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シンギュラリティとは?AIがヒトと社会に与える影響

date2023年11月22日
シンギュラリティとは?AIがヒトと社会に与える影響
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はじめに

  • シンギュラリティとは、「やがてAIはヒトの能力を超えるだろう」という概念
  • シンギュラリティは2045年に到来すると予測されている
  • シンギュラリティ到達前の過渡期をプレ・シンギュラリティという
  • 「シンギュラリティは実現不可能である」という否定的な意見もある
  • 現時点ではシンギュラリティが到来するかどうかは誰にもわからない
  • AIと共存した社会を目指すためにも新たな時代に適応する能力は必要

AI(人工知能)は日々進化しています。日常生活でもAIは身近な存在になりつつありますので、今後どのようにヒトがAIと関わっていくべきか気になる方も多いでしょう。
今回はAI進化論のうえで欠かせない「シンギュラリティ」という概念についてご紹介いたします。

シンギュラリティ(技術的特異点)とは?

シンギュラリティ(技術的特異点)とは、「とある時点を境にAIが自ら能力を更新してヒトの能力を超える」という概念です。
シンギュラリティという言葉を広めたのは、アメリカの数学者・作家であるヴァーナー・ヴィンジ氏といわれています。そして、1993年に発表された「The Coming Technological Singularity」の中でも、「シンギュラリティによって人類の時代は終わる」と言及されています。

シンギュラリティの到来時期や関連ワードのご紹介

シンギュラリティの到来時期や、シンギュラリティの関連語句である「マルチラリティ」と「プレ・シンギュラリティ」について解説します。

シンギュラリティはいつ起こるのか?

アメリカの人工知能研究者、レイ・カーツワイル博士が2005年に自身の著書「The Singularity is Near」の中で、「シンギュラリティは2045年に到来する」と予測しました。
また、「シンギュラリティ到達により人類が予測できないことも起きるだろう」とも問題視しており、これを2045年問題ともいいます。
しかし、実際には「AIが人類を超える日が来るかどうか」というのは、まだ誰にもわかりません。見解も専門家ごとに異なるため、シンギュラリティの定義自体が不明瞭ともいえるでしょう。

マルチラリティとは?

シンギュラリティと似た言葉にマルチラリティがあります。ヒトとAIに優劣を付ける考え方が根底にあるシンギュラリティに対して、「ヒトの価値や能力は個人ごとに異なるため一概にAIがヒトより優れているとはいえない」、というのがマルチラリティの考え方です。
また、AIインフラが普及してさまざまな人々が使用すれば、AIに対するアウトプットにも多様性が出てくるでしょう。このような背景から、機械学習の代表的な研究者でありAI研究所のアドバイザーでもあるトム・ミッチェル氏も、「シンギュラリティではなくマルチラリティの時代が来る」とも述べています。

プレ・シンギュラリティとは?

シンギュラリティ到達前の過渡期をプレ・シンギュラリティ(前特異点)といいます。プレ・シンギュラリティの到来時期も明確には定義されていませんが、研究者の多くは2030 年頃だと予想しています。
プレ・シンギュラリティ時代は、IT技術が急速に発展して人々の生活が豊かになるだけでなく、AIの権利や遺伝子操作など新たな倫理観や問題が生じる可能性もあるでしょう。一人ひとりが新しい技術への理解やAIを駆使するための知識・倫理、トラブル対策を学ぶことが大切です。

シンギュラリティ後の世界はどうなる?

実際に、AIがシンギュラリティに到達すると私たちの生活はどのように変化するのでしょうか。以下から解説します。

1.雇用面での変化

一部の仕事や職業において、すでにAIはヒトの代わりを担っていますが、シンギュラリティ到達後はさらにその流れが加速するといわれています。
とくに、工場の生産ラインに携わる方々やタクシー・トラックのドライバー、スーパーやコンビニエンスストアのレジ担当者など、機械化しやすい業務や定型業務からAIへ代替されていく見通しです。
そのため、世界各地で失業者が増えるとも予測されます。また、「イレギュラーな事態が発生した際にAIが臨機応変な対応できるかどうか」といった点も課題として残されています。

2.社会制度の変化

シンギュラリティ到来後は、世界中でベーシックインカム制度の導入が進むと予想されています。前述のとおり、シンギュラリティ到来によって失業者や再就職先が見つからず職にあぶれる方が増えると予想されるためです。
ベーシックインカムとは性別や年齢・所得水準などに関係なく、すべての方が国から一定の金額を定期的かつ継続的に受け取れる社会保障制度の1つです。
ベーシックインカムを導入することで、一人ひとりが多様なライフスタイルを選択できるというメリットもありますが、就労者数の低下や財源の確保などの課題も懸念されています。

3.人体の変化

シンギュラリティが加速することにより、ヒトの体のパーツを人工物で代替してAIで操作できる技術も進化するといわれています。
BMI(ブレイン・マシーン・インターフェース)と呼ばれる、病気やケガで失われた体の機能を補う医療技術とAIを組み合わせることで、さらに医療が発展していくともいえるためです。
一見SFの話にも思えますが、不可能とは言い切れないでしょう。たとえば、脳に埋め込んだ装置で脳波の情報を読み取り物や手を操作する技術はすでに可能になりつつあります。今年2023年には、手を使わずにゲームのキャラクターを動かす男性の動画が話題となりました。男性は、18歳のときに交通事故に遭い指を動かせなくなったあと憂鬱に過ごしていましたが、手術を受けたことにより生活が快適になったそうです。
BMI技術やAI技術が進歩することで、誰もが不自由なく過ごせるようになるとも予想されています。

シンギュラリティは本当に実現するのか?その根拠は?

カーツワイル博士は著書の中で、「2029年にはAIが人間の脳の演算能力を超える」と予測しています。その根拠として「ムーアの法則」と「収穫加速の法則」を挙げていますので、以下からご紹介します。

1.ムーアの法則について

1965年、インテル社(半導体素子のメーカー)の創業者であるゴードン・ムーア氏は、半導体内のトランジスタの数が1年間で約2倍になっていることを発見しました。
トランジスタとは、パソコンやスマートフォン内部の半導体チップの中で計算やデータ処理を行っている電子部品のことです。トランジスタの数が増えると計算能力やデータ処理速度が向上して、コンピュータの性能もよくなります。
つまり、ムーア氏の発見は、当時1年ごとにコンピュータの性能が2倍の速さで向上していることの証明でもありました。
しかし、長いスパンで考えた場合はトランジスタの増加率に誤差が生じる可能性もあります。そこで、ムーア氏が自身の論文で、「直近10年間においてはトランジスタの数が18か月ごとに2倍になるだろう」と発表したところ、予測通りに半導体業界が成長していき注目を集めました。これが「ムーアの法則」です。

「ムーアの法則終焉説」からの新たな考え方

近年では、ナノテクノロジーの技術のおかげでトランジスタが原子レベルまで微細化されました。そのため、「物理的にこれ以上は小さくできない」という理由から、「ムーアの法則終焉説」を唱える人々も増えています。
レイ・カーツワイル博士も「ムーアの法則は2020年前後に終わる」としたうえで、「ムーアの法則終焉後もIT技術は飛躍的なスピードで進化していくだろう」と述べています。また、1999年には自著「The Age of Spiritual Machines: When Computers Exceed Human Intelligence」において、ムーアの法則を一部受け継ぐ形で「収穫加速の法則」を発表しました。

2.収穫加速の法則について

レイ・カーツワイル博士は、IT技術の進化スピードを「収穫加速の法則」で表しています。収穫加速とは、「進歩が直線的でなく、指数関数的なスピードで進行すること」です。
指数関数的とは掛け算のように倍々になることですので、簡単にいうとIT技術のスピードが著しく発展するさまを表しています。また、一度大きな技術革新が起こると、間隔を開けず新たな技術革新が起こるともいわれていますので、今後は将来の予測をするのが難しくなるともいえるでしょう。
このような背景から、「2045年にはAIがシンギュラリティに到達する」、という見解をレイ・カーツワイル博士は述べています。

まとめ

「シンギュラリティは実現不可能である」という否定的な意見もあります。スタンフォード大学教授のジェリー・カプラン氏もその一人です。カプラン氏は「人工知能はヒトではないため、ヒトと同じように思考することはできない」としたうえで、「AIは脅威として捉えるのではなく人類の明るい未来のために活用していくべき」とも主張しています。
先述したとおりシンギュラリティが到来するかどうかは誰にもわかりませんが、AIと共存した社会を目指すためにも新たな時代に適応する能力は必要です。

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