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事業所得とは?雑所得との違いや判断基準を解説

date2025年12月11日
事業所得とは?雑所得との違いや判断基準を解説
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はじめに

  • 事業所得は所得税の10種類の1つで、継続的な事業収入が該当する
  • 個人事業主やフリーランスの収入は該当するが、不動産・山林所得は含まれない
  • 単発的な収入や不定期の活動は雑所得になりやすい
  • 事業所得を判断する重要な基準は、営利性・継続性・独立性の3つ
  • 事業所得では帳簿作成と記帳が義務化されている

事業所得とは何か、どうやって判断するのか、所得税の仕組みがわかりにくい、と感じる人は多いのではないでしょうか。
この記事では、事業所得の基本や雑所得との違い、判断基準を初心者向けにわかりやすくご紹介します。判定フローやチェックリストもありますので、ご自身が該当するかの確認にご活用ください。

事業所得とは

事業所得とは、10種類ある所得税の1つです。

基本的には、農業・漁業・卸売業・小売業・サービス業などの事業を継続して営む、個人事業主やフリーランスの収入から得られる所得のことを指します。ただし不動産の貸付けは不動産所得、山林の譲渡による所得は山林所得と見なされる場合があります。事業所得にあてはまるか不安な場合は、税務署に問い合わせてみるといいでしょう。

どんな収入が該当する?

個人事業主またはフリーランスとしての仕事(ライター・デザイナー・エンジニア)から得られる収入が、事業所得に該当します。継続的・定期的なハンドメイド販売や、長期契約の家庭教師なども当てはまります。
ただし、単発で受け取った謝礼や不定期の副収入の場合は、雑所得の扱いになる傾向にあります。

  • 該当する収入例

    個人経営の企業・店舗
    フリーランスの仕事(Webライター・Webデザイナー・エンジニアなど)
    ハンドメイド販売(定期的に販売している場合)
    家庭教師(長期契約の場合)
    講師料(定期的な講演がある場合)

必要経費の考え方

事業所得における必要経費とは、収入を得るために直接的または間接的に必要となった費用のことです。
必要経費になるものと、必要経費にならないものの例を以下にまとめました。

必要経費になるものの例
  • 商品の仕入れにかかった費用などの売上原価
  • 雇った従業員に支払う給与や賃金などの人件費
  • 土地代・家賃・事務所や店舗の家賃

    (自宅兼事務所の場合は按分した事業利用分が経費に該当する)

  • 水道光熱費

    (家事按分の対象になる)

  • 取材や営業のための電車賃、ガソリン代などの旅費交通費
  • 電話代やインターネット利用料などの通信費
  • 文房具、事業に必要な備品などの消耗品費用

    (一定金額以内のもの)

  • インターネットやテレビ、カタログ印刷費用などの広告宣伝費
  • 取引先との会食や交流などを目的とした接待交際費
  • 事業税、印紙税などの租税公課  

    (国や地方公共団体などに納める税金や交付金といった会計上の勘定科目)

  • 事業用の高額な設備や車両などの減価償却費  

    (耐用年数に応じて分割して経費計上できる)

必要経費にならないものの例
  • 個人的な生活費: 食費や被服費など
  • 所得税、住民税、相続税など
  • 事業主自身の給与

    (個人事業主の収入から経費を差し引いた所得のこと)

  • 事業主自身の国民健康保険料や生命保険料

    (生命保険料控除などの所得控除の対象にはなる)

必要経費扱いになるものは、基本的に事業に直接必要であるものです。必要経費の領収書やメモ、銀行明細や帳簿などを整えておくと、必要経費である証拠になります。
間違えて捨ててしまわないよう、管理しておきましょう。

事業所得と雑所得の違い

国税庁の通達により、事業所得と雑所得の区別が明確化されています。事業所得とは、営利目的の事業であり反復的および継続的に行われる業務で得られる所得を指します。個人事業主やフリーランスとしての収入や、農業や漁業などから得られる収入のことです。
一方の雑所得は、先にご紹介したように、9つある他のどの所得区分にも該当しない、一時的・副次的な所得を指します。副業収入や公的年金、単発的な原稿・講演料などの収入が該当します。

経費や帳簿の扱いの違い

事業所得と雑所得では、経費や帳簿の扱い方にも違いがあります。事業所得の帳簿は青色・白色申告どちらも必要であり、法定帳簿の記録と記帳が義務化されています。
雑所得の帳簿は義務化されていませんが、表計算や会計アプリを活用して、必要なデータを統一化したり、入出金を継続して記録したり、収支一覧を作成しておくことが大切です。

事業所得雑所得
経費の
扱い
・事業に直接必要な支出のみを計上し、私費は除外する
・仕入・材料・外注費・送料・通信費・広告費・旅費・消耗品を中心に検討する
・家賃・光熱・通信などは事業使用割合で算定、家事按分の根拠(面積・時間)を記録する
・PCや機材などの高額資産は耐用年数で費用化し、減価償却だけでなく、一括償却の可否も確認する
雑所得の収入を得るために、直接必要な支出のみ計上する
・PC・スマホ・通信費・消耗品・旅費交通費・広告費・家賃の事業按分などが対象
・自宅家賃・光熱・通信は使用割合を算定し、家事按分の根拠(面積・時間等)を記録する
・領収書・請求書・明細を日付順に保管し、用途と金額が追えるようにする
・高額備品は耐用年数で減価償却し、少額備品は一括計上できるかを確認する
帳簿の扱い ・青色・白色申告ともに法定帳簿の作成・保存が必要で、記録・記帳しておくことが義務
・主要な仕訳帳・総勘定元帳に加え、現金出納帳・売掛帳・買掛帳などの補助簿も整備する
・取引発生後すぐに仕訳・記帳を行い、月次で残高と試算表を確認する
・青色申告の帳簿や決算関係書類、現金預金取引等の書類は原則7年の保存義務がある
・白色申告の場合は、法定帳簿の保存期間が7年、任意帳簿や現金預金取引等の書類は5年の保存義務がある
・記帳内容に不備があった場合は、青色申告の承認取り消しや過少申告加算税と見なされる可能性がある
・提示不可の場合は、故意と見なされると重加算税などの罰則が科される可能性がある
・義務の有無にかかわらず入出金を継続して記録する(収支一覧)
・表計算や会計アプリで日付・相手先・内容・金額・区分を統一して記録する
・証憑は最低5年の保存が目安(法定帳簿の保存期間に合わせて7年保存を推奨)
・電子取引はデータで、証憑と同じ期間保存する
・私用口座と雑所得の資金口座を分けると、記録・按分・証明が容易になる
・雑所得は青色申告の対象外のため、証拠・説明資料の整備が重要

上記の表にあるように、自宅を事業所として兼用する場合は、水道光熱費や通信費などを事業や副業で使用した割合を家事按分により計算し、その分だけを各所得(事業所得・雑所得)の経費として計上します。計上する際には、按分率の根拠となる記録(時間や事業所面積などの具体的な証拠)を残しておくことが重要です。
業務に関係のない私的利用分は、事業所得・雑所得いずれの経費にもできません。

青色申告の可否

青色申告は、事業所得・不動産所得・山林所得の、いずれかの所得がある個人が対象です。個人事業主やフリーランスとして事業所得がある人は、必要な届け出や帳簿準備を行って青色申告することで、青色申告特別控除や損失の繰り越しなどが受けられます。
雑所得は青色申告の対象外のため、白色申告での対応となります。雑所得でも、収入を得るために直接必要となった費用は、必要経費として計上可能です。忘れずに白色申告を行いましょう。

事業所得と雑所得の判断基準

事業所得かどうかを判断する基準として、以下のように定められています。この基準には、基本的に本業・副業は関与しません。

  • 事業所得と認められるかどうかは、その所得を得るための活動が、社会通念上、事業と称するに至る程度でおこなっているかどうかによる
  • 事業所得と業務に係る雑所得については、その所得を得るための活動の規模によって判定され、当該活動が事業的規模である場合には事業所得に、事業的規模でない場合には業務に係る雑所得に区分される

参考:国税庁|「所得税基本通達の制定について」の一部改正について(法令解釈通達)

判断基準にある「社会通念上の事業性」とは、その活動が一般社会の常識に照らして「事業と言えるか」を総合判定する考え方です。営利性・継続性・独立性や、記帳・証憑の整備など、要件を満たしているかを確認し、判断されます。
事業所得と判断されるために重要なポイントは、以下の6つです。

  • 対価を得ることを目的としている活動か
  • 単発ではなく、継続的・反復的に行われている活動か
  • 事業主として自らの判断と責任で経営し、損失のリスクも負っているか
  • 事業主としての意思決定の自由があるか
  • 規模、収入金額:活動の規模や収入が一定以上あるか

    (収入が300万円以下であっても、帳簿書類の保存があれば事業所得として認められる場合がある)

  • 事業活動に関する帳簿・書類が適切に作成・保存されているか

上記のポイントを総合的に見て、独立した事業と判断された場合に事業所得となり、一時的や副次的なものと判断される場合は、雑所得となります。

また、事業的規模であるかを判断するための目安も、次のように定められています。

収入金額記帳・帳簿書類の保存あり記帳・帳簿書類の保存なし
300万円
超え
概ね事業所得概ね業務にかかる雑所得
300万円以下業務に係る雑所得
※資産の譲渡は譲渡所得・その他雑所得

参考サイト:雑所得の範囲の取扱いに関する所得税基本通達の解説 3ページ目

自分の所得が事業所得か雑所得かわからない場合は、次にご紹介する判定フローをご確認ください。

かんたん判定フロー

事業所得か業務に係る雑所得かを判断するためには、記帳の有無や書類保存、営利性・継続性・独立性、収入規模などのポイントが重要です。
以下のフローチャートは、判断の目安としてまとめたものです。

事業所得と判断されるためには、前述した6つのポイントが重要です。記帳状況や活動の継続性、収入金額などの見方がわからない場合は、税務署に問い合わせて確認することをおすすめします。

事業所得の一例(Webデザイナー・Webライター・エンジニア・講師)

ここからはケース別に、かんたん判定フローで確認した事業の一例をご紹介します。
ただし、ここでご紹介するものは一例であり、同業種の人すべてに当てはまる訳ではありませんので、ご注意ください。

1.Webデザイナー

事業所得になるポイント
  • 業務に必要な設備やソフトウェアを、自分で用意・管理していること
  • クラウドソーシングや直接契約で、自身のクライアントを持っていること
  • 単発的ではなく、定期的または継続的な案件があること

具体的な事業例

・Webデザイン講座の開催や、テンプレート・素材などの販売
・企業の専属契約を結び、毎月や毎年など定期的に更新する
・小規模なデザイン事務所を設立し、複数のクライアントから定期的に仕事を請ける

2.Webライターの場合

事業所得になるポイント
  • Webライター業に明確な目的意識をもって、継続的に取り組んでいること
  • クラウドソーシングなどを活用し、クライアントや案件を自分で開拓していること
  • 納品物・成果物に対して正当な報酬を得ていること
  • 継続的に執筆活動を行い、売上を上げていること

具体的な事業例

・クラウドソーシングを活用し、月ごとに複数記事を納品する執筆案件を受け、継続的な報酬を得る
・特定の分野での専門知識を活かして電子書籍やレポートを自身で執筆・出版し、販売収益を得る
・企業ブログやSNS投稿の企画・執筆依頼を請け、定期的に記事やSNS文章をライティングし、運営をサポートする

3.エンジニアの場合

事業所得になるポイント
  • プロジェクト単位で請負契約を結び、特定の成果物に対して報酬を得ていること
  • 自分の裁量で仕事を進め、業務に必要なツールや環境設備を管理していること
  • 複数のクライアントから仕事を受けている、または継続的に案件をこなしていること

具体的な事業例

・複数のクライアントから定期的に案件を受注し、プログラミングやシステム開発を行う
・クライアントのシステムやアプリケーションの動作確認、テスト業務を請け負う
・企業や個人から依頼を受けて、既存システムやアプリケーションの保守・運用業務を行う
例:定期的なシステムアップデートや障害対応
サーバの監視やデータベースのメンテナンス

4.講師の場合

事業所得になるポイント
  • 独立または起業しており、講座やセミナーを開催していること
  • 講義の内容やスケジュールを自分で設定し、受講者を募っていること
  • 講座やセミナーが一度きりではなく、定期的に開催されていること

具体的な事業例

・制作した動画講座を月額制や都度課金などで提供し、オンラインスクールを運営して収益を得る
・自ら企画・運営して講座やセミナー、ワークショップを定期開催し、受講料を得る
・料理教室・絵画教室・写真講座など、趣味や特技を生かしたワークショップを定期的に開催し、運営する

家事按分の超入門

家事按分は、自宅や共用の費用から事業利用分だけを合理的に切り分けて経費にする考え方です。按分の対象費用は家賃・通信費・水道光熱費など、私用と事業用が混ざる支出で、事業に必要な部分のみを割合で計上します。計上する割合には根拠の説明が求められるため、証拠となる書類や明細などの記録を提示できるようにしておくことが重要です。
按分率は基準値÷基準値の合計で算出できます。計算に重要な基準値には、数字や算出結果の根拠として、明細書や実測値などの証拠が必要です。

按分率を決める方法
  • 面積:仕事専用スペースの面積÷住居全体の面積

    例:仕事20㎡÷全体100㎡=20%

  • 時間:業務利用時間÷総利用時間

    例:業務時間40h÷総時間160h=25%

家事按分額の算出方法
  • 金額×按分率で算出する
家事按分の注意点
  1. 証拠をいつでも確認できる状態で保存しておくこと

    平面図(自宅兼事務所の場合)
    作業時間のメモ
    通信明細
    電気使用の記録

  2. 過大計上になっていないか確認すること

    生活費分は除外して考え計算する
    毎年状況を見直して合理性を保つ

  3. 毎月または期末に、一貫した方法で処理すること(例:端数を四捨五入する)

よくある質問(Q&A)

事業所得と雑所得の違いや判断基準について、よくある疑問をまとめました。副業や個人事業主として活動する際、税務上の区分を正しく理解することはとても重要です。以下の質問と回答を参考にして、確定申告や税務処理の際の判断材料にしてください。

Q1: 副業が少額なら雑所得でOK?

副業が少額だからといって必ず雑所得になるわけではありません。事業所得と雑所得の区分は、以下の要素を総合的に見て判断します。

  • 収益の規模
  • 継続性
  • 営利性
  • 独立性

たとえば、単発的な活動や趣味の延長で得た収入は雑所得になりやすいですが、継続的に収益を得る目的で事業として活動している場合は、少額でも事業所得として認められる可能性があります。
副業の年間所得が20万円以下であれば所得税の確定申告は不要ですが、住民税の申告は必要です。また、源泉徴収されている収入がある場合は還付の可能性があるため、確定申告を行うと節税になる場合もあります。迷った場合は税務署や税理士に相談することをおすすめします。

Q2: 青色申告の65万円控除は誰でも使える?

青色申告の65万円控除は、事業所得や不動産所得がある個人事業主のみが利用できます。必要な条件は以下の3点です。

  • 税務署に「青色申告承認申請書」を提出して、承認を受けること
  • 正規に定められた複式簿記で帳簿を作成すること
  • 確定申告時に貸借対照表と損益計算書を提出すること

加えて、65万円控除を受けるためには、e-Taxによる電子申告を行うか、帳簿を「優良な電子帳簿」として保存することが求められます。「優良な電子帳簿」とは、訂正履歴の保存や検索機能があるなど、法的要件を満たすものです。雑所得では利用できない点にも注意しましょう。

Q3: インボイス登録は事業所得じゃないとできない?

インボイス登録は事業所得に限定されず、雑所得でも可能です。ただし、登録には「適格請求書発行事業者」として消費税課税事業者になる必要があります。課税事業者になると消費税の申告義務が発生し、税務負担が増える可能性がある点に注意が必要です。
雑所得扱いでも取引先からインボイスを求められ、登録が必要になるケースがあります。ただし、雑所得では青色申告や経費の損益通算ができません。登録内容が適切かどうかは、事業規模や取引先の要件をふまえて慎重に検討し、専門家に相談することがおすすめです。

迷ったときの最終確認リスト

判定フローを確認しても、不安や迷うことがあるかもしれません。最後に、自分の活動が事業所得になるかどうか、チェックリストを確認しましょう。

記帳に関するチェック
  • 売上や経費を記帳していますか?
  • 帳簿は正確で整理されていますか?
  • 複式簿記を使用していますか?(青色申告の場合)
  • 領収書や請求書などの証憑を保存していますか?
  • 毎月の収入と支出を分けて管理し、継続的に確認していますか?
  • 記帳は税務署が求める形式に準じていますか?
  • 過去の申告内容や帳簿が整備されていますか?
継続性・反復性に関するチェック
  • 収益を得る活動を定期的に行っていますか?
  • 単発の収入ではなく、長期的に続ける意思がありますか?
  • 毎月または毎年の収入が安定していますか?
  • 継続的な契約や取引先を複数持っていますか?
  • 活動内容が反復的なもので、計画的に収入を得られていますか?
  • 自らの裁量で業務を遂行していますか?
収入実態に関するチェック
  • 収入が社会通念上「事業」としてふさわしい規模ですか?
  • 営利目的で活動を行っていますか?
  • 特定の雇用関係に依存せず、独立して収益を得ていますか?
  • 取引先や顧客からの収入は事業活動に基づいていますか?
  • 国税庁が定めている判断基準は満たせていますか?

チェック項目に該当していれば、事業としての実態があると見なされ、事業所得と判断される可能性が高くなります。不安や悩みが解消されない場合は、お近くの税務署に問い合わせてみることもおすすめです。

まとめ

事業所得とは、所得税の10種類のうちの1つで、農業・漁業・小売業・サービス業など、個人事業主やフリーランスの継続的な事業活動から得られる収入を指します。
一方、単発の謝礼や不定期の副収入は、雑所得扱いになることが一般的です。事業所得では、収入を得るために必要な費用(仕入れ・家賃・通信費など)が必要経費として認められますが、個人的な生活費や所得税などは含まれません。継続性・反復性・収入規模・記帳の有無が重要な判断基準です。
税務区分に迷った場合は、税務署や税理士に相談することをおすすめします。

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