個人事業主が年収を聞かれた時の正しい答え方|確定申告書の見方を解説


はじめに
- 個人事業主の年収は、売上から必要経費を差し引いた金額を指す
- 所得金額は、確定申告書の「所得金額等の欄」の合計金額を確認する
- 青色申告の場合は、所得金額に「青色申告特別控除額」を加える
- 年収には、税込み年収(所得金額)と手取り年収(納税・納付を済ませた金額)の2つがある
- 年収を虚偽申告した場合は、罰則等のリスクがある
個人事業主が年収を聞かれた場合、売上から必要経費を差し引いた所得金額を答えるのが最適解となります。では、なぜ売上高ではなく所得なのか?会社員の年収の考え方とは異なる個人事業主の特徴と、年収を聞かれた場合の対処法を解説します。年収を聞かれた際の正しい答え方の参考にしてください。
個人事業主の年収の確認方法
個人事業主の年収は、売上高(年間の売上の合計)から経費(仕入金額や諸費用等)を差し引いた所得金額を指すことが多いです。同じ売上高の場合でも経費が多ければ年収は少ない金額や赤字になるため、実際の所得(個人事業主が使える金額)を正しく伝える必要があります。
- 経費によって変わる所得金額の例
- 売上高1,500万円-必要経費1,000万円=所得金額500万円
- 売上高1,500万円-必要経費700万円=所得金額800万円
確定申告書から確認する方法
確定申告書の「所得金額等(水色縦書き表示)」の「合計」欄に記載された金額が年収です。これは売上高から仕入原価や必要経費を差し引いた「営業等」の金額に記載されたものと、事業に関わる利息や配当金などの収入を合算したものです。下図を参考に確認してください。

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厳密な意味での年収ではなく売上高を尋ねられる場合もあるでしょう。そのときは「総売り上げは○○円です」と明示し、所得金額との違いを区別して伝えることが大切です。場面によっては虚偽等のトラブルの原因になる可能性があります。
青色申告をしている場合の注意点
青色申告の場合は、青色申告特別控除額(65万円・55万円・10万円のいずれか)が差し引かれた金額が所得金額になるため、「所得金額等」の合計に青色申告特別控除額を足した金額が年収になります。確定申告書の下図に示す「その他(桃色縦書き表示)」の「青色申告特別控除額」を確認しましょう。


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個人事業主が年収を聞かれたらどう答える?
個人事業主が年収を聞かれたときは、確定申告書の所得金額を答えるのが基本です。ただし、融資や補助金申請など実際に自由に使える金額が求められる場面もあります。その場合は、税金や社会保険料を差し引いた手取り年収を答えるのが適切です。
こうした違いを理解するために、まず税込年収と手取り年収の違いを整理しておきましょう。
税込年収と手取り年収の違い
確定申告の所得金額(=税込年収)からは、税金や社会保険料がまだ差し引かれていません。これらを控除した後に残る金額が「手取り年収」であり、実際に自由に使える金額です。
- 【主な控除項目】
- 所得税
- 個人事業税
- 消費税
- 住民税
- 国民健康保険料
税込年収・手取り年収の計算方法
税込年収と手取り年収の計算方法は以下の通りです。
- 税込年収=売上高-(仕入価格+必要経費)
- 手取り年収=税込み年収-(所得税+住民税+個人事業税+国民健康保険料+国民年金保険料+消費税(課税事業者の場合))
個人事業主が年収として回答する金額は、状況に応じていくつかあります。税込みなのか手取りなのかを一言添えると誤解を招きません。
個人事業主と会社員の年収の違いは?
会社員の場合、年収は会社から支給される給与や賞与の合計額を指します。そこから社会保険料や所得税などがあらかじめ差し引かれるため、実際に手元に残る金額は少なくなります。
一方、個人事業主の年収は、売上から経費を差し引いた「所得金額」として確定申告書に記載される金額です。ここからさらに税金や社会保険料を支払う必要があり、会社員とは年収の考え方に大きな違いがあります。
個人事業主が年収を聞かれる場面
個人事業主が年収を聞かれる機会はさまざまありますが、中でも正確な金額を伝えることが重要な例を紹介します。
クレジットカードの申込時
クレジットカードを申し込む際は年収の申告が求められ、年収を判断材料に審査が行われます。そのため確定申告書の写しを提出する場合があります。とくにキャッシング枠を利用するときは、年収を証明する書類の提出を求められます。さらに、年収よりも収入の安定性が重視される場合があり、月々の収支がわかる書類の準備が必要なこともあるでしょう。
賃貸物件等の入居審査時
借家や駐車場などの賃貸物件の契約の際にも、月々の賃料の支払い能力を確認するため、所得証明の提出が求められます。とくに個人事業主の場合は、安定した収入があることを証明できる確定申告書と、納税証明書の写し等を求められることがあるため、準備しておきましょう。
給付金等の申請時
給付金や各種制度を利用する際も年収を聞かれます。特に就学金や児童手当では、収入額を基準に判断される制度のため年収が重要です。
個人事業主が年収を正確に伝えるためには、日々の事務作業と書類管理が必要で、控除を有効活用し正しい確定申告をすることで、給付金や制度の利用に活かせます。
個人事業主が年収を偽った時のリスク
個人事業主が年収を偽って申告した場合、信用を失い事業へ影響が出るだけではありません。融資の際は虚偽申告による罰則(詐欺罪など)や、借入金の返済が滞った場合の民事訴訟、刑事告訴の可能性も生じます。
個人事業主は、きちんと帳簿管理や確定申告を行い、正確な年収を提示することが大切です。信用の維持が、事業継続の重要な要素になります。
まとめ
個人事業主が年収を聞かれた際、確定申告書記載の所得金額を答えるのが一般的です。売上高や手取り金額を答える場合は、その金額の意図を明確に付け加える必要があります。また、年収を正確に答えるためには、日ごろから収入や経費を適切に管理し、確定申告を正しく行うことが欠かせません。個人事業主にとって、年収を正しく答えることは信用につながります。事業継続のためにも正しい申告を心がけましょう。












