自営業の保険は何が必要?優先順位と最小セットを解説


はじめに
- 自営業者が入れる保険には、公的保険、民間保険、共済や公的機関の制度がある
- 自営業者の保険選びは、収入減少に備える、事業リスクに備える、健康リスクに備える、の3本柱で考える
- 保険選びの優先順位は、働けなくなったとき、医療費と生活防衛、将来への備えの順である
- 保険は、すべて入るのではなく、今の自分に必要な最小セットを選択する
- 保険と共済の違いを理解し使い分けることが重要
自営業者にとって、保険はいざというときの備えとなる安心材料です。しかし、種類も多いため迷うこともあるでしょう。そこで、自営業者が考えるべき保険選びのポイントや優先順位、必要な保険の種類を解説します。保険を選ぶ際の参考にしてください。
自営業者が入るべき保険一覧
個人事業主やフリーランス等の自営業者が加入する保険には、以下のような種類があります。まずは全体像を確認しましょう。
| 公的保険 | 民間保険 | 共済・公的機関の制度 | |
|---|---|---|---|
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公的年金は必須ですが、民間保険や共済等は状況に応じて選択しましょう。
自営業者が入る必要のある保険
自営業者が入るのが必須の保険:公的保険
国民健康保険・国民年金・介護保険(加入年齢あり)
自営業者が加入する公的保険には、会社員の健康保険や厚生年金のような企業との折半がなく、全額個人負担となります。扶養の概念がないため、家族がいる場合は負担が増える可能性があります。
国民健康保険では医療費負担が3割と健康保険と変わりませんが、傷病手当や出産手当といった制度がないため、病気やけが、出産に備えた医療保険の準備が必要です。
国民年金は基礎年金のみとなり、厚生年金の2階部分がないため将来受け取れる年金額が少ない傾向があります。ただし、以下の対策で受け取れる年金額を増やすことが可能です。
- 【受け取り年金額を増やす対策】
- 付加保険料を上乗せする:
付加保険料400円を多く収めることで、200円×納付月数分の年金額を増額できる
- 国民年金基金を活用する:
掛金(月額68,000円を上限)を支払うことで年金額を増額できる(付加保険料との併用不可)
高額の民間保険料を支払うのではなく、公的年金を上手に活用しましょう。
自営業者におすすめの保険
自営業者にとって最も重要なのは、働けなくなり収入が途絶えることへの備えです。不慮の事故や病気はいつ発生するかわかりません。事業継続に支障をきたすリスクへの備えも必要です。これらに対処可能な保険をまとめました。
- 【収入減少に備える保険】
- 就業不能保険:ケガや病気により長期間にわたり働けない状態になったときの、減少した収入を補償する(毎月一定額の給付金が受け取れる。待機期間がある)
- 所得補償保険:ケガや病気により短期間の働けない状態になったとき、減少した収入を補償する損害保険(数日の免責期間あり。受け取る保険金は非課税)
- 【事業リスクに備える保険】
- 火災・地震保険:災害による財産の損失を補償する
- 賠償責任保険:事業活動において損害賠償責任を負った場合、賠償金等の損害を補償する
- 業務災害総合保険:従業員の業務中のケガや病気を補償する(労災上乗せや使用者賠償責任をカバー)
- 【健康リスクに備える保険】
- 医療保険:入院や手術、通院等の費用を補償する
- 生命保険:死亡時や定める高度障害を負った際の生活を補償する
参考:ほけんの窓口|個人事業主やフリーランスが入るべき保険は?
参考:ほけんの窓口|所得補償保険とは?就業不能保険等との違いやおすすめの選び方
保険は優先順位で選ぶ
保険には、目的に応じてさまざまな種類があります。不安を感じるたびに多くの保険に入りたくなるものですが、ほんとうに必要なものなのか冷静な判断が重要です。そのため、必要な保険の優先順位を決める必要があり、家族構成・貯蓄額・住宅ローンの有無・従業員の有無・職種リスクなどを参考にしましょう。
最優先は働けなくなるリスク
自営業者にとって、働けなくなったときの対処が最優先です。国民健康保険には原則として傷病手当がないため給与の保障はありません。ケガや病気で療養中も生活費や事業の固定費は発生し続け、補てんする手段がないため、長びけば影響も大きくなります。貯蓄があっても切り崩してしまったら、療養を続けられないばかりか事業の継続も難しくなる可能性があるでしょう。
対象保険:就業不能保険、所得補償保険
次に考えるのは医療費と生活防衛
次に優先することは医療費と生活費の確保です。医療費について日本では高額療養費制度があるため、自己負担額(年齢や所得に応じて異なる)には上限があります。しかし、差額ベッド代や交通費、生活費は自己負担のためカバーされません。医療保険を検討する場合は、日額いくらという発想だけでなく、貯蓄でどこまで賄えるかを基準に必要最小限の保障を考えましょう。
対象保険:医療保険、生命保険
参考:厚生労働省保健局:高額療養費制度を利用される皆さまへ
老後・万一の備えは後回しでもよい
貯蓄型の養老保険や死亡保障のある生命保険等は、掛金が高額になる場合があります。開業直後や収入が不安定な段階では、掛金捻出による資金不足を招きかねません。ある程度事業が軌道に乗り、生活基盤が安定するまで優先するのは避けましょう。
保険の安心感は大切ですが、まずは今の生活を守り、収入や貯蓄を増やすことを優先しましょう。
対象保険:養老保険、生命保険
自営業者向けの最小セット例
ここからは、自営業者の状況別にどのような保険を選んだらよいかを紹介します。保障額と掛金のバランスを考え、無理のない最小セットを選びましょう。
独身・扶養なしの場合
扶養家族がいない独身の場合、最優先は就労不能リスクへの備えです。働けなくなった際の生活費と、事業継続のために必要な最低限の経費を補う準備をしましょう。また、貯蓄がある場合の医療保険は、高額保障を選ぶ必要はありません。貯蓄額に応じて検討しましょう。
最も優先度が低いのは死亡保障です。営業の勧めるままに高額の死亡保険に入ると、年齢が若くても保険料負担は大きくなります。
対象保険:就業不能保険、所得補償保険、掛け捨て型の医療保険
家族がいる場合
家族がいる場合は、就労不能リスクに加えて家族の生活保障も重要です。たとえば、働けなくなった際の事業部分の備えと、不測の事態に備えた死亡保険も検討しましょう。定期型の死亡保険なら、一定の期間を指定して保障する掛け捨てタイプの保険なので、貯蓄型に比べると保険料は低額に抑えられます。
他には、保険の種類にもよりますが親の医療保険に子ども特約を付けて子どもの健康リスクにも備えられるものもあります。無駄を省いて保険料を抑える工夫が重要です。
対象保険:就業不能保険、所得補償保険、死亡保険、医療保険(家族型等)
開業直後・収入不安定な場合
開業直後は固定費を増やさないことが肝要です。収入が不安定な段階で経費が増えると資金不足に陥る可能性があるからです。そのため高額保障ではなく最低限の保障にとどめ、事業が安定したら保障額を上げたり、ほかに必要な保険に入ったりすると考えましょう。
たとえば、就業不能保険や所得補償保険で事業部分に備え、少額の死亡保障に医療費特約を付けた生命保険1本に絞り、健康リスクに備えることも可能です。掛け捨て等を活用し保険料抑えましょう。
対象保険:就業不能保険、所得補償保険、事業に応じて火災保険や損害賠償保険、医療保険
保険と共済はどう使い分ける?
保険に似た制度に共済があります。どちらもケガや病気、事故や損害を受けた際に備えるものですが、加入対象や保障の内容など大きく異なる点があります。上手に使い分けるために、違いをわかりやすく解説します。
保険と共済の違いを簡単に整理
共済とは相互扶助の制度です。同じ目的や職種等で集まった会員や組合員から集めたい金銭を、不測の事態に見舞われたり、規定の条件に達したりした会員や組合員に支払い助け合う制度となります。以下に保険との違いをまとめました。
【共済と保険の違い】
| 共済 | 保険 | |
|---|---|---|
| 加入対象 | 共済を運営する組合等の組合員とその家族 | 加入希望者全て |
| 保障の内容 | 限られた商品サンプルから選択 組み合わせはできない 保障範囲は限定される | 保険商品や特約の種類が多く 組み合わせが可能 保障範囲は広い |
| 営利目的 | 会員の相互扶助による運営 営利を目的としない | 保険会社が営利目的で営業 |
| 用語 | 掛金 共済金 普及・推進 | 保険料 保険金 営業・勧誘 |
| 根拠となる法律 | 運営組合別の組合法 運営組合別の監督省庁 | 保険業法・金融庁 |
共済は保険と比べると掛金が安い傾向がありますが、同時に保障の範囲も限定されます。さらに、共済を運営する団体への加入が必要です。自分にとってメリットのある選択はどちらなのか、検討する必要があるでしょう。
参考:ほけんの窓口|共済と保険の違いとは?メリット・デメリットをわかりやすく解説
自営業者がよく使う共済
自営業者等の中小規模企業を対象とした国がサポートする共済制度で、小規模企業共済と経営セーフティ共済があります。自営業者の老後資金や連鎖倒産、経営難に備えることができます。
- 【小規模企業共済】
- 小規模事業経営者とその共同経営者、小規模企業等の役員のための退職金制度
- メリット:事業資金の借入も可。税制面では掛金全額が所得控除できる
- デメリット:20年未満での解約は掛金合計額を下回る。共済金を受け取る際に税金がかかる
- 【経営セーフティ共済(中小企業倒産防止共済)】
- 取引先の倒産等による連鎖倒産を防ぐための制度
- メリット:不測の事態に対処するために必要な事業資金の借入ができる。掛金は経費計上可
- デメリット:1年未満の解約は掛け捨て扱い。解約手当金は事業収入となり課税がある
どちらの共済も自営業者の備えとなり、掛金の節税効果を魅力に感じるかもしれません。しかし、解約時や共済金受給時にも課税があります。節税目的の利用は控えたほうが無難でしょう。
参考:共済サポートnavi|知りたい|中小機構の共済制度について
参考:中小機構|小規模企業共済にデメリットはあるの?
参考:Freee|経営セーフティ共済とは? 加入条件やメリット・デメリットをわかりやすく解説
自営業の保険でよくある失敗
さまざまな種類の保険や共済があることを知ると、不安解消や節税対策などに活用したくなるものです。ここからは、自営業者がやりがちな保険にまつわる失敗を見ていきます。
全部入って保険料が重くなる
事業運営をする中で、自営業者は多くの不安に駆られます。自分が働けなくなったら、借入金もある、大きな契約で損害賠償が生じたら、取引先のよくない話を聞いたなど、不安要素は多岐にわたります。そのたびに対策できる保険に加入することで安心は得られるでしょう。しかし、複数の保険料や掛金が積み重なり大きな金額になった場合、かえって経営を圧迫する要因となりかねません。
節税だけで共済・保険を選ぶ
保険料や共済の掛金は、所得控除や経費計上ができるため、節税対策として活用できます。節税目的で控除枠一杯の保険料を支払っていませんか。控除により減額した税金額と節税目的で支払っている保険料を比較してみましょう。大きすぎる保障に入っていたり、掛け捨てで十分に賄えるものを貯蓄型にしたりと、無駄な保険料を支払っている可能性があります。
解約・元本割れを理解していない
たとえば、生命保険には貯蓄型と掛け捨て型があり、貯蓄型は解約時に解約返戻金が支払われます。しかし解約のタイミングによっては、支払った保険料よりも解約返戻金が少なくなる元本割れが生じる可能性があります。
他には、先払いした保険料が返還されなかったり、再加入が厳しくなり保険料が上がったりと、解約にはさまざまなリスクがあることを覚えておきましょう。
まとめ
保険は不安を減らしてくれる重要な道具です。ところが、どのような種類の保険にどのくらい入ればいいのかに正解はありません。大きすぎる保障や高額な保険料を、負担に感じる状況は避けましょう。自分にとって本当に必要なものだけを選べばよいので、冷静な判断が必要です。
また、定期的に見直すことで、変化した自分に合った内容や保険料を確認でき、無駄を抑える工夫ができます。上手に保険を利用して、不安の解消に役立てましょう。












