開業届とは?提出のメリット・デメリットと手続き方法を徹底解説


はじめに
- 開業届とは、個人で事業を開業する際に税務署へ申告するための書類
- 開業届には「個人事業の開業・廃業等届出書」と「個人事業税の事業開始等申告書」がある
- 開業届の提出は、事業開始等の事実があった年分の確定申告提出期限までに行う
- 青色申告を希望する場合は開業届と一緒に青色申告承認申請書も提出するとよい
- 開業後の確定申告を青色申告で行えば所得税の節税メリットがある
この記事を見つけたあなたは、開業届をどのように手続きしたらいいか、悩んでいることと思います。本記事では、そうした悩みや疑問を解決するために、開業届の種類や提出期限、メリット・デメリットについて詳しく解説します。開業届に加え、青色申告や白色申告など開業時に必要な別途書類についても併せて見ていきましょう。
開業届とは
開業届(正式名称:個人事業の開業・廃業等届出書)とは、個人事業を開業する際に税務署へ申告手続きをするための書類を指します。個人事業やフリーランスを始めると発生する売上や経費などは、自身で所得税を計算して確定申告を行う必要があります。開業届を提出することは、個人事業主として申告や納税をしていくことを宣言する意味を持ちます。
開業届は2種類ある?
開業届に似た届出書は2種類あります。
1つ目は税務署に提出する個人事業の開業・廃業等届出書で、一般的に開業届と呼ばれるものはこちらを指します。2つ目は都道府県税事務所に提出する個人事業税の事業開始等申告書です。
どちらも事業を始めたことを届け出る書類ですが、提出先や納税目的等が異なりますので区別が必要です。さらに業種によっては許認可が必要な場合があります。開業時に必要な届出についての詳細は以下で解説します。
個人事業の開業・廃業等届出書
税務署に提出する個人事業の開業・廃業等届出書は、新たに事業所得、不動産所得あるいは山林所得を得る人が、事業を開始した日の属する年分の確定申告期限日(基本的には翌年の3月15日)までに提出します。提出先の管轄税務署については国税庁ホームページで紹介されていますので、以下よりご確認ください。
参考:国税庁|個人事業の開業・廃業等届出書
参考:国税庁|A1-5 個人事業の開業届出・廃業届出等手続
個人事業税の事業開始等申告書
都道府県税事務所に提出する個人事業税の事業開始等申告書は、個人事業を開始したことについて各都道府県の管轄税事務所に申告するもので、個人事業税にかかわる申告書です。こちらは都道府県によって提出義務の有無や提出期限、書式等が異なるため、都道府県ごとのルールを確認する必要があります。
参考:東京都主税局|個人事業税の事業開始等申告書
「許認可申請」が必要な業種もある
開業届の提出の有無にかかわらず、特定の業種では許認可申請が必要です。許認可申請とは、特定の事業を行うために、所定の行政機関に申請し許可や認可を受けることをいいます。これを取得せず開業してしまうと、業務違反により行政処分や罰金など法定責任を負う可能性があります。開業と同時期に提出するとよいでしょう。
取得済の許認可については、有効期限が切れていないか、更新時期をチェックする必要があります。以下に許認可の必要な業種例を記載しました。
【許認可が必要な代表的な業種】
| 対象業種 | 許可の種類 | 申請先 |
|---|---|---|
| 飲食店 | 飲食店営業許可 | 管轄保健所 |
| 美容室 | 美容所開設届 | 管轄保健所 |
| 不動産業 | 免許 | 都道府県庁 |
| 建設業 | 許可 | 都道府県庁 |
| 旅館業 | 許可 | 管轄保健所 |
開業届の提出方法と流れ
開業届の提出方法について説明します。手順は以下の4ステップです。流れに沿って見ていきましょう。
1.開業届を入手する
まずは開業届を入手しましょう。開業届は国税庁のWebページからダウンロードする、もしくは税務署窓口で入手できます。
参考:国税庁|個人事業の開業・廃業等届出書

※クリックで画像を拡大できます
2.開業届を作成する
入手した開業届の項目に必要事項を記入します。記入する項目は納税地の住所、事業主の氏名、生年月日、職業、事業の概要などです。屋号は作成した場合に記入しましょう。
詳細は以下の記事をご参照ください。
3.税務署へ提出する
提出方法は、管轄の税務署へ持参または郵送、e-Taxを用いたオンライン提出の3通りの選択があります。自分に合った方法で提出しましょう。提出方法別の提出先と利用可能な時間については、下記を参考にしてください。
| 提出方法 | 提出先 | 利用時間 |
|---|---|---|
| 税務署窓口 | 管轄税務署 | 年末年始除く平日 開庁時間8時30分~17時 (納税関係受付時間9時~15時) |
| オンライン | e-Tax (国税電子申告・納税システム) | 24時間 (ただし、メンテナンス時間を除く) |
| 郵送 | 最寄りの郵便局 | 制限なし (ポスト投函の場合) |
4.開業届の控えを保管する
開業届の控えは、屋号付き口座の開設や小規模企業共済の申し込み時等に必要です。
税務署窓口や郵送で開業届を提出した場合、収受印が押されません。控えが必要な場合はコピーを残しておくか、情報開示請求で対応する必要があります。また、e-Taxでオンライン提出した場合は、受信通知や提出した際のデータが開業届の控えになるため、かならず保存しておきましょう。
参考:国税庁|令和7年1月からの申告書等の控えへの収受日付印の押なつについて
開業届はいつ出す?提出期限は?
開業届は、所得税法第229条により事業を開始した事実のあった日が属する確定申告期限内に提出しなければなりません。たとえば、本年5月1日に事業を開始した場合、翌年の確定申告期限である3月15日の期限内に提出が必要です。ただし、期限を過ぎての提出にペナルティはなく、税務署から提出の催促が来ることもありません。
参考:国税庁|A1-5 個人事業の開業届出・廃業届出等手続
(開業等の届出)
第二百二十九条 居住者又は非居住者は、国内において新たに不動産所得、事業所得又は山林所得を生ずべき事業を開始し、又は当該事業に係る事務所、事業所その他これらに準ずるものを設け、若しくはこれらを移転し、若しくは廃止した場合には、財務省令で定めるところにより、その旨その他必要な事項を記載した届出書を、その事実があつた日の属する年分の所得税に係る確定申告期限までに、税務署長に提出しなければならない。
参考:e-GOV法令検索|所得税法
開業届と青色申告は一緒に出すべき?
青色申告を希望する場合は、開業届と一緒に青色申告承認申請書を提出するのがおすすめです。青色申告を行うには、1月15日までに開業した場合はその年の3月15日までに、1月16日以降に開業した場合は開業日から2か月以内に青色申告承認申請書を提出し承認を受ける必要があります。そのため、青色申告を検討している場合は、開業届とあわせて青色申告承認申請書の提出期限内に届出ておくとスムーズです。
青色申告で確定申告を行うと、所得から最大で65万円が控除されるため節税対策になります。
参考:国税庁|A1-8 所得税の青色申告承認申請手続
白色申告でも開業届は必須?
本来、青色申告と白色申告に関係なく開業届の提出は必要ですが、提出しなかったとしても罰則はありません。しかし、開業届を提出することで、税法上の個人事業主と認められます。
白色申告は、提出するための書類作成の手間が少ないほか、家計簿のような感覚で単式簿記をつけられるため、確定申告においては白色申告を選択する方もあります。
開業届を提出するメリット
開業届を提出するメリットについて説明します。
事業主としての信頼性が高まる
個人事業主として独立したことを公式に示すためには開業届が必要不可欠です。また開業届を提出することで、クレジットカードの作成やサービスの申し込みなどの際に信用度が高まるメリットがあります。
小規模企業共済に加入できる
個人事業や小規模企業を経営する中で、廃業した場合の備えとして小規模企業共済という、いわゆる退職金代わりになる積立金制度があります。加入するには、開業届の提出が必要です。また、小規模企業共済の掛け金は、小規模企業共済等掛金控除で全額控除が可能なため、将来の備えと節税につながるメリットがあります。
屋号を利用して銀行口座を開設できる
開業届を提出していれば、屋号を付けた口座を開設することが可能です。そのためには開業届の控えが必要になるため、くれぐれも紛失には注意しましょう。また、屋号の入った口座があれば、社会的信用が向上するほか、個人と事業の入出金を別々に管理しやすくなるメリットがあるのでおすすめです。
これらのメリットを活用するためには、提出期限を過ぎないよう早めに開業届を提出しましょう。
開業届を提出するデメリット
開業届の提出にかかわるデメリットについて説明します。
所得が一定の基準を超過すると扶養から外れる
開業して事業収入が増えた場合、所得が一定の基準を超過すると扶養控除および配偶者控除が対象外となり、所得税や健康保険についても、扶養の条件から外れる可能性があります。扶養から外れた場合は、自分で確定申告を行い納税が必要になります。さらに管轄の役所で国民健康保険や国民年金の加入手続きをしなければなりません。
離職後の失業手当を受給できない
開業届を提出すると、原則として失業手当の受給はできなくなります。ただし、事業開始等による受給期間の特例が2022年7月1日に施行されました。この特例を利用すると、事業を行っている期間等について、最大3年間は受給期間に算入されません。その後、休廃業し再就職活動を始めた場合、失業手当の支給期間である1年間の基本手当の受給をうけられる特例です。通常の受給期間1年に、事業を行っていた期間等を最大3年加え、最長4年まで受給期間を延長できます。
退職後に開業を希望する場合は特例申請をしておきましょう。
参考:厚生労働省|事業開始等による受給期間の特例
まとめ
開業届について理解していただけたでしょうか? 開業するには、さまざまな手順を踏んだ上で書類を提出しなければなりません。開業届のほかに許認可申請は業種によって提出先も異なるため、あらかじめ確認してから提出する必要があります。また、特定業種の人が行政機関へ許認可申請を取得せず、開業してしまうと業務違反により処罰されることもあるため注意が必要です。メリット・デメリットを理解し、正しい順序で開業届をはじめとした、開業時の各種届書を提出しましょう。












