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パーパス経営とは?社会的な存在意義を持つ新時代の企業経営

date2023年05月10日
パーパス経営とは?社会的な存在意義を持つ新時代の企業経営
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はじめに

昨今、パーパス経営という言葉を耳にすることが増えたのではないでしょうか? 検討してはいるものの、どうしたらいいかわからないなど、疑問もあるかと思われます。本記事ではパーパスとは何であり、パーパス経営とはどのようなものかを詳しく解説します。これを機に、ぜひパーパス経営を身近な言葉にしてください。

パーパス経営とは

パーパス経営とは

パーパス経営とは、要約すると社会的な存在意義を持った企業経営のことです。一口に存在意義と言ってもその意味は幅広く、企業による取り組みにも、さまざまなものがあります。以下の項目では、パーパスの意味や考え方について触れていきます。

パーパスの意味

パーパス(purpose)とは英語で、目的や目標、意図や狙いなどの意味を持つ単語です。そのためパーパスの内容に決まった型はありませんが、近年のビジネス業界では、企業における社会的な存在意義という意味で使われています。

パーパスを経営理念に掲げ、社会的な貢献性や存在意義を経営に取り入れた企業は以前から存在していました。しかし時代の変化とともにパーパスの重要性が見直され、近年では次世代の企業経営のあり方として、その注目度が高まりました。

そのため企業が経営理念に掲げるパーパスは、MVVやクレド、社是などと同じく、企業が大切にする価値観として扱われています。

MVVからパーパスへ

MVVとは、「Mission(ミッション)」、「Vision(ビジョン)」、「Value(バリュー)」の頭文字をとった言葉です。経営のあり方として、企業がこうあるべきとの使命や未来像、価値観や行動指針を、経営理念として現しています。一方で近年注目されるパーパス経営は、企業の社会的な存在意義をより強く打ち出した考え方です。金銭的な利益のみならず、未来のために今必要なことや、社会のために今の時点で実現可能な目標を、パーパスとして明確化しています。

MVVとパーパスは似通っていますが、パーパスは社会にとって必要かつ、より現在に軸足を置いた、実現可能な理念であると言い換えられます。

パーパス経営が注目される背景

パーパス経営が注目される背景

パーパス経営は社会的な存在意義に軸足を置いていますが、そもそもパーパスが重視され、注目された背景はなんだったのでしょうか? 以下の項目では社会的な存在意義であるパーパスがなぜ必要とされ、注目されているのか、その背景について事例も交えて触れていきます。

持続可能な社会やSDGsへの理解

パーパス重視の流れは、2015年の国連サミットにおけるSDGs採択も、大きなきっかけになっています。SDGsとは、サステナビリティを持った、持続可能な社会を実現するための世界的な開発目標です。SDGsには、2030年までに達成するべき17のゴールがあり、環境・社会・経済の観点で、世界規模の目標が定義されました。SDGsは今も世界中の国や地域で呼びかけられており、大規模なものから個人単位のものまで、さまざまな取り組みが行われています。

パーパス経営では、SDGsを大切にしたパーパスを掲げることで、SDGsへの理解と連帯を示す企業として、社会的な意義を表明できます。

現役世代の交代

社会における現役世代は団塊の世代が引退し、ミレニアル世代と呼ばれる1980年代~1990年代半ばに誕生した人たちにシフトしつつあります。

ミレニアル世代は、今後の企業活動や消費行動の中心となる世代です。日常的に世界中のニュースや多様な感性に触れている彼らは、社会的な課題についても関心が高く、社会に貢献したいという強い気持ちをもっている世代です。ミレニアル世代に支持されるためにも、社会貢献性のあるパーパスを取り入れた、パーパス経営が重要な意味を持っています。

DXへの取り組み

さまざまな企業が盛んにDX(デジタルトランスフォーメーション)に取り組んでいますが、デジタルは今や1つのツールに過ぎません。デジタルを使った業務や事業、経営や社会を、どのように変えて行くかというX、つまりトランスフォーメーションが重要なのです。

ミレニアル世代や、その次のZ世代は、日頃からさまざまなデジタル機器に触れており、仕事のツールとして使いこなすデジタルネイティブの世代です。DXでどのように社会や仕事を変えて行くのかも、パーパス経営の背景として重要な要素となります。

ESG投資の増加

ESGとはEnvironment(環境)、Social(社会)、Governance(企業統治)の、それぞれの頭文字を取った言葉です。これらを重視した投資がESG投資として、SDGsとともに、持続可能な企業経営を目指す重要な考え方として、認識されるようになりました。ESG投資の市場は、SDGsが採択された2015年以降、その関心の高まりから急速に拡大しています。企業の健全性や働く人を大切にするパーパスを考えるうえでも、密接な関わりがある重要な要素です。

ESGとSDGsの関わりや、ESG投資への参考事例として、株式会社セラクのESG経営をご紹介します。

参考:株式会社セラク|ESG MANAGEMENT セラクのESG経営

パーパス経営の要素や条件

パーパス経営の要素や条件

ここまではパーパスの重要性について触れてきましたが、これらを実現するパーパス経営には、どのような要素があるのでしょうか? 以下では、パーパスを掲げるうえで満たす必要がある、さまざまな条件や、パーパス経営への取り組み方について解説します。

社会貢献や社会課題の解決

社会貢献や社会課題の解決は、パーパス経営における重要な要素であり、条件のひとつです。この条件を満たすためには、企業が社会のために出来ることをパーパスとして掲げる必要があります。環境や社会課題のほか、人権問題や労働問題など、困難な社会課題と向き合うことで、社会における企業独自の存在意義を明らかにできるでしょう。

また社会の重要課題に向き合うパーパスは、企業で働く現役世代の共感や、ステークホルダーの信頼も得やすくなり、パーパスを実現するために力を合わせやすくなる特徴があります。

企業独自の価値や利益

パーパス重視の経営といえども、そのために業績の低下を招いてしまっては意味がありません。経営を行う以上、企業は利益を生まなければ組織を維持できませんが、パーパス経営ではこの利益についても、幅を持たせて考える特徴があります。つまりパーパス経営は、金銭的な利益以外にも企業独自の価値や、有形無形を問わず、さまざまな組織の利益を生み出すという考え方です。

そのためにも企業は組織をあげて検討し、最終的には企業独自の価値や、総合的な利益につながるパーパスを掲げる必要があります。

既存業務による実現の可能性

MVVとパーパスの解説でも触れましたが、パーパスは実現可能な目標である必要があります。そのため既存業務に関連する取り組みであることや、現在の事業規模で実現可能であることが必要です。パーパス実現の可能性を高めるには、ある程度ノウハウや経験があり、自社の事業と関連する取り組みが前提となります。そのうえで現在の資金力や労働力、事業規模に見合った取り組みをパーパスとして掲げることが重要です。

反対に自社の業務と全く異なった取り組みや、事業規模の考慮が浅い取り組みでは負担も大きくなりますし、実現の可能性そのものが損なわれてしまいます。

モチベーションにつながる

企業の社会的な存在意義を明確化したものがパーパスです。しかし社会課題を重視するあまり企業で働く人材が軽視されては意味がありません。パーパスに含まれる企業の社会的な存在意義には、人を大切にする姿勢も含まれているからです。

そのためにも、企業はパーパスが持つ社会的な存在意義を、従業員に対してもわかりやすく説明し、全員が納得して働けるパーパスを検討する必要があります。この条件を満たすためにも、パーパス経営では従業員のモチベーション、つまり仕事の働きがいにつながるパーパスを掲げることも重要です。

パーパス経営のメリット

パーパス経営のメリット

パーパス経営で掲げるパーパスに決まった型はなく、そこにはさまざまな要素や条件がありました。それでは、パーパス経営からはどのようなメリットが得られるのでしょうか? 以下ではパーパス経営から得られるメリットについて解説します。

ステークホルダーや地域社会の信頼

パーパス経営を通じて、さまざまな社会課題に向き合った取り組みを行う企業は、関係先にもポジティブな印象をもたらします。先述のようにパーパスに決まった型はありませんが、パーパスの実現に力を入れた企業姿勢は、さまざまなステークホルダーの信頼につながります。

例えば、SDGsやESGへの取り組みをパーパスとする企業は、同様の価値観を持つステークホルダー(利害関係者)の信頼を得やすくなるでしょう。また地域の環境や経済、人や文化に配慮したパーパスを掲げる企業は、地元とのつながりや地域社会の信頼を得やすくなります。

従業員エンゲージメントの向上

企業の社会的な存在意義を明確化したものがパーパスです。モチベーションの解説でも触れましたが、パーパスを明らかにすることで、従業員は自分の仕事がどのような社会貢献につながるのかを意識して働けます。そのようなモチベーションを持って働ける職場環境が実現できれば、従業員エンゲージメントの向上、つまり仕事に対するポジティブで充実した気持ちを高められるでしょう。

モチベ―ションとエンゲージメントのある職場は、誰もが働きやすくなり、企業健全性の向上や心身の健康にもつながります。

意思決定が速くなる

パーパス経営におけるパーパスは、実現可能な企業理念であると同時に、企業が達成すべき目標そのものです。パーパスによる意思統一が実現することで、業務効率やチームワークの向上だけでなく、その企業で働く人たちが同じ方向を向いて働けます。

社会的な意義と方向性の定まった組織は、誰もが相談しやすく働きやすい職場になります。コミュニケーションの品質が向上し、意思決定も迅速化でき、イノベーションも生まれやすくなるでしょう。

パーパス経営の注意点

パーパス経営の注意点

一見、取り組み次第で多くのメリットを生むパーパス経営ですが、パーパス経営にも注意すべき点があります。以下ではパーパス経営に取り組む際、注意すべき点を解説します。

失敗の可能性

社会にとって今必要で実現性も高く、現在の事業規模で実現可能かつ利益も生む取り組みともなれば、その条件を満たすパーパスの検討は非常に難しく、そもそも多くの課題が存在します。例えパーパスを定められたとしても、組織内への浸透や従業員への納得の取り付けには、多くの話し合いが必要になります。またパーパス経営の負担からは、既存の利益を損なうことさえ考えられ、投資そのものの難しさも課題となるでしょう。

社会課題の解決から生まれる強みは大きいものの、パーパス経営そのものが失敗の可能性もある難しい課題です。

パーパス・ウォッシュ

パーパス・ウォッシュは、パーパスの実現に向けて努力しているように見せかけながらも実態が伴っておらず、パーパス経営が形骸化している状況のことを指します。パーパス経営は手間も時間もかかる取り組みです。パーパスを掲げることはできても、企業全体に浸透させて実現を目指すとなればコスト自体も大きく、実現性が乏しいままになってしまうことも考えられます。

パーパス・ウォッシュが常態化してしまえば、ステークホルダーの信頼を損なうことになるでしょう。

まとめ

パーパス経営とは、企業におけるパーパス(社会的な存在意義)を理念として掲げる企業経営です。パーパスに決まった型はなく、未来のために今必要なこと、実現可能な社会貢献や社会課題の解決が、その達成目標として掲げられます。

パーパス経営は金銭的な利益以外にステークホルダーや地域社会の信頼、従業員のモチベーションやエンゲージメントなど、有形無形のさまざまなメリットをもたらします。パーパスへの取り組みはそもそも難しく、形骸化してしまわないよう注意が必要です。

パーパス経営の実践とパーパスの実現には、企業と個々人が等しくパーパスの大切さに納得し、何がパーパスの実現につながるのかを理解して取り組むことが重要です。

最後のチェックポイント

  • パーパスとは企業における社会的な存在意義
  • パーパス経営はパーパスを理念として掲げる企業経営
  • SDGsやESG投資を背景に重要性が再認識され近年注目されている
  • 社会課題に向き合うパーパスには多くの取り組み方がある
  • パーパス経営からは有形無形さまざまなメリットが得られる
  • パーパスが形骸化するパーパス・ウォッシュに陥らない注意が必要
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