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日本企業のAI導入状況とその必要性【導入ステップ紹介】

date2024年02月28日
日本企業のAI導入状況とその必要性【導入ステップ紹介】
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はじめに

  • DX化の取り組みを「実施していない」と答えた日本企業は50%
  • 米国、ドイツ、中国の3ヵ国では「実施している」と答えた企業が70%以上
  • AI導入は「2025年の崖」および「2040年問題」対策で必須
  • AI導入は、業務の効率化や労働力不足など重要な課題の解消につながる
  • AI導入には目的、業務範囲、ツールの選定など多くのステップが必要
  • 導入手順に悩む場合は、専門的な知識をもつ外部企業に相談してみよう

日本企業におけるAI導入は、世界と比べて遅れが顕著になっています。Thundermark Capitalが公表している「AI研究ランキング2022」では、AI研究をリードする上位50カ国のうち、日本は10位でした。グローバル企業のランキングでは大企業が主にランクインしていますが、いずれもトップ10からは外れています。
この記事では、AI導入における国内の現状や、AIを導入する必要性などをご紹介します。

日本企業のAI導入状況

総務省が公表している「令和5年版情報通信白書」や関連報告書によると、日本企業のDX化の取り組み状況について「実施していない」と回答した企業は50%を超えていました。
70%以上の企業が「実施している」と回答している米国、ドイツ、中国の3ヵ国と比べると、日本のDX化は明らかに遅れていると言えるでしょう。

企業の規模別に見ても、大企業での実施率が約75%のところ、中小企業では30%に達しておらず、企業規模によってDX化の取り組み状況に差異が生じています。これらの要因として、以下の2点が挙げられます。

  • 日本ではAI研究があまり進んでいない
  • 国全体でDX化が遅れている

日本ではAI研究があまり進んでいない

スイスの国際経営開発研究所(IMD)が発表した「世界デジタル競争力ランキング」において1位アメリカ、2位オランダ、3位シンガポールと続く中、日本は32位でした。同じアジアでは、韓国は6位、中国は19位にランクインしています。
このランキングは、政府・企業・社会の変革につながるデジタル技術を導入・活用する能力、を評価したもので、諸外国と比べると日本のAIに関する競争力は低いと言えるでしょう。
また総務省が公開している報告書によれば、日本企業におけるシステム開発の内製化状況は、自社開発の割合が44%、一部を外部委託している割合は31%でした。米国、ドイツ、中国の3ヵ国では自社開発の割合が75%以上となっており、この点からも日本でのAIの研究開発は進んでいないことがわかります。

参考:世界デジタル競争力ランキング 2023 |国際経営開発研究所(IMD)

参考:国内外における最新の情報通信技術の研究開発及びデジタル活用の動向に関する調査研究の請負成果報告書|総務省

国全体でDX化が遅れている

総務省が公表している「令和4年通信利用動向調査報告書(企業編)」では、企業がAIなどのシステムやサービスを導入しない理由について尋ねています。最も多い回答は「導入すべきシステムやサービスが不明だから(44.5%)」でした。ついで「使いこなす人材がいないから(43.9%)」「導入後のビジネスモデルが不明確だから(42.5%)」と続きます。この結果から、DX化が遅れている理由は「AIに関する認知や理解が広まっていないこと」が大きな要因と言えるでしょう。
また、AIを導入した企業の8割以上が導入により「効果があった」と回答しています。AIへの認知・理解を広げることが、DX化を進めるうえで非常に重要となるでしょう。

参考:国内外における最新の情報通信技術の研究開発及びデジタル活用の動向に関する調査研究の請負成果報告書|総務省

日本企業のAI導入が必要な理由

上記でご紹介したように、日本ではAI研究が進んでおらず、国全体でDX化が遅れている現状にあります。このような状況で日本企業のAI導入が必要とされる理由として、「2025年の崖」問題の回避・対策、および「2040年問題」に備えることが挙げられるでしょう。
ここからは、その理由について詳しくご紹介します。

「2025年の崖」問題の対策

「2025年の崖」とは、2018年9月に経済産業省から公表された「DXレポート」にて言及された言葉で、ITに関わる方であれば一度は耳にしたことがあるかもしれません。これまでのシステムを放置し使い続けることで、今後想定される問題・課題があり、対応策が必要であると警鐘を鳴らしています。
その対策の一環として「AI導入」が必要とされています。業務の効率化だけでなく、人材的・技術的課題の問題を解決する糸口になる可能性があり、期待されている対策の一つです。

「2040年問題」に備える

もし「2025年の崖」を乗り越えられたとしても、現在あるさまざまな問題から脱却できなければ、日本社会に「2040年問題」が到来すると懸念されています。
この問題は、日本の高齢者人口の割合が増大化、および生産年齢人口の割合が急減することで起こるとされる諸問題のことです。国内経済や地方自治体を含む社会維持、インフラの老朽化や人材不足なども含め、危機的状況に陥ると予想されています。
これらの諸問題に対し、代替可能な範囲にAIを導入して置き換えていくことで、起こり得る問題に備えられると期待されています。

参考:自治体戦略2040構想研究会 第二次報告|総務省

AIを導入するメリット・デメリットとは

日本企業がAIを導入する理由として、主なものは以下の3点が挙げられます。

  • 業務の効率化および生産性の向上
  • 労働力不足の解消
  • 新しい働き方の実現

多くの現場で、業務の効率化や労働力不足の解消は重要な課題であり、新しい働き方を実現させていくことも「働き方改革」で重要となっています。これまで人が処理していた業務のうち、AIを導入して代替可能となれば、さまざまな問題の解決へとつなげられるでしょう。
ここからは、AIの導入におけるメリット・デメリットをご紹介します。

メリット

  • AI導入のメリット
  • 不具合や設定ミス以外でケアレスミスが起こらない
  • 24時間稼働させることも可能なため、処理可能な業務量が増える
  • AIで生産計画を最適化し、人材の適切配置を行うことが可能

AIは決められた手順の業務を確実にこなすことが得意です。不具合や設定ミス以外でのケアレスミスが起こらない点は、大きなメリットと言えます。あらかじめ業務に沿った仕組みを設計しておけば、安全かつ正確に業務を処理できます。24時間稼働も可能なため、処理できる業務量も多くなるでしょう。
他にも、AIを用いて生産計画を最適化することで、人材を適切配置するなどの使い方も注目されており、さまざまな業界での課題解決が期待されています。

デメリット

  • AI導入のデメリット
  • 業務の代替・自動化による、一部の業務やそれに伴う雇用が消失
  • 導入に必要な設備投資コストのため、一時的に投資コストが増大する
  • サイバー攻撃などのサイバーセキュリティリスクの増大
  • サイバーセキュリティや緊急対応対策などのコストがかかる

メリットが数多くある一方で、デメリットも存在します。
業務をAIに代替・自動化することにより、一部の業務やそれに伴う雇用が消失します。また、導入には設備投資コストが必須であり、一時的な投資コストが増大することもあるでしょう。
導入における重要な注意事項は、サイバーセキュリティリスクの増大です。近年は世界中でサイバー攻撃による被害が拡大しているため、機密情報の窃取やデータ破壊など、重大な被害を受ける可能性があります。そのため、AIの運用時には十分なセキュリティ対策が必須となり、こちらのコストも必要となります。
加えて、なんらかの事情でAIが緊急停止した場合に備え、復旧などの対応策も事前に考えておく必要があるでしょう。

企業がAIを導入するために必要な5つのステップ

企業がAIを導入するために必要なことは、AI導入活用事例の調査から目的の設定、業務範囲の決定やツールの選定など意外と多くのステップが必要になります。しかし、細かくステップを挙げていくと準備をしなければならない項目が非常に多く、わかりにくくなってしまうため、ここでは5つのステップにまとめました。
AI導入に失敗しないよう、一つひとつのステップを確認しながら、丁寧に進めていきましょう。

  1. AI導入のステップ
  2. AIを導入する目的と目標を定める
  3. AIを活用する業務範囲を決める
  4. 導入するAIツール・サービスを決める
  5. AIを導入して試験運用を行う
  6. 本格的に運用を開始する

1.AIを導入する目的と目標を定める

まずは、同業種にこだわらず導入事例・活用事例の調査を行いましょう。調査を行う中で、導入における自社の課題を見つけ出すことが重要です。見つけた課題から参考にする活用事例を探し、導入する目的と目標を定めます。
自社の課題を理解できていると、外部に相談する際に要点をうまく伝えることができます。調査した活用事例から導入や活用イメージがつかめたら、AI導入のプロなど、専門知識のある相手に相談してみるのがおすすめです。課題解決や目的・目標に合った導入方針を定める際に、心強い味方となるでしょう。

2.AIを活用する業務範囲を決める

次に必要となるのは、定めた目的・目標に合わせて、活用する業務範囲を決めていくことです。業務範囲が定まらないと、AIに学習させるデータの範囲も決まらないため、しっかりと範囲を定めましょう。おすすめの方法として、現状の業務を細かく書き出して、AIに任せる部分を洗い出す方法があります。この方法の場合、任せる部分を洗い出すことで、AI学習用のデータも準備しやすくなります。
手間がかかる部分もありますが、活用に必要な工程と考え、業務範囲の選定と学習データの用意を行いましょう。

3.導入するAIツール・サービスを決める

これまでに定めた目的・目標と、活用する業務範囲に合わせて、AIツールまたはAIサービスの選定を行います。合わないものを選んでしまうと、目的達成どころか逆に非効率的な結果になる場合があります。適当な選び方をしないよう注意しましょう。
選定方法や「似たツールのどちらが合っているかわからない!」と悩む場合は、専門的な知識をもつ相手や、外部の企業に相談してみるのも一つの方法です。目的・目標を定める時に相談した相手がいる場合は、続けて相談や支援を受けるとスムーズに進むかもしれません。

4.AIを導入して試験運用を行う

AIツール・サービスが決まったら、AIの学習および導入段階です。用意しておいたデータをAIに投入して、AIに必要な学習を行わせます。AI学習の方法には2つの学習方法があります。一つは機械学習で「与えたデータから背景にあるルールやパターンを学ぶ」ものです。もう一つは深層学習で「データを多層的な構造でとらえてAI自身が思考し成長していく」ものです。どちらの学習方法がふさわしいかは目的や活用用途によって異なります。選んだツールと活用用途、達成したい目的・目標に合わせましょう。
学習が終わったら、既存システムと連携を図るために試験運用を行います。ここで連携に不具合があるとわかれば、すぐに調整と再テストが行えるため、本格運用後に問題が起こりにくくなる、というメリットがあります。しっかりと試験運用を行い、業務に加えられるよう調整を行うことが重要です。

5.本格的に運用を開始する

一通りの試験運用を終えたら、AIツール・サービスの本格運用に移行しましょう。この際、本格運用に切り替えたタイミングでは全社一斉に使い始めず、試験運用を行っていた部門の周辺部門に広げて様子を見ることをおすすめします。
対象部門にAI活用が浸透してきたら運用範囲を少し広げる、といった手順で運用導入していくと、大きな問題が起こりにくくなります。この手順を繰り返して、最終的に全社で運用するように段階を踏んで運用導入していくと、安全に導入が行えるでしょう。

まとめ

日本のAI研究は他国と比べて遅れており、日本企業のAI導入率も他国と比べて遅れています。国全体で「AIに関する認知や理解の不足」が大きく、DX化が進まない大きな要因とも言えます。
直近に迫る「2025年の崖」や、今後懸念されている「2040年問題」などに備え、対策を講じていくためにも、AI導入・活用は必須と言えるでしょう。メリット・デメリットに左右されず、備えの一つとしてAI導入を検討していくことが重要かもしれません。

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