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デジタルツインとは 構成要素・市場規模・活用事例など

date2025年09月09日
デジタルツインとは 構成要素・市場規模・活用事例など
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はじめに

  • デジタルツインとは現実世界のモノやシステムをデジタル空間上にリアルタイムで再現した仮想モデル
  • デジタルツインを成立させる構成要素はIoT、AI、高速通信、XR(AR・VR・MR)、CAE の5つ
  • デジタルツインの活用がとくに期待されている分野は製造業・工場、都市開発・スマートシティ、建設・建築、医療・ヘルスケア
  • デジタルツインの活用でコスト削減、業務の最適化・効率化、遠隔からの確認・操作、保守・予知保全、品質向上などのメリットがある

近年「デジタルツイン」という言葉が注目を集めていますが、その詳細をご存じない方もいらっしゃるかもしれません。この記事をお読みいただき、デジタルツインの基礎知識を習得していただければ幸いです。

デジタルツインとは?

デジタルツインとは?

デジタルツイン(Digital Twin:デジタルの双子)は、「現実世界のモノやシステムをデジタル空間上にリアルタイムで再現した仮想モデル」と定義されています。物理的な実体と、それを模したデジタル上の複製が双子のような関係にあることからこの名称がつけられました。
デジタルツインにより現実空間のリアルタイムモニタリングや精密なシミュレーションが可能となり、現実世界の課題解決や改善に貢献します。

デジタルツインの構成要素

デジタルツインは、複数の技術を組み合わせて実現されています。どのような技術によって成り立っているのでしょうか。ここでは主要な5つの構成要素について解説します。

1 IoT

構成要素の1つめはIoT(Internet of Things)です。電化製品をはじめとするモノがインターネットと接続して通信をおこなう技術のことを指し、自動化や遠隔制御、効率化などに活用されています。デジタルツインでは現実世界の情報をリアルタイムに取得する役割を担います。

2 AI

構成要素の2つめはAI(Artificial Intelligence:人工知能)で、人間の知的な行動や思考をコンピュータで模倣する技術やソフトウェアのことを指します。
現在のAIは機械学習や深層学習などの手法を用いて、大量のデータから自動的に学習・進化します。デジタルツインでは、AIに膨大なデータを収集して学習させて高精度な分析・予測結果を得ることができるのです。

3 高速通信

構成要素の3つめは「高速通信」です。現在は5Gが主流で、将来的には6Gなど次世代通信が活用されるでしょう。
デジタルツインでは、現実世界の状態をリアルタイムで仮想空間に反映し大量のデータを遅延なくやり取りする必要があるため、高速・低遅延・大容量の通信が不可欠です。

4 XR(AR・VR・MR)

構成要素の4つめは「XR(クロスリアリティ)」です。VR(仮想現実)・AR(拡張現実)・MR(複合現実)を含む、現実空間と仮想空間を融合させる技術の総称で、現実では不可能な体験を創造する目的で利用されます。
デジタルツインのデータをただ画面に表示するだけでは、真価を十分に発揮できませんので、XRを用いた可視化・操作インターフェースとしての役割が必要となるのです。

5 CAE

5つめの構成要素は「CAE(Computer Aided Engineering:コンピュータ支援工学)」で、コンピュータを用いて製品の性能や動作(応力・熱・流体など)をシミュレーション・解析する技術です。
デジタルツインが現実世界で起こる物理現象を仮想空間で再現し変化を予測するためには、CAEによるシミュレーションが欠かせません。

デジタルツインの用途

デジタルツインの活用が期待されている分野は多岐にわたります。その中でも、とくに活用が期待されている分野を4つ解説します。

1 製造業・工場

工場や生産ラインをデジタル空間に再現し、機械稼働状況・生産速度・不具合情報をリアルタイムで監視します。また、生産計画やライン改修を仮想環境で事前に検証することで、効率的な生産体制を構築できます。

2 都市開発・スマートシティ

交通網・電力網・上下水道・建物・道路など都市全体をデジタル上で再現し、交通渋滞の予測、災害時の避難シミュレーション、インフラの老朽化診断などをおこない、より安全で住みやすい都市づくりに貢献します。

3 建設・建築

デジタルツインを活用して、建設プロジェクトの計画・維持管理などをおこないます。建物や構造物をデジタル空間で設計・検証、施工中もセンサーで進捗や品質をリアルタイムに監視することで、効率的かつ高品質な建設を実現します。

4 医療・ヘルスケア

患者の臓器や身体データをデジタルモデル化し、手術のシミュレーション・リハビリ計画策定・病気の進行予測などに活用が期待されています。これにより、個別化された医療の提供や治療効果の最大化を目指します。

デジタルツインのメリット

デジタルツインは業務全体の質とスピードを大きく向上させる技術です。導入には多くのメリットがありますが、ここでは5つ解説します。

1 コスト削減

物理的な試作品製作・大規模な実地試験を、仮想空間でシミュレーションや検証をおこなうことでコストの削減が可能です。従来は物理的な試作品製作や大規模な実地試験に多くの費用がかかっていましたが、仮想空間でシミュレーションや検証をおこなうことで、そうした費用を大幅に削減することができるのです。

2 業務の最適化・効率化

IoTなどで工程をリアルタイムにモニタリングしながらデータを収集して、仮想空間での仮説検証をおこなうことで、生産の最適化と効率化が実現します。無駄の削減や作業の流れの改善が進み、生産全体の最適化と効率化を実現します。

3 遠隔から確認・操作

IoTなどで確認・操作した内容が仮想空間を通じて現実世界の現場に反映されるため、その場に技術者がいなくても操作や指示が可能になります。迅速な意思決定と対応がなされ、時間と移動コストを大幅に削減できます。

4 保守・予知保全

稼働状況のリアルタイム監視、故障の兆候を早期に検知・予測をおこない予知保全に貢献します。ダウンタイム(システムや機器が利用不可能な状態にある時間)を削減し、生産計画の安定性向上・予期せぬ故障による大規模な損失リスクの回避を可能とします

5 品質向上

現実での繰り返し試行錯誤は負担が重くなりますが、仮想空間なら何度でも実験できます。シミュレーションで得られた最適な結果をそのまま製品や生産プロセスに反映させることで、品質を安定的に向上させることができます。結果として、不良率の低下や顧客満足度の向上にもつながるのです。

デジタルツインの市場規模

世界のデジタルツイン市場は2024年に200億米ドルと推定され、2037年には約1兆20億米ドルに達すると予想されています。
市場規模は年平均成長率(CAGR)35%という驚異的なスピードで拡大すると予測されており、この成長の大きな要因の一つとして、産業におけるDX(デジタルトランスフォーメーション)の進展が挙げられます。製造、インフラ、都市開発など様々な分野でDXが推進されており、デジタルツインはその中核技術として今後も需要拡大が続く見込みです。的なスピードで拡大すると予測されており、この成長の大きな要因の一つとして、産業におけるDX(デジタルトランスフォーメーション)の進展が挙げられます。製造、インフラ、都市開発など様々な分野でDXが推進されており、デジタルツインはその中核技術として今後も需要拡大が続く見込みです。

参考:SDKI|デジタルツイン市場調査

3つの活用事例

実際にデジタルツインがどのように活用されているのか、具体的な事例を3つご紹介します。

1 Project PLATEAU

Project PLATEAU(プロジェクト プラトー)は、国土交通省が主導して都市の3Dデジタルデータを整備・公開する国家プロジェクトです。現実の都市をサイバー空間に再現し、都市デジタルツインを実現するための重要な取り組みです。
主な目的は、デジタル技術を活用して日本全国の都市が抱える様々な課題を解決し、持続可能で豊かな社会を実現することです。例えば以下のような活用が可能です。

  • 防災・減災

    災害時の浸水・火災などのシミュレーションに活用

  • 都市計画

    3D可視化による都市景観評価などに活用

  • 観光

    メタバース上の都市再現・仮想観光などに活用

2 WOVEN CITY

WOVEN CITY(ウーブン・シティ)とは、トヨタ自動車が静岡県裾野市の工場跡地に建設中の実証実験都市です。リアルな都市空間とデジタル空間を組み合わせ、デジタルツインの概念を取り入れながら研究がおこなわれています。
人々が実際に暮らす生活環境の中で、自動運転・ロボット・AI・再生可能エネルギーなどといった最先端技術やサービスを実証し、未来の社会における課題解決とより良い暮らしのあり方を追求することを目指しています。

3 MELSOFT Gemini

MELSOFT Geminiは、三菱電機が開発した工場・生産ライン向けの3Dシミュレーションソフトウェアです。製造現場における生産設備の導入や改善プロセスの効率化・品質向上・コスト削減の実現を目的としています。
仮想の3D空間に現実の工場や生産ラインを再現してデジタルツインを構築でき、実際に設備を設置する前にさまざまなシミュレーションをおこなうことができます。これにより、工場や設備の仮想モデルを使い設計・検証・教育・改善を効率化するデジタルツイン基盤機能を実現します。

デジタルツインとメタバースの違い

デジタルツインとメタバースは、どちらも仮想空間を利用する技術であるため混同されがちですが、根本的な性質や目的が異なります。それぞれの特徴をしっかりと理解しておきましょう。

メタバースデジタルツイン
目的コミュニケーションやエンターテインメント実世界の監視・分析・最適化・シミュレーション
リアルとの関連性現実世界のデータとの連携は必須ではない現実世界のデータとリアルタイムに連携する
主な用途オンラインゲーム、バーチャルイベントなど製造業での生産ライン最適化、都市インフラの管理、予知保全など

まとめ

デジタルツインとは、現実世界のモノやシステムをデジタル空間上にリアルタイムで再現した仮想モデルのことです。

デジタルツインを構成する要素は5つあります。

  1. IoT
  2. AI
  3. 高速通信
  4. XR(AR・VR・MR)
  5. CAE

デジタルツインの活用が期待されている分野として4つを挙げました。

  1. 製造業・工場
  2. 都市開発・スマートシティ
  3. 建設・建築
  4. 医療・ヘルスケア

デジタルツインのメリットは大きく5つあります。

  1. コスト削減
  2. 業務の最適化・効率化
  3. 遠隔から確認・操作
  4. 保守・予知保全
  5. 品質向上

世界のデジタルツインの市場規模は、2024年に200億米ドルと推定され、2037年には約1兆20億米ドルに達すると予想されています。

デジタルツインとメタバースはどちらも仮想空間を利用する技術であるため混同されがちですが、根本的な性質・目的などが異なります。

デジタルツインを効果的に活用することで、業務上の課題解決や効率向上が期待できます。ぜひこの機会に、当記事を通じてデジタルツインの基礎知識を習得し、ビジネスへの応用を検討されてはいかがでしょうか。

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