IoTとは?なにかを分かりやすく解説


はじめに
- IoTとはInternet of Thingsの略で「モノのインターネット」を意味する言葉
- IoTを活用すると、モノの状態が分かり遠隔操作などができる
- IoTの効果は利便性の向上、コスト削減、新しいビジネス創出などがある
- 課題は人材確保、セキュリティ対策、ヒューマンエラー対策などがある
- IoTは医療や製造業、農業など幅広い分野で導入が進む
よく耳にする「IoT」という言葉、その意味をはっきりと説明することはできますか?IoTの技術は今や欠かせないものになっています。今後の社会にとって大きな可能性を秘めているIoTとは何なのか、なぜIoTが急速に拡大しているのか、この記事では今さら聞けないIoTの基礎知識から具体的な活用事例まで分かりやすく解説します。未来の暮らしを想像しながら、ぜひ読み進めてみてください。
IoTとは? 定義と意味
IoTとは「モノのインターネット」を意味する言葉です。つまり、身の周りのあらゆるモノがインターネットにつながることを指します。
インターネットといえばPCやスマホで検索したり、買い物をしたりするイメージがあるかもしれません。しかしIoTでは、ペンや靴、歯ブラシ、冷蔵庫など、さまざまなモノがインターネットにつながりデータ通信を行います。
なぜ今IoTが拡大しているかというと、消費者のニーズが多様化する中で、より新しく価値の高いサービスが実現できるからです。さらに、今後の日本では人口減少や少子高齢化による人手不足が深刻化するため、IoT活用による自動化・効率化が期待されています。
簡単に解説! 仕組みの例
IoTは、主に以下の4つの要素で構成されています。
- デバイス:対象となるモノ
- センサー:状態をデータとして取得する装置
- ネットワーク:データを送る通信手段
- アプリケーション:データを可視化するための手段
この仕組みにより、デバイス(モノ)に組み込まれたセンサーがデータを取得し、ネットワークを通じてPCなどのアプリケーションで確認できるということです。逆に、アプリケーションからデバイス側へデータを送信することもできます。
しかし、この説明だけでは難しく感じるかもしれません。そこで以下では具体例をあげながら解説していきます。IoTで実際にどのようなことができるのか見ていきましょう。
IoTの読み方
おさらいとして、IoTとはInternet of Things(=モノのインターネット)の頭文字を取ったもので、IoTと書いて「アイオーティー」と読みます。
似ている言葉に「IT」=Information Technology(情報技術)や「ICT」=Information and Communication Technology(情報通信技術)がありますが、これらとは異なるため注意してください。
モノの動きや状態を知ることができる
IoTの仕組みとして、まず一つ目に「モノの動きや状態が分かる」というものがあります。センサーやカメラなどで、モノの状態や取り巻く環境を常に観察できるのです。
たとえば、エアコンを例に見てみましょう。普通のエアコンには、冷房や暖房などで室内を快適に保つ機能があります。このエアコンにIoTを導入すると、センサーを活用して部屋の間取りや人の動きを感知し、それに応じて最適な温度調整を自動化することも可能です。現状を見える化することで、使用を控えて電気代の節約などに、情報を役立てることができます。
モノ同士でデータを共有できる
二つ目は「モノ同士でデータ共有ができる」という仕組みです。これは人間を介さずに、モノ同士で通信できるということです。
引き続きエアコンを例に考えてみましょう。たとえば、エアコンをIoT化することで、就寝時に部屋の電気を消すと、エアコンも連動してオフにすることができます。あるいはスマートスピーカーに向かって「部屋が寒い」と話しかけると、エアコンの設定温度をあげることが可能です。
モノ同士が通信するということは「自動化」が叶うということです。ここにAIや5G、低消費電力の無線技術が加わるとより有効に働きます。Nb-IoT(Narrow Band-IoT)などの接続技術も進化し、モノ同士のデータ共有は、さらなる加速が見込まれます。

モノを遠隔操作できる
そして三つ目は「モノを遠隔操作できる」という仕組みです。スマート家電やスマートホームと言えば、これを想像する人も多いかもしれません。離れたところからでも操作できることは、生活をとても便利にしてくれます。
IoT化したエアコンなら、リモコンの届かない部屋にいても、外出先からでも、電源のオンオフや設定温度・風量の調節が自由自在です。場合によっては人やモノ同士の間でも遠隔操作が可能になります。
IoTの実現がもたらす効果をわかりやすく解説
では、IoTが実現するとどのような効果をもたらすのでしょうか。次からはIoTの効果・メリットを分かりやすく解説します。代表的なものを3つあげますので、押さえておきましょう。
利用者の利便性の向上
IoTは生活をとても便利にしてくれます。もともとインターネットとは関係の無かったいろいろなモノがつながることで、スマホやPCから遠隔操作ができたり、センサーやカメラでモノの状態を把握できたりと、利便性の向上にとても役立ちます。
上記であげたエアコン以外にも、IoT家電はどんどん増えており、たとえば冷蔵庫なら、ドアの閉め忘れをスマホに通知してくれたり食材の残りを把握したりも可能です。外出先からロボット掃除機や洗濯機を操作することもできます。扉の鍵の施錠・開錠ができるスマートロックを玄関に取り付ければ、万一カギを締め忘れても心配ありません。
企業のコスト削減
IoTは身の回りの生活を便利にしてくれるだけではなく、企業のコスト削減にも大きな効果があります。
たとえば製造業で、現場の温度計や水道メーターなどをIoT化することで、どこからでもデータが確認できるようになり確認に行く人件費のカットが可能です。また、IoT工具を使えば作業の効率化や時間短縮につながり、結果的にコスト削減が実現します。小売業では値札や広告を遠隔管理できるほか、警備の自動化や、最近では無人店舗の取り組みも広がってきました。

データ活用で新しいビジネスの創出
さまざまなモノがIoTによってつながることで、多種多様かつ膨大なデータを取得することができます。そのデータを活かせば、新しいビジネスを創出することも可能です。
たとえば、枕やマットレスをIoT化してユーザーの睡眠データを測定し、快眠のためのコーチングを提供した例があります。応用すれば、パーソナルオーダーの寝具やサプリメントの販売にもつながるでしょう。また電気ポットをIoT化することで、離れて暮らす家族への見守りサービスを展開した例も見られます。
IoTを活用する、つまりモノとデータを掛け合わせることで、無限のビジネスの可能性が生まれるのです。

IoT導入にあたっての課題
IoTは多くの効果をもたらし、今後もさらなる期待が寄せられています。しかしIoTの導入が進む中でいくつかの課題もあります。どのような課題があるか押さえておきましょう。
人材の確保
総務省の令和3年版「情報通信白書」によると、特に日本企業はIoTの導入を先導する組織・人材が他国に比べて不足していると指しています。現状では高度な技術を持つIT技術者が足りず、自社内にITに詳しい人材を確保することが難しい状況です。
また日本は少子高齢化や人口減少が進み、さらに人材不足が深刻になると予測されます。IT人材の教育は推進されているものの、人材の確保は大きな課題となるでしょう。
参考:総務省|令和3年度 情報通信白書
セキュリティ対策
次に、セキュリティ面にも大きな課題があります。IoTによって収集・蓄積したデータは企業にとって貴重な情報資産となりますが、取り扱いには十分な注意と万全なセキュリティ対策が必要です。
もしシステムの欠陥やサイバー攻撃などで顧客の個人情報やデータが流出すれば、大きな被害となる可能性があります。プライバシーの侵害は大きな責任問題となり、取り返しのつかない事態になるかもしれません。
ヒューマンエラー対策
効率化や利便性をもたらすIoTですが、IoTの製品自体を開発・設定するのは人間です。人はミスをするという前提に立ち、ヒューマンエラーを考慮した開発を進める必要があります。
IoTを導入して何らかの作業を自動化する際、開発・設定段階で人によるミスのあった箇所がセキュリティーホールとなり、サイバー攻撃の標的になるリスクがあります。開発段階のヒューマンエラーを防ぐことは困難であるため、運用時にも常にメンテナンスを行うことや、攻撃を受けた際にダメージを受けないよう、二重三重のセキュリティ対策を行うことが重要です。
IoTの活用事例
ここからはIoTを活用した事例について分かりやすく紹介します。具体的な活用事例を知ることで、IoTへの理解を深めていきましょう。
医療・見守りとIoT
医療・ヘルスケア分野に特化したIoTは「IoMT(Internet of Medical Things)」とも呼ばれ、今後急速に浸透していくと考えられています。
最近では多くの医療機関がIoTを用いたオンライン遠隔診療サービスを提供するようになりました。ヘルスケア機器(体温計、体組成計、血圧計など)で測定したデータを医療機関に提供することで、どこでも迅速で的確な対応ができます。アプリによっては、予約から診療、決済、処方箋や薬の郵送までスマートフォンひとつで完了することも可能です。
参考:MRT株式会社 株式会社オプティム| オンライン診療ポケットドクター
製造業・工場とIoT
製造業・工場においても、生産性や品質向上のためにIoTの導入が進められています。総務省令和3年版「情報通信白書」による、IoTデバイス数の予測内訳では「産業用途」の伸びが最も大きく期待の高まる分野です。
たとえば、大手メーカーでは、IoTを活用して製造工場のデータの可視化に取り組み、実現を目指しています。設備内の機器をネットワークに接続することで、その場に出向かずリモートで確認できるようになり、業務効率を大きく改善しました。
参考:総務省|令和3年度 情報通信白書
農業とIoT
IoT などを活用し、省力化や品質向上を図る新しい農業のあり方は「スマート農業」とも呼ばれます。農業従事者の高齢化が深刻なこともあり、IoTを中心とした改革に期待が集まるところです。
大手農機メーカーでは、農業機械にIoTを活用することで農業の悩みを解決するサービスを提供しています。GPSの位置情報や機械の稼働情報などをもとに、収穫量や作業時間の集計・分析、作付け計画、施肥設計、機械の見守りなどが簡単にできるようになります。
参考:ヤンマーホールディングス株式会社| SMARTASSIST
参考:株式会社セラク|みどりクラウド
物流・輸送とIoT
現在ネットショッピングの利用が急増し、物流・輸送の分野ではIoTによる業務効率化が欠かせません。IoTやAIなど最新のテクノロジーによる物流の改革は「ロジスティクス4.0」とも呼ばれます。
具体的には、倉庫管理やピッキング、配送などにIoTが活用されています。
大手ECサイトを運営する企業では自社製の倉庫ロボットを開発・導入し、注文に応じて棚が自動で移動する仕組みを実現しました。その結果スタッフの負担が大きく減り、大量の注文も効率良く対応できるようになっています。
参考:Amazon|Amazon Robotics 導入事例
社会インフラとIoT
バスや電車、タクシーといった交通の分野にもIoTの導入が進んでいます。通信機器・サービスを提供する国内メーカーでは、IoTを活用した渋滞予測や車両運行管理、逆走検知、多様な決済サービスなど、幅広い交通ソリューションを提供しています。
これからは自動運転車やスマートシティ構想など、社会インフラに関わる分野でIoTが飛躍的に拡大していくでしょう。
参考:沖電気工業株式会社|IoT/AI|商品・サービス
防犯・位置情報とIoT
最後は、防犯・位置情報に関するIoT活用事例です。身近な例では、財布や鍵など大切なものの紛失を防ぐスマートタグが注目されています。好きなアイテムに取り付けてスマホと連携することで、音を鳴らして場所を特定したり、落とした位置を地図で確認したりできます。
また、ある自治体では子どもの安全を守るため、小学生全員に見守り端末機を配布しています。子どもの位置情報を細かく確認でき、万一の場合には迅速な捜索が可能です。
参考:Tile 株式会社| 音が鳴るから、すぐ見つかる。探し物トラッカー「Tile」
参考:福岡市| IoTを活用した子ども見守り事業を展開しています
まとめ
いろいろな場面でIoTの活用が広がっています。今回紹介した事例以外にも、今後さらなる新しい活用法が生まれていくでしょう。人々の利便性を向上するだけではなく、産業や経済の大きなカギを握っていることは間違いありません。
IoTの導入には課題もありますが、身近なところから取り入れられる商品・サービスもあるため、ぜひ生活の中やビジネスシーンで便利に利用してみましょう。













