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カスタマーサクセスとは何か?意味や目的をわかりやすく解説

date2023年06月21日
カスタマーサクセスとは何か?意味や目的をわかりやすく解説
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はじめに

カスタマーサクセスとは自社のサービスや製品を顧客に売るだけではなく、利用してもらうなかで、顧客を成長や成功へと導くための概念の事です。カスタマーサクセスの基礎的な知識を得ることで、積極的に顧客にかかわるとはどういうことか、顧客にとっての成功とは何かを理解でき、ひいては自社の発展にもつながるでしょう。

カスタマーサクセスとは何か?

カスタマーサクセスとは何か?

カスタマーサクセスとは、顧客の成功と自社の収益の両立を目指すマーケティングの概念です。
顧客の要望を満たすだけのサポートではなく、能動的に顧客に働きかけ、自社のサービスや製品による成功に導くことを目的としているのです。
要約すると以下の意味があります。

  1. 顧客に対する価値の提供
  2. 企業の取組や役割・職種

本記事では企業の取組や役割・職種の項目を中心とした解説をおこないます。

意味や目的

カスタマーサクセスのゴールは、自社のサービスや製品を通じた顧客の成功や成長です。顧客の話を聞いてから受動的に動くのではなく、こちらから能動的・積極的にアドバイスやサポートをおこなうことが重要です。
カスタマーサクセスは、販売・契約をして終わりというものではありません。顧客の成功体験を目的とするからこそ、顧客を大事にした姿勢が大切なのです。
ホスピタリティがあってこそ、カスタマーサクセスは成立します。顧客との関係性の維持や新たな利益の創出にもつながり、双方にとっての大きなメリットを目指します。

カスタマーサポートや営業との違い

「カスタマーサクセス」と「カスタマーサポート」この2つの言葉には似た印象を受けますが根本的な違いがあります。自分のとるアクションが受動的であるか能動的であるかです。
前述しましたが、カスタマーサクセスは自分から積極的に顧客に働きかけ、成功・成長に導くことがポイントです。つまり「能動的」なものです。
一方で、カスタマーサポートは問い合わせ対応やクレーム処理といった「受動的」なサポートをおこないます。

また、営業とカスタマーサクセスの違いについても気になる方は多いでしょう。
おおまかにいうと、従来の営業という仕事の中にカスタマーサクセスは含まれていました。しかし、顧客への能動的なアクションが重要視されるようになった昨今、カスタマーサクセスという専門職種が誕生したと考えてよいでしょう。

注目されるようになった経緯

注目されるようになった経緯

カスタマーサクセスが注目されるようになった背景はどのようなものだったのでしょう。
元々カスタマーサクセスはアメリカを中心に広がりました。欧米にとどまらず、日本国内へも広がりを見せています。現在、日本でのマーケティングモデルとしても重要視されはじめているのです。
注目されるようになった理由には、これら4つがあげられます。

  • 市場の成熟
  • サブスクリプション形態の広がり
  • CRM(顧客関係管理)ツールの普及
  • 他社サービスとの差別化の必要性

以下で詳しくみていきましょう。

市場の成熟

グローバル化が進み、経済の国際化も飛躍的に進化を遂げてきました。簡単に情報が手に入るようになり、世界中のどこでも同じような製品を作れるようになりました。どこで誰が作っても同じであれば、優位性が維持しづらくなることは明白です。
その結果、買い手側には多くの選択肢ができたものの、売り手側は競争が増え苦しい思いをすることになりました。なぜなら、新しいものが開発されてもすぐに真似されてしまい個々の差別化が難しくなったためです。だからこそ、販売した後まで続く能動的なサポートが重要となり、カスタマーサクセスという考え方に注目が集まるのでしょう。

サブスクリプション形態の広がり

世の中の品物に対する意識は所有から利用へと変わっています。売り切ることが原則であった従来のビジネスモデルは、決まった料金を支払って一定期間利用できるサブスクリプション型サービスへ変化しつつあります。
いかに解約をされずに継続利用してもらえるかが、サブスクリプション型ビジネスの重要なポイントとなるでしょう。
そこで近年、「The Model」という営業手法が注目されています。
営業活動を「マーケティング」「インサイドセールス」「フィールドセールス」「カスタマーサクセス」の4つの段階に分割し、質と密度をあげることで売上の増加を図り、成功したのです。
サブスクリプション型ビジネスへの移行、それに伴った営業形態の変化が、カスタマーサクセスに注目が集まる理由です。

CRM(顧客関係管理)ツールの普及

CRM(Customer Relationship Management)とは顧客関係管理と訳されます。「企業と顧客の関係性を管理」するマーケティングの考え方・手法です。
システム環境の向上により、この手法に用いるツール自体を指す言葉にも使われるようになりました。
「The Model」のような新しいビジネスモデルでは、どのような状態を成功とするのか、目標とする指標は何なのかをしっかりと落とし込んで活動をすることが大切なポイントです。
CRMという考え方は設定した指標を可視化し、営業活動の促進に寄与します。

CRMツールとは

CRMツールとは、顧客データを総合的に管理し分析・アプローチへとつなげる過程を、可視化し効率的に行うための機能を持つさまざまなツールの総称です。たとえば、営業支援ツールでは、顧客情報や取引内容などを営業チームで共有し可視化することで、担当以外でも顧客対応が可能となります。商談においてもスピーディーな提案ができるメリットもあります。
CRMツールは、企業活動の目的や活動内容にあわせて、クラウドサービスやツールを連携させることにより、企業独自の有効で効率的な顧客との関係性向上に役立てることができるでしょう。
代表的なCRMツールを以下でご紹介します。

Salesforce

営業支援ツールの代表といえるSalesforceでは、Sales Cloudを利用し徹底した顧客・取引先の管理により、顧客に合わせた支援を提供できます。豊富なデータの中から商談に合わせた情報を提供したり、モバイルCRMで外出先からもデータへのアクセスや更新ができたりと、スピーディーな顧客対応が可能となります。
毎日のタスクの合理化や自動化もでき、時間的余裕のできた担当は、顧客との関係性の構築に働けるようになるでしょう。

Senses

定着支援対策に有効なツールです。メールを一斉配信できる機能を持ち、メルマガなどで顧客の定着度に合わせたサポートが可能となります。自社のサービスや製品を使いはじめたばかりのお客さまとある程度使い続けているお客さまでは、提供すべきサービスや情報も異なります。それぞれのタイミングに合わせたサポートを行うことで、顧客の定着度を上げることができるでしょう。

Zoho CRM

データ活用の利便性が高いツールで、Webマーケティングで一連の業務の効率化がはかれます。SFA(営業支援システム)と連携してCRM(顧客関係管理)内に蓄積されたデータを、関連する活動ごとに紐づけて管理できるため、営業支援に活用したり、登録された顧客にアプローチできるマーケティング手法に活用できたりします。情報の自動集計やデータの可視化がリアルタイムに行える有効なMAツールといるでしょう。
上記で紹介したCRMツールの詳細は特徴の一部を抜粋したものです。

CRMとカスタマーサクセス

顧客に積極的にアプローチし自社のサービスや製品を継続的に利用してもらうために、CRMシステムは有効に働くでしょう。
CRMは効率的かつスピーディーにデータ処理を行うだけでなく、カスタマーサクセスにとって重要な顧客の動向や状態・環境や嗜好まで、膨大なデータから分析が可能となるからです。これにより的確なタイミング・手段でマネジメントができます。
CRMの普及がカスタマーサクセスの実現に大きく貢献しているといえるでしょう。

他社サービスとの差別化の必要性

豊かになった日本の社会にはモノがあふれ、さまざまなモノが手に入るようになりました。その結果、所有(物理的価値)から、所有することで得られる満足感や喜びといった経験(心理的価値)に魅力は変化し、新たな価値を見出しはじめています。グローバル化し成熟していく市場は競争が激化しています。勝ち抜く・生き残るためには、他社サービスとの差別化が必要不可欠です。
他社のサービスとの差別化を図るには、カスタマーサクセスにより把握した顧客情報からニーズの分析をおこない、顧客が抱えている自社製品利用に関する課題や不満を把握します。把握した内容から、一人ひとりに適したアドバイスや情報を提供することで、CX(Customer Experience/顧客体験)を高めます。最新のCRMから導き出した情報を元に、よりよいCXが提供できれば、利用の継続の可能性も高まるでしょう。

カスタマーサクセスの仕事内容とは

カスタマーサクセスの仕事内容とは

カスタマーサクセスの具体的な仕事内容をご存じでしょうか。カスタマーサクセスの仕事を進める上で以下4点の重要なポイントがあります。

  • 購入・導入の促進(オンボーディング)
  • 継続受注・定着支援
  • プラスアルファの利用を促す
  • 主なKPI(重要業績評価指標)

それぞれの詳細や果たすべき役割について、カスタマーサクセスを実際に導入した事例を交えて紹介します。

購入・導入の促進(オンボーディング)

カスタマーサービス最初の段階となる導入をオンボーディングと呼びます。オンボーディングとは、利用者になったばかりの顧客を、サービスや製品を使いこなせる状態にするまでのプロセスを示す言葉です。
船や飛行機に乗っているという意味の「on-board」から派生した言葉で、顧客を乗客員に見立て、共に船出するイメージを思い浮かべると分かりやすいでしょう。
どのようなサービスや製品でも顧客によってはさまざまな障害が起こる可能性があります。そのような中、いかに使いやすいと顧客に感じてもらえるかが、利用開始後のスムーズな運用へとつながる大切な支援です。
まずは、顧客の規模・業務プロセスに応じた導入支援を考えることからスタートしましょう。購入前の顧客先へ足を運び説明会の開催や、数人のユーザを交えて勉強会をおこなうことで、早い段階から問題点を把握し、自社のサービスや製品の課題が取り除けるよう導入のサポートをしていきます。

継続利用・受注・定着支援

オンボーディング(導入)が済むと、今度は継続利用・受注のために、利用開始後のフォロー・定着支援(アダプション)がはじまります。
サービスや製品を利用する上で、わからないことや疑問に感じることがないかを顧客へこまめにヒアリングします。課題があるときは改善策を考え、顧客にフィードバックすることが重要です。
自社が提供するサービスや製品を利用して、顧客が仕事を受注できるようにサポートを行うと考えるとわかりやすいかもしれません。サービスや製品の使用が定着するように支援することが最重要課題です。

プラスアルファの利用を促す

とくにサブスクリプション型サービスの利用にあたっては、定着後サービスや製品を使い続けるなかで、不満の解消やさらなる利便性を求めることがあります。そこで重要なのがプラスアルファの提案です。現状維持には小さなきっかけ作りで気づきを与え続け、顧客が抱える不満やトラブル解決には、アップセル(上位のサービスに乗り換える)や、クロスセル(別のサービスの購入をすすめる)の提案を行うなど、より高度な利用の仕方を伝えるアプローチが必要です。
顧客がサービスや製品に魅力を感じ続けることが大切です。
長期にわたって継続利用を促すためには、顧客に寄り添い続け、理解しようとする姿勢を伝える必要があるでしょう。

主なKPI

KPI(重要業績評価指標)とは、設定した目標に対しどの程度達成まで進めているかの度合いを図るための指標を意味します。英語表記にすると「Key Performance Indicator」で、「重要経営指標」や「重要業績指標」などと訳されます。
大きな目標を達成するためには段階的に成功を重ねていくことが大切です。工程数に応じ、複数のKPIが設定されていることも珍しくありません。業界のちがいや、最終的な目標によってはKPIの種類が異なります。
カスタマーサクセスにおける主要KPIはいくつかありますが、ここでは以下の4つを説明します。

  • 解約率/継続率/離脱率
  • オンボーディング完了率
  • LTV(顧客生涯価値)
  • NPS®(顧客推奨度)

これらKPIの詳細について紹介していきましょう。

解約率/継続率/離脱率

カスタマーサクセスの指標として重要になるのは、解約率・継続率・離脱率です。
解約率(チャーンレート)はサブスクリプションモデルビジネスにおいて最も重要となります。この指標は事業や利益の拡大・縮小に大きな影響を及ぼします。
次に重要となるのは、継続率(リテンションレート)です。「既存顧客維持率」とも呼ばれており、契約数に対してどれだけ継続利用してもらえているかの割合を指します。カスタマーサクセスを導入するメリットとして、自社のサービス・製品の解約を予防したり、継続率を上げたりすることがあり、解約率同様に重要な指標として扱われています。
離脱率はいくつかの指標で用いられる言葉です。解約率と同じ意味をもつ「顧客離脱率」や「契約離脱率」などをはじめ、逆に顧客の成功体験から収益が増える逆離脱率(ネガティブチャーン)としても使われています。

オンボーディング完了率

優れたサービスや製品であればあるほどオンボーディングは重要なポイントであることを前述しました。オンボーディング完了率とは導入支援が完了した顧客の割合です。これが低いほどオンボーディングが進んでおらず、解約や離脱につながるため、重要な指標となります。
オンボーディング期間中の顧客は、サービスや製品に対する関心が高い時期であり、このタイミングで理解を深めて継続利用につなげられなければ、リカバリーは厳しくなります。オンボーディングはカスタマーサクセスにおいて、最も熟練した技術を必要とする施策実施期間といえるでしょう。

LTV(顧客生涯価値)

LTV(Life Time Value/ライフタイムバリュー)とは、1顧客が取引開始から終了までの間にどれだけの利益を企業にもたらすかを表した数値です。さまざまな事情やビジネスモデルによって異なりますが、単純な計算式にすると、顧客単価×平均利用期間となります。
サブスクリプション型のサービスが提供されていく上で、どうすれば顧客が長く利用してくれるかを追求する事は不可欠です。また、顧客との関係性向上の考え方であるCRMとLTVは相性の良い指標となります。カスタマーサクセスの仕事にはLTVの考え方・指標の導入が強く推奨されます。

NPS®(顧客推奨度)

NPS® (Net Promoter Score/ネット・プロモータースコア)とは、顧客推奨度を意味します。
NPS®は、2003年にコンサルティング会社「ベイン&カンパニー」が考案した指標です。これを使用すれば、顧客が企業やブランドに対してどれくらい愛着や信頼があるかを数値化できます。顧客に対して長くなりがちな質問調査をする必要がなくなるため、重宝されています。
シンプルな調査方法で顧客ロイヤルティを測定しますが、業績と強い相関関係が得られるため、KPIとしてカスタマーサクセスの切り札にもなるでしょう。
実施する簡単なアンケートは、各設問に対して0~10点の11段階で評価をしてもらうだけのシンプルなものです。

  • 推奨者(9~10点)
  • 中立者(8~7点)
  • 批判者(6~0点)

算出された結果を元に、上記3つの回答者ごとに顧客をグループにわけ、数値化したものがNPS®の指標となります。

注:NPS®は、ベイン・アンド・カンパニー、フレッド・ライクヘルド、サトメトリックス・システムズの登録商標です。詳細はこちら

カスタマーサクセス事例

カスタマーサクセスについてさまざまな角度から紹介してきました。最後のまとめとして、実際のカスタマーサクセスの事例について紹介しましょう。Salesforce(セールスフォース)と呼ばれるツールがCRMを利用し、顧客企業のカスタマーサクセスの実現に成功した事例です。ぜひ参考にしてみてください。

SALESFORCE.COM:CRM

Salesforceを導入したのは、創業から業績を伸ばし続けているとある企業でした。
Salesforceというツールを導入したことで、各部署に分散し蓄積されたデータが、社内の誰もが共有できるようになりました。また担当者が変わっても速やかに見積もりの作成や管理ができるようになったのです。
導入前は、顧客情報の伝達が滞り、担当が変わるたびに仕様が違ったり、再確認したりが必要でした。現在では顧客ごとの見積書を作成しただけで、刷新されたデータが蓄積されます。その結果、社内の正確な情報を把握できるようになりました。
CRM機能がこの企業のニーズを的確に読み取ったわかりやすい事例ではないでしょうか。Salesforceを使い続けることで、膨大なデータが自動的に管理されていき、円滑な企業活動が望めるでしょう。 社員がすべてを共有でき、可視化され透明化された経営は、社員の向上心を引出すことに一役買っているようです。

まとめ

物質的に豊かになったことで、顧客は形あるモノへの欲求から、利用したいときに利用できるサービスや、体験への欲求に大きくかじを切ることとなりました。結果、サブスクリプションビジネスはさらに加熱していくことでしょう。周囲との差別化を図るために、カスタマーサクセスは今後欠かせない営業ツールとなっていくはずです。
さまざまなサービスや製品があふれかえるなか、顧客のニーズも多様化しています。新規顧客の獲得や契約離脱してしまった顧客を取り戻すことは難しいです。だからこそカスタマーサクセスを導入して、今までよりも深くまで顧客のことを理解する努力をしましょう。顧客の成長・成功を目指して、顧客目線に立った提案と課題解決が求められています。

最後のチェックポイント

  • カスタマーサクセスとは顧客の成功と成長を導き出すマーケティング概念
  • 顧客に対し「能動的」である点がカスタマーサポートとの違い
  • 顧客の成長や成功を導き出した上で、自社の収益の両立を目指すことがカスタマーサクセス
  • サブスクリプション形態の広がりがカスタマーサクセスを求める背景にある
  • 販売したサービス・製品を売りっぱなしにせず積極的にサポートをしていく
  • 顧客が成長・成功するために必要なニーズを的確に読み取ることがカスタマーサクセス成功の鍵
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