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今さら聞けない無人コンビニの仕組み|無人店舗システムが社会問題を解決

date2024年02月22日
今さら聞けない無人コンビニの仕組み|無人店舗システムが社会問題を解決
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はじめに

  • 無人コンビニには、ウォークスルー型やセルフレジ型がある
  • 無人コンビニは、日本が抱える問題解決の一因を担う
  • 無人コンビニには課題も多いが、無人販売という発想が広がった
  • 無人コンビニ実現にはAI技術やIoT技術が不可欠である
  • 無人コンビニは、DX化の未来の形を示す

首都圏の駅近などに無人コンビニを見かけるようになって数年、さらに増え続けています。無人コンビニを実現しているAI(人工知能)をはじめとした技術は、社会の変化が目に見える典型例と言えるでしょう。

本記事では無人コンビニから見える日本の抱える問題、労働人口の減少やフードロスなどの環境問題の解決も含め、無人コンビニという例からDXについても考えていきます。

無人化へ向かう日本のコンビニ

2017(平成29)年経済産業省の後押しを受けた「コンビニ電子タグ1000億枚宣言」の合意に至りました。これにより検品・在庫管理の人手を減らし、消費期限管理の効率化や、防犯ゲートを用いた万引き防止など、コンビニエンスストア(以下コンビニ)の無人化に向けたさまざまな問題の解決に目途が見えてきたのです。

さらに、AIによる情報分析やIoTを使った商品状態の判断・連携などの技術の進歩も相まって、日本のコンビニは無人化へと踏み出しました。
駅構内やオフィス・マンションなどに、さまざまな形の人手を介さずに商品売買可能なコンビニが増えています。

コンビニ各社の挑戦

ファミリーマート
2021年にファミリーマートの無人決済店舗1号店「ファミマ サピアタワー/S(サテライト)店」を出店したことを皮切りに、無人決済店舗数を2024年までに1000店に拡大する方針。

セブン-イレブン
省人化で非接触型決済であるセミセルフレジ導入店舗への変更を推進。

ローソン
深夜の無人営業を実験的にはじめ、「Lowson Go」に代表されるウォークスルー型決済を導入する店舗増の方針。

日本が直面する少子化問題と無人コンビニ

日本が直面する大きな問題は少子高齢化に伴う労働人口の減少です。人手不足による人件費の高騰や地方の過疎化などは深刻な問題となっています。
無人コンビニは人手不足の解消に有効であるだけでなく、過疎化の進む地域においても形を変えた店舗展開ができるなど需要は高いと考えられます。

無人コンビニは救世主となりうるか?

スマホの普及やキャッシュレス決済の浸透など、無人コンビニの展開に必要な条件は満たされつつあり、政府も無人店舗化への後押しをしています。 「コンビニ電子タグ1000億枚宣言」とは、すべての商品に電子タグ(RFID)を張り付け、電波を利用して電子タグの情報を読み取り、商品がいつ・どこで・どの程度流通しているかを把握できるというものです。

これは無人コンビニ内の話だけではなく、電子タグの情報をサプライチェーン上で共有すれば、製造業・流通業・卸売業・小売業と業種の垣根を超えた、無駄の削除につながるという先を見据えた展望があります。全国に多数展開するコンビニから始まったことに大きな意味があると言えるでしょう。

無人コンビニ導入 そのメリット・デメリット

有人の店舗と違い無人コンビニの導入には、設置までの初期費用やエンジニアによる保守管理など別の費用も必要となります。今までは収益や情報収集も鑑みて、東京・大阪・名古屋など大都市圏の駅近や駅構内から、オフィス街などへ展開されてきました。
店舗面積当たりの売上・立地条件・顧客層などから、無人コンビニ導入にあたってのメリット・デメリットを紹介します。

コンビニ無人化による企業側のメリット

一番にあげられるのは人件費の削減です。定期的な商品の補充やバックヤードに人材は必要になりますが、レジ打ち要員を確保する必要がなくなります。顧客が自分で商品を持参したバッグに入れ、レジではパネルを見て確認し、スマホ・クレジットカード・現金などで支払いを済ませるからです。

在庫管理や消費期限管理なども効率的に行えるため食品ロスも軽減できます。また人口の集中する地域では、混雑時に顧客の導線をスムーズに確保する店舗設計を行えば、ひとりの顧客にかかる時間短縮も可能となるでしょう。

無人化導入時に想定されるデメリット

まず考えられるのは、キャッシュレス決済に抵抗のある年齢層の取りこぼしです。短い会話を楽しみにしている方もおられるでしょう。コンビニのおでんや揚げ物も好きな方も多いでしょうが、無人店舗での提供には課題があるようです。

また、電子タグの貼り付けも、どの段階で誰が行うのかという工数確保に加えてコストもかかります。よって、導入前の費用は決して少なくないといえます。
このように、出店が始まって数年、問題点・改善点など課題も多いのが実情です。

広がる無人販売 無人コンビニの仕組み

無人コンビニの店舗は、省スペースで導入出来たり、マンションやオフィスに導入出来たりと、さまざまな形に広がりを見せています。売り場に従業員を常時配置しない店舗・非接触型販売の代表例と仕組みについて詳しく解説します。

ウォークスルー型

ウォークスルーとはその名の通り、レジをスルーできる無人コンビニの形です。
「Amazon Go」が代表的な例で、Amazonアカウントに登録されたクレジットカードで自動決済されます。入店時にスマホをタッチパネルにかざしてから、買い物をします。店内には多数のカメラとセンサーが設置され、顧客が購入した商品を感知することにより、レジを通らなくても買い物ができる仕組みです。

セルフレジ型

「TOUCH TO GO」が代表的な例です。店内に多数設置されたカメラとセンサーや、AIによる認証システムで顧客の取った商品を認識して、買った・買わなかった(棚に戻した)などを判断します。顧客は自分が持参したバッグに商品を入れ、セルフレジへ行くと、パネルに購入商品と金額が表示されます。間違いがなければ、クレジットカード・交通系電子マネーなどで支払いをする。というシンプルな仕組みです。年齢制限のある商品は、カメラ越しにバックヤードで確認したり、身分証の提示を求められたりすることもあります。

自動販売機型

「Store600」が代表的な例です。日本初のオフィスやマンションなど、限定した商圏に特化した商品構成を行い、「近くのコンビニよりさらに近くで買い物ができる」を実現しています。専用アプリで扉の二次元コードを読み取り、開いたら商品を選び、商品に記載された二次元コードを読み込むと、登録したクレジットカードで決済される仕組みです。見える冷蔵ケース型から、常温ケース型・飲み物・日用品・おもちゃなど、柔軟な商品構成が実現できます。

無人コンビニを可能にしたAI技術

無人コンビニには、多くの最先端技術が使われています。入店時には認証システムによる本人確認が行われる場合もあるでしょう。顧客が手にした商品を、本当にカゴや持参したバッグに入れたのかの判断は、カメラや重量センサーが利用されます。会計時には、顧客が購入した商品と店側の認識に間違いがないか、決済方法は適切かなど、多くの識別・認証が必要となります。これらを可能にしたAI技術について解説しましょう。

無人認証システム

入店時の本人確認には、専用端末に手のひらをかざす静脈認証システムと、カメラで顔を検知する顔認証技術が合わさったマルチ生体認証や、多要素認証による本人確認が行われます。事前のアプリ登録による決済の場合、本人確認は重要な意味を持ちます。膨大なデータの中から瞬時に必要な情報を呼び出し成否の判断ができる、AIの技術があるから成せる無人認証システムと言えるでしょう。

商品選択システム

顧客が商品を手に取り、持参したバッグに入れるか商品棚に戻すか、この買うか買わないかの判断行動を人間が行うのは極めて簡単なことです。これをAIが認識するためには、複数のカメラによる人の識別と行動の識別、棚に設置された重量センサーによる商品の移動を認識して、双方を関連づける必要があります。混雑時などは多くの顧客が複数の商品を同時に出し入れしますので、より正確な情報を処理する必要があります。これもAIの処理能力の高さが証明される例と言えるでしょう。

無人決済システム

ウォークスルー型のように前もって専用アプリを登録し、クレジットカードで決済する場合には、専用アプリをかざさなければ入口ドアが開きません。セルフレジ型のように、顧客が自分でレジの決済を行う場合には商品を手にしていて、決済が終わらなければ出口ドアが開かないなど、ここでもAIの認証システムは利用されています。

万引きなどの防犯面も含め、店内を管理するAI技術が無人コンビニを実現させているといっても過言ではありません。

無人コンビニは万能か? 変化するコンビニの未来

人口が集中する都市部と、過疎化が進む地方ではコンビニに求められる顧客のニーズには大きな違いがあります。現在出店の多い駅近では、短時間に必要なものだけを手軽に買える無人コンビニにニーズはあるでしょう。それ以外の場所ではどうでしょう?コンビニの未来の形について考えていきます。

完全無人化への課題とは

従来のコンビニには、郵便業務・銀行業務・宅配など配送業務の代行や店内調理食品など、人手が無ければ提供できないサービスも多くニーズもあります。地域性や立地によって完全無人化は難しいといえます。

また、無人コンビニといってもバックヤードに人材は必要です。突発的なトラブルにも人の力は必要になります。完全無人化にはまだまだ課題も多いと言えるでしょう。

対面販売のニーズも追求するコンビニ

例えば、朝食のパンを1個買いに行くそこで二言三言会話をする。仕事帰りにいつものコンビニでビールを1缶買う。たったこれだけのことが張りあいや癒しと感じる方もいるでしょう。対面販売で、そこに人がいることこそ重要なのです。小売業ではコスト換算以上に、人とのかかわり合いが売り上げにつながることは周知の事実と言えます。

DX化が実現する多様なコンビニの形

ここまでは商圏3000人程度を最小とする店舗の、コンビニを念頭に紹介してきましたが、DX化が進む中でさまざまなコンビニの形が浮き彫りになってきました。いくつかご紹介します。

セイコーマートの例
企業の入るビルに従業員専用の店舗を展開するセイコーマートは、小スペースに無人店舗を出店しています。支払いはキャッシュレス決済のみ、最大の取り組みはレジ袋を置かないことで環境問題に一役買っていることです。

セブン-イレブンの例
セブン-イレブンは「お客様とのあらゆる接点を通じて、地域・コミュニティとともに住みやすい社会を実現する」を重要課題に掲げ、移動販売車による買い物支援を行っています。

一言でコンビニといっても、有人店舗・無人店舗・そのほかの形とさまざまな広がりを見せています。その背景には、DX化による商品管理の効率化と、流通や情報の共有が可能となった技術革新が不可欠であると言えるでしょう。

※ DX(デジタルトランスフォーメーション)とは、「ITやテクノロジーの技術で私たちの生活や仕事をより快適に、便利にする」という概念のこと。

無人コンビニはDX化の未来

無人コンビニは、デジタル化が進んだ現代だから生まれた新しい発想のコンビニと言えます。人が暮らしやすい社会のためにDX化を進めるという発想が重要であり、企業の利益につながったのです。産声を上げたばかりの無人コンビニには課題も多々あります。デジタル難民を作らないために、工夫を凝らしながら無人化店舗数はさらに増え続けるでしょう。
「DX化の先にある未来の形の最たる例をここに見た」と、多くの業種・企業はさらなるDX化を進めていくこととなるでしょう。

まとめ

無人コンビニという発想が生まれたことで、多くの新しいコンビニの形が登場しています。DXを進める中で企業は新たなチャンスをつかみ、社会に還元・貢献することで、さらに暮らしやすい社会に変わっていくことが期待されます。
無人コンビニは、単に新しいコンビニの形ではなく、未来を切り開く新たな指標となってくれることでしょう。

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