6G通信とは|重要視される理由・実現することなど


はじめに
- 6G通信とは5Gの次世代となる第6世代移動通信システムのこと
- 6G通信が商業的に利用可能になるのは2030年代と予測されている
- 重要視される理由はデータトラフィックの増大、多業界のデジタル化、新サービスの需要、持続可能な社会への対応
- 実現が期待されているのは超高速・大容量通信、超低遅延、通信エリアの拡張、消費電力・コストの低減、同時多数接続
5Gの次に展開される予定の6G通信は、私たちの社会や生活のあらゆる側面に革新的な変化をもたらす潜在的可能性をもっています。この機会に基礎的な知識を学んでおくことをおすすめします。
6G通信とは
6G通信とは、現在主流の5G(第5世代移動通信システム)の次世代となる第6世代移動通信システム(6th Generation Mobile Communication System)のことです。今後導入が見込まれている情報通信設備で、産業や社会活動の基盤となることが期待されています。
日本では総務省が「Beyond 5G推進戦略」を掲げ大手通信業者などと6G技術の共同研究を推進しています。
これまでの通信
次世代通信を学ぶにあたって、これまでの通信システムがどのように進化してきたかを知ることは重要です。
| 時期 | 通信方法 | 特徴 | |
|---|---|---|---|
| 1G | 1980年代 | アナログ | 音声通話のみで、通信品質が低い。 |
| 2G | 1990年代 | デジタル(GSM、PDC、CDMAなど) | 音声通話のみで、通信品質が低い。 |
| 3G | 2000年代前半 | パケット通信 | 音声+データ通信が可能。モバイルインターネットの普及。 |
| 4G | 2010年代前半 | LTE(Long Term Evolution) | 高速データ通信。動画・SNS時代へ。 |
| 5G | 2020年代前半 | NR(New Radio) | 超高速・超低遅延・多数同時接続。IoT時代を支える。 |
6G通信の開始時期
6Gの登場時期は、世界的に2030年頃が想定されています。
これは、これまでの移動通信システム(1G~5G)が約10年ごとに世代交代してきた歴史的な流れから予測されています。6G(第6世代移動通信システム)は、現在(2025年時点)はまだ実用化前の研究・開発段階にある技術です。
6G通信が重要視される理由
6G通信が重要視されるようになったのには、新型コロナウイルス(COVID-19)の感染拡大が大きな一因としてあげられます。人々の生活や経済活動が物理的な移動を伴わなくなり、通信インフラへの依存度が大きく高まったからです。現在も引き続き6Gが求められている主な理由として4つを解説します。
1 データトラフィックの増大
データトラフィックとは、インターネット上で送受信される通信データの総量を指します。現代社会はスマートフォン・IoT機器・クラウドサービスなど、あらゆるものがネットワークを介してデータをやり取りしており、その結果、世界のデータ通信量は年々増大しています。
そうした中で、6Gは増え続けるデータ通信需要に対応するための、高速・大容量な次世代通信インフラとして、経済や社会を支える基盤技術になることが期待されています。
2 多業界のデジタル化
近年、あらゆる産業分野でDX(デジタルトランスフォーメーション)が進んでおり、従来はネットワーク接続の比重が小さかった分野でもIoT機器・AI・クラウド・ロボット・デジタルツインといった技術が広く導入されつつあります。
デジタル化による変革には、通信需要の爆発的な増加・高精度なリアルタイム通信・広域で安定した接続が不可欠です。従来よりも円滑に複雑なリアルタイムデータ処理や遠隔操作を可能にし、効率化と生産性向上に寄与する基盤技術として6Gが強く求められているのです。
3 新サービスの需要
ホログラフィック通信やAR(拡張現実)、VR(仮想現実)といった没入型技術が提供する新しいサービスには、膨大なデータ量ときわめて低い遅延が求められます。
現在の5Gでも一部のサービスは実現し始めていますが、より高精細で大規模な体験を実現するには、なお性能面での制約が残っています。その障壁を取り除くために6Gによる大幅な通信性能の向上が不可欠となります。6Gでは以下の観点で大きな改善が見込まれています。
- 超高速・大容量通信:リアルな映像と多感覚データの伝送
- 超低遅延:リアルタイムのインタラクション
- 超多接続:大規模な同時参加とデジタルツインの構築
4 持続可能な社会への対応
6Gの導入は通信技術の進化にとどまらず、SDGs(持続可能な開発目標)に代表される持続可能な社会の実現に大きく貢献すると期待されています。6G時代の持続可能な社会とは人・モノ・環境・経済活動がデジタルで最適につながり、無駄を最小化しながら豊かさと環境保全を両立できる社会を指します。
6Gは、社会システムの最適化と資源の効率化を支える基盤となることが期待されています。
6Gで何が実現するか
6Gで何が実現するかについて、大きく5つにわけて解説します。
1 超高速・大容量通信
6Gは現在主流の5Gをさらに発展させた次世代通信規格として、あらゆる面で飛躍的な向上を目指しており、とくに超高速・大容量通信は根幹となる要素です。現在は光ファイバーなどの有線ネットワークでしか実現できないレベルの性能を、無線通信で提供することを目標としています。具体的なKPI(目標値)は以下の通りです。
- 6Gの最大通信速度:最大1Tbps(テラビット毎秒)。これは、現在の5Gの約50~100倍以上の速さとなります。
- 6Gの通信容量:5Gの100倍以上の容量を扱えるようになることが目標とされています。
2 超低遅延
遅延とは、データが送信されてから受信されるまでの時間のことです。5Gではこの通信遅延を1ミリ秒以下まで短縮することが目標でしたが、6Gではさらに進めて0.1ミリ秒以下を目指しています。人間が感知できる反応速度(約100〜200ミリ秒)をはるかに下回り、人間の知覚を超えるレベルの即時通信が可能になります。
- 陸上:エリアカバー率100%
- 海上:200海里(370km)
- 空域:高度1万メートルまで
宇宙空間での通信も視野に入れ、地球全体を網羅するインフラ整備が進められる見込みです。
3 通信エリアの拡張
6Gは通信エリアの拡張を実現します。今より広い範囲でつながり、これまで通信が難しかった環境も高品質な接続が可能になるという点が特徴です。具体的には、通信エリアを以下の水準まで拡大することが見据えられています。
- 陸上:エリアカバー率100%
- 海上:200海里(370km)
- 空域:高度1万メートルまで
宇宙空間での通信も視野に入れ、地球全体を網羅するインフラ整備が進められる見込みです。
4 消費電力・コストの低減
IoTデバイスの増加や基地局の増加が見込まれる中で、ネットワーク全体の電力消費と運用コストの抑制は大きな課題となりつつあります。6Gでは、消費電力とコストの大幅な低減が、通信性能の向上(超高速・大容量化、超多接続化など)と並ぶ重要な設計目標の一つでもあります。
省エネルギー化に加えて、ネットワーク全体の構造や運用方法を見直し、トラフィックの増加に対応しながら維持コストを下げていくことが期待されています。
5 同時多数接続
6Gでは、膨大な数のデバイスを同時にネットワークへ接続し安定して通信できる技術が実現されると期待されています。
これは5Gの強みでもありますが、6Gではさらに桁違いの規模・信頼性が求められます。具体的には、単位面積あたりで同時にネットワークに接続できるデバイスの数を大幅に増やすことを指します。以下に5Gと6Gの目標値を記載します。
- 5G:1平方キロメートルあたり約100万デバイスの同時接続
- 6G:1平方キロメートルあたり約1000万デバイスの同時接続(5Gの約10倍)
まとめ
6G通信とは、現在主流の5Gの次世代となる第6世代移動通信システムのことです。商業的に利用可能になるのは2030年代になると予測されています。
重要視される主な理由は、以下の4点です。
- データトラフィックの増大
- 多業界のデジタル化
- 新サービスの需要
- 持続可能な社会への対応
6Gで実現する5つの要素は以下の通りです。
- 超高速・大容量通信
- 超低遅延
- 通信エリアの拡張
- 消費電力・コストの低減
- 同時多数接続
6G通信環境の導入は、サイバー空間と現実空間の一体化をさらに促し、新たなビジネスを広げることにもつながります。本記事を参考に6Gの基本を理解しておきましょう。













