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デジタルトランスフォーメーション(DX)とは? 何かをわかりやすく解説

2021年06月15日
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はじめに

昨今、デジタルトランスフォーメーション(DX)という言葉を頻繁に耳にするようになりました。DXと聞いて、企業のIT化・デジタル化といったイメージを抱かれる方も多いことと思います。しかしDXの目指すところは、IT化・デジタル化に留まらず、社会全体までをも取り込む変革にあります。

以下では、デジタルトランスフォーメーションとはそもそも何なのか、その意味するところ、具体的な取り組みや事例、そして課題について、わかりやすく解説します。

デジタルトランスフォーメーション(DX)とは

デジタルトランスフォーメーション(DX)とは

デジタルトランスフォーメーション(DX)という言葉の初出は、スウェーデン・ウメオ大学のエリック・ストルターマン教授によって2004年に発表された論文中で提唱されたものになります。

その概念は、「ITの浸透が、人々の生活をあらゆる面でより良い方向に変化させる」と定義されています。なお「DT」ではなく「DX」と表記されるのは、英語圏では「transformation」の「trans」を「X」と略し、「X-formation」とすることが一般的なためです。

定義・意味や目的を簡単に!

学問的な用語として登場したDXですが、その後はよりビジネス的な側面で、その定義や解釈が語られるようになってきました。

多義的ではあるもの、概ねそれらは、「デジタル技術の活用によって企業のビジネスモデルを変革し、新たなデジタル時代にも十分に勝ち残れるように自社の競争力を高めていくこと」という意味合いで用いられています。

日本が示すビジネスにおけるDX

情報処理推進機構(IPA)では、DXについてこのように定義しています。

「AI や IoT などの先端的なデジタル技術の活用を通じて、デジタル化が進む 高度な将来市場においても新たな付加価値を生み出せるよう従来のビジネスや組織を変革すること」

一方、2018年12月に経済産業省が発表した「デジタルトランスフォーメーションを推進するためのガイドライン(DX推進ガイドライン)」では、以下のように定義がなされています。

「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」とし、団体によりそれぞれ定義は異なりますが、「デジタル技術による変革」という点が共通のキーワードになりそうです。

デジタル化の流れからみるDX

冒頭にも述べましたが、DXとはIT化そのものではありません。製品・サービス、さらにビジネスモデル・組織、延いては社会の変革がその目指すところです。IT化はあくまで手段に過ぎません。

以下では、「デジタイゼーション」「デジタライゼーション」という言葉を取り上げ、IT化の段階的な流れからDXについて説明したいと思います。

デジタイゼーション

「デジタイゼーション」とは、一部の工程の効率化のためにデジタルツールを導入するといった部分的なデジタル化を意味します。デジタル化の第一段階と言えるものです。

例えば、CRMツールを導入して顧客データを管理する、RPAによって一部の業務を自動化するといったことが、デジタイゼーションに当たります。

デジタライゼーション

「デジタライゼーション」とは、デジタイゼーションのような局所的な取り組みではなく、長期的な視野でプロセス全体を対象にデジタル化していく取り組みを意味します。デジタイゼーションとの違いは、プロセスをデジタル化するという点にあります。

例えば、CRMツールで管理している顧客データをもとに、適切に購入に導く、見込み顧客にアプローチしていくといったトータル的な仕組みの構築、フローの自動化などがデジタライゼーションに当たります。

デジタルトランスフォーメーション

デジタイゼーションは部分的、デジタライゼーションは全域的なデジタル化という違いはありますが、いずれも一企業の枠組みのなかでの取り組みになります。

一方、デジタルトランスフォーメーションは、そうした枠組みを超え、人々の生活をより良くするために社会全体を変革、さらにはデジタル技術による革新的なイノベーション「デジタル・ディスラプション」を意味するものと捉えられています。

よく使われるツール

DXの基本は、自社の課題を洗い出し、解決策として最適なデジタルツールを導入して活用することから始まります。

  • 収集した各種データのAIによるビックデータ分析
  • CRM(顧客管理システム)によるマーケティングセールス
  • チャットボットによる24時間365日のカスタマーサポート
  • 製造現場における生産管理システム(ERP)の導入

などが代表的なツールと言えます。

早わかり読本紹介

DXについては、様々な書籍が発売されていますので、何冊か読んでみるのも良いでしょう。以下ではわかりやすく説明されている書籍を2冊ご紹介します。

『いちばんやさしいDXの教本』 人気講師が教えるビジネスを変革するIT戦略 亀田重幸・進藤圭 著

『いちばんやさしいDXの教本』 人気講師が教えるビジネスを変革するIT戦略 亀田重幸・進藤圭 著

ディップ株式会社でさまざまな新規事業を立ち上げてきた2名による共著です。
”いちばんやさしい”とあるとおり、実際の事例を取り上げながら説明がなされており、初心者向けの書籍としてオススメです。

『未来IT図解』 これからのDXデジタルトランスフォーメーション 内山恒志 著

『未来IT図解』 これからのDXデジタルトランスフォーメーション 内山恒志 著

アナリスト・コンサルとしてDXへの取組みを調査分析し、その推進を支援してきた著者が、DXの基本や背景、具体的手法や問題点などを、図解を用いてわかりやすく解説しています。DXの入門書として最適です。

なぜ今注目されているのか

なぜ今注目されているのか

以下では、いまなぜこのタイミングで、DXがこれほど注目され、企業が取り組みを進めているのか、その理由について説明します。

経済産業省公表の『DXレポート』をわかりやすく解説

平成30年9月に経済産業省からDXレポートが発表されました。このレポートでは、「ITシステム「2025年の崖」の克服とDXの本格的な展開」という副題のもと、老朽化・複雑化・ブラックボッ クス化した既存システムが DXを本格的に推進する際の障壁となることに警鐘を鳴らし、2025年までにデジタル企業への変革を完了させることを目指して計画的にDXを進めるよう促しています。

このレポートを受け、企業は自社ITシステムや将来設計などに不安を抱き、DXへの取り組む必要性を本格的に感じたと言えます。以降では、レポートで指摘されているレガシーシステム問題と2025年の崖について解説します。

レガシーシステム問題

レガシーシステムとは、老朽化、肥大化・複雑化、ブラックボックス化したシステムを指します。DXレポートのなかでは次のような調査結果が示されています。

  • 約8割の企業がレガシーシステムを抱えており、約7割の企業でレガシーシステムがDXの足かせと感じている
  • IT人材が不足する中、レガシーシステムの保守・運用にIT・ ソフトウエア人材を割かれており、貴重なIT人材資源の浪費につながっている
  • 6割以上の事業者が、レガシーシステムは保守・運用が属人的となり、 継承が困難と考えている

このようにレガシーシステムは、ビジネスモデルの柔軟で迅速な変化への障壁であり、維持管理費の高騰によるコスト増、保守運用の担い手不足によるセキュリティ面でのリスクといった様々な弊害を生み出していると指摘されています。

2025年の崖とは

DXレポートのなかで「2025年の崖」という言葉が登場します。レガシーシステムは、コストや人材を新しいIT技術等に割くことができず、ビジネスモデルの柔軟で迅速な変化への対応が行えないという弊害を生じさせます。その結果、国際的なデジタル競争の敗者になってしまうことによる、日本経済への大きな損失の可能性がレポートでは示されています。

2025年には21年以上稼働している基幹システムが6割以上になるとされ、IT関連の人材不足は43万人にまで到達すると言われています。また、基幹系システムを刷新できなければ、2025年以降に現在の3倍となる最大12兆円/年の経済損失が生まれる可能性があるともされています。2025年まであと数年、もはや待ったなしの状況にあるというわけです。

「エンジニアとして働いているけど、この待ったなしの状況ではどうすることもできないのかな」と不安を感じたら、2025年の崖とは? DX本格化によるITインフラエンジニアの将来性を解説、こんな記事も参考にしてください。

企業がデジタルトランスフォーメーションに取り組む理由

DXを支えるクラウド・AI・IoT・5Gなどの新しいデジタル技術をベースに、あらゆる産業において新規参入を図る企業が後を絶ちません。特に欧米ではデジタルネイティブ企業が、これまでと異なるビジネスモデルで旧来の市場構造を覆してしまう例も数多く見受けられます。

自社の製品やサービスの競争力を維持し、さらに強化し拡充していくためには、デジタル技術の導入は避けて通れません。そのため、あらゆる企業において、DXへの取り組みは急務であると言えます。

生産性の向上

商品の製造におけるDXの取り組みを見てみましょう。例えば、製造現場での不良品の発生率を自動集計することにより、生産管理が容易になることで生産性が向上する、これもDXです。

一方で、販売データやカスタマーサービスに関するデータを自動で収集・分類し、AIによる解析などを介して、より顧客の要望に合った商品の製造につなげるのもDXが生み出す望ましい姿と言えるでしょう。

業務効率の向上

セールスの効率アップにもDXは大きく寄与しています。例えば、従来の名刺情報のリスト化による個別アプローチから、Webベースでのセールスに切り替え、顧客ターゲットごとのカスタマージャーニーに応じたコミュニケーションフローを作成する。その結果、顧客の購買タイミングに沿ったアプローチが行え、成約率のアップにつながるといった事例が代表的でしょう。

業務効率アップの手段をもっと詳しく知りたい方は、カスタマーサクセスについて掲載したカスタマーサクセスとは何か?基礎知識と事例や注目されている背景について解説という記事を参考にしてください。

企業の継続的な成長

DXはBCP(事業継続計画)という観点でも非常に重要です。事業継続に必要なDXは企業の活動基盤のデジタル化になります。

経費処理、顧客との契約、社内外の打ち合わせ、こうした日々発生する業務をオンライン化する・クラウド化することにより、非常事態が発生するような状況においても、変わらず事業の継続が可能な基盤を日頃から作り上げておくことが肝要です。

デジタルトランスフォーメーション化にあたっての課題

デジタルトランスフォーメーション化にあたっての課題

経済産業省では、DXの取り組みにおいて、経営者が押さえるべき事項を明確にし、取り組みの程度をチェックする指標とすることを目的に、『デジタルトランスフォーメーションを推進するためのガイドライン』(DX 推進ガイドライン)を策定しています。

以下では、本ガイドラインの構成である

  1. DX推進のための経営のあり方・仕組み
  2. DXを実現する上で基盤となるITシステムの構築

2つの観点から、実際の進み具合や課題について見ていきます。

経営のあり方と仕組み

デジタルトランスフォーメーションの推進には、自社がDXによって目指す姿を経営戦略やビジョンといった形で明確に示し、社内外に共有することが重要です。また経営層によるコミットメントも欠かせません。

さらに、戦略やビジョン策定に基づき、取り組む上での体制づくりも重要です。専門の部署を新設する、社長直轄のプロジェクトとするといった手法も有効です。

しかしながら、企業の経営層の多くはDXの必要性について理解はしているものの、決断をするに至る企業はまだまだ少ない状況です。

基盤となるITシステムの構築

実際のシステムの構築にあたっても課題は山積しています。全社的な ITシステムの構築のための体制・ガバナンスの構築が必要なことはもとより、事業部門ごとに最適化されたシステムをどう汎用化していくか、ベンダー依存からの脱却、それを可能にするIT人材の確保や社内における教育など、課題は数多くあります。

そのため取り組みを始めてはいても、一部業務のデジタル化など、第一段階のデジタイゼーションに止まっている企業がほとんどなのが現状です。

DXレポートから約2年が経過した時点で、IPAがDX推進指標の自己診断結果を収集し、回答企業約500社におけるDX推進への取組状況を分析した結果でも、全体の9割以上の企業がDXにまったく取り組めていない(DX未着手企業)レベルか、散発的な実施に留まっている(DX途上企業)状況であることが明らかになっています。

デジタルトランスフォーメーション(DX)の成功事例

デジタルトランスフォーメーション(DX)の成功事例

デジタル変革に対する現状への危機感を持つ企業は増加しているものの、「DXの取組を始めている企業」と「まだ何も取り組めていない企業」に二極化しつつある状況と言えます。

そこで以下では、積極的に取り組みを進めている企業の事例として、経済産業省と東京証券取引所がDXに取り組む企業として選定した「DX銘柄2020」から、DXの成功事例について紹介します。

生産性や業務制度の向上

DX銘柄2020のグランプリに選ばれた小松製作所(コマツ)の事例を見て行きましょう。同社では、「コムトラックス」と呼ばれるインターネット上で建設機械を一括管理し稼働状況を確認するための仕組みを構築しました。

機械の稼働情報や警告情報を収集し、稼働管理やメンテナンス管理をサポートするシステムですが、コマツにとっても、市場の先行きを見通すための判断材料になる情報を入手することが可能となっています。

同じくグランプリに選ばれたトラスコ中山では、機械工具卸として、「自動化できる仕事は、システムで全て自動化!」をコンセプトに、業務の自動化のための様々な取り組みを実施しました。

AIと高度な分析処理により、最適な価格を瞬時に計算する見積業務の自動化、販売実績などのデータをもとに個々の商品の需要予測を行うことによる商品在庫の自動化などにより、業務の生産性向上、スピード・精度アップを実現しています。

AIを使った高度な分析処理を行い、さまざまな可能性を模索するエンジニアがいます。彼らの仕事内容からDXを推進するためのヒントが見つかるかもしれません。機械学習エンジニアとは(仕事内容、未経験からのなり方、必要スキルの習得方法、将来性、転職方法などこれさえ読めば全網羅データアナリストとは?向いている人や未経験からなるための資格・将来性・データサイエンティストとの違いについての記事を紹介します。

新しいビジネスシーンの創出

DXにより新たなビジネスシーンに繋がった事例として、まず一番に挙げられるのはUberでしょう。日本でUberといえばUber Eatsのイメージが強いですが、その大元は言うまでもなく自動車配車サービスです。

ユーザーはアプリを使用して配車をオーダーし、行きたい場所を指定、あとはUberに登録している個人の自動車が到着するのを待つだけです。ドライバーとのお金のやりとりもありません。この仕組みは、スマートフォンを中核とするデジタル技術があってのものです。

日本では法的な規制から欧米のような普及には至っていませんが、これまでと異なるビジネスモデルで旧来の市場構造を覆してしまうDXのわかりやすい成功事例と言えるでしょう。

まとめ

DXは単なるデジタル化を意味するものではありません。製品・サービス、さらにビジネスモデル・組織、延いては社会の変革がその目指すところです。

欧米に比べ日本におけるDXは非常に遅れを取っています。現状のままでは、レガシーシステムの弊害、2025年の崖により、日本は国際的なデジタル競争の敗者となり大きな損失を被ります。

国からも大きな後押しがあるなか、DXレポートやガイドラインなどを活用し、DXが何たるかを正確に理解して取り組んで行くことがいま求められています。

最後のチェックポイント

  • DXは、ITの浸透により人々の生活をより良い方向に変化させるもの
  • デジタイゼーション、デジタライゼーション、その次のステップにDXはある
  • 日本はレガシーシステムの弊害、2025年の崖という大きな問題を抱えている
  • 製品やサービスの競争力の維持・強化・拡充には、DXは避けて通れない
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