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医療費控除の範囲はここまで!対象費用と注意点まとめ

date2025年11月13日
医療費控除の範囲はここまで!対象費用と注意点まとめ
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はじめに

  • 医療費控除は確定申告で申告できる控除で、申告することで節税対策や還付金の受け取りが可能
  • 医療費控除の対象者は、フリーランスや個人事業主、給与所得者および生計を一にする家族
  • 対象となる費用には、診療費、治療費、入院費、医薬品費、医療機器費、通院費等がある
  • 対象外の費用には、美容目的や健康増進目的のもの、健康診断や予防接種、タクシー料金などがある
  • 医療費控除を申告する際の領収書や補てん金額の明細書等は、5年間自宅保管の義務がある

医療費控除を申告する際、何が対象となる費用なのか、対象とならない費用にはどのようなものがあるのか疑問に思う方は多いでしょう。この記事では、いくらから医療費控除の対象になるのか、対象費用と対象外費用について詳しく解説します。

医療費控除とは

医療費控除とは、確定申告において申告できる控除の種類です。1年間に支払った医療費を申告することで、規定額より超過した分が控除対象になり、節税や還付が可能になります。

医療費控除の対象

医療費控除は、フリーランスや個人事業主、給与所得者など、申告納税者が利用できる制度で、確定申告や還付申告によって適用されます。対象となる人や所得金額、計算方法について見ていきましょう。

医療費控除の対象者

医療費控除の対象者は、納税者本人および生計を一にする家族です。同居家族以外にも、別居している子供の学費や生活費を援助していたり、別居している高齢家族に毎月仕送りをしたりする場合は、生計を一にする対象となります。
ただし、別居家族の主たる生活費がバイト代や年金でまかなわれ、食品や雑費等の一部を援助する場合は、生計を一にするとは認められません。

医療費控除を申告する際の所得額と控除額の計算

医療費控除の計算をする際に必要なものは、医療費等の領収書や、健康保険組合等から送付される「医療費のお知らせ」に記載される金額です。また、疾病によっては保険金や高額療養費等を受け取れる場合があり、この金額を証明する書類も必要になります。
支払った医療費の合計と受け取った保険金等の合計を以下の計算式にあてはめます。

差し引く基準額は、所得金額200万円以上は10万円、200万円未満は所得額の5%の金額となり、こちらも計算式にあてはめます。

以下の計算例は、各所得金額に応じた差引額と控除額の求め方、さらに所得額に応じた税率を掛けて還付額まで求める過程を表しました。

【所得金額200万円以上の計算式】
  • 例:所得金額320万円・支払った医療費80万円・保険金等受取金額37万円

  • 1年間に支払った医療費-受け取った保険金等-10万円

    800,000-370,000-100,000=330,000(控除額)

  • 所得金額320万円の税率:10%

    330,000(控除額)×10%=33,000(還付額)

【所得金額200万円未満の計算式】
  • 例:所得金額190万円・支払った医療費80万円・保険金等受取金額37万円

  • 1年間に支払った医療費-受け取った保険金等-所得金額の5%(190万円×5%)

    800,000-370,000-95,000=335,000(控除額)

  • 所得金額190万円の税率:5%

    335,000(控除額)×5%=16,750(還付額)

所得税の税率に関しては、以下の国税庁ホームページを参照しました。
参考:国税庁|No.2260 所得税の税率

医療費控除の対象となる費用

ここからは、実際に医療費控除の対象となる費用について詳しく解説します。

対象となる費用としては、以下があげられます。

・診療費・治療費・通院費にかかる交通費
・入院費・妊娠・出産費用
・歯科治療費・療養上の世話や付添い費用
・眼科治療費・介護保険制度により提供される施設・居宅サービス利用料
・リハビリテーションやマッサージ費用・おむつ利用料
・市販薬や医薬品の購入費・海外で支払った医療費
・医療機器の購入費やレンタル料・コロナ感染によるPCR検査費用

診療や治療に関する費用

医師の診療や治療を受けた際の費用です。ただし、同じ医療行為でも美容目的や健康増進目的等の場合は対象外です。保険診療の対象となった金額は、健康保険組合等から送付される「医療費のお知らせ」に記載されます。

診療費・治療費

けがや病気等で、医師の診療を受け治療目的の処置を受けた際の費用です。風邪をひいて医師の診察や検査等の診療を受け、治療目的の処置や処方箋を書いてもらうなどはよくある例でしょう。

参考:国税庁|No.1122 医療費控除の対象となる医療費

入院費

入院費と入院中の部屋代や食費が対象です。個人都合の個室代など差額ベッド代や、パジャマや歯ブラシ等の備品の購入代は含みません。また、親族以外に付添人を依頼した際の付添い料も対象です。
高額療養費や入院給付金等を受け取った場合は、医療費控除の額を計算する際に、対象となる疾病の医療費から差し引きます。

参考:国税庁|No.1126 医療費控除の対象となる入院費用の具体例

歯科治療費

歯科医師による診療や治療で、一般的な水準を著しく超えない範囲の費用が対象です。自由診療による高額な医療費も、一般的に使用されている金やポーセレンを治療材料とした場合は対象となります。
また、発育段階にある子供の不正咬合(こうごう)治療用の歯列矯正や、子供の通院のために付添う親の交通費も対象になります。ただし、美容目的の歯列矯正は対象外です。

高額治療費のローンなどは、その年度に支払った分が対象となり、未払い分は支払った年度に申告します。

参考:国税庁|No.1128 医療費控除の対象となる歯の治療費の具体例

眼科治療費

眼科医師による診療や治療費は対象です。眼鏡については、手術後の機能回復用に短期間装用するものや、幼児の未発達視力を向上させる等の治療目的の場合は対象となります。また、治療のために装着する特殊なコンタクトレンズの費用なども対象です。
ただし、近視や遠視などを矯正する日常用の眼鏡やコンタクトレンズは対象とはなりません。

参考:国税庁|No.1122 医療費控除の対象となる医療費

リハビリテーションやマッサージ費用

医師の処方や治療目的のリハビリや、あんまマッサージ指圧師・はり師・きゅう師・柔道整復師による施術は対象です。ただし、疲れを癒すためや体調を整える等の目的は対象とはなりません。

医薬品や医療機器に関する費用

処方薬や市販薬、医療機器の購入やレンタル料も対象となります。詳しく見ていきましょう。

市販薬や医薬品の購入費

治療や療養を目的とした処方薬や、市販の風邪薬・胃腸薬・痛み止め等の購入費は対象です。第2類医薬品、第3類医薬品ともに治療目的のものは対象になります。
医師の処方によるビタミン剤等は対象となる場合があります。

参考:国税庁|No.1120 医療費を支払ったとき(医療費控除)

医療機器の購入費やレンタル料

コルセット・義手・義足・松葉づえ・補聴器・義歯・眼鏡等の、治療目的の医療機器の購入やレンタル料は対象です。ただし、一般使いの眼鏡や美容目的のコルセット等は対象にはなりません。

通院や妊娠に伴う費用

妊娠出産に伴う費用や、医療費以外の通院費や付添い費用も対象となるものがあります。

通院にかかる交通費

通院のために公共交通機関を使った利用料は対象です。公共交通機関を利用した際の領収書がない場合も、家計簿に記載したり、医療費の領収書等に裏書したりすることで、通院のために利用したことの証明ができます。ただし、自家用車のガソリン代・駐車場代は対象外です。

また、幼児や児童の通院に親が同行した場合や、一人で通院できず付き添いが通常必要と認められる事情があり親族が同行した場合の、同行者の交通費も自家用車利用以外は対象です。

妊娠・出産費用

妊婦定期検診や検査費用、通院費、入院費、入院時の食事代は対象です。また、出産のために病院へ行く際は、公共交通機関を利用できないことを考慮し、タクシー料金も対象となります。
健康保険組合等から、出産育児一時金や家族出産育児一時金または、出産費や配偶者出産費などが支給された場合、その金額は医療費控除の計算をする際に医療費から差し引きます。

参考:国税庁|No.1124 医療費控除の対象となる出産費用の具体例

療養上の世話や付添い費用

看護師、准看護師、介護福祉士、家政婦等による療養上の世話や業務として行う付添い費用は対象です。ただし、実際にかかった費用のみで、謝礼金などは対象外となります。
また、家族や親戚縁者が行う私的な付添い費用は対象とはなりません。

介護や在宅医療に関する費用

続いて、介護や在宅医療に関する費用です。こちらも医療費控除の対象となるものがあります。

介護保険制度により提供される施設・居宅サービス利用料

デイサービスの利用料や在宅での入浴サービスなど、介護保険制度により提供されるサービス利用料の、自己負担額は対象です。補助金等で補てんされた金額は差し引きます。

おむつ利用料

6ヶ月以上の寝たきり状態で、医師の治療を受けている場合のおむつ代は対象です。医師が発行した「おむつ使用証明書」が必要となります。また、介護保険法の要介護認定を受けている場合、市町村長が交付する「おむつ使用の確認書」があれば、「おむつ使用証明書」に代用できます。

参考:国税庁|質疑応答事例 所得税目次一覧

その他の対象となる費用

他にも意外と知られていない費用も対象となるものがあります。

海外で支払った医療費

海外旅行中の怪我や病気で、現地の医師に支払った医療費も対象です。海外では、日本のような保健医療制度がないため、高額の医療費を支払うことになります。
その際、治療費を外国通貨で支払った場合は、支払った日付の外国為替の電信売相場と電信買相場の仲値(TTM)を円換算した金額を算出します。この金額を医療費として控除額の計算を行います。

コロナ感染によるPCR検査費用

コロナ等の症状を疑い病院を受診した際、医師の判断で検査が必要と認めた場合のPCR検査は対象です。しかし、個人的にコロナに感染しているか確認するために行うPCR検査は適用外となります。ただし、個人的に行ったPCR検査で、陽性の結果が出て治療を行った場合は対象となります。この場合、個人負担分が対象金額となり、公的資金分は含みません。

参考:国税庁|No.1122 医療費控除の対象となる医療費 タックスアンサー

医療費控除の対象にならない費用

ここからは、医療費控除の対象にならない費用について解説します。正しく区別して計上しない場合、領収書の提示や再申告を求められるなど、手間が生じ確定までの時間が伸びる可能性があります。
対象外の費用としては、以下があげられます。

・健康診断や人間ドック・家族や親類縁者の付添費用
・ビタミン剤やサプリメント購入費・診断書発行費用
・インフルエンザ等の予防接種費用・医師等への謝礼金
・タクシー料金や自家用車利用料

健康診断や人間ドック

健康診断や人間ドックなど、健康の維持や促進を目的としたものは対象外です。ただし、疾病が発見され治療へとつながった場合は、診療の一環とみなされ対象となります。

ビタミン剤やサプリメント購入費

ビタミン剤やサプリメントなど、病気の予防や健康の維持を目的としたものは対象とはなりません。医療費控除の対象となる医薬品は、疾病の治療を目的とするもののみです。

インフルエンザ等の予防接種費用

インフルエンザ等の予防接種など、ワクチン接種も対象にはなりません。病気の予防が目的のため、対象となるワクチンはありません。

タクシー料金や自家用車利用料

通院時のタクシー料金や自家用車を利用した際のガソリン代、駐車場代も対象にはなりません。公共交通機関を利用できない特段の事情がある場合に限り、タクシー料金が対象となる場合があります。

家族や親類縁者の付添費用

医療従事者や介護福祉士、家政婦等へ付添いを依頼した場合の依頼料については認められますが、謝礼金は認められません。また、家族や親戚縁者の付添いに支払った手数料や謝礼金も対象にはなりません。

診断書発行費用

保険金の請求等に利用するための診断書費用など、一般的な診断書費用は対象とはなりません。ただし、たとえば、A病院での治療をB病院へ引き継ぐための「診療情報提供料」にあたる診断書費用は対象となります。

参考:国税庁|別紙 診療情報提供書に係る診療情報提供料の自己負担額の医療費控除の取扱いについて

医師等への謝礼金

医師や看護師等に謝礼として渡した金品の費用は対象とはなりません。疾病の治療目的とは異なるためです。医療費控除は疾病の治療を目的とした費用に限られます。

医療費控除の特例(セルフメディケーション税制)とは

セルフメディケーション税制とは医療費控除の特例として、平成29年1月1日から令和8年12月31日までの間に、薬局やコンビニ等で購入した医薬品について控除が受けられる税制です。条件は以下の通りです。
対象医薬品についての詳細は厚生労働省のホームページを確認してください。

【セルフメディケーション税制の要件】
  • 健康診断等による健康維持活動を行っている
  • 購入費用が年間12,000円を超える(控除額の上限88,000円)
  • 通常の医療費控除との併用はできない
  • 対応医薬品を確認する

参考:国税庁|No.1132 セルフメディケーション税制の対象となる特定一般用医薬品等購入費
参考:厚生労働省|セルフメディケーション税制(特定の医薬品購入額の所得控除制度)について

医療費控除を申告する際の注意点

医療費控除を申告する際の注意点を見ていきましょう。対象期間から節税対策のコツ、領収書等の保存義務などがあります。

医療費控除の対象期間を確認する

医療費控除の対象はその年の1月1日~12月31日までに支払った医療費です。未払い分は実際に支払った年分の控除の対象となりますので注意しましょう。また、申告は確定申告と同時に2月16日~3月15日の間に行います。還付申告の場合は確定申告期間外でも申告でき、さらに5年間さかのぼっての申告も可能です。

高額の医療費を支払った際に節税対策を検討する

医療費控除は生計を一にする家族全員の分をまとめて申告できます。たとえば、夫婦共働きで家族の高額医療費を支払った場合、夫婦のどちらか所得の多い方がまとめて控除を申告することもできます。または、夫婦それぞれが1年分の医療費を分けて申告することも可能です。控除は所得の多いほうが税率も高く多くの控除が受けられるため、工夫することでより多くの控除を受けることもできます。

医療費のお知らせや領収書等は5年間保存する

医療費控除の申告の根拠となった、領収書や医療費のお知らせ、保険金の受取明細書等は自宅で5年間の保存が義務付けられています。添付や提出の義務はありませんが、税務署から提示を求められた際は速やかに提出する必要があります。

まとめ

医療費は、高額の医療費を支払ったときはもちろん、細々と1年間に支払った医療費の積み重ねが規定額を超えている場合は多々あります。対象となる費用の範囲が広いこともご理解いただけたでしょう。医療費控除の対象となる家族が、対象となる費用を漏れなく整理集計することが重要です。風邪薬の領収書も捨てずに保管しましょう。
この記事を参考に、医療費控除の対象になる費用をまとめ、スムーズな申告の一助になれば幸いです。

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