 |改正労働基準法等に関するQ&A(P.6)

雇用が決まったら:労働保険と雇用保険の手続き

雇用が決まったら、労働保険の手続きを行いましょう。
労働保険とは、労災保険と雇用保険を総称した言葉です。労災保険とは、業務や通勤中の事故でケガや病気になったり、障害が残ったり、亡くなったりした場合に保険給付を行う制度です。

個人事業主は、労働者を一人でも雇うと、業種・規模に関わらず、労災保険の適用事業となります。ここでの労働者には、正社員だけでなくパート・アルバイトも含まれます。従業員の雇用形態だけで労働保険の手続の有無を判断しないように注意しましょう。
一方、雇用保険とは、失業や休業をした際に労働者への給付や、再就職支援などを行う制度のことです。

雇用保険は働き方の条件で判断する

雇用保険は、週の所定労働時間や雇用見込み期間などの条件から、加入対象かどうかを判断しましょう。原則として、1週間に20時間以上、31日以上雇用する予定の従業員は、雇用保険の被保険者となります。パートやアルバイトなどであっても上記に該当すれば、雇用保険の加入義務が発生しますので、雇用形態だけで判断を行わないようにしましょう。

また、状況次第では、短時間労働者や学生アルバイトであっても、雇用保険が適用されるケースもあります。判断に迷った場合は、所轄のハローワークへ確認しましょう。

雇用が決まったら:社会保険の加入が必要になるケース

雇用する従業員に、社会保険の手続きが必要かどうかを確認しましょう。
現行法では、雇用する従業員が常時5人以上でかつ、特定17業種に該当する個人事業主は、社会保険の加入義務があります。

一方、令和7年の年金制度改正法により、特定17業種の要件が撤廃となりました。そのため、2029(令和11)年10月からは業種を問わず、常時5人以上雇用している個人事業所は原則社会保険の適用対象となります。
また、従業員が5人未満でも従業員の半数から同意を得られれば、社会保険の任意適用申請手続きが可能です。

参考:厚生労働省|社会保険の加入対象の拡大について
参考:厚生労働省|個人事業主の皆さま 社会保険への任意加入を考えてみませんか(ご案内)

給与支払い前後:税務署への届出と給与まわりの実務

従業員を雇う際は、労務だけでなく税務の準備も大切です。
たとえば、従業員への給与支払いには、税務署への届出・源泉徴収・納付・年末調整などが必要です。

また、これまでに従業員を雇ったことがない個人事業主は、給与支払事務所等の開設届出書を税務署へ提出しなければなりません。
給与支払事務所等の開設届出書とは、事業者が源泉徴収義務者と認識してもらうために税務署へ提出する書類です。事業主は従業員へ給与を支払う際に、従業員の給与から所得税を天引きして、国へ納める義務(源泉徴収義務)があります。給与支払事務所等の開設届出書は、従業員を雇用してから、1か月以内に提出することが義務付けられているため、忘れないようにしましょう

源泉徴収と年末調整も忘れずに行う

源泉徴収と年末調整も忘れずに行いましょう。
源泉徴収した所得税および復興特別所得税は、原則として、実際に給与を支払った月の翌月10日までに納めなければなりません。
一方で、給与の支給人員が常時10人未満で一定の要件を満たす源泉徴収義務者は、半年分の所得税・復興特別所得税をまとめて納付することが可能です。これを納期の特例といいます。

また、給与の支給人員が常時10人以上となった場合は、速やかに源泉所得税の納期の特例の要件に該当しなくなった旨を届出ましょう。また、従業員を雇用している場合は個人事業主であっても、従業員の年末調整を行わなければなりません。個人事業主自身は確定申告、雇用している従業員には年末調整を行います。

参考:国税庁|No.2505 源泉所得税及び復興特別所得税の納付期限と納期の特例

雇用と業務委託で迷ったときの注意点

従業員を雇用するか、外部へ業務委託するかで迷うこともあるでしょう。ここでは、雇用と業務委託で迷ったときの注意点を解説します。
雇用と業務委託の違いは、主に雇用主との契約形態です。従業員を雇用する場合は雇用契約を結び、個人や企業へ外注する場合は、業務委託契約を結びます。

従業員を雇用する場合、基本給以外にも福利厚生・賞与・残業代などが個人事業主側の負担となります。一方、業務委託契約の場合、請負者に支払うものは報酬のみとなるため、コストを抑えることが可能です。
ただし、業務委託契約を結んだのにも関わらず、労働者と変わらない条件で働かせることで偽装フリーランスと見なされるケースがあります。コストだけで契約形態を決めずに、業務内容や業務時間なども加味して、適した働き方を決めることが大切です。

偽装請負にならないための対策

偽装請負・偽装フリーランスにならないための対策方法を知っておきましょう。まず、簡単に、偽装請負と偽装フリーランスの違いを以下の図にまとめました。

どちらも、仕事を依頼する側が対象者(フリーランス・従業員)に対して、本来締結すべき労働者契約を行っていないのが問題です。
また、偽装フリーランス・偽装請負を防止するには、雇用主だけでなく他の従業員にも周知徹底しておく必要があります。

以下に偽装請負にならないための対策をご紹介します。

  • 最新の法律・法令などを正しく理解しておく(労働者派遣法・職業安定法・労働基準法など)
  • 請負契約・雇用契約・派遣契約など、業務内容や労働時間に適した契約形態を見極める
  • 契約書の内容を精査する(例:労働者に対する指揮命令権の所在を明らかにする)
  • 迷った際は、弁護士や社労士などの専門家に相談する

まとめ

従業員を雇う際には、手続きや届出の順番をきちんと把握しておきましょう。復習すると、労働条件の明示→労働保険(労災保険・雇用保険)→社会保険(健康保険・厚生年金保険)→税務署への届出の順番です。判断に迷う場合は、労働基準監督署・ハローワーク・年金事務所・税務署・社労士・税理士などへ相談してください。

また、偽装請負にならないように、雇用関係の法律・法令などには日頃からアンテナを立てておきましょう。

IT業界に挑戦したい23年卒の方、私たちの仲間になりませんか?
【会社選びは、仲間探しだ】IT業界に挑戦したい23年卒の方、私たちの仲間になりませんか?
株式会社セラク 開く